GREAT PRETENDERを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
”美術界の007”を引きずり込む、偽物のオークション。
腐り果てたエレガンスがスノッブな悪臭を、わざとらしく掻き立てる罠の中で、ジェームズは我を失っていく。
その裏側で、迫る褐色の毒。
美の苗床にされていた女、過去を捨てきれない女…それぞれの思いが、ロンドンに散る
そんな感じの、ロンドン編最終回ッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
贋作を巡るコンゲーム、シンシアの恋とトラウマと意地、巻き込まれた善人へのケアとお話の落着…全体的に、綺麗に収まる感じでした。
キャラがブレずに分かりやすいと、こじんまりとした感じを受けるあたり観客ってのは贅沢だなと、自分を鑑みて少し思う。
詐欺の決着は、シンガポールの空を超えたアビーがいい仕事をして、収まる所に収まった感じ。ファラを食い物にして終わると人情路線と事故るので、そこのケアも良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
煽ってハメてだまくらかして、”詐欺師”という生き方で過去に勝ったシンシアが、ようやくトフィー缶を捨てれるのも良い。
そしてどんどん顕になる、マジで詐欺師向いてないエダマメの全うっぷり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
真面目に、自分を犠牲に嘘をつかず生きてるからトーマスを評価するって、嘘に嘘を重ねてゼニ稼ぐ商売と、徹底的に真逆だよね…。
こっからのローラン編で、どんだけ落とされるか今から不安だよ…そっからアガるんだろうけど。
さてお話は、贋作者と詐欺師の心温まる交流からスタート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
ほーんと、至近距離で感じた人間の熱量に、簡単に転がされちゃう男なんだから、エダマメくんは…。
ツメも人間も甘い彼を主役にすることで、正直この作品はコンゲームに必要なキレが、少々減じていると思う。
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んだが、黒髪クソ野郎には絶対なれない彼の人情主義があることで、ドラマとしての軸が安定してる感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
今回のラストで、ジェームズと同類の”金髪クソ野郎”と罵られるローランと、同じ種類の生物にはなれない…けど、そんな悪魔に見初められ、自分自身も詐欺から離れられない。
そこら辺の葛藤が、ラストエピソードの主柱になんのかなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
いやだって、このまま人情家で成功しちゃったら嘘っぽいじゃん。詐欺師の話だけに、しっくりこない嘘は違和感すごいから、最終章はシビアに突っ込んでくるかなーと思う。
今回人情主義で上手くいくのも、その前奏、みたいな。
『二つのかばん…確実に取り違えネタだよな』と、先など読みつつ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
イギリスの金髪クソ野郎をハメる仕掛けは着実に進み、獅子身中の虫は見事に、台本を演じきる。アビーを懐に入れた時点で、ジェームズの破滅は既定路線だったかな…。
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彼を失脚させる醜聞の暴露も、思えば身から出た錆。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
セックスにだらしがないまま嘘をついていたことが、スポンサーを撤退させて破滅を呼び込む。
恋に浮かれて見落としてる真実を、痛みを込めて突きつけ、自分に都合よく状況を動かす。ファラ周辺の仕掛けは、今までとちょっと毛色が違って面白い。
ローランは環境全部を仕込んで、カモを乗せて操るやり口が好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
相手が浮かれ、あるいは怒って冷静さを失うような”場”を捏造することで、判断力を奪ってハメる。LAでもシンガポールでも、その手口は変わらない。
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彼が鼻を覆う、マフィア美術の腐臭。鼻持ちならないエリート主義はしかし、彼自身の悪徳の反射である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
歪んだ自分の鏡を目の前に置かれると、人間は冷静ではいられない。
自分と似ていて…しかし違う(と思い込んでいる)からこそ、ジェームズはローランに怒り、冷静さを失っていく。
ローランの性根がゲスなスノッブなのは”素”だと思うが、犯罪に身を置き続けている彼はそこに開き直りがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
悪党上等、金だけが王様。
なまじっか審美眼と実績があるだけに、ジェームズはそういう腹が定まらない。
俺は美の使徒で、正しいことをやってるんだ。
そういう思い上がりに足払いを食らわせて、プライドをくすぐり怒りでズタボロにするのが、ローランの楽しみなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
エダマメが体現する悪徳の中の善、ジェームズがすがる善良ぶった腐敗。両方”人間らしい”と美味しく食べれるのは、悪魔特有の悪食だわなぁ。
まぁローランは内面を独白しないので、どす汚れた詐欺師である自分をどう思っているかは、まだ見えないんだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
ジェームズにとって目の前に突きつけられたスノビズムは、鼻を覆いたくなる悪臭を放つ。それが自分と同じ匂いだと思いたくないから、目を背け怒り狂う。
エレガンスの歪んだ鏡を演じているローランも、ジェームズ(やハメた他の悪党)の同類であり、詐欺を続ければ否応なく、己の腐臭をかぐことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
エダマメは、詐欺を通じて”善”を求める自分に出会った。アビーは空に舞い、シンシアは過去と決別した。
さて、ローランは己の物語で、何と出会うのか?
