虚構推理を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
鋼人七瀬と九郎の接触は、双方痛み分けに終わった。
死なない怪物がいかに生まれ、いかに消えゆくか。
現実と虚構、怪異と人間の間に立つ琴子はスペシャリストとしての優位性を振り回し、恋のアドバンテージを取ろうとする。
奇っ怪な三角関係の、行方はいかに!
そんな感じの複合型ミステリ、ギクシャクしつつも主人公がチームを組み、敵の顔が見えてくるエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
九郎の能力と過去とか、怪異知識ではアドを取りつつ恋では大人扱いされてない琴子とか、鋼人七瀬の発生原理とか。
チーム本格始動を前に、色々見えるお話となった。
怪異関係のオカルトロジックが目立つけども、九郎と紗季さんと事子の三角形が、どういう気まずさと力関係で回っているかに力点を置いた書き方だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
超日常の都市伝説対策をやりつつ、訳ありボーイに未練たらたらな元カノと、自称・今カノの怪異スペシャリストとの距離感も掘る。
このお話らしい、欲張りな作りだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
鋼人七瀬と九郎が接触することで、主要メンバーが全員舞台に上がり、状況が転がりだす。
琴子は紫色の異常領域に親しんだ先達として、紗季が”そちら”に行くのを断固止める。
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自動販売機の白々しい明かりを一つの境界線にした、遠い再会。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
思いを寄せつつも踏み込めず、怪異が振るう暴力に抵抗する異能も持たない。紗季さんの”マトモさ”は、こと九郎との距離感に限って言えば、大きなディスアドバンテージだ。
押し止めるのは、色恋優位を取るため、ってだけでもないけどね。
琴子は境目に立つものとして、適正のないものが”そちら”に踏み込むのを止める責務がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
紗季が亡霊に触ることすら出来ないのは前回実証済みで、鉄骨が暴れ狂う暴力空間に踏み込めば、間違いなく死ぬ。
そこで線を引かないほど、琴子は薄情でも性悪でもない。いや性悪ではあるんだが…。
紗季さんがどうしても受け入れられない、九郎の怪異性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
鉄骨で頭を潰されるのは計算の上、別に大したことじゃない。
そんなぶっ壊れた感覚と世界観を、九郎と琴子は共有し、紗季さんは”そちら”に踏み込めない。そんな状況を、琴子はしっかり見据える
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九郎にとって死ぬことは未来視発現のトリガーですらあり、生き死にの感覚は完全に壊されてしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
一族郎党、狂った野心と呪いに取り憑かれた人造の怪物。人魚と件の血が交じる九郎は、怪物に障ることが出来る。つまり、否定しようなく”そちら”側の人間なのだ。
琴子も片目と片足を捧げることで、怪異と契約を果たし”そちら”に踏み込んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
生死に関するドライな感覚、ぶっ壊れていることへの慣れ。そういう部分は、琴子と九郎相性がいい。というか、紗季さんと九郎の相性が決定的に良くない。
しかし異性としては、琴子より紗季さんの方に惹かれてる印象がある。
琴子は怪異のスペシャリストとして、桜川家の狂った事情を知悉している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
失敗に終わった未来予知の呪いを、現在に再生し生まれたキュマイラ。赤だけが鮮烈な、近世以前モノクロの世界観。
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九郎はずっとそういう場所で暮らしてきて、痛覚も死の恐怖も、”そちら”を恐れる一般性も壊されてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
ツルンとした美丈夫に見えて、相当アクの強い青年なのだ。そういう意味でも、琴子と似た者同士だと言える。
だからこそ、一緒にいると”そちら”に引っ張り(引っ張られ)そうで、距離も遠い。
紗季さんが怪異を恐つつ、九郎に後ろ髪を引かれるように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
琴子と一緒に居ては遠ざかっていく、当たり前な人間の暮らしというやつに、九郎も未練があるのかも知れない。
お互い決定的に隔たっているのに、だからこそ惹かれ合い、また相容れない。
紗季さんと九郎の関係は、差異を含んでロマンチックだ
まぁ割れ鍋に綴じ蓋、化け物には化け物ってカップリングも、しっくり来て悪くはないが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
少なくとも現状、二人はどちら側に自分を進めていくか、なかなか決心がつかないのだ。
このゆらぎの重心点に、決定的に”そちら”側に立つ琴子がいる。彼女はフツーの暮らしは、11歳でサラッと捨ててしまった。
死んで予言を持ち帰るのは、当然の日常。家族の情愛も完全に壊れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
そんなモノクロームの過去の中で、唯一色づく蛍の光。
ここにも未練と執着があるのが、なかなか面倒くさいところである。こうして通してみてみると、結構優柔不断だな…。
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まぁその揺れ方が、作品に独特の陰影を付けて面白いのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
琴子はかなりぶっ壊れた人格を持っているので、遠目で見るには楽しいけど、感情を預ける相手としては結構難しい。
壊れきっているようで人間味を残す九郎のあやふやさが、これを結構補うのだ。
さて九郎の異能と暴力は、無事鋼人七瀬の頚椎を捻じ曲げるが、情報存在はこの程度では消えない。というか、怪異の色が付いたとしても、暴力で物語は殺しきれないのだ。無論、法と権力も追いつけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
