BNA ビー・エヌ・エー第二話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
獣人達の街、アニマシティで新たな生活を始めたみちる。
当たり前に役所があり、当たり前に嘘と暴力が幅を利かせる街に飲み込まれ、少女は過酷な現実を知る。
弱きものは食われ、更に弱きものを喰い散らかす。
そんな掟を前に、吠えることしか出来ないとしても。
そんな感じの、傷だらけの獣っ子人生アニメ第二話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
みちるの主観に濃縮した語り口は継続で、段々と街の顔が判ってきて、作品世界の中の常識(と、そこから外れたみちるの存在)とか歴史とかも見えてくる。
相薄暗くしみったれて、居心地の悪い獣達の異郷。
そこの生活感が、ジワジワ立ち上がってくるのは良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
獣と人の間にある断絶だけでなく、今回は男と女の境目に切り込んでいたけども、まー難しいところばっかりにツッコむね…。
最も古き獣人であろう大神さん…”雄”と、最も新しき獣人たるみちる…”雌”。
対極の二人は出会いからこっち衝突を繰り返すが、それが何を生み出して、街と世界をどう変えていくか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
結構どっしりと見るべきアニメなのかな、と思うようになってきた。
生活感がある描写、みちるのすげー地味な正義と可能性を味わうのが、結構楽しくなっている。好きなテイストだ。
お話は人に化けることが出来ない、みちるの不自由から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
獣人は皆、人の皮を被ることが出来る。それを引っ剥がして、己のままに振る舞うのは祝祭だけの特別だ。ケの日に仮装を続けているのは、ただのバカだ。
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しかしみちるは、爪を引っ込めることが出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
赤ん坊だって当たり前に備わっている”機能”を作動することが出来ない、出来損ないの新参者。
世界で(おそらく)唯一、人間から獣人に変わり果てた存在であり、獣のままでいるしかない、最も純粋な獣人。
主人公の特異性をこう出してくるのは、面白い
そもそもタヌキは人を化かすモノであり、みちるはタヌキ獣人としてもなり損ないだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
狼の孤高と強さを煮詰めたような、スタンダードの極みにいる大神とは大違いである。
差異は能力だけではなく、全ての存在に人間性を見るみちると、獣人と人間に明確な断絶を定める大神の間にも、大きく開く。
みちるの無邪気なHumanity信仰が、人間から獣に変じた特殊性から生まれるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
獣人達のスタンダードは、誰かを食らうBeastalityにあるのか。
ここらへんを、みちるの新たな旅程に乗せて見ていくエピソードと言えるだろう。このジワジワした生活描写が、妙に良い。
獣達の楽園でも、住民…ならぬ獣民登録はあるし、市民どうしの当たり前の助け合いも、法と秩序の守護者もいる。屋根と寝床を貸してくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
想定していたより人間っぽく、しかし十全な”人間らしさ”からは遠い荒廃が、良く顔を出す街。
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今回のエピソードで、獣人化は喧嘩の合図、自分を強く見せたいわかさの現れ、暴力性の発露として描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
そこから脱出し得ているのは、主役であるみちると、”嗅ぐ”狼の特性を過去への推察、調査に繋げている大神だけだ。
Humanityの皮を引っ剥がし、内なるBestialityを表に出す。
そうしなければ生きられない、荒廃した楽園の隅っこに、みちるは突き進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
しかし第1話でみちるを追い立てた”人間様”が、ぶん回していた鉄パイプがHumanityの具現ってわけじゃ、当然ないだろう。
獣相が表にでなくても、Unti-Humanityはあらゆる人間が持ちうる特性だ。
それを生み出すのが、人の内側ではなく外側で駆動していることを、今回の物語は静かに抉る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
女達が女として、獣の街で生きていく厳しさ。
それに膝を屈して、より弱きものを食い物に変えるBestialityを、みちるは否定していく。
彼女の力は直接相手を殴るのには使えないが、キモく変化し子供を救う。
タヌキの”化ける”という特性は誰かを騙し傷つけるのではなく、(自分すら知らない)新たな自分へと変化していく可能性へと繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
人であったがゆえに、人の皮を被れない少女。人であったが故に、人であることを無力に信じる少女。
みちるは、こ之世界のスタンダードに納まらない獣人だ。
みちるはスられた財布の中にあった、自分が人間であった証明…学生証に刻まれた”名前”を求めて、ラビットタウンへと進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
兎感の全然ない、追い込まれた女達の自衛都市。
名前を取り戻す代償として、求められたのは子供の教育
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俺は色々不自由な状況でも、自分より弱いもののために顔を作って、優しく接する人間にメッチャ弱いので、みちる
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
meets 子供たちのシーンで泣いてしまった…。
この街のボトムに落とされた子供たちは、自分の名前すら書けない。
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己が何者であるか、アイデンティファイする照明を持たないという意味では、みちると子供たちは同じなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
拙い筆致でなぞられる”ようた”と、それに続いて上げられる手は、彼らが一個の人間として生きていて、己の存在を叫びたがっている証明だ。
みちるは、それを子供たちに教えた。偉い。マジ偉い
ずっと冷たいトーンで切り取られてきたアニマシティが、この小さな教室ではホッと暖かくなるのが、僕には嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
状況に追い立てられ、誰も優しくしてくれない世界の只中で、それでもみちるは誰かに優しくしようとする。己の名前を取り返し、誰かの名前を刻もうとする。
それは何も間違っていない。人間として圧倒的に正しいHumanityであるけども、この町ではそれすらも、他人の飯の種でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
この暖かな交流が、売り飛ばされる奴隷に、少しでもハクを付けるための”調教”でしかない転倒が、アニマシティの冷たさを伝えている気もする。
