22/7を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
内向的な少女、滝川みうにとって、母と妹と暮らす小さな世界だけが全てだった。
そこに唐突に投げ込まれた、黒い招待状。恵まれた環境と、不鮮明なシステムに”アイドル”として取り込まれた八人。
動き始めた運命に、みうは背を向け、日常に拒絶される。
アイドルなんて大嫌い。
というわけで、凄まじく奇っ怪なアニメが始まった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
方向性としては”Wake Up Girls!”や”AKB0048”と同じ、現実のアイドルとアニメのキャラクターを重ね合わせてアニオタをアイドル文脈に取り込む…ってところなんだろうが、とにかく内向きで暗い。
これが主役のキャラなのか、作品全体の空気なのか。
それは群像が回りだして見えるところなんだろうけども、大人への不信感、唐突なスタート、突きつけられる理不尽と、(すでに三年キャリアを積んだ”現実”の22/7と同じ)大型アイドル企画につきもののヤダ味が、最初からブンブンブン回る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
プロジェクトの中心にいる秋元先生は、遂に”壁”という非人格化の局地にたどり着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
人間味がないどころか、無機物であり顔も声もない、ただ神託を吐き出すだけの装置。
巨大プロジェクトの中心にいるプロデューサーの戯画として、なかなかエッジなところに踏み込んできた。
まぁ”0048”でも神託くれる神様扱いだったので、秋元先生をアニメ化するとそういう感じの、顔のない装置になるってことかもしれんが。”オーマイコンブ”ではお寿司だったのにねぇ…(古い)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
その癖、今回モノローグ特権を独り占めしたみうの世界観は、作詞家・秋元康が一番得意なコースのど真ん中である
大人を信じられない、世間に認められない詩人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
多分百曲以上作られている、青臭くてヒネてるくせに真っ直ぐな、恋愛ではなく青春の自意識を歌ったときのテンプレート。
それをくせっ毛の美少女に煮固めたようなキャラが、一生陰気な場所でブツブツ言い続けるのが、この第一話である。
この先今回のピーキーな陰気さを乗り越えて、ステージの先にある輝きを掴み取っていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
みうがでっかく吠えた『Fuck the System!!』をブン回し、世界で一番イヤな仕事としての”アイドル”を、大人の言うままに突破していくのか。
さっぱり読めない。その不透明さが、妙に気になりはする。
まぁどうブン回したところで、フツーのアイドルものにはならないだろう。”ICE”以来、秋元先生がアニメに関わると毎回こうである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
その奇っ怪さが、僕の味覚には妙に合うので、バクバク食べるが。中の人達が軒並みこなれていなくて、『2.5次元と最初から設定されててもコレってある意味凄いな』と思う
何しろ主役に漂う”陰”のオーラと、それをくぐり抜けた先にあるデビューの未来の胡散臭さが、まず尋常じゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
隠れた前髪、歪む世界。過剰な明るさ。デスゲームの参加案内みてぇな黒い封筒。
自己実現サクセスストーリーとしての”アイドルもの”の、間逆な雰囲気満載である。
©ANIME 22/7 pic.twitter.com/aeFQn85iDU
この陰気さ、内向的で詩的な語り口は一話ずーっと続いていて、とにかく画面の情報量は多く、妙に屈折した描写が積み重なり続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
濃い口のアニメアニメした”個性”を植え付けられた八人が、集合する動物園の美術。同心円状に配置された、心理的距離の測定装置。
©ANIME 22/7 pic.twitter.com/vQdWi9lSdw
現代演劇みたいな、妙にバキッとした舞台設計と芝居が折り重なる中で、少女たちはわざとらしいキャラ設定をブン回し、お互いの距離感をタイルで露骨に見せてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
全てが奇妙に抽象化され、生活感がない。
全てが用意されていて、自動的に進んでいく不気味な清潔感。
