Beastarsを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
足の裏に刻まれた”死”の刻印を、踏みつけにしながら栄光の高みへ。
ルイ先輩を焼く、生々しい矛盾。
その顎に巻き込まれた、弱々しい白兎。シシ組の長い腕に飲み込まれたハルを、世界は見捨てて背を向けた。
良くあることさ、飲み込めよ。
訳知り顔の猫撫で声じゃ、狼は止まらない。
そんな感じの、青春絵巻運命の爆心地へ一直線! なエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
急展開であると同時に、今まで積んできた表現やメタファーを活用し、様々な人の青春がここに至らざるを得ない運命を、しっかり煮立たせていた。
加害者、被害者、エジキにアギト。この世はジャングルなのさ…。
さてお話は、ルイ先輩が苛まれる悪夢から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
OPのフェルトアニメーションもそうだけど、3Dモデルに限らない多彩な表現技法で”アニメーション”してくれるのは、とても楽しい。
選び取った表現が、ちゃんと演出として機能しているのも良い。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/S1EmaavMng
影絵か童話のようにギラつく、消え去ることのない記憶。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
ルイという名前と立場は借り物で、今なお”四番”でしか無い自分。
それが名門の跡取りとして、高い場所に立ち続けるためには、強くあり続ける必要がある。枝角の王冠を振り回し、”男”であり続ける必要が。
そんな嘘の鎧を、ルイ先輩は舞台の外側でもまとい続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
訳ありが集まる演劇部でも、とっておきの巨大爆弾。足に刻まれた”四/死”の子供が、”シシ”の巻き起こす暴力に傷つけられていくのはなんとも皮肉だ。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/HmVbb8hiA0
ルイ先輩はまだ、あのときの檻の中にいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
両腕で何かを掴む仕草が、ハルちゃんがその胸に抱かれた時に見た夢と同じであるのは、非常に示唆的である。
お互い草食として、犠牲者として、温もりを求め手を伸ばした同志。それでも、種族の壁、薄汚い世界の本音に阻まれて、抱きしめることが出来ない。
ぶらり伸ばした足を、ひた隠しにして踏みつける。いつか死ぬ日を睨みつけながら、言葉も与えられず檻から突き出した”4”こそが、ルイの失われた名前、”X”である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
…それは長い爪を伸ばして、栄光に向かって走る彼の足を引っ張ったり、太いトラウマで傷つけたりするのだが。
檻の向こう側で煌めく、”父”の鋭い視線。魂の在り方を見定め、己の運命を預ける共犯者として地獄から引っ張り上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
『オグマ賢雄さんじゃんッッ!!』と半ギレになりつつ、燃え盛る欲望の最中、答えを突きつけたルイの勇姿に涙、涙である。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/F9Cs4xytQc
冒頭、回想されるルイのオリジン、Victimとしての草食は後に、ハルを主役に再演される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
火のように赤く燃える食欲、支配欲、蹂躙欲求を前に、震え怯え、それでも背筋を伸ばして抵抗の意思を示したルイの姿は、ハルの未来の姿でもある。
檻から出てなお檻、あまりに生きづらい世間にナイフ突き立てる。
その強い意志があればこそ、ルイ先輩はトラウマでうずく足で権力の階段を登り、オグマに求められる『完璧なエリート』であり続けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
それはただ、強いものに踊らされる犠牲者としての関係だけでなく、あの時の景色と抱擁が、ルイに焼き付いているからか。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/aaNgahjLSH
身勝手に重たい嘘を背負わせるわ、その背骨を試すために喰うか喰われるかの炎で炙るわ、オグマは大変なエゴイストである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
しかし同時に、自分が選び取った”我が子”に欲得以上のものを、せめて伝えたいと不器用に抱きしめる、情念の男でもある。
悔しさも怒りも、この景色もあの炎も。
この抱擁も全てを刻んで、キミが足蹴にする生々しい地獄を、消えることのない記憶を乗り越えていけ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
その先にある光を、諦めないまま掴み取れ。
そういうオヤジの体温を覚えているから、ルイ先輩は皆が忘れたテムの遺骸に、花を手向けられるのかもしれない。
ルイの網膜に刻まれた”街”の光を、レゴシも別の場所から見ている。多分この世界に生きるすべての人が、その光を見ているのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
それはとても綺麗で、だからこそ脆くあやふやで、それだけを信じて突き進むにはあまりに弱い炎だ。
でもルイ先輩は、そういう光を諦めていない。
だからこその世界が忘れ去った犠牲者に、瑞々しい花を本気で手向けもするのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
そういうナイーブな優しさは、マッチョな世界では食いつかれる隙にもなる。それを理解しているからこそ、鼻持ちならないエリートの仮面も、必死でかぶり続ける。
大人のやり方くらい、俺でも判ってる。嫌でも知ってる。
