ID:INVADED を見る
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
昔者荘周夢に胡蝶と為る。栩々然として胡蝶なり。
自ら喩しみて志に適えるかな。周たるを知らざるなり。
俄然として覚むれば、則ち蘧々然として周なり。
知らず、周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるかを。
周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。
”『荘子』斉物論第二”より
そんな感じの、井戸の中で見る井戸の夢、悪夢の過去編第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
今回のタイトルには日本語訳がない。
『INSIDE-OUTED』…”裏返しの世界”と言った所か。ミズハノメの中のミズハノメ、夢の中の夢。
それは取り返しのつかない過去であり、改変可能な現実でもある。
こういう形で鳴瓢のグランドゼロを見せて、ただの過去編で終わらせずより凶暴な、切実な内面へと繋げていく構造は、非常にこのアニメらしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
同時に鳴瓢が体感する(様子を見ることで、僕らも擬似的に巻き込まれる)混乱は、彼が位置する”過去”の上部構造を疑わせる。
井戸の中で見る異土の夢が、時間を巻き戻した現実そのものであるのならば。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
現実と規定され得るものが、ミズハノメが生み出した夢でないという保証は、もう何処にもない。
夢と現実は違うものと、カエルちゃん…飛鳥井木記は言う。しかし殺され続ける夢は、彼女を苛み殺す。
妄想は侵食性の危うさを常に秘め、頭の中に抱え込んだものはいつか現実に這い出してくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
現実に存在するものは夢に取り込まれ、その夢が現実の形を変えてくる。
老子、あるいはディック的な入れ子構造が、過去/現在という軸を超えて顕になってくる。
そのメタ構造だけなら冷たく空回りもしそうだが、既に壊れた鳴瓢が夢のような幸福を守るため、今までは秘められたいた殺戮の只中に飛び込む具体的な描写が、異常な熱量を与えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
鳴瓢は酒井戸と同じく、カエルちゃんの悲惨に憤り、彼女の声を聞く。夢を共有し、守るために殺していく。
(鳴瓢にとっては)過去の記憶という夢に突き動かされた予防殺人は、ジョン・ウォーカー率いる殺人鬼軍団の凶行と、何が違うのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
警官としての正義と、人としての愛。それすら血みどろの悪夢を生むのなら、いつ、何処へ目覚めれば良いのだろうか。
鳴瓢は、目覚めても…目覚めればこそ辛そうだ。
それは前へ進んでいく最新話であり、彼が歩めなかった過去であり、別の方向へと紡がれていく未来でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
夢/現実、警察官/殺人犯という境界線と同じく、時間の隔たりもまた、繰り返される覚醒の中であやふやになっていく。
今回、井戸端の描写は一回もない。それが存在する”現実”がない。
エピソードを支配する、底のない井戸(それはつまり”穴”だ)へ落ち続けるような、不確かな落下感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
それは多分妻と娘を奪われて以来、鳴瓢の頭の中でなり続けている雷鳴と同じ、不確かな理不尽の追体験だ。
そんなはずはない。夢でなければいけない。
心の何処かでそう、壊れた現状を否認しながら。
鳴瓢は殺人鬼を自殺に追いやり、名探偵として井戸に潜り、監獄に閉じ込められて生きてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
そんな彼が、井戸の中の井戸に落ちることで自由を…牢獄から抜け出した程度では脱出できない、世界と脳髄の中の”穴”にはまり込むのが、今回の物語だ。
いつものごとく、いつもより、陰惨で辛い。
物語は覚醒から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
死んだはずの娘、壊れたはずの日常。守りたくて、どうしても守れなかったもの。
椋ちゃんの悪態を(僕らも)幸福に聞きながら、鳴瓢は目を覚ます。
それが井戸の中の夢だと自覚しながら、彼は光を浴びる。
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取り返しがつかない時間、全てを引き裂いた傷、殺人鬼に成り果てた自分。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
それらを規定する現実認識を保ったまま、これが良く出来た(出来すぎた)仮想だと認識しながら、復活の奇跡に鳴瓢は目を見開く。
タイムリミットに焦った彼が、一番最初にしたこと。
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それが妻子へ抱擁であることが、彼という人間の根っこを教えてくるような気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
夢と分かりつつ、暖かな光に浸る。夢だからこそ、あの時出来なかった悪夢を成し遂げる。
鳴瓢は日常という光りに包まれながら、非常に暗い殺意に己を照らしていく。
(この呼び方が適切であるかまだ判らないが、便宜上)”一回目の世界”で、妻子をタイマンに殺される前。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
未来も知らず、失われるものの愛おしさも理解らぬままの”警官”鳴瓢秋人は、人を殺すことなんて考えもしない人間だったのだろうか?
