petを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
記憶は記録ではなく、感情と絡み合って複雑な絵を描く。
”会社”のために、それを都合よく書き換え、あるいは潰す者たち。記憶操作の異能を抱える怪物は、それでも、想い出を潰したくはない。
一つの事件が終わる。ヤマとタニ、天国と地獄を巡る、異能者達の日常が。
そんな感じの、ファーストエピソード解答編。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
前回蒔いた謎がしっかり答えをもらって、すっと作品世界が心に落ちてくる、とても鋭い第二話となりました。
”ペット”たちがどういう存在か。”潰し屋”と何が違うのか。心に潜る異能は何処まで異質で、何処まで普遍的なのか。
作品が何を見据えているか。
微細なところはまだ説明が必要かもしれませんが、確かな手応えとやるせなさがどっと押し寄せてきて、色々感慨深いエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
若い連中のモヤモヤした感じも良いんだが、おじさん連中の終わっちゃってる感、それでも燻る美しさの名残が、凄く舌に残る。苦くて、微かに甘いね…。
お話はヒロキ&司のヤングジェネレーションが、健治の心をいかに潰さず、”会社”に都合よく書き換えていくかを追う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
それは非常に繊細で危うい、心の旅路だ。ヤマもタニも、踏み荒らせば乱れ、壊れていってしまう。
桂木は”イメージ”がなく、壊すことしか出来ない旧世代なのね。
先週ヤダ味満載で暴れていた桂木のおじさんだけど、今回は妙な脆さと危うさを表に出して、『ただの悪役じゃねぇな…』と思わされた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
壊すしかねぇ。俺たちはただの人殺しでしかねぇ。
そういう諦めの中、紫煙をくゆらすことしか出来ないどん詰まりに、おじさんは追い込まれている。
そこに手を差し伸べてくれる”ヤマ親”(あるいは”ヤマ子”)との繋がりは、彼にはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
肉親や恋人よりも強く、生き方を与えてくれた”ヤマ親”との繋がりは非常に強い。
ホモ・セクシュアリティを揶揄されるヒロキと司だが、人格の根っこを共有していると考えると、濃厚な関係にも納得だ。
人間の心に触れることは、非常に怖い。自分を揺すぶられ、罪悪感や恐怖をむき出しにされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
煙草を吹き出して露悪的に振る舞っていても、桂木は自分が犯した殺人を悔いているし、その隙間から簡単に侵入もされる。
脆さを抱え込みつつ、それを表に出せない世代。強がるしかない張子の虎。
そんな彼の表情が、今回メインの二人の隣で、静かに切り取られていた気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
毒気を撒き散らしつつも、瞳を恐怖に開き、悟に助けを求め、揺すぶられた心を胃から吐き出す。
嘔吐。醜く、とても人間的な反応。
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壊すことしか出来ない、”イメージ”のない世代。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
又三のおじさんが悟に与えたような、美しいものを共有できなかった存在。
ヒロキと司が”二人”でいるからこそ、彼の孤独と暴虐は際立ち不快で…妙に哀しい。
なぜこんなに、強がっているのだろう。つよがるしかないのだろう。
そこら辺は今後、彼のヤマとタニが顕にされたら判ることだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
”イメージ”を、それで繋がったかけがえのない絆を持ちうる世代は、そんなことが許されなかった世代と対比することで、その特別さが際立っていく。
桂木さんの不快は、幸福な世代へのリトマス試験紙なのだ。
ヒロキは苛立った腹いせに、桂木に暗示をかける。『吸ったつもり禁煙』の悪戯は、ヒロキの幼さを強調すると同時に、桂木が若い世代と触れ合うことで変わりうる可能性も示す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
毒を撒き散らさなくても、自分は守れるよ。
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知らず投げかけられたメッセージを受け取る時。脆い自分をさらけ出す時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
桂木の表情は見えない。どんな震え方で煙草を抜き取ったかは見えても、その瞳の奥はまだ判らない。
彼の鎧と中身が、なぜ生まれどんな形をしているか。見たくなる第二話だったと思う。
桂木はモノを指差すように、健治を示す。その無遠慮な指先を、ヒロキは遮る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
人間の心は、勝手に踏み荒らして壊しても良い。桂木が内面化しているルールを、ヒロキは肯定したくない。
子供っぽい反抗とも言えるし、人倫の根っこを抑えてるとも言える。
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制御を越えたヒロキの力は、桂木の恐怖と罪悪感を暴き立て、過去の幻影を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
バッド・トリップ。バッキンバッキンに追い込まれていく桂木さんが、”イメージ”使いの危うさを教えてくれる。
それは正しく導かれ、上手く使わないと凶器に変わってしまう、危険な力なのだ。
”ヤマ親”たる司はヒロキの隣に立ち、その強大な力を導いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
第一話冒頭で見せられたように、形のない心に方向を与え、活きる足場を作ってくれたヤマ親のありがたさはとてつもない。依存もするだろうし、そういう存在がいればこそ人は生きていける。
…司の”ヤマ親”って誰だ?