それは先の話として、カモがヒートアップする中仕掛けは動き、オークション会場の外で破滅が確定する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
闇に沈んでいく側と、痛みを伴い光に帰還する側。
今後の末路を予感させるライティング・コントロールが、なかなか面白い。
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ジェームズの贋作詐欺の片棒をかつぐ形で、シンシアの未来は歪んだ。パートナーと別れ役者を諦め、人生擦れっ枯らしの詐欺師になった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
彼女は多分、その生き方を恥じていない。遠い昔に置いてきた、小娘時代の傷を”Great Pretender”として、堂々回収しにかかる。
『台本破りは、ローラン一味の得意技』ってんで、シンシアは1億の大台まで値を吊り上げ、自分がかつて身を置いた夢の結晶を、壊した当人に認めさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
あくまで冷静に、沈着に銭と嘘で追い詰め、相手の思考能力を奪う。”詐欺師”としての格付けを、キッチリ済ませて勝ちきりたかったのかもしれない。
エンディングで”想像をたくましくする”、事件の真相。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
ローランが人間性のエキスをチューチュー啜るために作った舞台に、あえて乗っかってトラウマ完全克服! という話かもしれないな…。
そこら辺、シンシアはタフに割り切れてる。湿り気は確かにあるけど、それに支配されない感じ。
アビーちゃんは過去振り切るのに、大迷走と大ジャンプ必要だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
対して仲間のお膳立てにため息一つ漏らしつつ、シンシアはキッチリ止めの一撃を担当して決着をつける。
ここらへんのコントロール性能の違いは、そのままエピソードの味になってて面白い。主役が物語のテイストを決めるだな、やっぱ。
戦いすんで日が暮れて、良いオークション・ファイトだったと手を握る。そこで差し込まれた毒薬が、”美術界の007”を追い込む。ザマァあああ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
馬鹿な女と笑わば笑え、致命打を受ける前に知れた身内の情、美への向き合い方…当主と家令の物語は、ガラス越しにまだ続く。
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スッキリしない恋に向き合って、ガラスから抜け出したシンシアと、ようやくガラスに収まったファラの姿は対比なんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
ジクジクした傷を抱えて、それでも前に進んでいく道が、ファラの前にも開けているのだろう。その時隣を支えてくれる人は、確かにいる。例えばそれが、恋ではなくとも。
ロマンス色が強いロンドン編、執事さんをキーキャラクターにすることでそこから飛び出した結論をファラに用意できたのは、奥行きがあってよかったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
過去回想で活用されてきたガラスの表現力を、最後に引っ張ってくる(そしてシンシアで使わない)ところも良い。
エダマメはトーマスの”頑張り”を受けて、真贋を入れ替え、詐欺師を画商に変えてしまう。その独走がシンシアに大事なものを手渡し、彼女の過去はようやく決着する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
その後ろ側で人情を弄ぶ、悪魔が一人。
陰影の付いた感情を摂取できるなら、何でも良いんだろうな…。
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レストランで過去のすれ違いを焼き直したのとは、ちょっと違うカフェの景色。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
もう豆の缶詰は食べないけど、確かにそこにあったものと手を繋ぎ直して、ようやくサヨナラ。
そこに潤む感情の豊かさを、しっかり作画した瞳の表現力は流石。決め所、キッチリ決めるね。
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回想でガラス越しの光景を幾重にも重ねたのは、そこから出て”詐欺師”としての自分を再スタートさせる、シンシアの未来を強調するためだったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
