からかい上手の高木さん2を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
冷たく青ざめたかと思えば、赤く染まって熱を帯びる。思いは夕焼けの空のように、色を変えていく。
君と私とを繋ぐ、複雑でシンプルな色彩。それを恋と名付ける前に、一日が逃げていく。見せられない表情でにやけて、また明日。
そんな感じの、夏のとある一日を追ったエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
『いや…”勝ってる”じゃん西片…もう終わらせようぜ…?』と言わんばかりのあっち向いてホイイチャイチャから始まり、ダウナーなお悩みタイム、携帯電話で繋がるハッピーアワーと、明暗起伏の結構ある話数となった。
二期はクローズアップが多い、と書いたけども、今回は大胆に引いた構図で、遠距離から見せるカットが多めだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
同じ場所での足踏みに見えて、存外バリエーションと個性があるのが面白いアニメだ。
©2019 山本崇一朗・小学館/からかい上手の高木さん2製作委員会 pic.twitter.com/nvoVBUTdVP
最初のお話はもう典型的な、胸が焼けるようなイチャコラからかい勝負から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
自信満々の西片が、勝負ルーチンを逆手に取られ、無自覚な恋心と肥大した羞恥心を煽られて大敗北する流れは、すっかりおなじみである。
どっちが上でどっちが下か、明瞭に決まった幸福な時間。終わらない戯れ合い。
その甘ったるい質量に満足を憶え、(合間に三人娘ののんきな日常で舌を休めつつ)そのものズバリな”お悩み”で、高木さんは無敵のミステリアス少女から、等身大の中学二年生に、スッと縮む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
当たり前だが彼女にも家族があり、小さな摩擦に傷つきもする。血の流れぬアイコンではないのだ。
見てはいけないものに出会ってしまったかのように、衝撃を受ける西片。空は一瞬で青からオレンジに染まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
物理的に考えれば不自然だが、ドラマとしては正着な、性急すぎる変化。それは二人の関係変化をチェックするリトマス試験紙だ。
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西片は『高木さんめ~!』と呻きつつ、高木さんが手の届かない無敵の存在でい続けることに、結構強めの欲望を持っている気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
上下がはっきりしていれば、自分が追いすがり(そして追いつけず)ゲームが続くから。新しい関係を作り直す必要がないから。
傷のない、綺麗な宝石でいて欲しい。
少女という偶像に時折世界が投げかける、凄く身勝手な視線を反射して、西片はオレンジの世界に浮かび上がった傷に戸惑う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
高木さんも、悩んだりするんだ。傷ついて、からかう余裕がなくなったりするんだ。
考えれば当たり前だが、それでも新鮮な(ある種の)恐怖。
そこで立ちすくんだ時に、浅はかな”からかい”を詰め込んだびっくり箱が落ちる。二人の”いつもどおり”を詰め込んだ箱を開けることで、気鬱な悩みは少し飛んで、高木さんは驚き笑う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
ここの空元気な、でも安心した笑い声は天下一品だ。
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高木さんは西片の稚気に微笑み、『悩まない、強い高木さん』に戻ろうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
『私をからかおうとしたの?』という問いかけに、西片は”いつも”からはみ出して、凄くシリアスな答えを返す。
いつもと違う君が、心配だったからここに来た。
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そう告げられた時の、少し意外そうな顔。気づかずクリティカルに、とても大事なものを拾い上げてくれる少年への驚きと信頼。ママー! また西片ボーイが人生の問題集に満額回答出してるッッ!!!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
シャイに顔を染めつつ、こういう局面で間違えない主人公だから、西片はマジ信頼できるわけよ。
意外と喜びが笑い声になって、西片は少しムッとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
優しさに呼応する形で、中学二年生の小さな、でも他人に預けるには大きな秘密を、高木さんは言葉にする。
びっくり箱と西片の気遣いで、どっかに飛んでいった憂鬱。『ありがとう』の言葉に、照れて立ち去ろうとする西片。
『もうちょっといてよ』
微かな誘いが二人をつないで、夕景は静かに流れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
恥ずかしくて言葉には出来ないけど、心を受け取った証拠としてギクシャク歩み寄って、ここぞとばかりにクローズアップが冴える。
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かくして高木さんは『からかい上手』に戻り、二人の関係は整復される。一瞬の乱れ、当たり前の起伏。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
色濃く濃縮された特別な時間を丁寧に追いかけて、焦りのない第三エピソードは非常に良かった。
季節と時間にともなう”匂い”みたいなものが、情景に静かに満ちていたと思う。
第4エピソードは携帯電話を使って、取り戻した関係性の質感、対面のからかいゲームでは出来ないプライベートを切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
いつもの強さを取り戻して、ガンガン西片の”上”を取る高木さん。しかし既に見たように、西片は幾度も”勝って”いる。
思いの駆け引きにも、関係性のゲームにも。
通話越しで見えない表情のように、西片はそれに気づかない。しかし高木さんの頬は赤く染まって、からかいのはずの言葉には真実がみっしり詰まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
はー西片お前…前世でどういう徳を積んだら、こういう青春長者になれるのかねぇ…
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すっかり関係を整復できた”お母さん”によばれて、かけがえないコミュニケーション・ツール(からかい道具)は陰りに置き去りにされる。今は秘密に閉じ込めて、また明日学校で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
影絵めいた明暗のグラデーションが、鮮烈に見事だ。
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作品全体を覆うノスタルジーと、スマホの時代感はズレているのだが、見えないからこその本音を見せつ遠ざけつの小道具として、エモの凝縮されたフェティッシュとして、非常に上手く使ったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
こういう今っぽさも上手く描くからこそ、作品の息遣いが死んでないんだろうなぁ…。
そんな感じの、夏の一日であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
いつもどおり流れていくはずの景色が、ふと見せたゆらぎ。強いはずの少女が、滲ませた弱さ。
それを整復して『からかい上手』に戻したのが、少年の浅はかさとシャイネス、そして優しさを言葉にする強さだったのは、とても甘酸っぱくて力強かった。
なんで高木さんが、そして僕が西片を好きか思い出させてくれる感じのエピソードでした。なんで高木さんが好きなのかも、じっくり色んな表情を追う中で見れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
あと情景全体的に良かったなー。やっぱ美術が強いアニメはいい。良い美術を、的確に使い倒している所が良い。
かくして時折揺れながら、青春は呼吸する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月2日
生物のように、微睡みを続ける。それは当たり前に永遠に続くようでいて、微細なメンテナンスを必要とする歩みだ。
彼らはそれを怠らない。だからからかいは続いていくのだ。来週も楽しみ。