安達としまむら を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
ラムネ瓶の底のような、緑色に閉ざされた聖域にこだまする”ピン”と”ポン”。
あなたがそこにいることと、わたしがそこにいていいことが静かに反射して、淡く震える。
そこは美しくて儚い、少女たちの水底。
何が起きるかなんて解らないけど、あなたは素敵。
そんな感じの青とオレンジの青春詩学、堂々訳解んない感じで第一話着弾ッ!! である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
いやー…原作未読お噂はかねがねって塩梅でアニメ見たんですが…思い切ったねッ!
思春期少女のナイーブな距離感に、徹底して潜り潜り潜り倒す。ポエティックな潜水みたいな第一話だった。
自分のボキャブラリーから類似作を探すと”シスプリRepure キャラクターズ”、”フラグタイム”あるいは同原作者の”電波女と青春男”になるか…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
とにかく安達としまむらがお互いを視界に入れつつ、それだけで完結はしてくれない微細な間合い、ジリジリと触れ合う心理の火花を、丁寧に追っていた。
特に何が起きるわけでもねぇ、表面上は起伏のすくねぇ毎日にしかし、他人から見りゃどーでも良いが当事者にとっては一大事なすれ違いと触れ合いが、青に橙に炸裂する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
ピンポン玉をカコンカコン、ラリーしたり取り残ったり一人で跳ね返したり、空回りにも見える青春の、静かなる大騒ぎ。
そういうモノに映像で潜っていく気概を感じる、非常に僕好みの第一話だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
むっちゃ映像詩で、この調子で1クール続くのか…と思うと心配だったり歓喜だったり。作品が捉える時間感覚が微細なので、ジリジリと変化していく距離感で静かなトルクを生み出す感じ…なのかなぁ? 読めないところが楽しい
とにかくカラーリングが象徴的、かつ印象的なお話で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
安達としまむらの聖域たる体育館の中二階は、徹底して青に染め上げられている。窓ガラスが近いレイアウトは、水のように日光を遮断し、日常を海底の色彩に染め上げる。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/L2ANAZRDNq
それは絞れば青汁が出るように青臭く繊細な、二人の心の色なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
友達のいない安達が、しまむらの前でだけ共有できる色。
友達がいても水底に閉じ込められていると感じてるしまむらが、安達の前でだけ呼吸できる色彩。
そういうモノが、二人だけのピンポンには強く宿る。
二人は海底の生物のように、お互いに深く潜らない静かな間合いを維持している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
踏み込まず、しかし隣り合うことを互いに許す。学校、あるいは友人関係から遮断されているからこそ可能な、特別で歪な距離感はしかし、特権的でも無敵でもない。
体育館の口が空いて、群衆が入ってくれば終わってしまう
安達の恋心はかなり早い段階でモノローグされ、サボりがバレないかでドキドキしている(と、対外的にPingを打ってる)しまむらとはズレがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
体を屈め、小動物のように世間のサーチライトから二人、逃れる時に。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/7iCGT8aBnW
安達の視線は別の場所、青緑の特別な色合いに彩られた、特別な女へ捕らえられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
そしてそのことは、なかなか切り出せない。
友達とも恋人とも、地面とも天井とも違う場所。曖昧で、だからこそ心地よい場所。
そこですれ違うものの輪郭は、捕まえてしまえば消えてしまう…のか?