物語に勝つ唯一の手段は、同じく物語だけである。
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紫色の怪異時空は鋼人七瀬の一時的消滅とともに消え去り、人間の領域が戻ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
紗季さんを押し留めていた境界線は消え去り、恋と未練という、あまりに人間らしい感情を巡る鞘当が始まる。
怪物が消えると、琴子は怪異のスペシャリストから、ちんちくりんの恋人未満に堕ちてしまう。
一時は結婚すら考えた、九郎と琴子の複雑な未練。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
外見も内面もガキっぽい琴子は、その混戦に割って入る権限がない。さっきまで押し止める側だったのに、今度は無駄なあがきをブンブン振り回す、恋愛挑戦者の立ち位置に下がってしまうのだ。
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恋人らしい抱擁を求めても、するーっとスカされて空回り。決定的にぶっ壊れているからこそ、恋愛関係にいい手が打てなくて、紗季さんの大人な対応(を頑張って装う健気)とか、それを真っ直ぐ見つめられない九郎の迷いとか、あまりに人間的な複雑さには踏み込めないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
怪異ミステリにおいては圧倒的アドバンテージを持つのに、甘酸っぱいロマンスにおいてはミソッカスな立場にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
境界線を前に足踏みをしているのは、九郎や紗季さんだけの特権ではない。境の種類はそれぞれ違うが、登場人物は皆、願いの前で空回りを続けているのだ。
そんな距離感が、果たしてどう動くか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
分かたれたはずなのに繋がってる、元恋人の再会。その境界線に割って入り、小賢しい横槍を露骨に打ち込む琴子は、九郎の視線を惹きつけられるか。
そんなミステリが、鋼人七瀬の構造解析と並走し続ける。
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琴子はガキっぽい外見と言動をナメられないよう、せめて椅子に座って対等になろうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
しかし九郎の視線は、痩せた紗季さんに奪われ続け、琴子を見るウンザリ気配とは湿度と熱量が違う。
しかし怪異の話になると、後ろから蹴っ飛ばす特権は琴子にある。
不気味なキマイラとして、怪異からも怪物扱いされていた九郎。琴子の側にいることでそんな扱いも変わってきて、自分を頼る怪異も増えてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
人でも化け物でもない九郎は、同じく境界線上に立つ琴子に導かれることで、”そちら”に親和性を得つつある
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どうあがいても、人魚と件の入り混じった怪物であることを九郎は止められない。紗季さんはマトモだからこそ、”そちら”には踏み込めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
アドバンテージはいつでも、琴子にある。少なくとも、物語が怪異ミステリの形式を取り続けてくれるなら。
思わずほくそ笑みも浮かぶ。そういうところだぞ岩永。
紗季さんが抱え込む怪異への脆弱性は、『鋼人七瀬は逮捕できない』という部分にも繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
陽の光が当たる、マトモな正義。それは不死の物語的存在に手錠をかけえないし、都市伝説を勾留しておく牢屋はない。人の口に、法で戸は立てられないのだ。
結局、性格悪い恋敵の力を借りるしかない。
そんな三角関係を反映した、”そちら”と”こちら”が明瞭に別れた対話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
噂は形なく広がり、名前を手に入れた瞬間に収束し、形を為す。それは飽きられやすいが、だからこそ瞬発力があり…ときに人を喰う。
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情報化社会を逆手に取った、最新鋭の想像力の怪物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
人間サイドの法の番人として、闇のルールを守る智慧神として。
紗季さんも琴子も、鋼人七瀬の存在…それを支える歪んだ物語を無視するわけにはいかない。女二人が、それぞれ秩序の守護者であるってのは面白い構図だよな…。
鋼人七瀬を止めるには、不死の能力でも未来を掴む異能でもなく、実体化した恐怖を上回る物語を獲得する必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
重要なのは納得。ウェブサイトに集約され、さかしまに怪物を生み出す構造を暴き立て、顔のない群衆を納得させる物語を紡ぐ。
それが呉越同舟な三人が、これから挑む闘いだ。
そこにはただ怪異と争うのではなく、終わったようで終わっていない未練にどう境界線を引くかとか、ぜーんぜん女としてみてくれない恋人をどう振り向かせるかとか、いろんな闘いが用意されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
これが複数レイヤー、複数キャラクターで同時進行する複雑さが、この物語の面白さ…なのかな?
というわけで、現状の手札をザラリと確認する感じのエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
いやー…琴子がドヤ顔でスペシャリスト面する度、そのとなりで重たい感情籠もった視線が彼女置き去りに交換されてるのが、道化感凄いね…。
怪異事件を唯一解決しうる名探偵なのに、何処か壊れて空回り。
そんな琴子の強味と弱味が、よく見えるお話だったと思います。この事件を奇貨として、一気に関係を詰めれるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月13日
あるいは、紗季さんは過去を振り切って、持ち前のマトモさを活かす生き様を見つけれるか。
謎解きと並走して、恋と人生の物語も転がっていきます。
行き着く先はいずこか。次回も楽しみ。