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— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
記憶を失い、名探偵として殺意探知システム”ミズハノメ”に潜るのは、謎めいた殺人者。
心の迷宮と現実の難事件。幾重にも折り重なった”イド”の中、真実の断片を探り寄せ見えてくるものは。
謎に溺れるか、突破を果たすか。無明の果てに見えるものは。
そんな感じのサイコダイブミステリ、一話二話一挙放送である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
座組に期待しつつ不安でもあったが、あおきえいのシャープな映像感覚が、多層に積み重なった現実と夢想を見事に切り取り、いい仕上がりだった。
想定より”舞城”だったなぁ…”ドリルホール・イン・マイブレイン”じゃん。
お話としてはまぁ訳の分からねぇまま状況がゴロゴロと転がり、連続殺人犯”アナアキ(Anarchyとのダブル・ミーニングか)”は捕まったのに、謎とケツの座りの悪さは加速するという、なかなか俺好みの出だし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
バラバラに分割された自意識を引き寄せ、繋ぎ合わせる井戸の奥は、作品全体に敷衍できる。
僕らも酒井戸のように、真っ白なまま奇っ怪な世界に飛び込み、謎を繋ぎ合わせ全体像を掴む必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
もしくはバラバラに分割された世界が違和感なく、狂ったままで存在していることに納得するか。
一枚、二枚。謎がめくれていくほどに、より解らなくなっていく底のなさが良い。
幾つか読むべきレイヤーが重なってる話だと思うが、まず現実と精神世界、”井戸”を読む内勤班と現場で血を流す外務班と、”蔵”の構造自体が多層である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
思考の井戸。死体が待ち構える地下室とマンホール。頭部に合いた穴。登場人物は、複数のレイヤーで複数の”穴”に落ちる。
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穴に落ちた先にはまだ穴があり、そこには謎が埋まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
掘り返して真実を探るか、自分から頭を引き寄せて、事件に風穴を開けるか。
新人・本堂町くんが結構面白い立回りをしていて、今後注目したくなるキャラだ。
説明少なめで進む序章となったが、青い井戸は連続殺人犯を追うためのもので、そこにダイブする特別な資質を名探偵・酒井戸=殺人犯・鳴瓢は持っているらしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
狂気に潜るためには、狂気を以てするべし。”カエルちゃん”なる死体のアーキと、酒井戸がどう繋がるかはまだ伏せ札だ。
バラバラに分断された自分と世界を、酒井戸は訳のわからないまま接合していく。パーツが欠落し、足りないままに機能を果たす自分を名探偵は疑わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
どれだけ不自然な状況であろうとも、名探偵と名付けられた以上は謎を追い、真実を探る。その機能に、アイデンティティ(ID)は必要ない。
同時に殺戮者達の荒廃した世界に足を踏み入れることは、自分を探すクエストでもあり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
イドの井戸に潜ってID探し。ファウスト世代らしい言葉遊びは、作中言及される以上の深さを持っている。
その思弁だけでなく、現実レイヤーでは怪奇な連続殺人を、警官たちがリアルに、シリアスに追い詰めていく。
鏡、水、あるいは臓物。表面に浮かび上がってきたものを読み解き、謎を解くのは卜占の基礎である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
最新鋭のエッヂなデザインで固められた、テクノロジーの占い館。そこに奉職する”井戸端”の住人は、聖なる殺人者が持ち帰る象徴と現実を繋ぐ。”蔵”は現在の神殿、というわけだ。
局長の胡散臭い立回りを見ていると、万魔殿のたぐいかと疑りたくもなるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
そこら辺の政治状況、何故”蔵”が立てられ”井戸”が生まれたかも、今後追うべき伏せ札なのだろう。
とにかく情報量とほのめかしに満ちて、グッと目を引っ張って読ませる序章である。
井戸端と言えば長屋の噂話で、酒井戸が飛び込んだ世界を覗き込みつつ、無意識の怪物とは戦わない彼らはある意味、無責任な群集である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
名探偵がIDもないまま彷徨う世界は、”事件解決”という実利を追い求めるための抽象画であり、井戸端は外務班が駆け回る現実につながっている。
そこにイマジナールな存在である酒井戸は出ていけないし、囚人たる鳴瓢も存在できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
イドの奥にある具象化された無意識
│
それを解析する井戸端
│
血が流れ犠牲者が溢れる現実
は、それぞれ境界を接しつつ分断され、繋がらない。そのことが、それぞれの安全と危険を担保する。
ここを越境できるのが無垢なる愚者たる本堂町くんで、彼女は強い決意で持って自分の額に穴を開け、アナアキの心に、謎めいた事件に、酒井戸=鳴瓢の束縛に突破口を作り出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
