ID:INVADEDを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
美しい夢を離れ、砂漠に帰還した酒井戸。
渦を巻く殺傷衝動に、己を取り戻した名探偵は抗う。
殺すな。考えろ。
ジョン・ウォーカーの喉元に突き刺さった、もう一つの数字の世界。終わりゆく世界を駆け抜ける、本堂町の意志。
様々な”世界”を貫通する、知恵の刃の行く末は。
そんな感じのジョン・ウォーカー正体判明! なるほどアンタだったのかやっぱりねぇ(後出し)回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
まぁ登場人物並べると、この人をハメるのが一番シックリは来る。
動機や背景はクライマックスで詰めるとして、今回は衝動に翻弄されていた名探偵と世界が、真実を武器に目覚めていくお話だ。
積み重なった謎が一気に暴かれる話で、いつものことながら情報と情動の量が多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
書きつつ思い出しつつ、感じたことをまとめていきたい。24分のアニメで流し込む情報量じゃないとは思うが、このパンパンになった脳髄を、キーボードで穴開けて外に逃がす作業が気持ちよくてね…(アナアキ顔)
アナアキ≒穴井戸はジョン・ウォーカーの接触を受けつつ、その意図に染まらないトリックスターだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
頭に開いた穴から様々なものを逃し、あるいは取り入れて、様々な変化をもたらす。
雷の世界と砂の世界、三年前と現在。裏と表が繋がった”INSIDE-OUTED”な、鳴瓢の”世界”の真相。
これを把握し玩弄することで、鳴瓢の怒りを煽って殺される。衝動に身を任させ、ドグマに落とす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
Dogma…各宗派の定説、あるいは否定的に独断的な謬見を意味する言葉。
『あいつは死んで良いやつだ』と。
あるいは『頭に孔を開けるのは救済だ』と。
言葉やドリルを凶器に人を殺してきた者たちが、既に一度堕ちている穴。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
名探偵になることで穴を塞がれ、数唱障害の苦しみの出口をなくしてしまったアナアキは、耐え難い苦痛を抱えていた。
彼が”世界”からすぐさま脱落するのは、能力のなさが理由ではない。
苦しすぎてとっとと死にたいから、死ねるなら死んでいたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
鳴瓢という凶器を逆手に取った、スケールのでかいスーサイド・バイ・コップ。
望まず塞がれた穴を、殺意でぶち抜いてくれる救済を待ち望む穴井戸を、自分を取り戻した酒井戸は殺さない。
刑事も名探偵も、人殺しじゃない。
井戸で知り得た殺人鬼の弱さを凶器に、粛清殺人を行う理由。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それを鳴瓢は『出来ると思ったからやる』と答えたが、その衝動を握りしめ、乗り越える道へと今回進んでいく。
それはかつて、タイマンを問答無用に銃殺した過去…現実の中のドグマ落ちの超克でもあろう。
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過去に踏み入られ、偽りを塗りつけられた怒り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それを鳴瓢は乗り越えて、ジョン・ウォーカーの証拠隠滅を拒む。
数に取り憑かれ、全ての数を覚えているアナアキの天才は、顔のない殺人鬼メイカーのアリバイを引き剥がす、最強の証人になりうる。
なら、殺すよりも語り合うことを。
酒井戸=鳴瓢が考え、見抜くアナアキの苦しみ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それを逆手に握って、人殺しくらいしかすることのない弱虫を縊り殺してきた過去と、今回の対話は正反対だ。
その苦しさに寄り添って、頭部に穴は開かないなりに理解し、開放する姿勢。
それは”世界”に閉じこめられた犠牲者に、常に寄り添う名探偵に似る
下の名前がない”酒井戸”から、アナアキ=穴井戸が持ち込んだ記憶を頼りに、鳴瓢秋人である自分へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
雷の世界と砂漠の世界が、等しく己の世界だと認識するのとシンクロして、名探偵と殺人鬼はIDentityを重ねていく。
そのことが、吹き荒れる衝動の嵐を強みに変え、不屈の推理で反撃する足場にもなる。
アナアキの過去を見てきたように推察することで、鳴瓢は自分を凶器に、殺人鬼を死体に変える以外の道へ踏み出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
その決断の土台に、”井戸の中の井戸”で体験し、血を吐くように決別した美しい夢があるのだとしたら、それは切なくも力強く、美しい。
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自分に寄り添い、追い抜いていく名探偵を、穴井戸は眩しく見つめて、死ぬ以外の道を考えるようになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
頭骨に穴を穿たなければ、けして楽にならない数の嵐。
それは鳴瓢の頭を埋めた砂漠と同じくらい、あるいは妻子を奪われ鳴り響いた稲妻のように、強い苦しみだったのだろう。
僕は各話サブタイトルに選ばれる”世界”が、被害者であり加害者でもある鳴瓢自身の心象と重なるのだろう、と思いながらこの作品を見てきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
