イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プレイレポート ブラックジャケットPRG『ヴェンジェンス・デイ』

今日はカッツェのみんなと、1月の新作・ブラックジャケットRPGを遊んだよ。付属シナリオ!

シナリオタイトル:ヴェンジェンス・デイ システム:ブラックジャケットRPG GM:コバヤシ

浅間忍さん:”リドル”門田凱斗:17才男性:ガロット ごく普通の家庭に生まれたが、ヴィランに落ちた父を追ってこの世の果て、獄門街へと流れ着いた少年。悪党に問いを投げかけ、力を制御する知恵を追い求めるダークヒーロー。
新米さん:”愚者の月”マルカ・カルマ:外見10代女性:ファナティック 濃厚な感情を主食とする、自称・人の良い悪魔。矛盾を前に諦めを踏破する人間性を何より好むが、ダークエイジと化したBJ世界ではなかなか食べれないので飢餓気味。狂気と正気の間を踊る道化師。

そんなわけで、正義が失墜した世界に生まれた悪徳の街、獄門街を走り抜ける悪徒たちを遊んでもらいました。もともと堅牢なDLHのシステムに、強火で煮込んだ世界観がガッチリ噛み合い、非常に煮えたゲームとなりました。やっぱDLHシステムは現状最速最強だなぁ……。
『あり得たかもしれないもう一つの可能性』つーのはアメコミの定番ネタであり、セカンド・カラミティの成否を軸に分岐した世界は、やっぱり非常に温度が高い。PLもみっしり世界観を読み込んで、この暗黒の世界に似合いのダークヒーローを描いてくれました。
大いなる力がもたらす大いなる責任を背負いきれず、現実に膝を屈した世界の中でいかにヒロイズムを追い、いかに人のカルマに向き合うか。これはヒーローがPCになるDLHではなかなか彫りづらいネタで、このシステム独自の味わいだと思います。そこに正面から向き合える付属シナリオがしっかりついてくるのは、非常にグッドでした。

”悪人がやれるよ”というシステムで、殺人なり強盗なりアモラルな行為をやっていくか、そういう行為が当たり前だからこそ真実正義を目指すキャラクターをやるかは、結構個人の価値観、集団の共通した倫理観によって変わると思います。
ウチはなんだかんだ善人な方向性のほうがゲームを遊びやすい(共有のためのコストが低い)プレイグループなので、悪と悪が正面からぶつかるというより、ネジ曲がった世界で正義とは名乗れない悪が悪に立ち向かう感じの話になりました。
ヴィランでありダークヒーローでもあるキャラクターで、どうゲームを遊ぶか。時間と集中力を燃やす共通体験を面白いものにしていくかは、結構難しいところでしょう。無軌道な悪人ではなく、『犯罪者を狩る犯罪者(あるいは義賊)』という”善”に比較的親しい所が付属シナリオで推奨されているのも、そこら辺の難しさをそれとなーく誘導・補助する狙いがあるのかな、と思いました。
実際他人と顔つき合わせてゲームをする時、むき出しの欲望を無軌道に踊らせるより、ある程度一般化され共通されている倫理に則ってゲームしていくほうが、”楽”ではないかなと僕は思っています。アモラルな行為への線引は、確認して調整して共有するのに結構コストがかかる(これをケチると、事故率が異常に跳ねる)ので。
まぁそこら辺はプレイグループごと、卓ごとに楽しいようにやればいいし、遊びやすい方向でゲームしていくのが正解だとも思います。実際、色んな遊び方ができる柔軟、かつ強靭なシステムと世界観ですしね。

ゲームとしてはグリッターや協力、集中のルールが廃止され、カルマに一本化されました。ヒーローは助け合いかもしんなけど悪人は自己責任なわけで、世界観の変化に合わせたスマートな調整だと思います。参照するデータがチーム共有のものから、自分ひとりの責任に一本化されたので、数字の扱いがスマートになっているのもとても良かったです。
デザインとしてはDLHから少しオプションを明確化して、より遊びやすくスムーズなゲームに向けて構造を少し変えてあります。シーンの定義が広がったり、戦闘のバフ・でバスがステータスとして一本化されたりですね。
キャラクラスに当たるオリジンも、パワーソースを意味していたDLHからNOVA的な『魂の在り方』に変わり、よりダークで思弁的なキャラ造形が強まりました。作り込んだ世界観とガッチリ噛み合って、凄く良いと思います。

こういう新しい要素をしっかり見据え、ブラックジャケット”らしい”キャラをしっかり用意してくれたPLのおかげで、ゲームは非常に楽しかったです。システムの軽便さを生かしてみっしり実のあるプレイを、無理のない時間で遊びきれました。
やっぱゲームの中身が短く濃いのはとても良くて、会話リソースを誰かが不公平に専有する感じも薄いし、無駄のないプレイ体験が楽しみを増強してくれるしで、いい事ずくめですね。
ここニ三年の新作トレンドが『体験の濃縮』にあると思うし、それを見据えて創っていたDLHシステムがさらに加速した印象を受けました。ただ世界観を書き換えただけではなく、ゲーム体験それ自体をテイスト変えているのはさすがです。
実はシナリオでは敵ヴィランはこう、ヒャッハーでシンプルな感じだったのですが、それを受けるリドルのキャラが湿度と重力が高い感じで、あんまシンプルなのは似合わない感じでした。なのでゴリゴリキャラを変えて遊んだわけですが、そういう人の顔見た変化ってのもゲームでは大事だなぁ、と思った次第。

というわけで、非常に面白かったです。キッチリ進化しつつ、ゲームが破綻するようなインフレを抑圧し、基本システムの強靭さを信じた作りになっているのは素晴らしい。今後も色んなシナリオで遊んでみたいものです。
良いセッションでした、同卓していただいた方ありがとうございました。