ギヴンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
産声を張り上げた後の世界は、輝いて見える。
真冬が吐き出した寂しさは、ステージを超えて誰かに届いた。静かに動き出す運命の中、新しい名前を手に入れたバンドもまた、穏やかに歩き出す。
次があるという幸福。
新しい声が、新しい恋が。
潮風に揺られて揺れる。
そんな感じのアフター勝負回ッ! ギヴン第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
積み上げた物語をガッツリ燃え上がらせ、最高のピークにたどり着いた後も人生は続く。
新しい景色の中をユルユルと、しかし満足そうに歩いていく少年たちを、優しく明るい筆致で描くエピソードとなった。
初登板となったコンテ・演出担当、橋本能理子のテイストなのか、全体的に賑やかで開放的で、とてもハッピーな仕上がりだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
喉で引っかかってでない声。凍ったまま流れない涙。
それが歌になった後のカタルシスが、ゆっくりと日常に着地するお話として、とても相応しかったと思う。
冒頭お姉ちゃんの髪切りコント(いやコントじゃねぇんだけどさ)からして、明るく元気で湿り気がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
弟が”新しい恋”に震えつつ踏み出す物語と、姉が秋彦を振り切って始め直すタイミングが、奇妙にシンクロしてる所が面白かった。
アンタいい人だから…多分いいことあるよ…あってよ…。
凄まじい速度と熱量で、彗星のように飛来した運命。それはだんだんスピードを緩めて、日常に落ち着いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
しかし個人の苦しみは歌に乗り、普遍にたどり着く。真冬の叫びは、色んな人を動かしていく。
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たとえば柊くんのように、濃厚な運命を共有してた幼馴染も。たとえば立夏のように、新しい恋の相手になる人も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
当然真冬の歌は動かすんだけども、ヘテロな恋を生きてるクラスメートとか、同じステージを共有したタケちゃんとかも、心の奥底を揺すぶられて、座っているだけではいられなくなる。
真冬の”才”はそういう、広範な感動を呼び覚ます力がある、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
死によってホモセクシュアルな恋を奪われた真冬の叫びが、恋人と手を繋げるヘテロセクシュアルにしっかり共感されていたのは、なかなか太い描写だと思う。
人が人を思う。それを失う。その根源を、歌い上げたからこそ届いたのだ
つーかタケちゃんは事情も聞かずステージを繋いでくれたし、一銭にもならねぇのに曲を編集してくれるし、ホントいい人だなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
モジモジとゲイネスが軽く漂う雰囲気に、春樹の本命である秋彦が乱入するところは、コミカルな空気があってよかった。
それはいつか、シリアスに反転するのか?
後に焼肉屋で行われる、サラッとした真冬のカムアウト。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
(春樹は知らぬことながら)秋彦はその当事者であり、後輩たちのセクシュアリティは茶化すことでも、切り捨てるものでもない。
立夏が答えを見つけ(その事実に今週モジモジ足踏み)た今、春樹だけが中間点で足踏みをしている。
それが転がりだす時、はたして後輩たちのような風通しの良い、”次”へと前向きに進む歩みをトレースできるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
雨月との薄暗い、湿った世界の描写を見るだに、春樹がまだ見つめられない秋彦の内面に潜り込むのは、より隠秘でセクシュアルな旅になる…なって欲しいという願望が、たしかに僕にはある。
その階に足をかける時間的余裕が、果たしてノイタミナに残っているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
死の淵から身を上げた真冬と、彼の”次”になりえた立夏の新しい旅立ちで終わったほうが、1クールアニメとしては収まり良さそうではあるのだが…仄暗い陰りから漂ってくる悪徳のムスクが…たまらなく俺を誘う…。
さておき、衝動のままに唇を重ねた事実、自分の中で脈を打つ恋心を上手く扱えないまま、青年たちの日常は転がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
バチコーンと愛おしさと可愛げが、少しの情欲を火種に爆発するシーンが軽妙洒脱で、とてもいい。
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あの冬から溜め込んでいた悲しさと愛おしさが、溶け出して流れ出た反動に焼かれて、真冬は熱を出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
それをケアして、”次”のために命を繋いでいく。自分を大事にする。だって、生きているのだから。
立夏が真冬のプライベートに初めて踏み込むという意味でも、とても大事なシーンだったと思う。
続く焼肉屋の掛け合いも、普段のファミレスとはちょっと違うスペシャルな空気と、額を寄せて同じ飯を食う距離感がよく滲んでいて、チャーミングなシーンだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
ご飯を軸足に繋がる四人の関係が、生きて飯を食う宿命が活写されている。
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肉、映像に切り取られた”冬のはなし”、新しいバンド名。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