鳴瓢はバラバラであり、狙撃に晒され、拡張され、落下し、閉ざされ、不条理な雷鳴と乾ききった荒廃に晒され、殺人鬼を殺す殺人者となった。
タイマンを筆頭に、ジョン・ウォーカーによって衝動を増幅させられた加害者達。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
彼らと似通い、しかし『カエルちゃん≒飛鳥井木記を殺さない』という決定的な差異を抱えた鳴瓢にとって、『相手のことが判る』というのは凶器だった。
井戸に潜って知り得た、深層心理の弱さ。特別な犠牲を生む歪み。
それを押し付け、出口のないドグマに落とすことで、鳴瓢は殺人鬼を自裁させてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
そこには、彼らが抱えた”世界”への共鳴と、判ればこそ効率的に虐殺する捻じれがあった。
夢から醒めた鳴瓢は、怒りのドグマを乗り越えて、共鳴を解決につなげていく。
判るからこそ、見えるものもあるはずだ。
あるいは見られないことが、逆転の秘策ともなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
時間が自在に伸張し、空間を超越する夢の不思議。
飛鳥井にとっては逃げ場のない地獄となった特質が、名探偵には武器ともなる。
世界が滅びるまでの五分間、自分たちが死ぬまでの時間。
それを井戸嵐が隠すのなら、夢には無限が許されている。
穴井戸と酒井戸は消えたコックピットを探すために、真実共闘を始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
”数”に関する異常な興味は、”数を刻まれた世界”をマッピングする手助けになる。
誰かの手で死んだり、誰かの頭に穴を空ける以外の、別の道。
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”砂漠の世界”で名探偵二人が、膝を折って必死に真実を掘る奥底…滅びゆく”井戸の中の井戸”で、本堂町くんは存在しない額の穴を撫でる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
『ジョン・ウォーカーは、どういう殺人鬼なのか』
鳴瓢が残した資料と疑念を引き継ぎ、冴え渡る推理で解体していく。すっげぇふてぶてしくなっててカッコいいゾ…
砂嵐のように真実を隠す情報を排除し、犠牲者を並べ直して見える世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それは七つの曜日ごとに、七人の犠牲者を捧げる聖数殺人。
ジョン・ウォーカーもまた、アナアキと同じく数に取りつかれた存在だった。
…”セヴン”への目配せかな”、七”は。
本堂町くんは、”井戸の外の世界”で知り得た特権的な知識を活かし、アナアキの本拠へと一気に滑り込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
彼が抱えた謎の答えを、自分がドリルに頭突っ込んで手に入れた変化を、一足飛びに教えて近づく。
銃は置いて、言葉を使う。衝動に首輪を付け、乗りこなす。
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酒井戸が”砂漠の世界”で果たすドグマ超えを、本堂町くんも達成していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
アナタが他人の頭に穴を開けたのは、それが救いだったから。そうしてぶち開けられた風穴は、とてもシックリ来る欠落だった。
”井戸の中の井戸”の本堂町くんに、ドリルホールはない。だが、そこに吹く風を知っている。
欠落があまりに馴染みすぎて、失う前を想像できない。本物だと思えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それは、妻子をタイマンとジョン・ウォーカーにもぎ取られた鳴瓢が、夢に溺れつつ結局帰ってきたのと、同じ心理だと思う。
どれだけ綺麗に満たされたとしても、失う前には戻れない。
ごん太ドリルで穴を開けられた本堂町くんは、名探偵になる前の彼女には戻れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
その言葉で自分を覆う嵐をブチ抜かれたアナアキも、出会う前の自分には戻れない。
何かが削れ、だからこそ見える景色。
痛みと喪失と衝動を越えて、世界を見通す名探偵の視座。
それは今回、様々な人に影響し、拡大していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
理性の勝利…と結論を出すには全然早いが、正体の見えないものに踊らされまくったこれまでとは、風向きが大きく違う。
みてて奇妙にスカっとする回だ。人も死なないしね…。(Qなんでこのアニメ見てるの? Aマジ面白いからです)
本堂町くんの語る”真実”を飲み込んで、アナアキは他人の頭に穴を空ける代わりに、自分の中に溜まった数字を差し出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それを繋ぎ合わせ、現実に重ねることで、ジョン・ウォーカーの素顔が見えてくる。井戸嵐が晴れてくるのだ。
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アナアキが拒絶した、夢の中の殺戮。聖数殺人を成り立たせるための誘惑を辿って、女達は真実を強力に手繰り寄せていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
今回は東郷さんがバリバリ推理を巡らせて、状況を乗りこなす逞しさをたっぷり見せてくれた。なるほどなー…全部終わったら、百貫さんと幸せにね!(生きてたらな…)
