かくしごと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
父と娘の日々は、可笑しくも穏やかに過ぎていく。
家の財政事情を心配してみたり、料理に挑戦してみたり、不用意にモテてみたり。
そんな日々の奥に、隠されているもの。箱の中の箱から、溢れ出てくるもの。
やがて来る破綻を約束されながら、揺籃の日々は過ぎゆく。
そんな感じの、令和版”お父さんは心配症”第三話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
相変わらずほんわかとトンチキのバランスがいい感じで、可久士パパの女性関係が(無意識に)荒れたり、新要素もチラホラ。
同時に、未来と呼応する不自然な”かくしごと”が現在にも影を伸ばしたり、明暗豊かな回となった。
やっぱ未来の破綻をチリチリと追い続けているのが、アクセントとしてよく効いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
ドタバタ騒がしいながらも明るく楽しくて、満ち足りた日々。
ともすれば鈍くなりがちな幸福に陰影が伸びることで、間延びした感じがなくなる。話が絞まる、というか。
姫が鎌倉で見つけた、箱の中の箱。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
それはクローゼットの中の”未来”だけではなく、荒れ果てた平屋自体がそうである。
幸福だった時代を再演するように、間取りを完全にトレースした物件。
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それは未来の専売品ではなく、中目黒の日常に、既に埋め込まれた不穏だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
効率を度外視して、わざわざ建てられた家。
レトロなノスタルジーを捏造して組み上げられた”箱”は、何故生まれたのか。
そこが間違いなく愛の巣であると判っていても、やはり気になる。
今回は姫ちゃんが料理をしたり、家のやりくりを考えたり、お父さんが太宰よろしく無意味にモテたりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
それらは微笑ましく見守れるコメディであり…つなぎ合わせると、一つの事実をあぶり出しにする暗号にも思える。
つまり、母が不在な事実、だ。
姫は、可久士一人からは生まれ得ない。
しかし母はいなくて、それが姫ちゃんが大人ぶってみたくなったり、可久士が無意識の隙でもって女を誘う空白になったりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
そして母/妻がどんな人物であり、可久士との間に何を育み、奪っていったかは”かくしごと”である。
未来を覆う不穏なサスペンスは、現代でも静かに息をしているわけだ。
同時に、父と穏やかに過ごした日々の思い出は、未来でも死んでいない。姫は鎌倉の廃墟に、確かに揺籃の日々を思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
しかし、それは荒れ放題に野ざらしとなり、あれほど姫を溺愛していた父は(母と同じように)いなくなってしまった。
連続と断絶。充足と喪失。結構複雑なモザイクだ。
それはさておき、可久士と姫ちゃんの生活は相変わらず賑やかで、面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
不安定な漫画家稼業に振り回され、級友のいらん一言に気を回し、しかしそれはあくまでシャレになる範囲だ。笑ってみていられる、日常の一コマだ。
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ホント子供の浅知恵で、しかし健気に可久士の役に立とうとする姫ちゃんを見ていると、キモい笑顔が顔面を埋め尽くしてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
ぽけけーっとしつつも、自分なりいろいろ考えて、色々やろうとする。幼気な健気を小さい体にギュッと閉じ込めた姫の振る舞いは、本当に可愛い。
可久士にとっても姫ちゃんはちょっとした謎であり、『なんでそういうことするのか』はよく分からない他者だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
しかし、自分の思い通りにならないからといって可久士は愛を止めない。むしろ分からないからこそ、過剰な配慮で世界を埋めようとする。
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10歳箱に秘められたレシピに、過ぎ去った日々を思い起こしたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
なんでかインドネシア風にアレンジされた、肉じゃがを食べたり。
ヒーヒー喚きつつ、娘と一緒に運動したり。(ここの作画は、児童っぽいアンバランスが上手く動いてて、とても良かった)
どんどんよく解んない存在になっていく娘と、可久士は隣に寄り添いつつ、一緒に生きていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
違うからこそ面白い、一番身近な他人に寄り添って、滑稽な人生劇場を走り抜く。
そんな誠実で面白い生き方が、ずっと続けばいいなと僕は思う。もしかしたら、貴方も。
しかし、その思いは続かない。未来の破綻は、既に描画されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
ここに生まれるフラストレーションが、そのまま”かくしごと”を掘り下げたい欲求に変わって、興味を途切れさせない。何度も言ってるが、上手い構図である。
同時に、シンプルな親子コメディとしての質も凄いんだよな…構造に負けてない
今回は可久士の意図しないモテっぷりが、運動会でも暴れ狂った。ホント久米田先生は、太宰っぽい美青年が好きだな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
基本姫と漫画のことしか考えてねぇ可久士は、意識せず女の懐に入り、庇護欲を煽る。つうか善人なんだよね、根本的に。
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それが運動会の大修羅場を引き起こしたりもするが、先生に漂うヤバいオーラにも気づかず、可久士はノンビリと娘との日々を楽しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
このおとぼけっぷりは80年代少女漫画コメディを通り越して、大正時代の”ノンキナトウサン”テイストまで漂う。姫のぽけけーっぷりは、父譲りなのだろう。
今後も(意図せぬ)可久士ハーレムは、話に勢いを加えるエンジンとして機能するだろう。久米田先生、気を抜くとすーぐ女の子が病むので、先生は嫉妬キャラにしないで欲しいな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
しかしあくまで、可久士の思いは亡妻と娘に一本気である。あと漫画ね。
時にコメディになってしまうほどの一本気が、可久士への好感に繋がっているのかな、とも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
彼はバカだが、善良で優しい。娘と穏やかな夜を過ごし、共に愛情を交換する。
この父子の、穏やかなじゃれ合いの愛おしさよ…。
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そして、それは壊れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
『何故、いつ、どのように』という疑問符は横に置かれたまま、破綻に結びつきそうなノイズに満ちた日常が転がり、その果てにある美しき荒廃だけが、僕らに届けられる。
結末だけを知っているミステリが、一個ずつ埋まっていくサスペンス。
あまりにも美しい二人の日々も、約束された破綻に繋がる”伏線”だとしたら、また別の意味を持ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
そういう多面性が、切れ味鋭いコメディ、優しき家族ドラマの奥にあるのが、やはり面白いアニメだ。
それ取っ払って、とにかく姫と可久士の日々が愛おしいのも偉いけど。マージずっと幸せでいて。
そんな作品の基本形を、たっぷり吸い込めるエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月18日
段々とパズルのピースが揃ってきて、先が気になるやら、みたくないやら。でも親子黄金の季節は、絶対ウソじゃないんだよなぁ…そういう確信と実感が、描写にちゃんとあるのは偉いねホント。
次回も楽しみです。