ケムリクサ 第5話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
ヌシを倒した後も、旅路は続く。
赤い霧を越え進むヨンジマで、顕になるケムリクサの可能性。緑の光が治すのは、鋼鉄の車輪だけではない。
わかばの好奇心が新たな希望と、無明の危機を連れてくる中、出会った影は過去の残影か、未来への道標か。
そんな感じのヨンジマ紀行、ケムリクサ第五話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
前回ヌシとのハードアクションをこなした反動か、比較的抑えめの展開となった…が、世界観構築のキレが良いので、ケムリクサ世界を漂う描写だけで、独特の味わいがある。
廃墟世界探訪としては、大きな強みだ。
景色を切り取ってくるロングショットがバキッと決まってるのが、この作品の良いところだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
だだっ広い世界に放り出され、必死で生きていく物語と、その舞台を切り取る鋭い視線の共存。背景美術とドラマが、しっかり噛み合う幸福が、そこにはある。
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真紅の世界はいかにも不気味なのだが、地獄めいた美しさもあり惹きつけられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
それは当事者性の欠けた第三者視点でしかないのだけども、作品はそういう視点で(も)わかば達の旅路を切り取ることを怠けない。彼らが進む旅路を、客観で見ることを僕らに許す。
こういう視点が適度に挟み込まれているから、作中に埋め込まれた謎も見えやすくなり、楽しさもバリエーションを増やす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
謎とドラマのバランスもそうだけど、作品をどう提供し楽しんでもらうか、譲れない情熱と冷厳な知性が同居し、噛み合って機能してる感覚がある。
そしてそんな客観は、みどりちゃんという”家”に守られた一行にしっかりクローズアップし、彼らの主観を折り重ねることで熱量を宿す。遠景でボーッと見てるだけだと、ずっと他人事だからな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
わかばは好奇心を集団にもたらし、戦士は異物を警戒する。
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りつ姉がわかばに甘いのは、戦士の責務として警戒を緩めてはいけない(と、自分に強く課している)りんちゃんの代理、という側面があると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
無論、みどりちゃんという”好き”を共有してくれる同好の士への甘さでもある。同じ方向を見ている人は、なかなか無碍には出来ないものだ。
後にりつ姉は戦えない自分の現状をどう思っていたか、美しい涙とともに語るけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
りんちゃんが警戒を緩められないのは、”戦える”ことが彼女に強いる在り方であり、わかばの行いを適切に判断し警戒を緩める視点は、りつ姉が”戦えない”からこそ許されているものかもしれない。
鎧であり、家であり、移動装置でもある”殻”を身にまとって、大きく成長したみどりちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
彼女の中に育まれていく共同体は、様々な立場と能力、”好き”と五感を多様に有している。キマイラの沢山の顔はお互いに噛み合うことなく、欠落を相互に補強している。
生存に汲々とはしても、単一化はされてない
むしろ色んな人がいるからこそ、生存の可能性が上がっている描写が、第1話から積み上げられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
そして自分ではない異物を受け止められるのは、他人の”好き”を自分の”大事”に出来る能力(”愛”と言っても良いかもしれない)あってこそだとも、ずっと描かれている。
そこに、作者の視座を感じるのだ
車輪が使えないヨンジマの旅は、りつ姉に大きな負担を強いる。しかしそれは苦しいだけではなく、力を合わせ乗り越える喜び、苦境でも湧き上がる笑顔を含んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
”変なポーズ”に盛り上がる一行がなんだか綺麗で、少し泣けた。こういう生活臭ある描写に弱い。
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凄く異質なものを書きつつも、このお話は一貫してポストヒューマンたちの旅路を、僕らの(そうあるべき)人生と重なるものとして書き続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
長く油断がならないもので、異物をはねのける頑なさと、それを受け入れる柔軟性が常に拮抗し、険しさの中にふと、穏やかな笑いと喜びが確かに降り注ぐ。
