ギヴンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
糸は切れて、また貼り直される。雪は溶けて、涙になって流れる。
傷つけ合いながら、ようやく辿り着いたステージ。幕が上がる。言葉がせり上がる。打ち合わせもなく響いた歌が、世界を変えていく。
そうやって、死者の河から自分を引っ張り上げながら。
少年は寂しさに、夏を思い出す。
というわけで実質クライマックス! 取り残された少年の再生譚、今一つの決着ッッ!! というエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
音楽モノといいつつ、実は楽曲もライブシーンもそんなにないこのお話。その”タメ”は全てこの瞬間のためだった…と思えるような、見事な演奏シーン、見事な使い方であった。
繊細で緊張感のある絵作りが随所で吠えて、繊細な感情をしっかり焼き付ける今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
まず誰より、春樹が偉ぇ。切れてしまった糸をひっつかんで、『もう一回貼ればいいだろうが!』と前向きに言えるのは、底抜けのお人好し人間であるアンタしかいねぇ…マジ自惚れていい。
立夏と真冬があの光の階段で、音楽と恋に出会ったこと。全ての始まり、あるいは運命が動かしたこの物語は、その起点に帰還して、全てのズレをフィックスしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
修理、調弦、リハビリテーション。由紀の死に囚われていた少年が、吠え方を貪欲に求めたあの時…それを受け止めギターを直したあの時。
それが決定的に特別な、再生の瞬間だったことを春樹の言葉は思い出させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
春樹は由紀の死も知らないし、二人のセクシャリティも知らないと思う。(なにしろ、立夏に至っては自覚もあやふやなわけで)
しかしそれでも年長者として、”バンド”として、かけるべき言葉をかける。出来る男だ。
春樹の一言(と、張り詰めた弦が切れた衝撃そのもの)を受け取って、立夏くんは持ち前の優しさと強さを再生させていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
うまく言葉が見つからず、生(立夏との新しい恋)と死(由紀との旧い恋)の鏡合わせに閉じ込められている真冬を、真っ直ぐに見つめる。
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『新しく、好きな人ができたんだ。僕は生きているんだ』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
”冬のはなし”を歌い上げて、死の国に決着を付ける今回、逆に言えば歌い出すまで、真冬は引き裂かれたままだ。
実像と虚像、鏡合わせを上手く活かし、2つの表情が同時に存在するあやふやさを切り取る画作りが、アホみたいに巧妙である。
ダッシュで自分を取り戻した立夏くんは、鏡に自分を投射しない。生きている、実像の自分を悩むことなく肯定し、その岸に真冬を引っ張り上げようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
そうして繋いだ手が、実は退屈な煮えきらなさから自分を引っ張り上げてくれた真実に、素直に向き合っている。
言うべきことを、しっかり伝える。
春樹→立夏と繋がった真心の連鎖が、秋彦にも繋がるのはとても面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
無自覚に為すべき善行を果たした春樹と、それを判りつつ踏み込めなかった自分。影と光が絡み合いつつも、秋彦は春樹に礼を言う。
自分を引っ張り上げてくれて、ありがとう。
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春樹の表情に一切の陰りはなく、秋彦が薄暗い顔で対峙しているのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
雨月との爛れた関係性を、秘密にしたまま”バンド”として清潔に、恋と性欲を秘めつつ繋がっている二人。
その白さに救われ、己の黒さに汚さないように己を律している気配が、モノクロの配置から見える気もする。
歌う場所に進んでいくということは、暗い(からこそ、才覚の光が際立つ)世界に踏み込む、ということでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
今回真冬が才を開花させ、大評判を取ったバンドは、否応なく明暗入り交じる場所に進む。
関係が変化する中で、春樹の純白も汚れていくだろう。
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目をあえて見せない構図のエロティシズムが、二人の欲望を切り取る。紅と青の入り混じった、複雑な明暗に足場を起きつつ、恋心が崩れ落ちる瞬間を待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
それでも、今はその無邪気な清純に救われた。自分では手が届かないものを、当たり前のように掴んでくれた。
だから、ありがとう。
凄くピュアなものを駆動させているのに、秋彦が境界線を超えて春樹にキスしたようにも見える、危うい構図。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
内乱の予感が何を目覚めさせ、どこに行き着くかは”これからの話し”であろうが、こっちサイドの深堀りも楽しそうである。
二期やんねぇかなぁ…原作読むかぁ…でもこの語り口で読みたいなぁ…。
清浄と欲望が、崩れる寸前のバランスを見せる裏では、真冬の思い出が修復されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
弦を切って抜き、しっかり張り替える。壊れて取り返しがつかないと思っていた感情を、もう一度作り直す。
その過程を、丁寧に追うアニメーションが良い。再生の希望がある
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それは今この瞬間を繋ぎ止める一瞬の行為であり、全てが始まった瞬間に行われた行為の再演でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
錆びついたギブスン、言葉にならない痛みを抱えていた少年が、ギターと新しい恋に出会い、生に帰還した瞬間。
立夏くんはギターを同じように直した。既に、為すべきことは為されていたのだ。
立夏は自分の口下手を嘆くが、彼の優しさは真冬の中に既に積み上がり、発火の瞬間を待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
バンドとして出会ってくれたこと。自分の不器用さを受け止め、辛抱強く待ち、道を示してくれた”今まで”を、真冬はしっかり見る。