頭の奥に殺意を抱え込んだ、危険な犯罪予備軍だったのか?
それはこの”二回目”では判らない。僕らが知りうるのは、理不尽な稲妻によって全てを砕かれ、殺しも殺されも経験した後の、荒んだ鳴瓢だけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
彼はそのような、不帰の変化と知識、認識を背負って”二度目”の捜査…殺人に挑む。
座って待ってたら、クズがこの家を壊しに来るんだ…。
鳴瓢はスーツ居並ぶフツーの捜査本部に背中を向けて、チート知識でいきなり犯人を言い当てる。事件のど真ん中に飛び込み、制圧にかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
椋ちゃんの拳がずる向けた死体を見てる側としては、それが”正解”であることは判る。だが、夢の中の住人には狂気だ。
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そんな状況でも、百貫さんは鳴瓢を気にかけ、彼の後を追ってくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
扉を開けて、内側に入ってくれる。そうすることで、外側は内側と繋がり、『大きな内側』へと変化していく。
タイトルの『INSIDE-OUTED』を受けてか、今回扉を開け、内側へ他人を入れる描写は多めである。
だがそうやって滑り込んだ場所が、自分を阻害する”外側”に裏返しにされかねないことを、この物語は幾度も描いてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
正義と愛のために人を殺した鳴瓢は、奴らと似通いすぎた存在になってしまった。
『それこそが”名探偵”の資格だと』ミズハノメは言う。『殺人鬼と名探偵の境界を、切り崩せ』と。
今まである種のお約束、作品世界を成り立たせる前提として描かれていたこの境界線を、リアルに、グロテスクに超える描写が今回乱発される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
鳴瓢は殺す。
挨拶をし、踏み込み、”タイマン”名乗ってる癖に女子供をボゴボゴしたクズへ、ルール無用のデスマッチを仕掛ける
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タイマンのいい塩梅のMMA描写とか、殺し合い演出してるくせに銃持ち出されるとは思ってない壊れっぷりとか、今までの空白を埋める良いバイオレンスである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
同時に『オメーらがこのサイコスリラー越しに見たがってる暴力、”これ”』と、情け容赦なく叩きつける倫理性も良い。エンタメじゃねぇんだ。
エンタメじゃないものをエンタメに加工して、全世界に放送する探偵小説の、深夜アニメのヤダ味。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
それにこの作品が自覚的なのは、ハカホリとその模倣犯を描画した連作からも感じ取れる。
ジョン・ウォーカーが頭にいなくても、暴力と嗜虐は感染する。非常に危ういものを、フィクションもリアルも扱う。
この話はそういう、物語が生まれたときから持っている越境性、感染性というものにも、鋭い視線を向け続け、必死のスケッチを続けているように思う。舞城の過去作品と、全く同じように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
何故鳴瓢は、”銃という理不尽を抱え、しかし”タイマン”で勝ちに行ったのか。
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それは自分の頭の中で延々と鳴り響く理不尽、それを覆し得なかった敗北感を、嘘の物語と知りつつ突破したかったからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
『コイツは闘士気取りのクズ野郎で、俺はそれに勝てる。娘を守って、悪を正し、真実にたどり着ける』
そういう物語を、仮であっても構築したかったのだと思う。
その結果が眼球むき出しのスーパーサディスティックで、この領域に鳴瓢は百貫さんを入れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
『アンタの仕事は、殺すことじゃなくて助けることだ』と、壊れてしまった理想を預けるように、カエルちゃんの顔をしていた飛鳥井救出へと差し向ける。
自分が行く体力と資格は、タイマン殺しで使っちまった
