乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
カタリナの成長と奇行を、幼少期から見守ってきた側仕え、アン。
彼女の冷静な瞳が見据える主と、その周辺の世界はすれ違いと愛に満ちている。
アン自身も魂を救われた、悪役令嬢の素直さ。その先に待ち受ける、透明な嵐とは…
そんな感じの、モブだと思ってた女が重ための過去と主役への巨大感情をフルスイングしてくる回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
『やるじゃん、はめふらクン…(不意打ちに頭部をふっ飛ばされつつ)』って感じで、素晴らしかったです。
『作劇上、大したポジションじゃねーだろ…』と侮ってたキャラから、一発喰らうのが好きです。
物語的マゾヒストの告白は横に置いて、ギャーワーやかましいカタリナの世界を俯瞰でチェックしつつ、彼女の善良が主役だけでなく、世界の端っこにいる一人間にも救いを与えていたと確認できたのは、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
カタリナ様の菩薩心は、作品世界に選ばれなかった存在にも及ぶんだよなぁ…。
意地悪で優しくない”カタリナ”が”私”になったことで、ここまで世界が変わっていくのだとしたら、”私”に押し出されたことで存在しなくなってしまった”カタリナ”に救済がありえないことが、この善良な世界最後の構造的欠落として立ち上がってくるほどに、カタリナ様の救済は無辺であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
マリア≒主人公のサクセスストーリーに必要なカタルシスを作るための、悪意を凝集した壁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
彼女が”私”という一人称の主役になったことで、変化していく世界に唯一存在できなかった”カタリナ”が今、どこにあるのか。
これを問うと、話はメタ方向に捻じれていくので本編では扱わんと思うけど。
そんな余計ごとも考えてしまうくらい、『カタリナ様は横幅広く色んな人の魂を助け、色んな人に愛されておるのだなぁ…』と実感できる話であった。素晴らしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
ジオルド様の空回りも、計算高く見える彼が結構バカでメロメロな、カタサーの一員であることを証明する仕上がりでグッドでした。
お話しの方は『家政婦アン・シェリーは見た!』という感じの運びで、冷静なメイドの瞳を通し、姫サ-の現状をスケッチしていく感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
最終的に観測者当人の過去と内面に及ぶ、客観が主観へと転倒していくエピソードである。
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その冒頭が、クライマックスを上手く暗示していて良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
薄暗く狭い部屋の扉を開け、いつもどおりのアーパー笑顔で、『いてくれたこと』それ自体に感謝を述べてくるカタリナ様。
彼女が開き届けたものが何なのかは、後々種明かしされる。そして、ここで全部明かされてもいる。
カタリナは暗く狭い場所を無意識にこじ開けて、笑顔と感謝を振りまく存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
本来”ゲーム”が始まる前の幼少期、攻略対象を先取りチートで骨抜きにしてしまった姿は、第3話までで丁寧に描かれてきた。
放っておけば、乙女ゲーの歪んだイケメンとして形作られていたはずの、子供たちの魂。
それを無垢なナイフでこねくり回し、毒気が薄く自己肯定感の強い人格に導いていけるのが、カタリナの強さである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
その影響力は、べつに攻略対象でもなんでも無い、しかし毎日積み重なる”カタリナ”の日々にかけがえなく存在する燐人にも、ちゃんと及んでいる。
アンもまた、暗い部屋の扉を開けられ、届けられた想いに己の形を変えられた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
無自覚な働かきかけなんだが、救ってしまった存在に喜びを絶やすことなく、ちゃんと言葉にして感謝を伝える、これまた無自覚な責任感もある。
そんな存在から与えられた、私だけの宝物。
『あっ…この女(ひと)もズブズブだな…』と感じ取れる、静かな日常の一幕から物語が始まるのは、なかかな良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
ここで『仕事ですから、お嬢様もしょうがないですね…』みてーな、いつもどおりの鉄面皮してる所が、仮面の豊かな内側が描かれる衝撃に、上手く繋がってると思う。
カタリナに足りない思慮と冷静さを、穏やかに補ってくれるアン。その視線は、無自覚人たらしを中心に渦巻くヤバい感情を、しっかり見抜いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
コミカルな味わいながら、絶対に婚約維持するジオルド VS 絶対に破棄させるキースの鍔迫まりが”本気”で面白かった
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お母様も娘のことをよーく判っていて、王族との婚礼がクラエス家に持ってくる利殖より、性に合わない結婚して傷つく娘(と家名)のこと優先してんだろうな-、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
ここら辺、娘を政略結婚の道具扱いしてたアンの父と、密かな対比よね。お母様も、”私”によって変わったのね…。
あとメアリの鼻息荒い気合が見事に空回りし、にっこり笑顔でスルーされているのは微笑ましくもあり、悲しくもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
愛のためなら、財産も性規範も、婚礼をベースに制定されている帰属社会の秩序もぶっ壊す。
そういうパンクスの”覚悟”が、メアリにはある。
いざとなったら全てをぶち壊しにし、愛に生き愛に死ぬ”本気”が、コミカルな仕草にきっちり宿っている所が、メアリを愛さずにいられないポイントである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
彼女が”ガチ”なのは性的アイデンティティではなく、己の魂に突き刺さった一人間に対し、どれだけ”捨て”られるかだと思う。美しき獣…!