”次”にたどり着くための活力。
自分たちが何を成し遂げて、何で繋がっているかをみんなで確認しながら、真冬が自分の言葉で”次”を語る。”バンド”はそれを受け止めて、肉を手渡す。
張り詰めた弦は一度切れかかって、みんなで貼り直した。
そういうのを確認しながら、テキトーに核心を突いた新しい名前…作品タイトルと同じ自己証明にたどり着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
Given。
奪われたのではなく、与えられたものとして由紀との恋を納めた真冬を、鮮明に描いた言葉だ。
同時に、天に愛された”才”がどう転がっていくか、未来を不安に、期待に照らす言葉でもある
僕は柊くんが好きなので、フツーに幼馴染として、”音楽”をやってる同志として、真冬と楽器屋で話せるシーンで少し落涙してしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
八木くんが”四人目”として、ダチの関係改善を静かに見守ってるのが、また良いんすよ…。君の長い冬も、ようやく終わったのだ
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先週描かなかった柊くんの号泣を、ここで描き、八木くんに受け止めさせてくれたのも良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
”次”は新しい恋人や、新しいバンドだけでなく、ぎくしゃくと軋んでいた古い繋がりにも油をさし、より良い場所へと導いていく。
全てが前向きに転がりだすのだ。
その明かりは、作中最大の暗黒である雨月ハウスもまた、少し照らす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
”in the darkness”って感じだったあの湿り気ハウスも、今回はしっかりライティングされて、開放感がある演出だ。
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同時に”与えられた”側の傲慢、孤独と退屈、自分に並び立つ”次”を狙う貪欲も、どろりとうねっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
真冬を起爆剤に、動き出した炎。それが非才にくすぶる秋彦を燃え上がらせてくれないかと、流し目を注ぎ込む。
危険な男だ…エロいな。
自分の圧倒的な”才”が、秋彦を一回殺してしまっている事実を、果たしてこの天才は理解しているのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
それでも、何かが燃え上がる瞬間を待っている。蘇って欲しいのは”恋”なのか”才”なのか。
伏線を埋め込んでも…アニメで書ける尺がないじゃないかッ!! 二期超絶希望ッ!!!
さておき、新しく動き出した恋のみずみずしい光は、丁寧に切り取られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
ここ迄スラップスティックな笑いを取るのに使われてた活力が、あまりにも鮮明に世界を輝かせるガソリンになって、濃いめの詩情で話を〆る。
構成完璧か~?
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この『俺達今…青春ど真ん中でっす!!!』という透明感のある色彩を、最後の最後でぶっ放してくるパワー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
特別なことなどあまりなく、取り戻したものが静かに、でも楽しく転がっていくだろうな、と油断し安心したところで、決定的に美しいものを叩き込んでくる緩急。
つええ演出だぜ…。
由紀との最後の思い出も、立夏との新しい告白も、同じく”海辺”で行われるってのが詩学として完璧で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
そこは死に隣接したスティクスの岸辺であり、なにか新しい命が生まれる命の水辺でもある。
七里ヶ浜とみなとみらい、場所は違えど液体の連続性で繋がる、人生の美麗なるステージ。
そこを悲しみで満たすのではなく、過去への慟哭で埋めるのではなく、”次”へ進み出す決定的な言葉で刻み込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
また、忘れられない夏になる。
そうやって忘れていけることが、どれだけ幸せなのか。
忘れないまま、愛おしさと痛みを抱えて生きていくことが、どれだけ切実な人の歩みであったか。
僕らは10話それを見て、あの歌を聞いたからよく知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
美しい世界を”次”へと歩いていけることが、死者の国に旅立った愛を灰色に留めるのではなく、再び活かすことを。
抜けるような青空一色ではなく、雲と光と空の入り混じった、複雑な色彩を。
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そこから恋が始まるのだ。ロマンス…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
オジサン女児アニの人なんで、告白を追いかけるように汽笛が鳴った瞬間『見た! 木曜六時半に見たよこれ!! 完全にフレンズ文法じゃんッッッ!!!』って叫んじゃった。
美しい出会いを、美しい世界が祝福していくんだよなぁ…。
かくして”次”の海辺にたどり着いた二人の恋が、一体どこにたどり着くのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月13日
そもそもそんな歩みの端緒にすらたどり着いていない、もう一つの恋はどう転がるのか。
彼らを内包する”バンド”は、一つのピークを超えてどこへ向かうのか。
ギヴン、マージで面白い。来週も楽しみ。