全てが都合よく行きそうな”二度目”の物語の中で、鳴瓢は不可逆の殺人者として、あれだけ憬れている『助ける/聞く』役割を百貫さんに譲ってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
俺は殺す。それが出来ると思うからそうして、間違え壊れ続けていく。
”一度目”にあったかも知れない、スーパーヒーローとしての鳴瓢。
夢と現実の境界を飛び越え、過去と現在を超越しても、鳴瓢はそこにはもう戻れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
殺し、殺された記憶を抱え、その稲妻によって焼け焦げた自我と一緒に、鳴瓢は”未来”の超越的知識を抱え、人を殺す。
それは酒井戸として知り得た殺人犯の弱さを、自死に繋げた過去と同じだ。
彼は我慢しなかった。人を殺せるほどの真実を井戸から持ち帰ったら、許されざる悪党を言葉で死に追いやった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
出来ると思ったから。そういう超越を、俺は手に入れているから。
これまで鳴瓢が歩んだと、描写なく描かれてきた衝動の暴走。それが今回、生身を伴って描かれ続ける。
初めて会うはずなのに、幾度も出会ってきたその顔は、強い視線をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
カエルちゃん…によく似た女性は、”二度目”の、そして多分”一度目”の現実でも、夢の中で幾度も殺され、タイマンによるその終わりを望んだ。
雷鳴のような花火が、緑色に染め上げる世界。
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そこへと、鳴瓢は扉を越えて踏み込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
それは漏れ出した夢、共有される幻想であって、不可逆に動かしがたい現実ではない。死んでも目が覚めて蘇り、現実は残酷に続く。
ミズハノメが生み出す、深層意識の”世界”。井戸の奥がそうであったように、この夢もまた、現実へと影を伸ばす。
飛鳥井の瞳から溢れる、頭の中の地獄。それを共有する鳴瓢は、酒井戸ではないのに非常に酒井戸的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
犠牲者の声を聞き、その痛みを思う。ずっと酒井戸≒/≠鳴瓢は優しくて、だからあまりにも苦しい。
マジタイマンクソ野郎だな…正しい書き方だ。
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飛鳥井の特異体質を悪用し、連続殺人鬼志望のワンダーランドを、頭の中に作る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
ジョン・ウォーカーの悪辣に、鳴瓢ならずとも反吐が出そうだが、夢の中の出来事は罪には問えない。
だが幾度も殺される夢は、飛鳥井の現実を侵食し、不可逆に痛めつけていく。
ゾリっと肉面を削がれた犠牲者も、夢の中の妄想でしかない。カオソギは何も悪いことはしていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
『んなわけぇねだろ!』と、鳴瓢は車椅子から暴力を振るい、飛鳥井を少しでも楽にする。
オメーにとってはボーナスステージでも、殺される側には地獄なんだよッ!!!
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そんな酒井戸も鳴瓢もずっと寄せてきた、強すぎる共感、その具現としての暴力は、夢の構造を壊していく。サディスト共の、身勝手が過ぎる暴力の押しつけも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
眼が覚めれば、夢の世界にはいられない。
その可逆性はしかし、飛鳥井も鳴瓢も殺人鬼どもも楽にはしない。
タイマンは肉の痛みを求めて、現実で飛鳥井を誘拐し、殺そうとした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
この段階では頭の中の出来事でしかない暴力に押されて、園田は現実の肉面を削ぎ始める。
そして繰り返される痛みは井戸の中から漏れ出して、人の心を壊していく。雷鳴だけが、世界の全てであるかのように焼き付けていく。
夢と現実の境界は確かにあるが、その堅牢さを信じきれない強い侵食。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
”二度目”に降り立った時は未来の知識を抱え、超越的な存在だったはずの鳴瓢は、タイマンに肉体を壊され、飛鳥井の秘密を知って、どんどん切実さを増していく。
こんな真実、俺は知らない。
