・ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
時には、墓守にも休日を。ライネスの気まぐれに付き合う形で、百貨店へと赴いたグレイ。偶然行き合ったルヴィアも交え、日常を謳歌する。
しかし魔術師に休日はない。突如閉ざされる超常の檻。結界は何故、淑女を捉えたのか?
そんな感じの折り返し、ゆるふわ三淑女の事件簿である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
凄惨な魔術殺人なし! 奇っ怪な魔術師社会の因縁なし! 名探偵の登場もなし!
ここ迄みっちりサスペンスを詰め込んできた空気を、フッと一瞬抜くような柔らかな話である。グレイ七変化が可愛くてよろしい
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あえて二世を舞台から下ろすことで、義兄をイビる以外のライネスの顔が良く見える回でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
日常を生き慣れていない墓守に服と楽しみを与え、友として遇する。魔術師の典型として性格ぶっ壊れていると思いきや、グレイには人情のある振る舞いをするライネスが意外、かつ心温まる感じ。
前も言ったけど、何かとグレイの世話を焼くライネスが善良で、ぼくは好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
『立派な魔術師になる』ということは『人間として終わる』ということなので、人のあり方にまだ接点を残していると見えると、ちょっとホッとする。兄相手だと魔術師の顔のほうが強いからなぁ…https://t.co/NFR1O65Pyx
今回はルヴィアも交えて、ハロッズモデルの百貨店を舞台にゆるゆるゴージャスに話が進む。強めの緊張感で進めてきた物語に、一つアクセントという感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
だが過去に囚われ続ける二世と、それを現世から見守るグレイという構図は変わらず維持されている。
冒頭、富と墓所を交えての講義は、将来発生する密室の謎を解く鍵として設置されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
しかし同時に、去りしイスカンダルの残り香を追い求め、何かというと物憂い顔で思い出にふける二世の視線が"墓所"に向いていること…そこに黄金があることにも繋がっている。
そこにあるものは確かに、ウェイバー・ベルベットをロード・エルメロイ二世に変えた財宝だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
しかし囚われ過ぎれば呪われる。過剰は時に害をなす。どこかで適切に手放し、生者は生者の領域を進まなければならない。
これを見守る現世の楔役が,墓守のグレイなのはとても面白い。
死者の国に縁深い家業に生まれ、ブリテン王復活の願いを込めて製造された魔術の粋。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
死人を宿し、死人を守り、死人と語らう宿命から連れ出してくれた男が、死人に囚われている現状を、グレイは見守ることしか出来ない。…否、埋葬人でも処刑人でもなく墓守だからこそ、見守る立場なのか。
二世がイスカンダルに向ける思いと同質の感情…あまりに巨大な質量で心に焼き付く憧れを、グレイは二世に向けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
だが二世にとってグレイは庇護するべき子供、大事な教え子、後悔を喚起する顔の持ち主、罪悪感込みの非常用暴力装置…様々な顔があるが、対等のパートナーではない。
二世とどういう繋がりを手に入れたいのか、グレイ自身が把握していないきらいもあるので、関係はなおのこと伸展しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
そこでライネスという外部からの圧力が、過去の因縁を教え、人と人もあるべき交わりというのを教育していく。
持つべきは、面倒見の良い姉弟子。ありがとうライネスたん。
ライネスがイスカンダルを語る時、ファラオの棺がクローズアップされるのも面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
イスカンダル帝国はエジプトにも及び、『リアムン・セテプエンラー』として即位もしている。
しかしそれは過去の話。追いすがっても中身のない、空っぽの棺のような、遠い憧れだ。だからこそ金ピカである。
棺は箱でもあって、開けてみなければ何が入っているか…何も入っていないか、あるいはそこにあった黄金は既に胸の中に永遠に刻まれているかは確認できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
二世はそんな聖櫃を探し求めて、講師とロードをやり、子供たちとの繋がりを作りつつ、過去に惹かれているのだ。
過剰に盛られたファラオ像は偶発の密室を呼び、宝石を砕くことで事件は解決する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
イスカンダルと再開する奇跡を具現するのではなく、その思い出を肯定すること…魂に焼き付いた黄金を真っ直ぐ見つめるという、二世のクエスト。
名探偵の不在故に、それが浮き彫りになる
人工的な光に満ちた百貨店、あるいはリムジンを抜けて、グレイは研究室(ホーム)に帰還する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
その途中でグレイは姉弟子に色々なものを学び、頬を引っ張られる。水気の多い皮膚で、ムニムニしてそうだね…ムニムニしたいよね全人類…。
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ライネスは画面中央からぐいと身を乗り出して、グレイの抱え込んだ物憂いに踏み込む。勝手に振り回して、着せかえ遊びに脱出ゲーム、世の楽しみに突き合わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
そんな強引さが世界の広さを教えるのは、第四次でのライダーチームの関係性とちょっと重なってて面白い。宝具はゴージャスなリムジンだ!
