からくりサーカス 第34話『背中を守る者』を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
数多の屍を後塵に配し、列車は遂に終着へと進む。
思いやりで守られた観客席は血で染まり、主役たちも闘いへと突き進む。己を見失うもの。取り戻すもの。
偽りの過去に沈むもの。伝統から力を引き出すもの。
背中合わせに、ようやくここまで来たのさ
というわけで鳴海のツン期終了！！ 主役三人それぞれの激闘である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
泣き虫ヒロインだった勝ちゃんが万夫不当の超戦士に成長したことも、エレオノール戦士の挟持が垣間見えることも、鳴海が自分を取り戻したことも、全て喜ばしい。
いやー……やっぱ『見浦流断刀の拍子”松風”』超かっけぇ…。
”最後の四人”を相手取ることで、主役たちは戦士としての顔を取り戻していく。それはただ殺す機械になるわけではなく、赤い血流れる人の温もりと意地を抱きしめることでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
そんな風に、笑って人のまま闘い続けるのは、一人では難しい。
背中に誰かを庇うのは、自分を弱くする愚かな行為かもしれない。しかし大事なものはいつだって、目の届かない背後にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
鳴海を庇うしろがね、彼女の戦う力となるあるるかん。思い出の中の鳴海、そこを飛び越えたどり着いた戦場。
© 藤田和日郎・小学館 ／ ツインエンジン pic.twitter.com/7iQqzkqPnl
副題通り、大事なものはすべて背中にある。人形は余計な荷物を背負わない。背負ったとしても、嘘と嘲笑に満ちたペラッペラの飾りだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
人は思い出とか、命とか、未来とかを背中に背負って戦う。それは背中にあるので、なかなか見えない。鳴海は自分がどんな人間で、何故戦うかという理由を喪失している
今回は時間的背後…過去にまつわるお話でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
エレオノールは鳴海が喪失している過去を、自分だけ背負っている。それを思い出さなくても、自分だけの荷物になっても、命をかけるに相応しい重荷だという信念が、彼女を戦士に戻す。
ヒロインから血みどろの人形遣いへ。やっぱしろがねは闘いが似合う
鳴海は”男らしく”女を背中に庇って戦おうとするけど、エレオノールはハーレクインとの闘いを『自分のもの』だと拒絶する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
男女の役割が固定されるのを嫌うのは、ジュビロ先生らしい平等さだなぁ、と思う。女だって血を流していいし、闘っても良い。勝利の栄光を掴んで、誰かを守っても良いのだ。
ハーレクインはパンタローネ戦で見せた素顔を覆い直して、余裕で戦闘を進める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
道化師のジョークグッズが軒並み殺しの兵器になっているところは、彼の歪みを強く感じさせていい。笑顔をもたらすための道具を、血みどろにしか出来ない三流クラウンであるな。
闘いは縛り、縛られることで展開する。過去から抜け出そうと、あるいは虚偽で満たそうとして弱みを晒す人形たちと同じように、人間だって過去に縛られている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
鳴海の場合、それは”忘却”という形で現れる。エレオノールは多分”愛”、勝は”伝統”である。
プラハで恋がもつれたことから始まった、血みどろの因縁絵巻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
カピタンの虚言を断ち切り、インストールされた記憶を刃に乗せて戦う勝は、そういう糸を断ち切る特権を唯一与えられている。
そのために、彼は強くならなければならなかった。涙を拭いて、戦士にならなければならなかった。
主役三人は序章の本当に短い時間だけ出会い、もう二度と三人顔を合わせることはない。それは作品を貫く強力なルールで、鳴海は自分の背中を誰が守り、誰を守っているか気づけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
それでも、時間という糸は人を縛るだけでなく、未来を掴み取るための武器にも、あきらめから身を護る鎧にもなるのだ。
エレオノールはサーカスの仲間に託された過去…あるるかん（Harlequinと読めば、ハーレクインと同根である。しろがねの相棒にもなれたはずなのに、自分で蹴っ飛ばしとるわけだな、あのバカ）を掴み直すことで、戦士へと帰還する。鳴海への愛に準じていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
キャラと物語の地金を顕にする、鋭い問いかけを投げるのはいい敵役の大事な仕事だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
『お前らしろがねは、俺たち自動人形と同じ！』
ハーレクインの嘲笑は、物語全てを貫通する強い問いかけだ。確かに戦士は、心を凍らせ銀色に固める。人間の弱さを捨て、殺すべき人形と同じになる。
だがその奥にある柔らかいものは、なかなか死なない。出会って動いた心臓が、固く縛られた運命を開放することだってある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
エレオノールはそんな変化の思い出を大事に、ハーレクインと心中していく。それは鳴海が背中に置き去りにした、過去の自分を思い出させもする。
鳴海は序章に置いて人間として程よく完成していて、腕と記憶を失うことで脱落し、サハラで決定的に魂を荒廃させる道のりを進んできた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
長い長いツン期であり、まー見ててイライラするんだ…優しく強い鳴海兄ちゃんを知ってるだけに…。その喪失が、運命のままならない強度を感じもさせるけど。
ブリゲッラと向かい合う時に、鳴海は人類の命運というあまりに巨大な荷物を、背負った気でいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