まぁ腹黒共と牽制したり、婚約者を無垢なる幼年期に閉じ込める(そしてそのイノセンスで思惑をぶっ飛ばされる)のも結構楽しいので、マリアの中の爆弾はなかなか発火しないのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
恋に病んで全てを壊すより、朗らかな緊張に身を置く決断が出来てるのは、マリアの人間が善いところだ。
あと『大好きなお兄様と大好きなカタリナ様が、大好き同士結婚すれば最高じゃない!』というお子様ランチ思想で、グイグイ推すけど糠に釘なソフィアも可愛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
その奥に、無自覚なる前世からの情愛がメラリ燃えていると考えると、”紅炉一点雪”って感じでエロティックだね…。
とまぁ事程左様に、カタリナ様の周辺は愛と鈍感で満ち、幸福ながら誰かを選ぶ成熟とは程遠い、幼き楽園である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
選ばないことで誰かが排除されることもなく、みんなかよく楽しい時間が続いている。正しくモラトリアムな時間は、まだまだ続くのだ。
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何しろパジャマの選択基準が『きぐるみで可愛い』『光るから凄い』だもんな。完全に、ぱじゃマジックに目を輝かせる六歳児だよ…乙女ゲーよりプリキュア見せろ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
そんなカタリナ様でも、一応精神年齢三十路超え。恋話とかもしたくなる。
まぁその主役が自分だと、分かんねぇんだけどね!
またメアリが”獣”を隠そうともせず、『オメーの視界にアタシも入れろよ!』と叫んでおるけど。メアリのこと好きなの、崎山っぽいの確実に”ある”な…(エアマスター大好き人間)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
乙女たちの楽しい時間は、アンもその一員として自然に受け入れつつ、穏やかに進んでいく。
そんな『いつもの風景』を、表情変えずに受け流す…ように見えるアン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
しかしその内面には、当然一人間としての複雑な過去と、それを無自覚に救っていくアホバカ少女の”真っ直ぐ”が、深く突き刺さっている。
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ガキが差し出した、面白くもねぇ”宝物”をアンが今でも人生の支えとして、ひっそり大事に自室に置き続けてるのがマジ刺さって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
そこにカタリナが込めた真心を、アンは見落としていないし、未だ大事に出来ているってことじゃないですかそれは。真正なことですよ、こういうやり取りは。
壁の花として存在を認められず、便利に使われるメイド/非嫡出子/女性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
シャドウ・ワークとして存在を消されかねないアンを、カタリナは見落とさないし、地位も名誉も物語的存在感もある存在たちと同等に、己の一部を惜しげもなく切り分け、自分から差し出す。
『相手が破滅フラグに関わっているから』と、優しくする対象を選ぶような計算高い純朴ではなく、本当に純朴に一生懸命、目の前の一人、目の前の一瞬に本気で向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
そういう姿勢が色んな人を救ったから、今のカタリナ様がある。バカで鈍感な所引っくるめてなッ!
