ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
因果を操る”キング・クリムゾン”の圧倒的な力は、叛逆のブチャラティをたやすく死地に追いやったッ!
しかし邪悪に憤る熱血は、死をも超越しブチャラティを動かす。
男は問う。己の意志で、岸を渡り船に乗れ! と。
少しでも、光のある方へ。
そんな感じの急転直下、裏切りと希望が交錯する運命の瞬間、ジョジョ五部アニメである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
ブチャラティの死、短き蘇生、絶大な決意。地下墳墓の激戦は地上に及び、チームそれぞれが運命を決断する。
踏み込むもの、ためらうもの、背を向けるもの。
それぞれ、己の意志と生き様がある。
エピソードは地下墳墓でのスタンドバトルと、地上での覚悟バトルに大きく二分される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
ボスとの殴り合いはある意味わかりやすく、相手が超チートの強敵であること、しかし品性は下劣な卑怯者であることが強調され、それに立ち向かう意志は鮮明だ。
しかし地上に戻ってからは、善悪判然としない覚悟の戦いが、それぞれに突きつけられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
僕はフーゴがここで脱落するのは、凄く良いと思っている。
誰もが、正しいと知りながらそれを行えないからこそ、世に悪は蔓延る。だからこそ、リスクやマイナスを起爆剤に悪に立ち向かう者たちは輝いて見える。
大学へ飛び級で進学するほど頭が良かったフーゴは、自分たちが今までやってきたこととか、現実的な計算とかに縛り付けられ、岸に残ってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
それは当たり前のことだ。ナランチャの言葉を借りるなら『あの情けない恥知らずのフーゴは俺だ! フーゴのためらいは俺のためらいなんだッ!』って感じ。
そういう逡巡を乗り越え、明日も知らぬ不安な海上に、自由に、胸を張って飛び出していく男たち。飛び込めない時分を知っていればこそ、そこに痺れる憧れるである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
こうして運命は一つの線引を行い、敵は暗殺チームからボスへと移り変わる。後半戦開始である。
後にボスに背中を向ける事になるチームは、まだ組織に所属している冒頭、船にい続けることを強要される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
不安定な足場。裏切り(悪に対するそれは”正義”の同義語だ)を秘めたジョルノだけが、定められたルールを破る。
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”キング・クリムゾン”の発現は境界を飛び出し、様々な因果を書き換える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
それはボスの本性が暴露され、誇りを込めて遂行していたミッションが『娘殺し』のためだと判明するドラマと、軸を同じにしている。
知らず書き換えられたルールの中で、アバッキオは先取りするように陸に上る。ジョルノと共に。
チームが身を置く、チョコレートの取り合いでキャッキャ出来る光の世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
ブチャラティはそこにたどり着くために、”スティッキー・フィンガーズ”で暴れまわる。壁に穴を開け、自由と光を目指す。
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ボスは(物理的な位置、組織内部での階級、心理的優越、倫理的超越など色んな意味を含んだ)”上”を目指すブチャラティを、圧倒的な力で踏みにじり、天国への階段を体で塞ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
だが火のついた意志を留めることは出来ず、ブチャラティがボスを見下ろすポジションを奪われる。
たとえ腕をもぎ取られても。肉体が死に果てても。気高い意志は空を目指し、天国への階段を一歩ずつ上がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
最終的にどこに到達するのかは判らなくても、そこを目指そうとする意志は力強く、尊い。闇に閉じ込められ、道を塞がれても、へし折ることは出来ない。
そういうジョジョの根源的な思想が、『過程はどうでもいい、結果だけが残る!』ボスとの対比で、良く見えるバトルである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
ボスの裏をかいたブチャラティの瞳が、優越感を一切感じさせないのが良い。戦いはまだまだ続く。その過程を必死に走り切ることこそが、彼の使命(ミッション)なのだ。
Missionには『天命』や『神からの命令』といった強い意味が宿る。それは人の欲得で作り上げた組織から与えられるものではなく、もっと高い場所、人の尊厳を保証する場所から生まれてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
ブチャラティはそれを(父母の思い出が育んだ)己の良心にのみ背負う。自分の道は、自分にしか決められない。