現実の冷たさを大神は冷静に飲み込んでいて、人身売買の証拠が固まるまで、みちると子供たちを泳がせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
みちるがおずおずとパイプを伝って降りたビルを、大神は苦もなく駆け上がる。生粋の獣としての、身体的優越性。
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大神の”嗅ぐ”力は、他の獣人とは違うBeastyな知恵を感じさせる。彼は情報を集め、過去を再構築する”人間っぽさ”を持っている。(あるいは、ハードボイルドの主役に必要な”探偵っぽさ”か)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
しかしそれは、悪事を見過ごし、子供たちを恐怖に震えさせる結果へと繋がっている。そういうもんだと、狼は嘯く
でもホントにそうなのかと、半端者の獣人は無垢な視線で問いかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
獣の窮地を救う、絶対のヒーロー。
神と崇められる理想の権化が、人と獣の二分法に己を押し込めていて良いのかという将来の疑問を、みちるは見落とさない。
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揺るがない答えと伝説を既に手に入れた、最古の獣人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
凝り固まった現実に、例外種であるからこその疑問を投げ込む最新の獣人。
この二人の触れ合いが、おそらく作品世界を駆動させる大きなエンジンなのだと思う。作品を腑分けする構図としては、かなり鮮明だし分かりやすい。結構好き。
いがみ合うことしか出来ないBestialityを剥き出しに、強い男は弱い女を追い込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
長く続いた、世界の当たり前。それを当然と飲み込んだ結果、誰かを喰い散らかすことにした雌獣の集団。檻に入れられた犠牲。
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ここで、作中ほぼ唯一暖かだった”教室”の意味は反転しする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
子供たちは己を叫ぶ権利すらないまま、無力に泣くしかない。むき出しになった真実を前に、みちるは無力だが諦めることなく、無茶苦茶に暴れ倒す。
子供たちの獣相が、真実暴露と同時に顕になるのは上手い演出。
みちるは己も知らないまま、キモく手を伸ばして無茶苦茶にかき回すことで、檻を落として壊す。デカい尻尾で子供らを包み、守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
彼女が己の中の未知なる獣を開放すると、誰かが守られる。これは第一話から続くルールのようだ。
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大神が売獣奴に奮った正義も、街のルールに適応した女達が振るう暴力も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
何も知らないみちるを屈服はさせず、彼女はHumanとして当たり前の抵抗へ、必死に手を伸ばす。尻尾を膨らませて、傷ついたものを守る。
”守るもの”としての主役の描き方は、なかなか鮮烈だしいい感じだ。
しかし彼女は弱きものでもあり、街のルールに過剰適応したレディ・ギャングの絞め技を前に、何も出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
誰かを排除するために、力を使う。そういう当たり前に、みちるはなかなか適応できない。大神とは真逆だ。
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この街にだって、正義はある。獣人の半分を占めるHumanityは死んだわけじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
しかしそれだけでは掬いきれないやるせなさに、女は膝を曲げて、子供を食い物にする道を選んだ。そうしなければ、生きていけないと。
みちるはそんな”現実”に、苛立ちつつ己を吠える。
女子供は守られていろ。弱いものは頭を下げていろ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
大神のマッチョな正義に、みちるは断固抗議を繰り返す。賢いつもりの分別で、あり得るはずのない真実を見落とした、と。
確かに、私は人間だった。今は爪も隠せない獣だが。
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アイデンティティを保証するカードに、”種別”が刻まれる冷たい世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
そのなかで無意識の優越種”人間種”として、特権を感受していただろうみちる。
彼女は獣人の歴史も、そこから生みだされた当たり前の生き方も、当然知らない。
吐き出される抗議も、現実を知らねぇガキの寝言…
と、冷たく賢く切り捨ててしまうことが、果たして正しいのか。あるいは善いのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
自分が陥った状況を”病気”と言い捨ててしまうみちる自身にも、人間と獣の境目を問う叫び声は反射してくるだろう。
人であるということは、どういうことか。
獣であるということは、どういうことか。
子供たちに己の名前を教え、自分の名前を取り戻すために駆け回った今回、その一端が微かに見せられた気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
あらゆる人生がそうであるように、随所に明るいコミカルを匂わせつつ、同時にシビアで重たい話運び。
それが捕まえるものが、結構面白そうだな、と思える第二話だった。
みちるのガムシャラな善良さが、なかなか報われない世知辛さと、それでも吠え続けるタフさが好みだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
やっぱ”教室”のシーンが凄く良かったな…無力を押し付けられ、吠え声を奪われた獣にも、名前はある。
それを握りしめて諦めないことが、みちるのHumanityでありHeroicなのだろう。
しかし分断に満ちた世界では、過剰に”人間”であることを求めれば、己の中の獣性を無視し、あるいは敵視することにもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
そうなれば、己を鉄パイプで追い立てた人面獣心の輩と、みちるは同じになってしまう。
名前を奪われ、顔を作るしかない獣を深く知ること。
大っ嫌いと吐き捨てた街に潜り、獣に変じた己を知っていくこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
それが、みちるに用意されたクエスト…であり、そこを歩むことで彼女に関わる人も、彼女を取り巻く世界も変わっていく気がする。
ケモノ要素を上手く抽象化して、普遍的なネタと絡めれてる感じはするね。
みちるが巻き込まれ、思い知ることになった街の有り様。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月17日
踏みにじられる弱きものとしての、女であり子供である証明…学生証を取り戻して、さて、何処へいくか。
その歩みを見守りたくなる、第二話でした。面白かったです。
想定よりカッチリやってくれそうで、ある意味安心。次回も楽しみ。