認識を揺さぶられつつも、鳴瓢はあくまで被害者の方へ、苦しむものの側へと身を寄せていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
当惑の中足を止めるより、出来ると思ったことをする。未来において殺戮に結びつく、善意と衝動。それは”二度目”でも代わりはしない。
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”天井”というモチーフでエピソードを貫通しているのが巧い所で、最初目覚めた天井は『懐かしい』ものだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
椋ちゃんは思春期の悪態をつき、取り返しのつく過去が何処か遠く、ゲームのように流れていく。
しかし二度目の覚醒では飛鳥井の真実を抱え、あの時は見せなかった悲嘆を椋ちゃんが叩きつける
”一度目”では妻子に先立たれた鳴瓢は、死の恐怖に叫び、それを回避できた安堵を体験できていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
自分の手の届かない所で、愛する人は稲妻に打たれて死んだ。『死にかけたけど、助かってよかった』と安堵する未来は、訪れなかったのだ。
だから、椋ちゃんの嗚咽は『馴染みがない』言葉だ。
鳴瓢は井戸の上にある井戸、未来と現実から真実を携えて落ちてきた優位性を、飛鳥井(≒生きているカエルちゃん)と出会うことで失っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
スカしたチート顔は消え失せ、手に入らなかった幸福を己の感慨として受け止めていく。飛鳥井が苛まれている、この世の地獄に寄り添っていく。
タイマンにボッコにされ、タイマンをぶっ殺す非日常的行為が、やはり一つの分水嶺だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
椋ちゃんはそこで、いつもどおりの思春期真っ只中から、凄くシリアスな善良さを隠さない子供に変化する。
…というか、彼女を切り取るアングルが変わる、か。死んでなお、世界を善くすることを諦めない子だもんな。
生き残ったとしても、死活のシリアスな問題は何かを決定的に剥ぎ取って、不可逆の変質を起こしてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
じゃあ”二度目”も、座ってクソ野郎に妻と子供がぶっ殺されるの、座ってみてたら良いのか?
答えの出ない問を、鳴瓢は越境し、衝動のままに行動していく。それが何を生み出すかは、井戸の底だ。
再び域を超えた鳴瓢は、今度は緑色の染まらない”現実”で飛鳥井と向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
名探偵として潜り解決してきた、数多の”世界”。そこで手に入れた真実で持って、縊り殺してきたクズども。
そいつらが、入れ代わり立ち代わり、頭の中に入ってくる。
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この事実を青ざめながら知ることで、名探偵の解決を待っている”世界”もまた、裏返しになっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
ミズハノメが潜れる殺人犯が、一つの犠牲者を共有していた理由。
カエルちゃんはただの象徴として置かれていたのではなく、凄まじい苦痛に苛まれたはて、クズの慰みものになって打ち捨てられていた。
たとえヴァーチャルな世界で、記憶と名前を失っても。(むしろ、だからこそ)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
鳴瓢は弱者の声を聞き、無念を晴らす根源を消しされない。だから真実よりも、そこに縛り付けられた犠牲者を求めて走り、死に、蘇ってまた走っていた。
その甘っちょろい姿勢が、真相には近かったのだ。
鳴瓢はタイマンの殺人を、ある種の療養として飛鳥井に差し出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
『これで、アナタは少しでも楽になりましたか?』
その問いかけに、犠牲者は頷く。伏せられた瞳に探偵/殺人者は己の為すべき衝動を確信し、犠牲者は謎を隠す。
ああ…確実にロクでもない…。
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飛鳥井は自分だけの秘密を持てないと、鳴瓢に告げた。実際あまりにグロテスクな苦痛の記憶が、僕らにも境界なく押し寄せてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
だが、その証言は信用できるのか?