その大事な一エピソードとして、”私のメイド”を自分に引き寄せた物語は、綺羅星のような輝きを放っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
閉ざされた扉を開けて、欲しい物を掴む。そこに躊躇いはなく、打算も賢しさもない。
純朴という刃は、いつでもカタリナ様の…このお話最強の武器だ。
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己を求めて差し出された手を掴み、握り返すことでアン・シェリーはメイドでも、婚礼の道具たる女でもない、アン・シェリー自身を抱きしめられた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
人格をより善く構築しようという、崇高で賢い思惑があろうとなかろうと、属性を剥がされた無垢の魂を求めるひたむきさは、人間のあり方を変えていく。
そういう事をされちまったから、今でもアンはお嬢様にズブズブで、布団を治してくれるんだよなぁ…。友達の寝相と比べて、このわんぱくっぷり…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
感情がデカ過ぎて固定資産税がかかりそうだけども、それも致し方なし、というカタリナ様無自覚の善行であった。
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アンの感情が一方通行ではなくて、カタリナもまたアンをかけがえのない存在として愛している所が、公平で良いんスよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
”私”はマジで人間がデカいんで、凡人が絞って愛して初めて実現する慈しみを、スゲー沢山の人に配れる。大好きが沢山あるからって、一個一個を怠けない。
そういう”デカさ”が上手く示されているから、皆に愛されていてもズルく感じないし、鈍感さがクリティカルな決断を阻んでも『まぁしょうがねぇなぁ…』と思わされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
やっぱ主役の造形がスペシャルに強くて、その強さを最大限活かした運びになってるなぁ、という印象。つえーわやっぱ。
ほんで、その”デカさ”に…正確にいうと、釣り合うだけの”デカさ”を持てない連中が振り回される様子も、また愛おしくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
ジオルド様…オレ、アンタのこと見誤ってたよ…。結構余裕なくてバカなんだな! 後カタリナLOVE強いなアンタ!!
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俺はクールガイが持ち前の冷静さを取り落してしまうほど、誰か(あるいは何か)に強い感情を持っちまうのが鳩サブレー(牛乳付き)より好きなんで、ジオルド様の孤軍奮闘は非常に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
自分の人生を彩ってくれた、素敵な人だから。
笑顔が見たいし、ポイントも稼ぎたくて、でもそれは皆同じで…
この状況の”ヤバ”がわかってる腹黒勢、軒並み顔死んでるの最高に面白かったけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
まーしゃーない! 人格がデカすぎる人間と付き合う時、凡俗なる衆生はなかなか苦労をするもんだ!!
しかしそういう苦労が、より優しく強い人格を育てていくと思うと、なかなかに幸福な試練ではあるね。
あ、野良仕事のために髪をまとめたソフィアが可愛かったのも、地味にグッドなポイントですね。髪型頻繁に変えてくれるアニメが好き…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
まぁそんな感じで、主役も攻略対象も、みな善良でバカなお話しである。
カタリナ様の幸福な時間は、沢山の人に見守られてずっと続きました。めでたしめでたし
とは終わらない!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
”カタリナ”が投げ捨てた透明な悪意が、逆風となってクライマックスに物語を押し流していく。モブの追求はどこから生まれ、悪役令嬢をどんな運命に連れて行くのか。
風雲、まさに急を告げる。ユリ熊嵐ッ!!
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”ユリ熊嵐”はマジ最高のアニメなので、みなさん是非ご視聴お願いしたいところでございますけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
ここまで転生チート(微量)と持ち前の善良さ(大量)でもって、人生の荒波をそれと知らずイージーモードに引っ張ってきたカタリナ様、未知の領域からの破滅フラグがドンブラコ、次回に続くである。
そろそろ終わりの見える話数で、意外な角度からデカい過去と感情、作品を支え動かす公平な善良さを確認できて、非常に良いエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
アンにカタリナが与え、受け取ったものこそがこの話のエンジンであり、カタリナ様を中心に広がる、愛おしい生活の源泉。
そういう事を確認して、モブの悪意渦巻くクライマックスに突入していくのは凄く良いと思います。有象無象のクソどもに、悪役令嬢の善性が負けるわけねーだろ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
最後に立ち向かうのが、”カタリナ”が"私"になることで世界から消えた悪辣さだってのは、ちょっと面白い。いつでも鏡合わせの自我バトル!
まぁ気持ちよく大団円するには、モブ共はちょっとパワー弱い感じもありますし、さんざんチラ見せしてきた会長のネタバラシも残ってるので、一捻り二捻りあるのでしょうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
そこも引っくるめて、はめふらアニメ最終決戦”悪役令嬢 VS 透明な悪意”、大変楽しみであります。
追記 なろうから始まる、近代的自我への回帰
しかし乙女ゲームという、主体をマリアに限定した枠組みの中では『破滅フラグしかない』存在だったカタリナが”私”になることで、持ち前の善良さで行動を変え、他人に働きかけ、世界と運命(と思われていたもの)を変革していく辺り、一人称の可能性とパワーを極限までポジティブに信じた作風ではあるな
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
モダンな”私”の発見と拡大が、世界をより善くしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月31日
そういう視座を物語化していると考えると、かなり近代小説なお話しなのだな。
乙女ゲーと小説消費をヒネってヒネってたどり着いた場所から生まれた、超原点回帰(あるいは原点超越)的作品といえる。面白いねぇ。