petを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
風の導きで、ヤマ親の荒廃した真実を目の当たりにしたヒロキ。
司との衝突、”会社”からの逃亡を経て、悪意と狂気がジワジワと迫る。
黒い霧に取り込まれ、司は我が子を悪魔に捧げていく。狂った歯車は、誰を巻き込み潰すのか。
風よ、蝶よ…この檻の出口を教えてくれ!
そんな感じの、群像の業と愛が絡み合う超修羅場サイコサスペンス、加速の第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
登場時の幼さを振り切り、どんどん人間の正道を進んでいくヒロキ。
彼が離れることで、更にバランスを崩し奈落に落ちる司。
何も知らぬまま、無邪気な思慕を利用される悟。
ペットたちの生き様が、複雑に絡み合う
ここに潰されてなお生きてる林さんとか、可哀想極まるメイリンの未来とか、”会社”の悪徳に完全適合してる社長とロンとか、まだ情を残すジンとか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
色んな連中の業が混ざりあって、極彩色の混沌である。むちゃくちゃ面白いが、無茶苦茶しんどい。
あ、桂木さんもどうなるかなぁ…。
ヒロキは熱帯魚屋の中で、一人膝を抱えて過去を思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
他者への感応が強すぎ、自分を保てなかった過去。そんな自分を水槽から出して、己の水に取り込んでくれた司。
生きる糧を与え、愛される意味を教えてくれた人。
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司は父であると同時に母でもあり、肚の中に無防備なヒロキを匿い、養う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
登場人物は皆男性なのに、”ヤマ父”ではなく”ヤマ親”と呼称されるところに、否応なく全人格的な繋がりを持ってしまう特殊性が現れているとも思う。
そこには確かに、安らぎと温もりがあった。嘘じゃなかった。
petみてるとホント、ちょっとしたことで涙腺ぶっ壊れちまうので色々困ってるんですけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
幼いヒロキが食べてた(司が食べさせた)のが”ホットケーキ”なのが、本当に辛くて。
それは林を潰したストレスに耐えかね、拒食で死にかけてる司にヒロキが差し出した”糧”なわけで。
優しくされ、命を繋いでくれた思い出がそのメニューにあるから、自分の大事な人を守るために不器用ながら、ヒロキは”ホットケーキ”を作った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
そういう当たり前の、嘘のない魂の交流が二人にはあって、ヒロキはそれを覚え続けている。大事に抱えて、壊さないよう守っている。
でも司は、それに反するような事を沢山している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
自分をペットと呼び、理解できない言葉で便利に使い、ヤマ親を潰す。
自分が知っていたはずの、愛で満たされた水槽。それが全然別のものであることを、ヒロキは知ってしまった。
イメージと現実のギャップが、彼を悩ませる。
これに耐えかねたからこそ、”会社”が差し出した悪徳の食卓に同化出来ず、司は嘔吐した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
そういう生理的な反応、悪に染まりきれないイメージの暴走に苦しむ彼の姿は、滑稽であり憐れであり、とても痛い。
そんな彼も”ホットケーキ”は食えたってのが、また切ねぇ
孤独に膝を折るヒロキに、帰国した司は甘くすり寄る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
『いつもの水槽で話そう』
二人だけの特別な空間に入れば、関係は修復される。親に抱かれれば、全部忘れる。
そういう魔法が通用しない成熟を、ヒロキは手に入れている。
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『司がヤマ親を潰したんだ!』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
ヒロキに事実を指摘され、司は動揺し嘔吐を隠す。
壊れかけの人格からはみ出す、己という水。
限界が近い人間性をなんとか抱え込みながら、司はヒロキの指弾そのものではなく、林と話した部分にしがみつく。
なんだ、まだ潰れていないんじゃないか。
正しさへの釈明を求めるヒロキと、自分の過ちを塗りつぶす可能性にすり寄る司。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
親と子の関係性はここで逆転…崩壊している。
何も知らないヒロキを、立派に導く”大人”の仮面を、司はもう維持できない。
林さんと別れた時の”遺言”が、その仮面を被らせ、道に迷わせた。
会社に従順に、良心を殺し他人を潰す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
その生き方の果てに、ヤマ親すら殺す血まみれがあり、自分を血の中で窒息させる地獄がある。
そこに喉まではまり込んだ司と、抜け出しつつあるヒロキはすれ違い続ける。
救いを求める司の苦しみに、ヒロキもシンクロしきれない。
それは”仕事”を通じて、司との充足された関係以外のものを見て、人のあり方を否応なく考えた結果だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
精神を潰す超常の”仕事”も、熱帯魚屋の普通の”仕事”も、顔のない他人と関わる中、ヒロキは学んだ。
やりたいこと、してはいけないこと。
親の与えてくれるものだけじゃ、子供は満足できない。
そんな自主性を殺しきらず、ペットではなく”人間”として育てたからこそ、今すれ違っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
ヒロキを檻から出して、対等に暮らしたのは、多分林さんがそうしてくれた思い出が、司の中で大事だからだ。
自分がかつて受け取った生きる糧を、”子”に食べさせてやりたかったのだ。”ホットケーキ””と同じだ