犠牲者の痛ましさを鎧に、何か狂悪なものが蠢いていないかと、余計な勘ぐりを巡らせなければいけない捻じれ。
それが杞憂であり、『カエルちゃん…スマンかった!』と謝れる瞬間を待ちわびているが、この頭が良くて性格が悪いアニメ、どう備えても備えすぎってことはないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
カエルちゃんと、鳴瓢の過去。
二つのデカい札がオープンになった今、ミズハノメとジョン・ウォーカーが最後のミステリなのだろう。
奴が妄想を現実に、裏を表にひっくり返すからくりと、そのフィルター/犠牲者としての飛鳥井は今回判った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
だがジョン・ウォーカーが何故、飛鳥井を踏み台に殺人鬼を量産するかは不明なままだ。
そこに作品の要があって、多分凄く酷い、夢だと思いたくなるような不可逆な残酷がある…んじゃないかな。
ともあれ、鳴瓢は善意と衝動に突き動かされて、カオソギを死に追いやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
かつて過去、この”二度目”では未来でそうしたように、車椅子で殺人鬼達の領域に近づいていって、超越的に知り得た真実で縊り殺していく。
それは、やはり不可逆の歩みなのだろうか。
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一切の躊躇いのない、農作物でも収穫するような自裁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
それは鳴瓢を決定的に壊してしまった、手の届かない理不尽の極みだ。椋の消えた世界に、夫を置き去りにする残酷を知りつつ、妻は死出の旅に漕ぎ出した。
悪夢から醒めて、鳴瓢は微笑む。夢、ただの夢さ。
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『私が死んだら、それが合図だから』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
そう告げる妻の優しさが、待ち受ける破滅の予言なのは間違いがない。
稲妻に打たれる前には思いもしなかった悲劇が、線一本隔てた未来には待っている。鳴瓢は、それを嫌ってほど知っている。
だから、せめて夢だけは。
永遠の約束のように呟かれる、『アナタをおいて死ぬわけないじゃない』という言葉。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
それが非常に残酷に裏切られることを、娘を殺され、妻に死なれ、一人置き去りにされて殺し続けている鳴瓢は知っている。
知ってなお、酒井戸は井戸の奥で解決を待っている真実へと、幾度も駆け出している。
裏と表が区別できない、メビウスの輪の中で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
鳴瓢は温もりの幻影に瞳を閉じて、己が生み出した死体を見据える。
井戸の中の井戸、夢の中の夢。
惨劇を乗り越えたように見えて、繰り返される衝動は物語を、何処につれていくのか。
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そんな感じの、ID第九話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
いやー…むちゃくちゃ面白くて、むちゃくちゃ辛いな。
鳴瓢を、彼を主人公とするこの話を理解するためには彼が決定的に砕かれた過去は絶対に描くべきで。
約束された過去編なんだが、トンチキな道具組を活用し、不可逆の現実としても描きなおしてきた。
それは思い出される、見ているだけでの過去ではなく、触れて変えることの出来る夢だ…ったはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
しかし鳴瓢は未来と現実の優越性を、飛鳥井と出会い話すことで失っていく。ゲーム感覚で想い出を操作し、無念を晴らすルートは潰れてしまう。
後に待ってるのは正義の殺し屋…過去と同じ道だ。
鳴瓢が衝動に押され、不可逆に突き進む道。そこに愛おしい人の死体が転がっていること、彼がそれに何もなし得ないことは、相当に覚悟しておかないといけないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
それを深く突き刺すために、過去を変ええた達成感、正義が果たされる喜びを今回、視聴者に投げてきたんだろうしな。夢…ただの夢さ。
でも、いい夢だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
椋ちゃんも殺されず、家族みんなで幸せで善い世界を作っていくような、そんな甘っちょろい夢を見続けたくなってしまった。
でも、そうじゃなかった。それは井戸の中の井戸で、夢の中の夢を見ても塗り替えられない。
理不尽と不可逆は、静かに夢を侵していく。
今週のサブタイトルは、『私が死んだら、それが合図』だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
奥さんの絶命を、稲妻の中で聞き続けているから、鳴瓢は死ぬことも出来ず、井戸に潜って出てきて、クズを縊り殺し続けている。
”二度目”でも、あの血の池の地獄へと落ちることになるのか。
©IDDU/ID:INVADED Society pic.twitter.com/WF07e31ck4
それとも、夢の中の夢で掴んだものが何か、名探偵の道のりを切り開き、新しくより善い世界を生み出してくれるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
物語は続く。何が内側で、何が外側なのか判別も出来ないほど捻じれながら。
とても苦しく、面白い。最後までズッパまりで付き合うしかねぇな…。
次回も楽しみ。
しかし頭の中でしか犯罪を犯していない凶悪犯を、未来の知識を用いて予備的に処理していくって構造は”少数報告”っぽくて、つくづく舞城ディック好きだな、と思う。俺も好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月24日
内側と外側を超越した名探偵的知識は、内側しか見えないものには狂気でしかない。聖なる処罰者の未来は、おそらく暗いのだ。