そういう静かで確かな描写があることで、『ああ、彼らは人間なんだな』という意識が強くなり…ということは、明らかに”人間”ではない彼らに感じるこの共感が、何を基盤としているかを考えさせられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
人を人たらしめるものとはなにか。それは作品が語る答であり、僕らが組み上げる問でもあるのだ。
わかばの好奇心にりつ姉はケムリクサの供与で答え、彼は姉妹が気にしない可能性を形にしていく。りんちゃんお手々つなぎ可愛いッ!!!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
”治す”という能力の発露。嗅ぎつけた新たなルート。そこで出会った、新しい隣人。
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姉妹が生存のために見ないようにしているポイントに、わかばの好奇心は切り込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
知りたいと願う気持ち、そのために発達した感覚器は未知を踏破し、過去とは違う可能性を掴み取る。
りんちゃんが”攻撃≒防衛”として発現させる緑のケムリクサを、わかばは”修復”として機能させた。
これが緑のケムリクサの可能性なのか、わかば個人の可能性なのかは、ケムリクサを巡るロジックが不明なので判別しきれないけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
わかばはヒーラーとして、手を差し伸べ治す存在で(も)ある。それが回復させるのが車輪という物理だけではないというのは、コレまでの旅路を見ても判る。
ここの”ヒーラー”は、わかばをメシアと見る視線からの言葉です
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月19日
”イエスはこの女を見て、呼びよせ、「女よ、あなたの病気はなおった」と言って、手をその上に置かれた。
すると立ちどころに、そのからだがまっすぐになり、そして神をたたえはじめた。”(ルカ、13:12-13:13)https://t.co/kvTKI0vT5Z
イチジマで静かに死んでいく未来は、わかばが一行に交わることで変わっていった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
倒せなかったヌシを討ち果たし、姉妹の仇を討てたのはわかばの異質性あってのことだった。
わかばが入り交じることで、失われたものは(別の形で)回復され、社会集団の機能はより善く変化していく。
静物的な不可逆性ではなく、生物的な可塑性と回復力を、わかばの存在は活性化させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
彼らが生き続ける存在である以上、壊れたものは治さねばならない。それが破綻すれば、個体も集団も赤い塵になって消えていく。
回復力と免疫力が一体であることを考えると、わかりん強いなぁ…。
治療には切開や除去がつきもので、みどりちゃんLOVEでもってりつ姉の心をこじ開けたわかばは、今まで彼女が封じてきたものを表に出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
『姉貴を泣かしたな!』と、即防衛反応に出るりんちゃんが優しくて好き。マージ姉妹好きすぎ。
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もはや戦えない病身を気に病みつつ、何か集団に貢献できることがないかと探し、しがみついていたりつ姉の心細さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
涙はそれを顕在化させ、集団に共有させる。
『あなたの”好き”は、私の”大事”だ』
りんちゃん、歴史の教科書乗ったよマジ…。
姉妹を散らされ、水の残量を気にかける厳しい旅路。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
しかしみどりちゃんを”家”とする社会は闘争だけを価値と見ていないし、そこからはみ出したりつ姉を一員と…自分たちの”大事”と受け止めている。
ただ生き残るのではなく、より善く生き残りたい。
そういうヒューマニティが、この素朴な集団にはある
そんな祈りを形にしていくのが、わかばという異物、見て考え知っていく”人間らしさ”の導入なのかは、まだ分からないけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
つーかわかばの過去が完全に謎だから、異物に見えてその起源が共有されてる可能性も、十分あるんだよなぁ…そういう逆転は仕込んでくる作風な気もするし。
逆転といえば、緑のケムリクサはアカムシには死を、それ以外には生をもたらしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
”治す”という行為があるべき形への帰還を意味するのなら、アカムシが訂正(fix)されしまうのは彼らが異質な状態…紅い世界に産み落とされた、ある種のバクだからだろうか?
