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歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
切り裂きジャックの残酷な真実により、京極冬人の心身はボロボロになった。
入院した場所から持ち込まれた、異世界転移の子供の夢。誰もが背を向けるタダ働きに、シャーロックは飛び込む。
降って湧いた亡霊退治で、探偵復活、伸るか反るか!!
そんな感じの、歌舞伎町探偵絵巻第14話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
ジャック・ショックがまだ抜けない京極くん(と視聴者)を、物語を通じてリハビリしていく構造は第12話と。
長屋の住人の美しい過去が、とうに擦り切れている現状と、それでも諦めきれない輝きの書き方は第5話、第6話と、それぞれ通じるものがある。
こういうベタ足の人情噺が強いのが、歌舞伎町シャーロックの良いところ(の一つ)だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
京極くんは好きなキャラなので、一話貰って探偵復帰できて、非常に嬉しい。
まぁ親友は犯罪者になり、頭にウンコ乗っけられ、イーストらしい荒療治になったけどさ…。
冒頭、ワトソンくんは一ヶ月煮凝った妄執をぶち破り、京極くんを見舞う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
恋に破れ犯罪に利用されたショックでズタボロの彼は、亡霊に取りつかれたような錯乱状態にある。
これをモップで切り払うのが、名探偵シャーロックの一刀である。
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僕らはすっかり、変人探偵が結構人間思いの温かいやつで、ぶっきらぼうに切り捨てた一撃がある種のセラピーであることも判っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
心を乱した友を見捨てず、荒療治でも元気づける。そんなホームズの境地、”探偵”という職業に、京極くんが戻っていくのが今回のお話。
クライマックスで、想い出を再演するように狂気を演じ、最後のチャンバラを演じることで、京極くんは探偵に本格復帰する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
凶器として利用されるのではなく、自分の意志で刃を止めること。壊すためではなく、治すために情報を使うこと。
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マキちゃん=ジャックに振り回されることで、探偵としての自分を見失っていた京極くんは、ホームズに切られることで再生を開始し、自分もホームズと同じく他人の迷いを切り落とすことで、”探偵”に戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
むしろ傷ついた分だけ、原点を思い出した分だけ、厚さは増しているかもしれない。
そこに行き着くまでには、奇妙な事件を乗り越える必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
話の形式も今回から、”東”の奇妙な日常をスケッチする短編集に戻る。まさかカレーとショートケーキごたまぜのゲテモノ飯を見て、妙にホッとする瞬間が来るとはね…。
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ホームズはフータロー少年の夢を遠巻きに見ながら、妙に温かい視線を向けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
もともとこのアニメ、フード理論を上手く使ってる作品なんだけども、今回は特に”メシ”の表情が濃い気がする。
捻じくれたホームズはごたまぜにしちゃうが、それと同じものを病気のガキも食う。夫人は差し出す。
腹が減ったらメシを出す。病気になったら助けてやる。迷いや悪霊に取りつかれたら、しっかり切り払う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
ジャックが”東”の最悪を顕にしたとするなら、長屋の情は最善…とはいわないが、間違いなく良いものを差し出してくる。
銭金よりも大切な、悪霊退治の御札。
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子供が差し出してきた愚者の黄金を、ホームズは受け取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
それが京極くんへのセラピーになると、明晰な頭脳で読んだからか。
描かれない過去に、乱歩と風太郎、あるいは安吾と松本同じような、幼い友情を抱えているからか。
名探偵の起源は、まだ伏せ札のままだ。
ともあれ、ホームズは金より大事なもののために、病院に赴く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
乱歩、風太郎、横溝、松本、安吾と、戦後ミステリ大戦みたいになっとる、今回の登場人物。
そこからちょっと外れたところで、名探偵は真実を睨む。
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それは真相が隠れているプラネタリウムに、早々目をつける探偵の鋭さであり、虚ろなガラスに反射した自我と対話する、変人の仕草でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
京極くんは今回、『ござる』な自分に分裂気味だったけども、そういう精神状態がずっと続いている表れでもあるのかな、鏡との対話。
京極くんが『ござる』な侍に戻っていたのも、病院時代の不幸だけど幸せな日々で自分を鎧って、ジャックの凶行から守りたかった…てのがあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
トンチキを嘲笑せておいて、凄くシリアスで柔らかいものを突きつける緩急が、このアニメはやっぱり巧い。
『面白うて、やがて悲しき…』ってやつね。
小児病棟をネタにしている以上、その重たさもまた嘘ではなくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
去っていった少年時代の、拙い夢。一人は死に、二人は挫折し、それでも胸に残るもの。
それを思い出すことで、ジャックに傷つけられた京極くんと作品世界は、『毎度バカバカしいお話』に戻っていく。
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そこで優しい言葉をかけるのではなく、頭にウンコ乗っけるのがこのアニメだとは思う。京極くん潔癖症だから、相当ハードコアな状況だよなコレ…京極くんじゃなくてもハードだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
彼は目の前に置かれたメロンを食べない。自分を大事にする他人の優しさを拒む。
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そういう精神状態に活を入れ、鏡に向かった自分の顔を自分だと認識する所まで引っ張るのが、ウンコセラピーの眼目である。今週、何回”ウンコ”って言うんだろうな俺…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