己を押しつぶす、謎のない荒野。迫るドリルの刃が、真実を照らしていく。
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多層化された無意識-読解-行動のレイヤーを飛び越え、事件を解決に導くもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
彼女の勇気こそが世界に秩序をもたらす、名探偵の責務を果たさせたわけだが、その役割に自覚はない。
白紙のまま、混沌の世界に投げられ続ける酒井戸のように。
誰が名探偵で、何が事件なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
その全体像が把握できないまま、良いビジュアルで転がりまくる状況に溺れていく快楽。井戸の底に足がつかないまま、グイグイと引きずり込まれる面白さ。
そういうモノが、二話連続で一気に走った序章にみっしり詰まっていたと思う。
無意識に潜るためのミズハノメと、現実で殺意を追うためのワクムスビ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
記紀神話両方に登場する神々だが、かたや姉妹でかたや叔母姪だったりする。関係性は掘るべき文献によって変化し、その作動原理も謎の機械。
それを解体していくのも、今後の物語の軸足か。
それとも、異常なミステリ状況を生み出すための舞台装置か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
露骨に追うべき聖杯として描かれた、連続殺人鬼メーカー”ジョンウォーカー”。その追跡が一つの軸になるのだろうけども、必ずしも作品の手中とは限らない。
心の探求が、現実の殺人より軽いなんて、誰が決めたんだ?
そういう挑発も、複数レイヤーが関連しつつ同時進行する序章からは感じ取れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月5日
怪物の頭に合いた風穴から、スルリと滑り込んで死をささやく。鳴瓢は縛り付けられたまま事件を解決し、自殺を囁く。ハニバル・カニバルのパスティーシュでもあるんだな…。
その殺意の源泉が、何処から湧いて出ているのか。殺人者の視線から逃げる百貫は、何にとらわれているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月6日
輪郭だけがおぼろげに揺らぎ、中身はなかなか分からない。
ミズハノメに繋がる井戸の底、謎と死体がゴロリ、転がっている。
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真っ白な特別独房が闇に落ちて、薄暗い井戸の底で殺人者は手を伸ばす。名探偵になら出来る、きみだけに捧げる殺し方を夢みながら、謎だらけの序章はひとまず幕、である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月6日
何処まで行っても井戸の底、一枚二枚、まだ足りない。
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”番町皿屋敷”をどれだけサンプリングしてくるかとか、余計なことが色々気にかかってはいるが、なかなか訳が分からなく、魅力的な一時間だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月6日
奇想を投げつけられているんだが、カッチリとロジックは通っているようにも感じる。現実と無意識は殺人で繋がり、それを読み解くためには死のダイブが要る
井戸、イド、異土、ID。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月6日
マインドダイブ、境界、分断、水と死、卜占。
色んな要素を芳醇に孕んだ、綺羅びやかな悪夢。そこに妙に背筋が整った、硬いストーリーラインの気配がある。
この不思議な質感は、なかなか面白い。先を見たくなる。
カエルちゃんは何やねんな…諏訪の蛙狩神事か。
鳴雹のぶっ壊れ方に、嫌悪しつつ惹かれてる様子の百貫との過去とか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月6日
トレパネーションされちゃった本堂町くんの今後とか。
潜ってみたくなるミステリを、連続殺人の外側に上手く配置して、作品世界を広く使っている所がクレバーだと思います。その癖絵面と設定狂いきってるからな…素晴らしい。
今後話が転がるにつれて、イドの奥に転がってるのが狂骨か宝物かも分かってくるでしょう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月6日
そんな謎解きも楽しみなんだけども、華麗にビジュアライズされた無意識の奔流に溺れる体験も、非常に良い。それが現実の事件を卜占していくリンクもまた、良い。
そういう多相性…井戸の奥の井戸を覗き込む喜びが三話以降も元気だと、非常に楽しいと思います。落語の”頭山”も元ネタといえるか…となると、ミュンヒハウゼン男爵も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月6日
このように、奇想は別の井戸に繋がって、色んな水を湧かせもする。呼び水としての衒学を、窒息するほど詰め込まれるのも楽しみ。
さておき、謎と不穏を閉じ込めたまま一旦、井戸の蓋は閉じられた。その奥で何が蠢いているのか、どう潜るか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月6日
来週も楽しみです。
…マジ”舞城”だったなぁ…もうちょいポップに仕上げるかと思ったが、力強くブン回してくれてファンとしては嬉しい限りです。ガンガン行こう!!