だがそんな思いは、厳しすぎる現実にバランスを失い、司の瞳は目の前のヒロキを見ていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
その視線を見て、ヒロキは司の水に入るのではなく、自分が司を飲み込み、記憶を覗く選択をする。
やっぱ、ヒロキのサイコパワーは圧倒的なんだな…。
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記憶の中で覗き見た、かつての記憶。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
『鍵なきペット、従順なベビー』という発想は、(林の言葉通り)”会社”で生き残るために、司が差し出したものだった。
キツい…被虐待児が、より効率的な虐待法を支配者に差し出して、犠牲を増やす構造すぎる…。
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『他人の頭の中にある輝きを潰して、”会社”の言いなりに生きてるなんて良くない。一緒に逃げよう!』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
ヒロキの提案はとても真っ直ぐで、泣けるほどの正しい。そう生きられたら、どれだけ良いか。
しかし林も司も、そう出来ないから潰しあった。子供のイノセンスから程遠い場所で、罪人は生きるしかない
林の”遺言”に従って、会社の悪辣なルールを内面化し、沢山の犠牲を生んだこと。そのどん詰まりとして、林自身を潰してしまったこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
(無)選択の重さは十字架となって、司をアンビバレントに縛り付けている。
本当は、正しく優しく生きたい。ヒロキが今、檻の向こうに見据えているように。
でもそうは出来なくて、罪を沢山重ねてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
圧倒的な過ちの中で、それでも正しく生きようとした林さんは、”会社”の走狗になった自分が潰した。
望むままに、あからさまな正しさに従って生きることは、あまりにも難しい。
その重たさに屈した俺が、間違っているとでも言うのか!
司は激情の水で世界を飲み込み、ヒロキの提言を拒絶する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
俺を否定するな。俺の過ちごと、全て飲み込め。
とても身勝手で、凄く根源的な欲求が暴れ狂う。自分を否定せず守ってくれた存在と、引き離されたあと自分で潰しちゃったからなぁ司…。
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”親”が押し付けてくるエゴごと、ヒロキは精神空間を飲み込む。現実に帰還した時、立っているのは”子”で、膝を付き見上げるのは”親”だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それはサイキック能力の強弱、人格の安定性、見据える世界の広さが反映された、人間としての位置取りなのだろう。
願うなら、ずっと司を見上げたかったろうな…。
様々な体験からヒロキが考え、構築した”正解”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
それを、間違えきった司は飲み込めない。飲み込むわけにはいかない。
それが正しいと認めてしまえば、自分のこれまでも、そう生きるよう言ってくれた林さんも、否定することに鳴る。
…でも林さんの正しさを潰したのは、一体誰だっけ?
目指すべき善と愛がどこにあるのか、司はもう見えない。自分が囚われている迷宮にヒロキを飲み込むべく、檻に閉ざし扉を塞ごうとするが、ヒロキは自分の足で進んでいってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
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檻の向こうから、甘くささやく”親”の言葉。その背後に危機が迫っていることを、ヒロキはガラスの反射で見通す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
司にとっては自分を縛り付ける檻なのだが、ヒロキにとっては世界を知る鏡。
一枚のガラスは滲む血、二人の決別を反射してあまりに分厚い。そら、ヒロキも泣くわ…。
そのガラスは、外から見れば簡単に壊せるものであり、司にとっては絶対の結界である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
水はなにかに支えられなければ、形を保てない。
”会社”という檻に不本意に縛られつつ、そこにアイデンティティを預けることしか出来なかった、相反する鎖。
司はそれに縛られることでしか、自分を維持できないのだ
その檻の中には、ヒロキが入っているはずで、べきだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
林に捨てられた哀しみを癒やし、己の愛を注げる相手。支配し、信頼するに足りる特別な相手。水がなければ生きていけない魚。
それが逃げ出した痛みが、司を更に壊していく。
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ヒロキ-司の親子/支配体制が崩壊する只中で、司-社長の親子/支配体制が顔を出すのはグロテスクで、的確な描写だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
あり得たかもしれない小さな幸福は、司自身の手で壊される。
流れる血など気にもしないまま、”親”は魚を踏み潰せと、残酷に縛り付けてくる。
水槽を壊し、魚の命を踏みつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
司の暴力性が目立つシーンだが、ここでは”魚”だけではなく”水”も無碍にされ、命を失っている。
檻は自分を閉じ込めるだけでなく、形を保つものでもあった。
林を壊し、ヒロキと離れることで、”水”を象徴とする司は崩壊していく。半分は、己の手で。
自業自得と嗤うには、あまりに不条理でやるせない暴走。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
司のグロテスクな”負の人間らしさ”と、ヒロキが目覚めつつある”正の人間らしさ”では後者に飛びつきたくなるけど、それはヒューマニティの両面で。