人の心には最高のヤマと最悪のタニがあって、そのどちらが潰れても人間は壊れてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
ヤマの大事さはわかりやすいが、それと同等の機能をタニが果たしているのは面白い。
高低両方の記憶がないと、人間は人間の形を保てない。
『あれに比べりゃ、まだマシ』と思えなくなると、地獄はすぐそこだ。
つまりこの作品世界では、最悪の記憶を白く塗りつぶしたところで、人間は幸福になれない、ということでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
タニに眠る痛みや辛さは、消すことが出来ない。それは人間存在の根本だからだ。
ならば、タニをどう受け止め、制御するかが大事になるだろう。あるいは壊さないよう、慎重に改変していくか
どちらにしても、それはとても普遍的な心の旅路であり、サイコダイブの異能があろうとなかろうと、あらゆる人が挑み続けている闘いだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
異能を扱いつつ、そういう凄くベーシックなものに触れ続けている所が、この話を支えていると思う。異質なものは、普遍を際立たせるためにあるのだ。
同時に普遍を描くためには、個別で異質な物語一つ一つに、丁寧に分け入らないといけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
異常な能力を抱えるとはどういうことなのか、それが見せる景色はどんなものか。
花の降り注ぐ、美しい海。健治のヤマは、スペクタクルにその特異性を見せてくれる。
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繋がることで心を許し、お互いを信頼して深い海に潜る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
この作品”最初の事件”である健治と横田の物語は、主役たるヒロキと司に強くシンクロしている。
水と金魚、二人の”イメージ”はお互いを支え合うよう調整され、司に導かれることでヒロキは力を適切に使える。
セックスとドラッグとバイオレンスに満ち溢れた、横田と健治の過去。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
異能者たちはそこに潜り込み、繋がりを確認していく。健治が”女”をどう見てたかで、記憶が改変されているのが面白い。ダッチワイフかよ…。
記憶はイメージによって変質する。これも、作品のルールかもしれない。
ヤマを書き換える前に、二人は健治のタニにたどり着く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
児童虐待の記憶。棘だらけの部屋と傷。
それを抱えて荒んだ人生を送り、魂を預けうる誰かに出会えた男の記憶≒現実を、異能者たちは書き換えるしかない。
彼に生きてもらうためには。
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健治にとって、横田が自分のタニを見せた瞬間、自分が横田にタニを見せた瞬間が、すなわちヤマだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
異能力を持たなくても、人は自分の一番弱い場所、一番輝く場所を共有できる。
でもそこを勝手に踏み荒らして、自分に、あるいは”会社”に都合よく書き換えてしまうことが、異能者には出来てしまう。
片方が死に、片方が記憶を書き換えられた、なんの力もない哀れなチンピラ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
しかし彼らが共有した黄金の瞬間は、人生の辛さと切なさが色濃く滲むからこそ美しい。
でもそれは、決定的に書き換わってしまった。人間のいちばん大事な、踏み込まれてはいけない場所にすら、ペットは踏み込める。
それはお互い比翼連理の関係に見えて、結構怜悧なコントロール意識と強い依存が滲む、ヒロキと司の未来の姿にも見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
”会社”は甘くない。心を書き換え、人間を潰すことに躊躇いはない。その牙が、”会社”の走狗であるヒロキと司…悟や桂木に伸びない保証は一切ない。
かなり哀しい結末にたどり着くことも、結構覚悟しなきゃいけないかな、と今回思わされた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
悲惨な話を扱う時に必要な倫理観を、この作品はちゃんと持ち合わせている。
美しいものの意味を知ればこそ、それが踏みにじられる現実の無常、それを乗り越えて進む輝きを書けるのだ。