海外出張の時差トリック。存在し得ないもう一つの写真と殺意。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
証拠を手繰り寄せ、ジョン・ウォーカーの喉元に真実を叩きつけたところで、ちょうどよくタイムアップである。
”砂漠の世界”と”井戸の中の井戸”は同期し、観測と認識が穴を繋ぐ。
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自分の真実と未来を、頭の中に詰まったモヤモヤを魔法のように見抜いて、消えていった女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
アナアキが本堂町くんに向ける視線は、なかなか複雑な色彩を帯びていて面白い。
”井戸の中の井戸”が滅ぶとしても、現実なるものに帰還した名探偵達は、どこかで”世界”を共有している。
なら、不可思議な出会い方をした『もう一つのアナアキとその犠牲者』の思いも、何かに繋がっていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
井戸が井戸端と紐付いた釣瓶によって、何かをすくい上げられるように。
断絶した他者は繋がり、互いに影響を受ける。
幾重にも重なる夢。そこで生まれるのは、殺意と痛みだけじゃない…はずだ
砂漠の世界に揃い踏みした名探偵。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
聖井戸は”本堂町小春”という名前/認識/IDを与えられる/思い出すことで、心地よい欠落を取り戻す。
井戸の中の井戸から生還した名探偵が、告げる仇の正体。砂に塗れた素肌の拳を、鳴瓢は強く握りしめる。
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それは今回の冒頭、ジョン・ウォーカーに踊らされんとした酒井戸と、似て非なる仕草だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
生の質感を拒む手袋は外され、衝動を乗り越える思索にまみれて、ようやく捕まえたコックピット。
ドグマを拒絶し穴井戸と協力したからこそ、殺し殺され以外の結末も見えてくる。
答えはいつでも、犠牲者の側にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
そう信じればこそ、酒井戸は炎の世界を幾度も越えて、死んでも諦めず真実に近づいていった。
出口と入口が複雑に重なる、名探偵達の迷宮。そこから抜け出す鍵もまた、カエルちゃんの側にある。
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井戸嵐のど真ん中に開いた穴から、三人が観測されることで時間は同期し、名探偵は現実に帰還する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
数多の罠が張り巡らされた、灰白質の迷宮。その最深部まで潜り、美しい夢に溺れ乗り越えて初めて見つけた、邪悪なる偽神の素顔。
あるいは、断絶を越えて生きるための指針。
作品全体を貫くミステリの答えだけでなく、キャラクターの生き様への解答も、しっかりグリップできた感覚。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それを真摯に問うために、非常に無残な殺戮と、それに切り刻まれる魂を書く必要がある。
だからまぁ、この話は…舞城王太郎の作る物語は、毎回血腥いんだと思っている。
三人の名探偵が、知恵と決意を組み合わせて開けた風穴。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
その先にいるジョン・ウォーカー=早瀬浦は、ミズハノメの心臓たる飛鳥井木記を表に出す。
水の中に囚われた、井戸の奥の死体。
その夢が、どのように、何を生み出してきたのか。
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謎解きは次回、決戦はその先である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
カルマに囚われた名探偵たちが、黒幕の思惑を超えて真実の風穴を開ける。
作品全体に及ぶ”穴”あるいは”井戸”のモチーフが、ようやく貫通先を見つけたような、爽やかなエピソードでした。
いやまぁ、こっから先どうなるか安心しちゃいけないんだけどな…。
サブタイトルは『世界を作り出した神のように』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
ミズハノメによる夢の侵略で、殺人鬼を凶器に聖数殺人を描いたジョン・ウォーカー。
人の悪意も痛みも自在に操る超越で、やつは何を望むのか。
さー、クライマックスですよ!
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仕掛けられたドグマ落ちを乗り越え、鳴瓢が”殺す”以外の解決を見つけてくれたのも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
欠落もまた己自身だと、”現実”で掴んだ実感をアナアキに語ることで、本堂町くんのふてぶてしさが見えたのも。
頭の中に詰まったアナアキの苦しみと、それを外側に出しうる可能性へ彼が進んだのも。
今まで見せた血みどろの絶望を、引き裂かれるような痛みを無下にせず、真実に向かって進んでいる手応えのある描写でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
渦を巻く嵐に踊らされる宿命を、意志と思索で飛び越え、穴を開けた名探偵達。最後の戦いは近い。
そしてその先に、何が描かれるか。次回も楽しみ。