それが、超肝煎りで三年前に動き出した”22/7”の立場、立回りと不思議なシンクロを見せて、なかなか薄ら寒い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
この冷たいメタ視線が、最初から巨大なプロジェクトに組み込まれ、わかりやすいキャラクター性と、”アイドル”としてパッケージされた理不尽の合せ技をどう貫通するのか。
そこもまだ、さっぱり分からない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
声優陣のこなれなさと、美術の狙いすました冷たい離人感が化学反応して、何もかもが嘘っぽく足場がないのだ。
この浮遊感が、運命と既定路線、フィクションと現実の間を彷徨い続けるべく生み出された”22/7”の”味”であると、狙って生み出しているのなら。
なかなか大したものである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
少女たちはなんの理由もなく届いた黒い招待状に導かれ、なんの不自由もない最高の環境を、理不尽に与えられる。
試練はドラマとして常にカメラに抜かれ、予定された(それでいて予測不可能の)ガッツストーリーはオタクの涙と財布を絞り上げる。
かは、”22/7”のオタクじゃない僕が、外野からギャーギャー言って良いもんでもないのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
とまれ、デカい資本を巻き込んで動き出したプロジェクトに、選ばれてしまった少女たちの当惑と不気味さはよく見える。
アイドルもののホームが、”動物園の地下”ってマジ皮肉だよな…。
©ANIME 22/7 pic.twitter.com/piEgaDNtPz
なんの説明もなく、全てを与えられた少女たちの前に立ちふさがる”壁”
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
努力と友情でサクセスの階段を登り、その家庭で自己を見つけ実現していくフツーのお話の到達点は、なんの感慨もなく彼女たちの前に与えられている。
つまり、この話が登るべき山は別にある…のだろう。
猿どもが吠えたける動物園の底にある、大人たちの国。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
全てがリッチに用意され、しかしそこで踊る八人にはなんの関係も、理由も見いだせない唐突な夢の国。
巻き込まれてなお踊りぬく理由を、急に動き出した巨大な装置の中で見つけていく。
…やっぱデスゲームか、ロボットものの文法だよなコレ…。
みうはそんな理不尽の城に背中を向け、光の中に帰っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
母と妹、小さな幸福が詰まった私の世界。
ピカピカなはずのアイドル世界が”影”で、当たり前の日常が”光”な逆転は面白い。
みうはアイドルが…彼女が”アイドルである”と想定するものが嫌いなのだ。
©ANIME 22/7 pic.twitter.com/CrbkKYDRoQ
狭い世間とあざ笑われようが、そこさえ守れれば幸福であれた場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
そんな小さな喜びは、持ち前の陰気さと世間の無理解の前に踏みにじられていく。苦しい生活を、それでも守っていくための職場は唐突に消える。夢を売っても、一万円にもならない。
©ANIME 22/7 pic.twitter.com/7dX6N6JDBu
凄まじく陰気で世の中拗ねてるみうの、唯一のポジティブ要素が『曲を作る』なところに、この先の展開を予兆するものが見え隠れする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
音楽と関わること。鍵盤を触ること。それが彼女を、世界と繋げていく…はずだ。あまりに変化球過ぎて、あらゆる予測に自信が持てねー!!!
ブラックホールのように光を捻じ曲げ、人生を上手く進めてくれない自分の重たさ。その憂さを晴らしてくれる唯一のメディアが、鍵盤を触ることだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
橋の欄干が黒鍵白鍵のように見える帰り道で、みうが受けたダメージが限界突破するシーンは凄く良かった。
©ANIME 22/7 pic.twitter.com/XvoJTRkAvr
実体のないキーボード。どこまでも美しい家族の愛。それだけでは守れない幸福。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
みうが閉じ込め、閉じ込められている狭い世界の全てが、この夕日の中にある。
ここに追い込まれてしまった現状を突破するためには、嫌いな雪かきに全力で飛び込むしか無い!