ヒロキが”マトモ”になれたのは、司がヤマを分けてホットケーキを食わせたからなんだよなぁ…。
煙草を啜る悪党どもは、崩壊した檻を嘲笑いつつ、本心を隠して騙し合う。メイリンたんをこういう悪い場所につれてこないで頂戴!!!(モンペ顔)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
社長が飲み込むストロングな悪徳を、ロンが灰皿で拾い上げているのは印象的。悪徳の共犯関係。
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桂木さんは知らぬ間に、”会社”への従順を刷り込まれ、社長のペットになっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
自分が檻の中にいることすら気づかない、ある意味完全な支配。
悪党どもが腰を下ろすその足場は、林さんが潰される前仕込んだ爆弾で、グラグラ揺れている。ホントどうなるのかなぁ桂木さん…。
リビングの片隅で、今後を話し合う四人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
潰すの殺すの、むき出しの悪意が絡み合う空間。
メイリンは表情を変えないけど、そこに漂うどす黒いものを遮断することも出来ず、蝶々がボーボー燃え続けてんだろ…? キツいわーホント…。
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司はこの土壇場で、頻繁によだれを拭う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
壊れて(壊して)しまった精神の檻、関係性のマトリクスは彼の心から”水”を漏らし、それは身体的な反応として溢れ出している。
壊れた水槽。そこにもう魚は住めないし、水も形を維持することは出来ないのだ。あー…自分で書いててキツい!
林を潰した事実を悟に知られるのを、司が病的に恐れるのは、ただ報復を恐れるばっかりじゃないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
彼は自分の過ちを、取り返しのつかない過去を指摘されることを拒絶する。それはヒロキとの衝突からもよく見える。
ヤマ親殺すなんて、間違ってるよ。
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そう言われたくないから、事実を隠蔽したまま悟を潰し、ヒロキを取り戻す算段を探る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
そのために、メイリンの”蝶”をトリガーに、悟にヒロキの心を改変させる手筋を思いつく。
でも自分の中の大事なものを、書き換えられたくないから林さんと戦ったんだろ、アンタ…。
矛盾を指摘することは、もう司を正すキッカケにはならない。ボロボロに崩壊した理性と論理を抱えて、行き着くところまで行くしかないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
誘導された”思いつき”を自分から口にした時の、ロンの『かかった…』という表情が邪悪。
はー…サイコマフィア怖いわぁ…
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ブッチギリに人非人なロンも、ジンには暖かな情を向け、同時に便利なコマとして使う。それが”会社”のやり方で、その檻から出ることをロンは望まない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
健気な慕情に突き動かされ、勢いよく電話を取る悟。純情少年は、渦を巻く陰謀を知らない。
こっちも大変なことになりそうだぁ…。
ジンのお母さんが、上手く自分を保てない(からこそ、優秀な潰し屋だった)こと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
そんな彼女に、林さんがイメージを分け与え、よりQOLの高い生き方へ導いたこと。
既に終わった物語は、世代を超えて繰り返される因果に繋がっている。
林さん、アンタやっぱ根っこが”善”だわ…。
ジンは個人的な想い出を罠として差し出し、悟を引き込む。そこには微かな共鳴がある…と思いたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
悟はヤマ親と”女”への慕情に、明るい光を見出す。それが錯覚なのか、扉を開け檻の外に出る兆しなのか。
物語は加速しつつ、まだまだ続く。
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悟のキメェ頬染めとニヤケに、うっかり泣いてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
歳相応のバカっぽさと浅はかさで、満たされた人生を夢見る少年。親と恋人、友達と一緒に幸せに暮らす未来をノンキに夢見てるから、こういうバカ面にもなるんだろう。
…なんでそういう、当たり前の幸福がこのガキ達には与えられねぇんだ!!
そう叫びたくもなるが、当たり前は”当たり前”では当然なく、様々な場所に不条理と理不尽が牙を剥いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
petが身を置く荒廃の極地ほどでなくても、ままならないもので世の中は満ちている。
それでも人は考え、出会い、変わり、檻の向こうに飛び出そうとする。そうなってしまうものなのだ。
檻から飛び出しつつあるもの。その只中で光を夢見るもの。檻と自分を壊し、それでも壊れきれないもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
様々な思いと業が絡み合う、サイキック犯罪群像劇はいよいよクライマックスです。
マジ面白い。マージで面白いッ!
それぞれの生き様がどこに流れ着くか、見守るしかねぇ。次回も楽しみ。
pet追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
”会社”の思惑に同質化した司は、メイリンの”蝶”を餌にヒロキを檻に閉じ込めようとする。
かつてあったその描写に、僕は檻からの脱出を祈った。
蝶は希望へ羽ばたいていくのか、暗い檻にまた閉じこめられてしまうか。
先は全然読めねぇが、少しでも幸せになってくれ…https://t.co/6R2NczDHNr