バビロン 第8話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
全ては死の河の向こうに去った。
メディアの海へ自殺法という稚魚が撒かれる中、正崎善は現実に取り残される。呪いのように、正義を問いつつ。
一方アメリカでは、四番目の自撮法制定都市が生まれていた。その中枢で、”考える人”はいつものように思い悩む。
つう感じの、一ヶ月ぶりのご無沙汰、バビロン第三章である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
残りの一ヶ月をどう走り抜け、どう答えを出すのか。ニ章ラストの大ショックで身構えていたが、かなり静かな立ち上がりとなった。
いい加減、それこそが不気味と学ぶ程度には、作品とも馴染んできている。
特捜班の死骸を置き去りに、世界は勝手に変化に順応していく。新域構想の違法性を人質に、国家の中の国家として独立権限を掴み取って、自殺法構想は伝播していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
そのスピードと感染性に、取り残され舞台から降りる人たち。残り、闘いを続ける人たち。
新たな舞台と、そこに上がる人たち。
新章第一話は、そんなスケッチとなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
正崎さんは心をメタメタにされ、夢現の境界さだかならぬ世界を彷徨う。死者たちとの酒盛りは、彼の罪悪感が見せた夢か。女の幻影は悪夢の続きか
ここの不安定な雰囲気は、このアニメの強い部分を感じれて良い。
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曲世愛の”質問”にベコベコにされつつも、完全に狂気に落ちることも出来ず、かといって世界に順応し直すことも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
暖かな家庭の小市民的温もりに埋没することも、絶対の信念を研ぎ澄まし闘い続けることも出来ない。
その曖昧さこそが、正崎さんが”解答役”に選ばれた理由かもな、と思う。
家族の団らん(弁当が、もうマトモに見れん!)の後ろ側で、世界は加速を続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
新域議会は逆転に等しい均衡を保ち、名前のない荷物には2つの卵と問いかけ。
割れないようにと引かれた極彩色が、愛の透明な悪意を静かに語る。
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無精卵とバロット。実を結ばないよう最初から食物として調整されたものと、食うために命を中座させるもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
2つの間に同じものと、違うものはなにか。善悪の境界線を引くのは何か。
陽麻の体に斧で刻んだ疑問符は、延々と正崎さんを追い続ける。謹慎になろうが、負け戦に取り残されようが終わらない。
新域構想を生み出した既存秩序の古き革新者たちは、皆メディア越しの変化に置いていかれ、舞台を降りていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
野丸先生は議席を拾えないまま”ただの人”になり、部長は職を辞す。特捜班の壊滅は”集団自殺事件”となり、陽麻の殺傷はスキャンダルとして闇に葬られていく。
とんでもないことが起きているのに、時計じかけで進展していく世界。それを肌で感じる”現場”から切り離されたまま、正崎さんだけは降りることを許されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
問い続け、迷い続ける。重荷だけが、傷だらけの肩に深く突き刺さる。
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正崎さんが掴みかけて逃した、新時代の変化。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
それがTVや新聞といったメディア越しに描かれることで、見えていても触れないもどかしさ、無力感が強調されていく。
人と直接会う時も、正崎さんと”誰か”の間には必ず壁がある。偽りの、正義の天秤。揮毫された理想。
全てが遠い。
陽麻の死を問う瀬黒次官の言葉に、迷いつつ真っ直ぐ答えた正崎さんは死を思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
狂ったように荒れ狂う、どこか空疎な空。肩に食い込む重責と虚しさ。
進みだそうとした足は、しかし踏みとどまられ、正崎さんは現し世にとどまる。
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止められなかった”自殺法”というミームは日本を飛び出し、文化的銃弾として世界を駆け巡る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
テロップで語られる、遠い世界の対岸の火事。それがリアルな扉を開けて、自分の世界に迫ってくる瞬間が、そこにある。
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FBIはあの敗北を、”殺人事件”と言った。法で問える犯罪だという認識で動いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
日本にもはや、正崎さんが己の正義を問える足場はない。藁を掴む溺人のように、彼は協力を言い出す。
たった一つの条件とは、一体何なのだろうか。
彼の瞳に、もう一度力を与えるに足りるものなのだろうか。
そんな正崎さんの話しは置いておいて、いきなりのアメリカン・グラフィティである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
急にオッサンが自分語りを始めてマジビビったが、新しい舞台…あるいは戦場の自己紹介、といったところだろうか。