そう思い込んで、動物園の底に戻ってくる所が、みうのパンクなところである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
『妥協はしねぇ…荒れ狂う詩人のまま、オタクの顔面愛嬌でぶん殴ってやる!!』
こういう無茶苦茶ぶっこんでくるキャラは好きなので、今後もビシバシパンクスして欲しいところだ。
みうの叫びは壁をたたき、彼女のどんずまりである黄金の夕焼けと同じ色の光を呼び込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
プロジェクトを回すエンジンであり、顔のない神託機械であり、”なぜ?”という少女の問いかけを食い殺す怪物は、みうの反逆を寿ぐ。
おもしれぇ…お前のようなクレイジーを待ってた。
©ANIME 22/7 pic.twitter.com/CpAd9btBv1
問題は『アイドルなんて大嫌い』という反逆すらも、巨大で唐突で理不尽な装置に『言わされている』もので、最終的にはプロジェクトを肯定する方向にしか”アイドル”のオフィシャルな発言権はない、ってことだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
内部批評のように見えて、プロパガンダの前提にしかならんのよね、アイドル内製創作って
アイドルを虚構の視線で見つめ『残虐だ、理不尽だ』と吠えたところで、最終的に『でも…』と逆説して自分たちを肯定し、その路線のまま先に進んでいってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
自分たちが振り回す毒の強さで、自分たち自身を殺すほど徹底して冷静に、客観的に状況に準じれるほど、偶像崇拝は甘くも優しくもない。
デスゲームにも似た理不尽も過酷も不公平も、基本的には運営がやるべきだと考えて発生している”お手盛り”の地獄で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
それをミステリアスな舞台立てで凝集して、”22/7”を徹底分解して再構築するようなフィクションへとたどり着けるかは、正直疑問でもある。
なにしろお金がたっぷり注ぎ込まれ、沢山の”大人(アイドル用語で演者を取り回す運営サイド、会社の人間など)”が関わるリアルが、この創作物の外側にはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
というかそれが、この作品の土台なのだ。
危うさ、唐突さ、過酷さ。批判されるべきマイナスを、知ってますよと突きつけてきても。
それは肯定の結論が最初から用意された、お手盛りの内部批評にしかなりえないのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
変則的で野心的な舞台を堪能しながら、主役の反逆にワクワクしながら、覚めた脳髄の奥でそういう事を考え続ける自分もいる。
さて、既定路線を突破できるのか。
みうのナイーブでパンクな内面を、情景に乗せて陰鬱に語り倒す筆は結構好みである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
今後もこの塩梅で、一生ウジウジと青臭く、絞れば青汁が出るほどに内省的に進んでいって欲しいところだが…例えばあの明るい大阪人にモノローグ特権が渡った時、おんなじ調子で暗いのだろうか?
そこら辺の多彩さも、今後を見ないと判別しきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
現状、いかにも漫画的なキャラしか理解らねぇ残りの七人だが、なにしろ二次元存在として、計算ずくで生み出されたのだから当然だ。
あのプラスティックな味わいの奥に、何らか生っぽい脈動があるのか、ないのか。
記号的で冷たく浮いている世界だからこそ、血潮が通った瞬間には不思議な気持ちよさがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
それはみうが泣き崩れた夕景で、よく分かった。あれは凄く良い。
まず七人分、同じだけの熱量を見せる必要があると思う。彼女らが”人間”であると、この冷たい舞台で示すことから、話は始まるだろう。
それを強調するキャンバスとして、大型アイドル商売の全自動っぷりを上手く抽象化した”動物園の底”は、なかなか良いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
その冷たさを貫いて、プロジェクトに奉仕するプロパガンダを越えて、アニメ作品独自の答えをぶっこめたらまぁ傑作であり批評なのだが、さて、そこまで突っ走れるか。
何かが起きそうな予感と、何も起きないだろうという冷たい失望が同居しながら、第一話は終わった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
未知数。正直、全然良くわかんない。
わかんないが、妙に惹かれる部分が多々ある。それが思い込みなのか期待なのか、確認するには来週を見なければいけない。
冬の怪作の行く末、楽しみですね。
あ、久々に堀口デザインの女の子がモリモリTVアニメで動いていたのは、非常に良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月12日
京アニの張り詰めたスキのなさとはまた違った動かし方だけども、デザインの強さと良さをどう活かせるかは、今後の焦点だと思う。
そーいや、妙に脚に拘ってたなぁ…足がよく喋る演出が入ると、良いんだが。