思い切って言葉にしたり、踏み込んだりしてみる勇気もなく、緑色の魔法をかき消してしまえるほど、無価値でもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
お互いがお互いを、どう思っているのか。
安達としまむらの間には、言葉の代わりにピンポン玉が行き交う。この、ラムネ瓶のような水底で。
今はそれが良い。
安達が初手で相当”強い”モノローグをぶっ込んできた時、しまむらは寄せては返す恋という謎、内面がわからないからこそ追いかけたくなる存在として描かれるのかな、と思っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
がしかし、後半モノローグの主体はしまむらに移り、彼女の内側も優しく切開されていく。
一方通行でありながら通じ合い、一言も言葉にしてないのに共有されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
緑色のメザーニン、青いサンクチャリが守るものは、とてもあやふやで繊細だ。体育館の中二階は、聖域というほど強くもない。
多分、そういうモノをずっと追いかけるアニメなのだろう。好みのタイプだ。
安達と違ってしまむらは、学校という外部から緑色の空間に入って、出て、戻ってくる。外側にも友達がいて、一般的な社会生活を上手く泳いでいる…ように見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
緑色の外側に居場所がない安達と同じく、水底に身を落ち着けたい異質性が確かにある。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/Ynhh4YroQp
死にかけのセミを野に戻して、死んだ後手を土に汚して葬るような、奇妙なナイーブさ。多分、日野や永藤にはあまり見せない部分。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
世界の目が届かない辺境でサボる仲間として、自分のことをよく知らない異邦人として、そういうモノを預けてもいいかな、とおそらくしまむらは思った。
だから夏のさなかの出会いはなんとなく続いて、なんとなく心地よく、”なんとなく”でしかないからあやふやで脆い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
安達は外に出ていって、人に交わる能力が低い。喉を潤す水も、しまむらに取ってきてもらう。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/r1EXpIWaQP
緑色ではない場所にしまむらは出ていくことが出来て、そこで当たり前の生活を送れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
それが相当キツいことを、しまむらはピンポン玉に預けて安達とラリーしている。一方通行に見えて、友達未満だからこその距離感は相補的だ。
しかしそれだけで充足できるほど、緑の魔法は確かな間柄でもない。
晴れた外界はしまむらにとって、自分を窒息させる息苦しいものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
友達が当たり前に食べている固形物とは、別のものを喉に流し込まないと活きていけない、不自由な塵界。
エラ呼吸の動物が無理くり地上に出ているような、だからこそパッケージされた”水”を手渡せるような。
そんな接続点が、緑色の世界にはぽっかり合いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
その外側、オレンジ色の世界で出逢ったとしても、二人は友達未満ですらない。そういう事にしないと、しまむらが作り上げた小さな社会は、ヒビが入って壊れてしまう。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/I0hSmpPLde
すれ違いながら、ゴボリと流し込むお茶の色合いは”緑”…あのメザーニンの色だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
強すぎる直射日光の下で、自分の思いを吐き出すのを止め、仮面で維持する社会生活。そこで窒息しないためにしまむらは、安達を補給している。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/mmxl73y7eg
その自分勝手な摂取がしかし、孤立しつつも寂しがりな年頃の少女にとっては、唯一の救いでもあり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
ただ隣りにいてくれれば幸福な時間は、緑色の水底で静かに変質し、恋の色を宿している。
そこはしまむらにとって、息苦しい世間の空気穴、水生生物である自分を偽らずに済む補給場となっている。
事程左様に二人の距離感はアンバランスであり、アンフェアであり、その上で凄く純粋で打算のない感情で繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
それが時の流れの中でどう変化し、あるいは変化しないのか。何を言葉にできて、何をピンポン玉のラリーに委ねるのか。
どうとでも転がせるし、何も書けない感じもある。
今回青とオレンジで切り取られたの青春スケッチの先、どんな物語を継いでいくのか。なかなか楽しみである。ずーっと映像詩でも良いけどね俺は…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
とはいえ、あのメザーニンの外、雨雲が緑に染め上げる世界で、既に変化の兆しは静かに鼓動している。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/Ar0OdlCmeM
優しい雨が降ってくれることで、自分を焼く居心地の悪いオレンジは緑に変わって、あの特別な世界は外界へと延長していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
水底の属性は雨雲に乗っかって敷衍し、二人はあの特別で脆い場所の外でも、まるで友達のように自転車に二人乗り出来る。
それはとてもありふれて、だから特別な奇跡だ。
安達はしまむらをあの場所の外で待つし、しまむらは安達をちゃんと見つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
あの脆く美しい場所だけが彼女たちの聖域ではなく、しかし彼処がなければ二人は出会わず、緑色の関係も深まりはしない。
まるで、天上を滑るような心持ちで、世界を一緒に駆けていく。
美しい空想の二人乗りは、二人が出逢ったことで既に何かが動き出し、静かに変化していることを切り取ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
安達はしまむらの心を知らず、しまむらは安達の恋を知らない。
それでも隣り合った呼吸の中共有されるものが、ピンポン玉のように弾みながらやり取りされて、二人を繋いでいる。
雨が上がって魔法は解け、二人は別れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
去っていく背中に追いすがる安達の視線を、しまむらはいつか知るのだろうか? ピンポン玉のように弾む思いを、真っ直ぐスマッシュできる日は来るのだろうか?