その自覚が”学校”にシェルターされた、青二才のヌルい世界認識でしかないことを、激動する運命はイヤってほど突きつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
より高い位置に昇るために、理想を諦め現実と寝るか。死と失墜のリスクを抱えて、愛と夢のために飛ぶか。
獣人世界の通過儀礼は、いつでもハード・コアだ。
そんな世界でツッパってくれればこそ、ルイ先輩大好き人間なレゴシ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
気づかれぬよう身を潜めて、闇から襲うヘイターをなぎ倒し、無害であろうと願うハイイロオオカミ。
引っ張る尻尾は、やっぱペニスの暗喩だよなぁ…。マウント行為としての去勢(無意識)
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/Wa7hQgsxk3
ただでさえ肩身の狭い肉食が、下に見られないために暴力を振り回す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
ルイ先輩は檻から抜けても、ギラついた赤い視線に晒され続けている。奴隷の身分で餌食になるか、上に立ったからこそ睨みつけられるか。
どっちに転んでも厳しい世間で、枝角の王子は必死に生きている。
そんな先輩も嫌いになれない。好きになった子に何もしないまま、影に引っ込むことも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
レゴシの悩みはグズグズと回り回って、おもむろで唐突な告白に繋がる。マージで空気読めないが、それがレゴシの強さである。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/9td612reqG
最初は膝を曲げて無理くり対等な視線を合わせていたものが、次は背筋を曲げて手を掴み、背筋を伸ばして正対する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
持って生まれた力強さと、それが生み出す決定的な断絶。否定しようのない事実を前に、どう素直に己であり続けれるか。
そういう未来に、レゴシは向き合っている。
『無害でありたい』という願いは、生まれついてのプレデターとして研ぎ澄まされたハイイロオオカミには叶わぬもので、自分の中で渦を巻く”害/我意”の使い方を、少年は覚える必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
あるいは400万かけて牙を抜き去り、無害な自分をアピールする手もあるが。市長の醜悪は、青春の歪んだ鏡だなぁ…
自分が自分であるために、素直な気持ちを真っ直ぐ伝える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
あまりに甘酸っぱい青春の約束は、唐突な暴力で奪い去られる。
裏街からはみ出してきた、生々しさの権化。法度無縁の兇悪集団、シシ組の長い手がハルちゃんを奪う。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/kYhUv1LgMy
青く爽やかな風景にも、確かに存在している陰り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
”学校”にシェルターされている子供には、無い…ってことになってるむき出しの欲望。
それが非常に露骨な形で、小さく可愛く肉感的な兎に迫る。さじ加減ひとつ間違えればたちの悪いポルノとなり、あの世界でも消費されている犠牲の構造図。
それをよくあることと飲み込めてしまうことが、大人の照明なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
マジ焦ってる学生組に比べ、酸いも甘いも噛み分けたシマウマ大人が結構冷静なのが、残酷で精密だなぁ、と思う。
若い女性が毒牙にかかる。
恐ろしいことに、『よくあること』なのだろう。地繋がりの”現実(こっち)”と同じように。
厄介ごとの種を、理解者顔で握りつぶして、薄暗い裏口から出ていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
市長の立ち回りが『悪い大人』過ぎて、マジで震えるビリビリ来る。
ピンク色の恋の占いなんかじゃ、先の見えないリアルを前に、レゴシも必死に迷うわけだ。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/1kPynXVjMq
したり顔で手を差し伸べ、最低のクズでしかない自分を紳士ヅラで覆うのは、シシ組組長も同じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
『陵辱したいわけじゃない、キミの意志を尊重している』
むき出しの刃突きつけて、服引っ剥がしてそれを言うのが『判った大人』ってわけだ。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/UnhUX7L8O0
強制されたストリップに、もぞりと揺れる葉巻のペニスも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
形だけ整えてゴージャスな、生贄の肌を洗うための薔薇風呂も。
全てが狂って悪趣味で、ハルちゃんの尊厳を片っ端略奪しようと蠢いているのがよく判る。
ホントこのアニメ、ペニスを如何に実写せず画面に写すか、考え抜いとるぞ…。
ルイ先輩がオグマに手を引かれて抜け出し、未だ足の裏に刻まれた聖痕。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
あらゆる子どもたちを食い散らかし、大人たちを汚すリアルは、ハルちゃんにも平等に襲いかかる。
あらゆるものが犠牲者。よくある話、喰われるだけさ。
そうやって目を閉じるには、あまりに組長の捕食は生臭い。鼻が曲がるぜ…。
それは表舞台を上り詰めた市長も同じで、犠牲者の痕跡はゴミ箱に叩き込み、400万で固めた仮面で圧力をかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
私もそんな現実を飲み込んで、ここまで上り詰めた。
さぁルイくん、権力と握手をしよう。
突きつけられた掌には、ヤクザと同じ爪が光ってる。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/L0PPXpxmyl