岸に残ったフーゴも、階段に足をかけてはいた。今まで仲間と走ったミッション…どん底でブチャラティに出会えた運命には、強い絆を感じていたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
しかし、その激情(パッショーネ)に飛び込めない人が、必ずいるのだ。
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天国への階段を上がりきり、光のある方へと進んだブチャラティ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
巨大な悪を前に、仲間に救われ命を繋ぐ。
ボスは巨大な力を秘めながら、闇に身を潜め様子をうかがう。まるでこそ泥か虫けらのような、卑しい姿が印象的だ。
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ボスは光の側に指をかけつつ、保身のために闇の中に身を置く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
初期案ではフーゴはボスの手下となって、チームを殺しにやって来る予定だったという。もしそうなっていたら、フーゴは逡巡の岸からボスの居る卑劣な闇へと、身を投じていたわけだ。
それはあまりにも寂しい。だから変わって良かったと思う
ボスが光から身を隠し、闇に潜む様子は吸血鬼を思わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
吸血鬼(DIO)の息子であるジョルノが意外な不意打ちとなり、ブチャラティを光の側に引き寄せたのを考えると、血の定めを乗り越える黄金の風を感じずにはいられない。
…吸血鬼を狩る半吸血鬼…ジョルノはダンピールなんだな。
そして物語は光の側での、それぞれの決断に移っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
岸に縛られて何処にもいけないか、不安定な船に乗って漕ぎ出していくか。
死地に己を導くカロンの渡しになるかもしれないし、財宝と栄光に連れて行く宝船になるかもしれない。何も分からないものに、己の気持ちだけを抱えて飛び込めるのか。
ブチャラティは部下に強制はしない。そうなってしまえば、意に反して麻薬を売る片棒を担がされていた過去に逆戻りだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
自分で考え、自分で決めろ。その重責は、ナランチャが思い悩むようにとても苦しい。全てを預け、全てを失ってしまえば、どれだけ楽だろうか。
既に道を決めているジョルノは別として、一番最初にアバッキオが進み出るのは印象的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
彼はかつて信じた正義に裏切られ、信じた正義を裏切り、何もなくなってしまった。その空疎を巨大な組織が埋めてくれると、マフィアに身を寄せた。
しかし己を埋めてくれたのは、顔のない組織ではなく魂ある個人。
何かとイラつかせる新入り。失った正義と誇りを与えてくれるボス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
求めていたのは組織の歯車になることではなく、死に絶えた魂を蘇らせ、黄金の体験をもう一度与えてくれる、かけがえのない仲間。
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それが言葉ではなく魂で理解できたからこそ、アバッキオは安定した岸を捨て、船に乗る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
ホントここら辺のツンデレ力、ジョルノとのイチャイチャ力はすんごいことになってて、アバの魅力全開って感じだった。抱かれてぇ…。
無論、アバッキオの空疎は完全に埋まったわけではなく、『別に死んでもいい』という捨て鉢な気持ちはあると思う。(ここら辺、VS”ホワイト・アルバム”で描いた”覚悟”の真意と噛み合って面白い)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
死ぬにしても、少しは誇らしく、人らしく死にたい。なら、組織の走狗より、ブチャラティの仲間として。
そういう思いがあっての乗船なんじゃなかろうかと思う。”ムーディー・ブルース”は未来ではなく、過去を再生する能力。でもそれは、現在をより善く生き延びるための能力でもあるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
やっぱアバはエモいなぁ…アホみたいにセクシーだよ…。
対してミスタはひょっこりと、銭金目当てで軽く飛び込んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
アニメになって強調された生粋のキラーっぷりを思うと、その軽みが逆に”らしい”。
軽口を叩いた三秒後に、挨拶でもするように銃弾をブチ込める男。その圧倒的な暴力を、しっかり制御して使いこなせる男。
でもそんな彼が、ブチャ・ジョルノ・アバに続く『四人目』になることを気にせず船に乗っている所が、結構好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
…トリッシュを勘定に入れると『五人目』になるから、アバが入った後に乗ったのかな? 結構計算高いからなぁあの男…。