黙考、家族、追求、疑問。
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描かれるものは、海も年も立場も越えて正崎さんとよく似ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
考えること。家族に支えられること。巨大な肩書が要求する巨大な問題に体温を与えるべく、スタイルを貫くこと。
前半に比べ不安定感が抑えられた描画は、これが正崎さんが追うべき”答え”なのだ、という印象を与える。
しかし曲世愛の囁きは、自由意志も沈思黙考も貫通して、問答無用に人を殺す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
正直重要そうなキャラが分厚くバックボーンを見せる度『んで、いつ死ぬの!?』と聞きたくなる。半パニックな警戒姿勢を、上手く作ったなぁ、という印象。
この警戒感を、どう切り崩して活かすか。
それがこの穏やかな立ち上がりの後、話捌きとして気になるところである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
無法の超チートを抱えた”敵”の思惑を、止めるか止め得ないか。どう転がるにしても、その展開で何を見せるのか。
色んなものを色んな角度から描ける状態なので、”次”が非常に気になる。
”考える人”の周辺にもメディアは満ちていて、自殺法の波は静かに押し寄せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
露骨UOな仮想ゲームの中で、素直な世論を拾うところとか面白かった。CGの発展加減で、奥さんとの出会いから今までの時間が感じ取れるところとか、良い演出。
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知と死は、動物でなくなった人間の特権。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
罪の果実を画面に写しつつ展開される、難渋な会話。
正崎さんが止め残った波はメディアを通じて広がり、世界を塗り替えていく。知恵の実を齧った猿は、もう楽園にはいられない。
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野丸先生が政治的死を迎えた結果、齋をトップとする新域を抑え込む勢力が日本に残らず、自殺法というミームは野放しに繁殖していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
その状況を招いたのも、齋、あるいは愛という怪物の素顔を見切れなかった、神域を生み出した者たちの愚かさが元である。
議会制民主主義、あるいは国際メディアという文化インフラをハックすることで、齋と愛は己の毒(あるいは薬)を、凄まじい速度で撒き散らしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
加速していく状況に対し、いつでも置いてけぼりの無力感。正崎さんが大量の死体を前に感じているものが、ヒタヒタと画面を満たしている。
ニュクス(夜の女神であり、死たるタナトス、眠りたるヒュプノスの母)の拡散でもそうなんだが、齋たちはとにかく早くて遠い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
世界を維持しているフェールセーフの裏をぬって、むしろそれを利用してあっという間に進んでいく。既存秩序の万人たちは、それに対して常に後手後手だ。
”考える人”もそこは同じなのだが、しかし明暗入り乱れる木漏れ日のしたで、彼は息子と体温のある対話を重ねる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
アメリカ大統領、アレクサンダー・W・ウッド。
最善の一市民と見えた人は、アメリカの中枢に座る大権力者であった。
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正崎さんパートの空回りした不安感と、大統領パートのなんかいい感じの沈思黙考。その対比は、『大統領ならなんとかしてくれそう感』を強める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
しかしそれが、後に切り崩すために足場を用意する巧妙なのではと、疑いもする。まぁ今まで散々だったからね…上手いスリラーだよ…。
何も信じられないが、何かを信じたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
裏腹な状況にたらされた、ひどく当たり前で体温がある、善良な思索と権力。
市民社会が生み出した最善の賢人王は、拡大するニュクスの誘いに、有効な一撃を生み出しうるのか。
正崎さんはどこで再登場するのか。
謎を残しつつ、次会に続く、である。
ここで『思索』を属性にするキャラが出てきたのは、齋と愛がぶん回すもの…陽麻の体に刻んだ問いかけをより深めるためのテコだとは思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
あるいは旧弊な思索が、最善の形であっても新たな変化には無力である、と見せるためか。なかなか意地が悪いな…。
否が応でも考えなきゃいけないのは、結局”自殺”に身を委ねられなかった正崎さんも同じで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
そのためのメンター(あるいは同志)として、大統領が新たに舞台にあがった、という話かもしれない。
残り一ヶ月、どういう話を積み上げどう回すか。
どう問いかけ、どう答えるか。
なかなか難しい物語に、付き合うことになりそうだ。不安でもあるし、楽しみでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月3日
なんとなくだが、かなりスッキリしない、ヤダ味ある終わりになんじゃねーかなー、って感じもある。そうなった時、どう飲むか、あるいは飲めないか。
さてはて、どうなることか。次回も楽しみ。