だからこそ、望まずして人間の一番大切な景色を書き換えてしまった二人に、罰が巡ってくる予感がある。世界の有り様、人間の形を冷静に見据える視線は、主役だけを例外にはしてくれないだろう、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
でも、ヒロキも司も健治を潰さなかった。桂木が諦めてしまっているルールを、断固拒絶した。
その淡い抵抗に、微かな希望がある気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
健治は今後桂木こそが、自分の中の最悪を共有してなお、自分を支えてくれる存在だと、思い込んだまま生きていく。
そういうストーリーを用意することでしか、”会社”に繋がれたペットは健治の命を守れなかった。異能の力は、彼らを自由にしない。
むしろ異常な力を持つからこそ、それを便利に見込まれて、”会社”に繋がれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
いかに人として大事なものを守るかではなく、”会社”のミッションをこなすかを考える司は、ヒロキが持っていない社会性、合理性…”大人らしさ”を背負ったキャラクターだ。世知辛い世の中が、よく見える。
それでも桂木(の背後に広がる、”イメージ”のない旧世代の価値観)のように、『ただ潰しちまえば良い』とはならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
ヤマを分け与えた”子”の願いを受け止め、現実と理想の妥協点を必死に探る。そのために、ヒロキを怜悧に制御もする。
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ヒロキの圧倒的なスピードに、司はついていけない。だから小さな水滴になって、彼に追いついていった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
力の差は歴然とある。ヒロキは溢れる異能者の才覚を制御しきれない。冷たい現実のロジックもわかっていない。
だから司が導かなければいけないが、彼は”会社”の悪徳をある程度以上飲み込んでもいる
そういう軋みが、みっしりと繋がることで奇跡を成し遂げる二人の間にあることを、見せるエピソードでもありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
どれだけ一緒に心に分け入っても、埋まらない距離が確かにある。その冷たさをどう抱きしめるかも、今後の焦点になるんだろうなぁ…。
というわけで、作品世界の全体像がしっかり把握できる、良いエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
心に分け入り、書き換える異能を持っていても、人間の根本にある断絶は埋まらない。むしろ異常な力を持つからこそ、世界からはじき出され、他人を理解できなくもなる。
作品が描く”力”が、どういう方向を向いているか。
それがよく判るエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
やっぱサイコダイブは諸刃の剣で、ヒトを救うこともできれば潰すことも出来るんだな。
となれば、『力をどう使うか』という決断と意志、自由と責任を物語は追うことになる。異能で破滅を呼び込むか、幸福を広げるかは、使うもの次第なのだ。
同時に異能の力に頼らずとも、人間は生きていく中で最悪の瞬間を交換し、最高の一瞬を共有できることも描かれていました。ヤマとタニは、誰にでもあるわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
人間を支える心の背骨を、勝手に書き換える不遜。否応なくそれを背負わされてしまった青年たちが、人倫の荒野をどう歩いていくか。
それを今後、物語は追っていくのでしょう。なかなか広いところに挑んでいくお話になりそうで、ふつふつと期待が湧いてきます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
能力者サイドに視点が移ったことで、サイコダイブのスペクタクルがどどっと押し寄せて、ビジュアル的な興奮も満載でした。心の中の”絵”が鮮烈なの、やっぱ良いね。
今後ペットたちはその異能に導かれて、人間の最悪と最高に潜り続けることになるでしょう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
それは自由な沈思黙考ではなく、”会社”の利害に絡め取られた、ままならない歩み。
簡単に人が潰れる危うい領域を、ひどくナイーブな彼らはどう進んでいくのか。次回も楽しみです。
あ、桂木さんが”会社”の方針変更をボヤく時『テクマクマヤコンかよ…』って言ってたの最高でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
彼の”古さ”が一発で判るし、全てを無条件に解決してくれる魔法を心の何処かで求めてる、ちょっと乙女チックな側面があることも判る。
あのおじさん絶対”ヤバ”いんだよな…俺の弱点モロ狙ってくる…。