ホームズがまだ同一化できない、鏡の中の自分。京極くんはそんなホームズからの激烈な一発で、自分を取り戻す歩みを始める。
それは探偵としてのシャープな”眼”を取り戻すと同時に、アンゴに託された夢を思い出す歩みでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
第3話でぶち砕かれた、成り上がりへの夢。それが病身の友、末期の遺言であったと後出しで知らされるの、ほんとズルいよ…。
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僕は『幼く儚く無垢なるもの』に特大の脆弱性があるので、現実に擦れてひび割れつつも、まだ死なない約束を出してくるのは卑怯である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
あの時夢みた『病院を作る人』にも、善人にも金持ちにもなれなかった。でも、ジャングルに適応した獣にもなれない。
ネジ曲がって流れ着いた、現実という岸。
そこをよろめきつつ、なんとか歩いていく群像を描くのが、”落語”をテーマの一つに据えたこのお話の核だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
強がってよろめいて、人の肩を借りたり。変人呼ばわりされながら、子供と本気で同じ目線で遊んだり。
賢い獣たちは、バカバカしいと吐き捨てるだろう。
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でもそういう小さな繋がりこそが、断絶が広がりゆく世界を泳いでいく手掛かりなんじゃねぇのかと、どうもこの話語っている気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
”落語”がそうであるように、バカバカしさの奥に世間と世界をじっと見据える、冷静で懸命な視座がずっと生きてる印象なんだよね。クレバーなユーモアがある。
最初にドアをぶち破るのも、京極くんの強がりに肩を貸すのも、ワトソンくんの仕事である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
変人探偵が出来ない『当たり前の人情』ってやつを、ナチュラルに差し出せるのがワトソンくんの良いところだ。そういう人は、やっぱいてくれなきゃ困る。
検死医ながら、医療関係者だった過去が響いてる感じ。
ワトソンくんが杖役を担当してくれることで、京極くんは探偵としての鋭さを取り戻し、自分の足で立てるようになってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
それはホームズが静かに道を引いた、ディテクティブ・リハビリテーション・プログラムでもある。
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変人探偵は今回、事件と秘密を蕩尽するのではなく、京極くんに事件を解決させたかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
まだやり直せる、まだ戦えると、彼が自分で思える所まで引っ張ってやりたかった。
そういう優しさを、シャーロックはどう表現すればいいか分からない。
だからウンコ置く。やりすぎ。でも正しい。
そんなシャーロックの不器用なアシストは、京極くんに過去を思い出させ、アンゴから託された夢を再生させた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
上手くいかなかった。間違えちまった。でも、そこで終わりじゃない。
松本に投げかけた笑顔は、ジャックに無茶苦茶にされた探偵・京極冬人にもまた、投げかけられていたのだろう。
茜色に染まる夕景に、流れる涙。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
溢れんばかりのええ話感の中で、ワトソンくんがホームズの不器用な優しさを、ちゃんと判ってるのも良い。
モリアーティっていう最大の理解者が、檻に入っちゃったからね…ワトソンくんが、現実との接点を上手く持てない分裂探偵を理解し、支えてやんないといけない。
それを自分で理解するだけじゃなくて、ホームズに反射するよう言葉にして伝えてるのが、優しくていいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
ホームズはフンと鼻を鳴らすけども、否定はしない。そうやってワトソンくんを鏡にすることで、ホームズは不器用な自分を鏡に移して、少しずつ理解していくのだ。
ホームズが用意した京極くんリハビリプログラムが、その実ホームズのぶっ壊れ方にも手を差し伸べているような、なかなか奥行きのある構造で面白かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
戦後ミステリ作家大集合なゲストも、”隠された手紙”なトリックもね。ネタをふんだんに扱いつつ、ベタ足な人情噺でどっしり構えてるのが良い。
かくして魔除けの御札を受け取り、ジャックの亡霊を切り払っての、探偵・京極冬人完全復活。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
子供の憧れを背中に受けて、颯爽退場…とは終わらず、やっぱりウンコがついてまわるわけだが。
そのキマラなさも、京極くんっぽくて僕は好きだよ…おかえりなさい。
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一方そんな情から縁遠い、堀の中の地獄。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
命をつなぐはずのメシは横から掻っ攫われ、そこに閉じ込められた悪意が命を奪う。
逃げ場のない包囲網。モリアーティ少年の苛烈な戦場に、手を差し伸べるものはいない。シビアだ…。
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こっちのミステリがどう回るかも楽しみだが、まずは京極くん大復活、おめでとうございます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
一話完結のトンチキホッコリ人情ミステリという、『いつもの”歌舞伎町シャーロック”』がリバイバルされる過程が、彼の回復とシンクロしているのはクレバー、かつ優しかったですね。
まぁやっぱね、凄くショックだったわけですジャック連作は。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
トンチキながら情のあるイーストに愛着もあったし、いつもの面々がいつものバカ話をしてくれる安心感に体重を預けてきた。
それが身内から加害者も被害者も出まくり、世界のリアルなハラワタをぶちまけられた。
JOJO風に言うなら『京極くんの傷は俺の傷だ!!』って感じなんですが、それを頭にウンコ乗っけて、切ない過去の回想も交えて、一歩ずつ壊して癒やして、『いつも』に戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
そういう物語を、ちゃんと作品サイドで用意しているのは偉いと思います。物語で傷をつけたなら、物語で治す。
マッチポンプっちゃあそのとおりですが、そういうクソの始末をしてこそ、作品を世に投げかけることもできんのかな、と思ったりもします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月17日
そういう作品の息吹が、変人探偵にも伸びるのか。檻の向こうの親友は、地獄を生き延びれるのか。
次回も楽しみです。