”4”の刻印を踏みつけにして、伸びた背丈は自由をくれた。俺は”大人”だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
そう言い聞かせても、二度と犠牲を出さないためには、目の前のクソと握手をする必要がある。
王子様に変身しても、ルイ先輩は檻から出ていない。むしろ大人になるほどに、キツい現実と決断がナイフのよう、突き刺さってくる。
アドラーの仮面を取り戻し、見事に主役を張ってのけた…あるいは過去を隠して王子を演じ続けるルイ先輩と、400万の仮面で無害を演じ続ける市長は、照応の関係にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
”ライオンの薄汚れた大人”という意味では、世界の表と裏に分断されつつ、シシ組組長と同じ存在でもある。
世界は鏡に満ちている。
暴力と脅迫で、強制的に現実にキスさせられつつあるハルちゃんと、眉間を歪め、それでも市長に手を差し出したルイもまた、鏡合わせの犠牲者だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
それを掴んで、同志を見捨てて、ようやく表玄関から出るのを許される。裏口の存在は、見て見ぬ振りがマナー。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/Nq7qCGc8Yr
そう自分に言い聞かせて”大人”になろうとしたルイ先輩を、レゴシの掌が強引に掴む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
それを振り払うことで、薄汚れた建前を自分に言い聞かせることで、ルイ先輩は自分のポジションを確保しようとする。
知ってるよ、判ってるよ、正しいことなんて。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/FX3Q8q34Cw
でもそれを真っ直ぐ貫けるほど、世界は優しくなく俺は強くない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
いつの間にか鈍っていた、ナイフのように苛烈な意志。己と世界へのいらだちを、拳に乗せてルイ先輩はレゴシを殴る。
それが導火線。レゴシの中の獣も、それでようやく目を覚ます。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/7oeCzLIMzH
信じた男が、憧れた星が現実と寝た。アンタだけは諦めないと抱いた夢が、生々しく脆く崩れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
レゴシの一撃は、草食なんぞ目じゃないほど激しくルイ先輩を弾き飛ばす。
一発貰った後、自分のパワーにビビってるレゴシと、あからさまに喧嘩なれしてるルイ先輩の対比が、なかなか細やかだった。
顔を撫でるレゴシの仕草が、万色の混沌こそが自分の恋なのだと気づいた瞬間によく似てて、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
自分の中の本音、複雑な世界の色彩に気づくと、ヌルリと頬を撫でる少年なのよね、レゴシくん。セクシーだぜ…。https://t.co/ugNmXio7JO
もう、無害な存在でいたいなどは望まない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
むき出しに焼け付く我が意志を抱えて、レゴシは堂々の宣戦布告を突きつける。
大人の事情、関係ねぇ。相手の気持、関係ねぇ。
ハルは俺が貰う。
愛とその危機を前に、獣臭と覚悟が青年に宿る。
©板垣巴留(秋田書店)/BEASTARS製作委員会 pic.twitter.com/uM7P8IRB22
それを突きつけられたルイ先輩の表情が、涙をこらえているようにしか見えなくて、なんとも可哀想である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
財閥の息子っていう仮面に相応しく、理想を諦め現実と寝る。
レゴシが糾弾した生き方は、犠牲にならないための生存戦略であり、義父が刻んだ生き方に報いようとする誠実でもあろう。
食人ヤクザの餌食になりそうなハルちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
理想と現実の狭間で揺らぐルイ先輩。
凶暴な決意を込めて、愛と理想に突き進むレゴシ。
三人の現実が、”学園”というモラトリアムを飛び出して暴れまわるエピソードでした。
いやー…凶暴な純愛、残酷な青春だなぁ…素晴らしい。
のっぴきならない極限状況は、それぞれの魂を試す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
諦めてしまった大人の差し出してくる手を、あるいは受け入れるしかなく、あるいは握りしめるしか無い子どもたちは、果たしてどんなナイフを突き立てるのか。
風雲急を告げた世界の中で、それぞれの尊厳が問われる展開が、しっかり準備されました。
原作読んでいるのでこの後の流れも知っているわけですが、アニメが作品を再構築する上で選び取った表現、構成が鮮烈なので、どう描きどう突き刺してくるか、今から非常に楽しみです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
今回も原作のエッセンスを最大限活かしつつ、アニメにしか出来ない鮮烈さでぶっ込んできたからな…期待しかねぇぜ。
『アンタにだけは、綺麗でいて欲しかった』っていうレゴシのエゴイズムを、レムの墓参で一回描いてから叩きつけてくるの、ホントエグい構成だと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
”四”の刻まれた足じゃあ、その重荷を背負い切るのは本当に辛い。それでも、両の足で人生舞台に胸張って立つには、何を支えにすればいいか。
犯され喰われる最悪の目前で、少年少女に叩きつけられた過酷な問題集。これにどういう答えを出させるかで、アニメの値段も決まってくると思います。ほぼ確定で超高値。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月6日
クライマックスに向けて一気に加速する、獣人青春残酷劇。闇の中煌く星は、ドス汚れた現実を書かなきゃ見えない。
来週も楽しみ。