幕が上がる。
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第6話では抑圧されていた、真冬の内面。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
”歌”として他者に向かい、唐突にぶっ放される離別の苦しみは今回、静かに内圧を上げながら一気に公開される。
感情はいつでも滾っているのに、その吐き出し方がわからない。ずっと抱えていた生きづらさを、ここで叫ぶ。
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ステージの特別なライティングを、心理描写として最大限活用しているのも今回強いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
あるはずのない歌が真冬からこぼれだした瞬間、青紫の光は青く染まり、メンバーは驚愕に目を開く。
しかし、曲は止まらない。彼らは”バンド”なのだ。
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嘘のない想いを歌に乗せて、リアルタイムで叫ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
かつて恋人を死地に追い込んでしまった”言葉”を、今度は偽りを乗り越えるために使う。それが誰かの心を動かし、実りのある何かへと辿り着ける。
『じゃあ、俺のために死ねるの!?』
発した言葉が呪いになって、愛する人を奪ってしまった真冬にとって
”歌える”ということ、言葉がポジティブな意味を持って誰かに届くという経験は、何よりも巨大な変化なのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
ズタボロの少年をそこまで引っ張ってきたのは、ギブスンを直してくれた立夏であり、”バンド”の仲間たちだ。
彼らと音を重ねながら、真冬は過去と現在、死と生の色彩を重ねて紡いでいく。
言葉を使うのがヘタクソだから、腕を重ねた。膚の連なりに、自分の存在証明を求めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
それがすれ違った時、致命的なほど傷つけあった。
望まぬまま放たれた矢は、恋を奪って自分を殺す。生きながらにして、死者の冬を歩いている。
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想い出の曖昧な色彩と、鮮烈なライブハウスの照明。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
冬を抜けて夏へ。君のいる場所へ。
しっかり悲しみを振り切って許されるためには、誰かをあなたに重ねていた自分を思い出すこともまた、とても大事で。
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生のオレンジ色を背負って必死に歌う真冬の、”眼”が見える瞬間が好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
それを観客は見て、歌を聞いて、彼を知る。具体的な悲劇は知らなくても、その傷を自分のものとして受け入れられる。
そうして己を晒すことで、彼の二重の視界は生の方向へと調律されても行くのだ。
曲は切なさを歌い上げてクライマックスに近づき、様々な色彩が入り交じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
神様が唐突に与えてくれた曲を引ききって、万色の中で”バンド”は喜びに包まれている。
俺は今ここにいて、隣には夏があって、ギターを弾いて歌っている。
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愛する人が儚くなっても、どれだけ罪悪に心が凍りついても、生きて新しく恋を見つけてしまう業を、真冬はようやくこの瞬間許せたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
由紀の死で凍りついた涙が、ようやくこぼれていく。その視線の先に、彼の笑顔とギターがいる。
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第一話で立夏くんの胸ぐらをつかんだ時、生きることにしがみついた時に見つけたものと、真冬はようやく出会い直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
じっとりと長い感情絵巻だったが、だからこそのカタルシスである。死者との綱引きは、勝ち目がないからこそ勝たなきゃいけんのだよなぁ…。よく戦った。
ここで柊くんの涙を書かない優しさが好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
許されたい。許されるはずもない。真冬とはまた違うジレンマに引き裂かれていた彼を、真冬(と”バンド”)の歌は再統合した。
彼もまた、由紀に閉ざされた涙を解凍して、悲しみをようやく形にできたのだ。
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圧巻のプレイを経て、全てが通じてしまった二人は一旦舞台袖へと下がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
言葉が伝えた想い、言葉よりも確かな願いに突き動かされて、立夏は真冬の唇を奪う。彼もまた、己の迷いに答えを得たわけだ。
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ワンフレーズだけ唇を重ねて、立夏はステージへと戻っていく。真冬はようやく流せた涙を抱きしめつつ、光の階段に腰を下ろす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
二人が出会えた場所。日々を積み重ねた場所。ライブハウスと学校が、不可思議に重なっていく
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死人が残してくれたギブスンを抱きしめながら、死人とは別の立夏の顔を、真冬はようやく思い出す。活きた存在として、確かにそこにいてくれた新しい恋を。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
残り香を引き寄せるようにギターに顔を寄せながら、真冬は死人に、死人に引きずられる自分にサヨナラを告げたのかも知れない。
こういう爆エモ時空に寄り添いつつ、バンドメンバーでも男でもないので遠巻きに見るしかねぇ姉ちゃんが、なんとも切なくもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
弟思いで純情な、素敵な人なのにねぇ…ジェンダー一個で勝ちに乗れないのは、ジャンルの特色として面白いところ…なのか?