姉弟子の後押しを受けたグレイはしかし、硝子の向こうの黄金を見つめ続ける二世の背中を見るしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
見えてはいても届かない、記憶、あるいは冥界という檻。棺の中の憧れに囚われた男は、失った縁を求めて瞳をさまよわせる。そこに、グレイはいない。
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あるいは様々な寄る辺ない子どもたちに、居場所と生き方を教えた教師・ロード・エルメロイ二世はいない、というべきか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
そこにいるのは、ちびっ子で生意気なウェイバー・ベルベット。あまりに巨大な存在を青春にねじ込まれ、臣下の祝福と呪いを受けて神なき世界を生き続けることになった生存者である
エルメロイは昔の男の縁を奪われ、その奪還をグレイに頼む。道具のように強制するのではなく、協力を希うあたり人間合格なのだが、やはりその眼はお洒落もすればアイスも食べる一人間として、グレイを捉えてはいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
今回二世は、グレイを引率しなかった。人として当たり前の享楽を教えたのは義妹だ
それでも振り向いて、助力を必要としてくれることを慰みとするべきか。亡霊に囚われた目線を引っ掴んで、自分の方を向かせるべきか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
グレイもフツーの人間経験が少すぎて、正しい行動が何か全く解んない子ではあるので、この力関係はなかなかに難しい。ほっとくと両方"待ち"で千日手、というか。
どちらにしても、物語は奪われた名残を追いかけて軌条に乗る。魔眼蒐集列車、レール・ツェッペリン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
おどろおどろしくも魅力的な舞台が提示されたところで、来週からは長めのシリーズとなる感じか。アニメオリジナルの連作がとても面白かったため、期待が高まる。
あ、エジプト基調の意匠で埋め尽くして、購買魔術を組み立てていく百貨店の美術はとても面白かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
世に潜む不可思議なルールを説き起こし、望む結果を手に入れる。今このTweetの下にも出てるだろう、マーケティングだのアドバタイズだのにまつわる、電脳現代魔術にも負けない、隠微な誘導。
大昔から人は、不可思議な心の動きを支配するために典礼を整え、宮殿や墓所の寸法を整えてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
デパートの内装は購買意欲を唆るよう、複雑な計算に基づいて、そしてその計算を隠すように設計される。そんなオカルトの深秘に触れるためには、ビジネススクール魔術院でMBA位階まで駆け上がる必要がある
魔法のオブジェを置こうが、置くまいが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
広告や経済という魔術流儀は強力に世界を支配し、それに精通することは即ち、人間性を捨てた"立派な人でなし"に変わることでもある。
魔術は今も生き続けている。不可思議な世界のルールを読み解き、望む結末を手に入れたいという欲望がある限り不滅だ。
そんな現代に息づく魔術が、現実のハロッズと重ね合って不思議な顔を見せるのは、なかなか面白い視聴体験でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
三田さんに三輪さん、現代魔術のマグスが関わってるお話なので、こういう角度からの彫り込みが強い。
非常に楽しい。俺が勝手に見つけてるだけかもしれんが、まぁ謬見も時に真実だろう
気まぐれな休日を経て、墓守と魔術師は魔眼蒐集列車へ乗り込む。そこに何が待つのか。名探偵が動く時、事件は必ず発生するだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月10日
ここまでのオリジナルエピをどう活かすか、シリーズ構成的な意味でも機体が高まります。六話を戦うのに十分な物語的武器は、しっかり並べたと思う。
来週も楽しみ。