別に来なくても良いな、と思う。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/UWN5Mr8NRB
成就する恋、顕になる思いだけが”正しい”というわけではなく、決定的にすれ違い嘘と思い込みで固めつつも、確かにお互いがいないと窒息してしまう緑色の魚たちを、このお話は確かに切り取っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
彼らがお互いの家を知り、行ったり来たり出来るようになる様子を書いている。
それはありふれた迷い道で、同時に彼女たちだけの青春賦だ。その一歩一歩に、多分大きな意味がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
それを焦らず、衣擦れや吐息まで切り取れそうなほどのクローズアップでどっしり切り取る筆致は、かなり好きだ。
やや大仰で映画的な音響の作り方も、そんなスケールに噛み合って良い。
安達としまむらの青い聖域は、別に結界が張ってあるわけじゃない。入ろうと思えば、陸の食べ物を持っていつでも入ってこれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
そんなズケズケとした侵入に、二人は面と向かってNOとも言えない。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/CBiq8KraQS
この場所で二人きりだからこそ共有できるものは非常に繊細で、力加減を誤れば簡単に壊れてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
そのリレーションシップの象徴として、結構簡単に凹む”ピンポン玉”を選んだのは作家の慧眼だな、と思ったりもするが。
安達は当たり前に友達と笑うしまむらを、結構怖い視線で見つめる。
この海底から出ても、しまむらが生きていける事実。自分以外に友だちがいる、自分とは違う生き物である事実。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
それは安達にとって、しまむらの喉を塞ぐ”友情”と同じくらい、飲み込みにくい異物なのだろう。
はー…面倒くせぇ! 面倒くさいから、学校社会のメインステージではなく”ここ”にいるんだが。
壁相手のラリー。終わってしまうかもしれない不安感。あやふやで、不確かで、でも大事だったもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
それはオレンジの光の中不意打ちに、もう一度背中を叩く。雨の上がった場所でも、私たちは進んでいける。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/M5ifvnulcm
そんなオレンジ色の兆しの中で、安達は人間たちの食べ物を差し出し、二人のあまりにあやふやな友情の危機は解決される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
安達の心に、ふわりと廻る残影が(幾度目か)突き刺さっていることを、多分少女は知らない。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/FVaEK3q2Cs
それでもお互いが不思議に大事で、二人の時間は確かに特別で、簡単に壊れてしまうと判っていても、確かなものにする程踏み込めもしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
そんなオレンジと青の入り交じる、フラジャイルな季節を二人は歩いている。
まぁ多分、そういうエピソードであり、そういうアニメなのだと思う。
安達としまむらの世界は閉じているようで結構開放的で、しまむらが持ってくる外界のオレンジが作品をどう変えていくのか、楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
つーかなんだよあのちびっこアストロノーツ…完全に郷土妖怪スマキンの眷属じゃねーか…。
©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 pic.twitter.com/GUWS6W0ilh
安達がナイーブな独占欲と孤立癖を延々抱え込んでてもいいし、奇妙な触れ合いの中ジワジワ変わっていっても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
しまむらの取り繕った外面の良さが、安達と楽園で息継ぎする中居場所を見つけてもいいし、不器用なまま小器用に生きてても良い。
どっちに転がっても面白いな、と思える第一話でした。
少女が少女に抱く感情をあくまで青春の、人間活動のいちページとして丁寧に切り取り、””付きの”百合”でそこまでジャンル化していないフレッシュな筆先が、なかなかいいと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
恋であっても、なくとも。
人の心と関係は、それぞれ個別に切開されていくべきなのだろう。
安達としまむらが、友達とも恋人とも、大人とも子供とも、内側とも外側とも、天とも地ともつかないあやふやな時間、曖昧な場所で過ごしていくモラトリアム。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
そこに流れる一瞬を一個ずつ切り取って、繋ぎ合わせた結果描かれるタピストリは、多分鮮烈で綺麗だ。
それが三ヶ月後、見れると良いな。
まー話はジリジリ進むんだろうけど、それを支えるに足りる詩情と美意識は画面の隅々から感じられたし、カラーリングとフェティッシュで色々伝えてくる力強さもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
何もかもがあやふやで、脆くて靭やかでありふれて特別な時代の空気を、少女二人を通して書ききってくれると、なかなかいいなと思う。
緊張感ある色彩感覚は加藤監督の傑作”やがて君になる”と共通するものを感じるんだが、あのお話ほどの張り詰めた切迫感とサスペンスはなく、しかしフレッシュな切実さは共通してる。外伝書いてるしな入間先生…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
僕の好きなお話になりそう、ということだ。次回も楽しみ。
方向性としてはアートアニメに近い気がするので、各話担当の感性をブンブンにぶん回して、毎回違うタッチで書いてくれても良いなー、と思うが、さて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月9日
ホントいい意味で、二話以降どういう話にするのか読めない。ドラマの骨を入れても詩情重点でいっても、かなり面白くなりそうで、とても良いね。