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感情が嵐のように通り過ぎた後の、静かな夏の夜。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
真冬と柊くんは、お互い涙にくれた眦を隠しながら、隣り合って同じものを見る。
遠くに煌く星は、もう死の色をしていない。
それを確認して、ようやく彼らは”幼馴染”に戻れる。
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立夏と真冬の恋が形を為したのと同じくらい、柊くんのわだかまりが溶けて、止まっていた時間が動き出したのが良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
彼はいい人で、だからこそ由紀の死に責任を感じて縛られてきた。真冬が手に入れた”歌”がその氷を溶かし、自分と一緒に夏に進んでいけることは、とても幸福だ。
早めのEDから、時間は回想へと進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
過ぎ去った夏。通り過ぎた恋。自分を縛り付けていたもの。
第5話で切り取った、海へと至る道。それは墓参りだったのだと謎解きする、海辺の追想。
さようなら、愛おしさよ。
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波が足跡をさらうように、人は恋を忘れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
複雑な色彩の中で、叶えられなかった約束に沈んでいきながら、それでも生きていたいと、己の思いを言葉にして吐き出したいと、心臓が動き続けるから。
その後ろめたさを、動き出した時間がゆっくり溶かしていく。
青く明瞭な夏の空が、あやふやな色合いに染まるまで一緒にいた。いつかの未来へ、何の確証もなく微笑めた幸福が、遠くに霞んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
それでも、そのギターは僕が背負うから。
弾いて、歌うから。
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冬に閉じ込められた悲しみが、夏に確かにあった幸福を思い出すことで溶けていく。永遠に思えた雪が、忘却の中蒸発していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
まぁ、そういう話だったのだと思う。永遠唯一の愛に殉じるロマンスを求めるのならば、不実な結末であろう。
しかし、死の国を生き続けるのは苦しいことだ。
許されない重荷を抱え、叫ぶべき歌を押し殺して、鏡合わせの過去に囚われながら進む歩みは、重くて苦しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
だから縋るように、牙を向いて抱きついた。出会いの中に飛び込んだ。
なぜなら、(死んでしまった吉田由紀とは違い)佐藤真冬は生きているからだ。https://t.co/8ZlJA5fgNp
第一話でグッと僕の心をつかんだ、真冬の獣のような情動。その謎解きと解決がパワフルに行われて、とても良いエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
何故少年は、ギターと恋にしがみついたのか。
生きたかったから。死を超えて、死者を愛し続けたかったから。
良いロックンロールだなぁ、と思う。
生きること、終わりを超えて続いていくことを選んだ以上、音楽は鳴り続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
ギヴン…才能を与えられた側の恍惚と不安を知る雨月が、少しの哀れみを孕んで真冬を見ているのは、今後の炸裂を期待させてなかなか良い。
しかし、それは先の話だ。
今は終わった恋に縛られた自分を、悲しみに亡霊を縛り付けていた生き方を、歌で乗り越えたボーカルと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
彼のギターを直し、駆け出した恋心に素直になれたギターの口づけを祝福して、感想を終えたいと思う。
おめでとう、面白かったです。
それじゃ、また次の歌で会おう。
余談
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月6日
今回真冬が乗り越えた、生の国と死の国の併存。これは”やがて君になる”で燈子が縛られ、侑が戦う中心課題でもある。
これが暴露される第6話は、明暗と境界線によるアニメ表現の極限とも言うべき完成度で、今回のお話と響き合う部分も多いと感じた。
一応、補助線としてhttps://t.co/yQgcFHQ8Jl