でも加藤鳴海という人間はそんなデカいもんじゃなく、目の前の、そして背中にかばった誰かの涙のために拳を振るうやつだった。エレオノールの犠牲と、殴られて顔を出す後悔が、それを蘇らせる。
拳法を始めた時の記憶が、ブリゲッラのロケットで思い出された時に、鳴海は自分を取り戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
誰かを守る闘いは、前だけ見てるときより人を強くする。それはハーレクインを前に、背後に鳴海をかばったエレオノールと、同じ心持ちだ。ようやく、運命の二人は同じ気持ちに近づけたわけだ。
ブリゲッラはロケット兵器として作られた過去を過剰に否定し、その魔力を認めなかった結果、スタイルを崩して敗れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
それを生み出したのは、アルレッキーノ決死の攻撃。禁を破り、一撃で全てを破壊する快楽を知った人形は、必死に修めた拳法を信じきれなかった。哀しいことだ。
ミサイルですべてを吹き飛ばしたいという、否定したい願望。自分の根っこに食いついた闇をしっかり見据えたなら、また新しい道もあったかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
だが、ブリゲッラは自分の根源にたどり着くことが出来ない。むしろ、鳴海が優しさと強さに帰還する手助けをしてしまう。悪役の哀しさである。
押し寄せる悪魔の軍団を前に、鳴海は座っていられない。それはブリゲッラとの闘いが、彼の起源を呼び覚ましたからだ。背中に庇う戦いを前に、引くことは出来ないからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
ここで、勝はようやく憧れに追いつく。庇われるだけでなく、己も背中に庇い、死角を消す戦い。互角の戦士として、堂々横に並ぶ。
少年がかつて出会った、あまりにも強く優しい”父”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
運命の激浪に押し流されて、戦う力を手に入れた勝ちゃんがそこに追いついた事実は、彼が父性の欠乏に苦しめられた過去と呼応して、とても力強い。
みなし児はようやく、父に並び父を追い越す瞬間を掴み取ったわけだ。
カピタンはその前哨戦として、勝ちゃんが継承した力の意味を照らす鏡といえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
カピタンに過去はない。嘘っぱちの伝統と栄光を、ダラダラ垂れ流す口を閉じることもなく、刃を振るって人を傷つける。
自分一人で飛べて、自分一人で斬れる、空っぽの王様。
勝ちゃんは人形の力を借りないと飛べないし、剣術も正二から受け継いだチートだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
だがそこには、あまりに過酷な過去に本気で涙し、そこから溢れ出す運命に弄ばれてなお諦めない熱い血潮が、たっぷりと宿っている。空っぽの、嘘っぱちの過去なんかではないのだ。
相手の身勝手な嘘と暴力を否定する勝ちゃんの生き様が、自慢の刃をへし折る”松風”に乗ってるところとか、自分の体勢を崩すことで力を呼び込む”転”の一刀とか、とにかくカピタン戦の勝ちゃんはかっけえ。いや、いつでもかっけぇけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
ココらへんは、正二エピを分厚くやった故の気持ちよさだなぁ…。
強敵を討ち果たし、自分の中に継承された”伝統”の重さ、過去の糸を引きちぎる使命を確認して、勝ちゃんはようやく夢に辿り着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
言葉にならない『鳴海兄ちゃん！』連呼が、あまりに感情こもりすぎてて凄かった。植田千尋さんはマジで逸材。
そして勝ちゃんは鳴海好きすぎ。しゃーないけど。
百万の悪鬼を、背中合わせの共闘で討ち果たして、勝は鳴海の瞳を焼く。追いつき、かつて守ってくれた背中を守るだけでなく、その想像を追い越していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
本当は再開の記念写真を取りたいだろうに、傷つけて足を止めるカメラの哀しさね…。
© 藤田和日郎・小学館 ／ ツインエンジン pic.twitter.com/lhyKyVSkWb
本当は思い出を刻んだり、笑いを生み出したりするポジティブな機能が、人殺しにしか使えない哀しさってのは、からくりの大事なところだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
自動人形も元は、フランシーヌに笑いを届けるために生み出されたはずなのに、思いつくのは殺しの技芸ばかり。白金のエゴ、始原の歪みを乗り越えられない。
それを追い抜けるのは永遠の少年たる勝ちゃんだけなんだけども、そんな彼が背負わなければいけない哀しみってのもまた山ほどあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
繰り返す運命を乗り越え、特別な未来を掴む主人公だって、無条件で勝てるわけじゃない。捻じ曲げる宿命が大きいほどに、勝ちゃんが支払うものは重たいのだ。
そういうモンを前にして、涙するばかりではなく戦えるようになったことを喜ぶべきか。闘わざるを得ない哀しみを、嘆くべきか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
一度斬り、不可視の共闘とその後のフラッシュは、勝ちゃんが背負わされ追い抜いていくものの重たさをしみじみ感じさせる。まぁ地獄はまだまだこれからだけどねッ！！
勝ちゃんは何を思って、敵の武器を鳴海に向けたのか。その決意は来週判る。終盤戦、毎回強めのヒキ残してんな…良い構成だぞ！（謎の上から目線）
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
レールから外れたエレオノールとハーレクインの、狂った輪舞曲の行く末も気になるし。残り二話、楽しみであります。
しかしエレオノールの声が林原さんになったおかげで、『あなたは私が守るッ！』が別の文脈含んで響くのは面白いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月5日
銀髪のシールダー系乙女…シン・エヴァンゲリオンは2020年公開予定であります。