そしてナランチャは必死に悩み、岸に残る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
誰かに生き様を指示されることで、組織やボスの道具であることで重荷を捨ててきたナランチャに、ブチャラティは『来るな』と命令する。
意志のない奴隷として乗るなら、それに意味はないからだ。己がそうしたように、己の意志で己の道を。
ブチャは麻薬に父を殺されたことでボスを裏切り、ナランチャは大事な人に捨てられた思い出から海に飛び込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
過去は長く長く尾を引いて、人のあり方を強く規定する。アバッキオの踏み込み、ジョルノとトリッシュの血の定め。
…やっぱミスタだけ異質に軽いな。そこが好き。
遠くに去っていくモーターボートを前に始まるナランチャの長台詞は、ジョジョを通して一番好きな言葉だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
誰かの傷は、僕の傷。誰かの痛みは、僕の痛み。そういう共感だけが、過程だけを重視する冷たい世界の中で、何かを変えうる優しさに変わっていく。
ジョジョはバトル漫画で、”強さ”ばかりを強調すると思われがちだけども、ナランチャが自分の中から絞り出したとっておきの”優しさ”もまた、非常に大事に扱われている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
それは表裏一体だからだ。強くなければ、悪とは戦えない。優しくなければ、正義にはなれない。
ヒーローとは程遠い、泥まみれのギャングスタ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
”覚悟”のためなら血も殺しも辞さないアウトサイダーを主役にすることで、今まで描いてきた”強さ”や”優しさ”を別角度から照射し、その立体感を増す仕事を、五部は見事に果たしていると思う。
フーゴは岸に残る言い訳の一つとして『所詮汚れ仕事』と呟く。
それは道理だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
良いことをしたからって、ギャングスタがいきなり聖人になるわけじゃない。未来の行いは、過去を贖うわけじゃない。
それでも、それが正しいと信じて船に乗り込むのならば、自分が何をしてきたか、何者であったかという過去は関係がないのだ。
ナランチャはトリッシュの傷に共鳴して、己の腕で己を進めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
ザッパザッパとヴェネツィアの海を突き進むシーンの、異常な迫力。それは少年が”優しさ”という使命に目覚め、光の側に突き進む決意を見せるからこそだ。
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力尽き、水に沈むかもしれない。光の側にはたどり着けないかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
そんなことは解っていて、でもそうするべきだと思ったから。男たちと少女は同じ船に乗る。
愚かだと知りつつも、真実正しいことを成し遂げるために。そこを目指す過程こそが尊いのだと、信じ直すために。
そういう逡巡と決断がみっしり籠もった、良いエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
やっぱフーゴの存在がデカイんだよなぁ…。
普通海には飛び込めないんだよ。フーゴは普通だった。『そんなもん』と時分を騙して、強い後悔を噛み締めながら、飛び込めない側の人間だった。
五部は”ロミオとジュリエット”並に異常にスピードが早いんだけども、密度が濃厚すぎてそれを感じさせない。暗殺チームが動き出してほぼ全滅するまで、24時間ないからな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
でも確かに、トリッシュと出会ってからの時間は短い。『好きな音楽も知らない』程度の付き合いだ。
それでも、ブチャはトリッシュに父との思いでを、ナランチャは傷ついた時分を見た。共鳴したのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
それはジョルノがブチャラティを殴りつけ、”ゴールド・エクスペリエンス”で魂を再生させた時…物語が把持まったときに生まれたモノと同じだと思う。
どん底の泥の底で、光を目指して歩き直すか。岸に留まるか。はたまた、卑劣な闇の中で己を安心させるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
人はどれも選ぶことが出来て、どれかしか選ぶことは出来ない。その決断が、魂の色合いを決めていく。己が背負う物語の価値を定める。
そういうジョジョイズムが、色濃く出た名エピソードでした。
こっからボスの長い手、人格破綻者揃いの親衛隊との削り合いになっていくわけだが、非常に楽しみだ。”キング・クリムゾン”の能力がよく分かんねぇのはしょうがねぇ! 俺も分かんねぇから”凄味”で納得していこう!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月1日
運命の海に漕ぎ出した男たちの未来は、光か闇か。来週もマージで楽しみ。