ストーリーと世界観に組み込まれた謎が、作品が描こうとするテーマの輪郭に結構密接しているので、色々考えたくもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
オタク特有の設定いじりに見えて、書くべきものを描ききるためのメディアとして、色んな謎が配置されてるのは強い作りだな、と思う。ミステリの空転が少ない。
しかしまぁ考えすぎても答えは出ないだろうし、必要なだけのヒントは追々出てくるのだろうから、どっしり構えて待ちたい。そういう信頼感を、僕はすでにこのお話に抱いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
まぁりつ姉の涙をしっかり受け止めれたみんなは、マジ偉いって話よ。
車輪とりつ姉の後ろめたさを回復させた一行は、無事ロクジマへと足をかける。りなちゃんがりんの仕草を真似する所、『ミラーリング~~~マジ親愛~~~』って感じですっごく良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
姉妹の仲良し描写が強まるほど、それが残酷に切り裂かれた過去を僕は思い…。
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周囲が気にかけないものを見つけるわかばの能力は、謎のシロムシとのコミュニケーションでも発揮される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
読める文字をディスプレイし、誰かを助ける意志を見せるシロムシは、ヒューマノイドではないが交流可能な隣人である。
わかば自身がそうであるように、適切に取り込めば社会の力に変わりうる存在
それに後ろ髪を引かれつつ別れたのは、今後どう生きてくるのか。中々気になる描写であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
アカムシがどういう存在かもサーッパリ分からんからなぁ…ただただぶっ倒すべき”敵”なのか、交流のためのチャンネルが今は塞がってる存在なのか。
シロムシが交流可能であることは、今回見えたわね。
水≒生存ゲージが目に見えて減ってきたので、先を焦るりんちゃん。ここでブレーキをかけれるのが、戦えないりつ姉が集団に存在している理由の一つだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
まぁ人間集団は、”役に立つから”を成員の条件にするべきじゃないと思うし、一行もそう振る舞ってるけど
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眠れって言われてるのに眠れない。めっさ気になる最優先主義のわかばは、良いところばっかりじゃ当然ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
それが厄介事を引き起こすのは次の話として、今は相互侵犯的な”毒”ですよ!
いやー…りんちゃんだけが頬を赤らめ続けるのは、一方的だと思ってきたんだよなぁ…。
眠る時すら腕組みして、自分の柔らかな部分に一つ、壁を作る戦士。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
そんな彼女の強さと優しさをたっぷり知っているからこそ、遅効性で毒が効いてきたんだと思うが。
赤い世界の厳しさは、新世界のロマンスを許容してくれるほど余裕があるのか。はたまた、残酷な世界を切り開くのは愛だけか。
二人のロマンスがどう転がっていくかは楽しみだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
りなこが死亡した第一話以来、凄くシビアな世界をずっと書いてるんだけども、そこで息づくヒューマニティこそが生存の鍵だとも言い続けてて。
恋と愛という、最も人間的なパーツもそう、悪い扱いを受けない予感はある。二人共頑張れ…ッ!
そしてわかばの好奇心は、彼を危険な場所へと導きもする。長所は常に、致命的ですらある短所と隣り合わせなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
露骨地下鉄改札口を抜けて出会ったのは、意味深なED左から二番目のシルエットーッ!! 死んだはずじゃー!!
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りんちゃん達の嘆き方を思えば、死んだのが思い込みってこともなさそうだし、でも”彼女”は確かにわかばの目の前にいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
不可思議と理不尽が覆う世界、生き死にの線引もまた、ホモサピエンスのものとは違うのだろうけど…まぁめっさ気になるよ。ケムリクサには謎が多い…そこが好きッ!!
という感じの、穏やかなヨンジマ紀行でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
やっぱなー、りつ姉の後ろめたさと、それを受け止めるりんちゃんの靭やかさが見れたのが偉い。
彼女らは特定の五感に特化してるフシがあるので、僕らよりもさらに他者が感じている世界とシンクロする…他人の”好き”を感覚するのが難しいとは思うのね。
りつ姉が自分にはない耳で聞いている世界を、りんちゃんは自分の”好き”には出来ない。”好き”を手に入れちゃったら、もう姉妹を守れないと思いこんでるハードボイルド女だし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
しかし、判らない誰かの”好き”を、自分の”大事”だとノータイムで言える共感能力はしっかりある。
『…それって、姉妹のことめっさ”好き”ってことじゃん』と思わなくもないが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
自分の領分である”闘い”を唯一化せず、そこから離れた場所で発揮される姉の個性と尊厳を、大事に扱える。
そういうりんちゃんのヒューマニティは、作品全体にとっても、そこを超えた僕らの世界にとっても重要だろう。
まぁ”好き”は時に暴走して、それを抱える個体にも、それが所属する集団にも危機をもたらすってことを、わかばの好奇心迷子っぷりは伝えているわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
そこを上手く調整して、生存…を少し超えた、より善き生のための武器と使いこなすためには、どうしたら良いのか。
そういうことも掘り下げそうなアニメで、次回も非常に楽しみです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月18日
ケムリクサが多彩な能力を持つことで、それに目覚めていくわかばの能力バトルモノとしても見れるのはつえーな。
師匠ポジっぽい人とも出会ったし、こっち方面も強化されてくんだろうなぁ…贅沢だ。