最強の飲んだくれビッチに見える彼女も、過去に囚われていた。LAのエダマメや、シンガポールのアビーのように、主役を演じてそこから飛び立つ。
今回の詐欺でアビーが大活躍したように、”次”は吹っ切れたシンシア姐さんが暴れるんだと思うけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
四章立ての特異な構成は、自分が主役の物語を終えた”後”の変化を、かなりどっしり見せてくれる。
それは後悔まみれのこのお話、この構成じゃないと食えない味で、かなり好きである。
というわけで、それぞれの決着がロンドンとニースに輝いて、物語は終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
平凡な生活も、幸せなカップルも、幸福な親子も、詐欺師には遠い夢のように霞む。
悪魔は掲げた指輪の中に、”ドロシー”という囁きに、何を込めたのか。
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あ、カタギの夢破れたエダマメの肩にポンと手を置くアビーちゃんは”二章以降”って感じが凄くして、最高に好きです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
死にたいと思って過去に縛られてた自分を、解き放ってくれた仲間を言葉少なく信頼してる今のアビーちゃん、やっぱ凄く良い。そういうのが台詞ではなく、描写で見えるのも良い。
それは次回以降、九話の大回しで展開する最終章で明かされる! …ってところか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
とまれ、ロンドン編無事終了である。面白かったです!
とにかくシンシア役の園崎さんの芝居が圧倒的で、ピュアな役者志願がスーパービッチに成り果てる時の残酷、残る純情を、綺麗に魅せてくれました。
これまで触ってこなかったロマンスを真ん中に据え、”美”や”夢”に対するピュアな思いなんかも盛り込んだ話運びは、冬のロンドンの湿り気と合わせてとても良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
詐欺師の話としては湿り気強い感じもあるが、まぁエダマメが主役な時点でな…。僕は好みだ。
ここまでのお話から一話少ない構成ゆえか、話の方向性が分かりやすく、見てて混乱しなかったのは助かりました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
LAのエダマメ、シンガポールのアビーと、各章の主役たちのキャラクター性が反映されて進んできた物語。
ロンドンのスマートな話運びは、シンシアの爽やかな気風が反射した結果かなー。
キャラの特質をドラマとムードに反映させながら、長尺のお話を通じて登場人物を理解させていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
そんな筆が、ローランに及ぶだろう最終章がどうなるか、なかなかに楽しみです。
徹底して腹の中身を見せない、内面がわからない存在として描かれ続けてるからねぇ…そこを崩すのが、最後のドラマ…か?
事前の描写を上手く拾って、予測を楽しくひっくり返したり納得させたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
そういうレトリックも巧い作品なんで、ここまでの三章がどう活かされるかも、また楽しみです。
そこを全部見ないと、各都市の物語を評価しきれない、って部分もある。お話ってのはまぁ、最後まで見ないとなんとも言えないけどさ
そういうシリーズ全体の評価は、今後の楽しみにとっておくとして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
甘くて苦くて、湿っているのに奇妙に爽やか。シンシアを主役に踊ったロンドンの物語、とても面白かったです。
終わってみると、章の主役が好きになれるのはやっぱ良いな…次回も楽しみですね!
追記 章ごとに複数テーマが踊って、結構綺麗に収まるコントロールの良さは、このさく品の好きなところ。
グレプリ追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
今回の話はジェームズが体現するスノビズムと、ファラが最後に獲得し直すエレガンスの話なのかな、とも思った。
出来レースのオークションで美を私有し、狭い部屋に閉じ込めて玩弄するジェームズは、銭儲けのためなら美を平気で蔑する。贋作も作る。
そんな彼の財布だったファラは恋破れて、部屋に閉じ込められていた恋の残骸を美術館に放流する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
私財を公益へと手放すことで、美はそれを最も強く求める少年たちに開放され、あるべき姿を取り戻す。
執着を手放し、新たに進み直す。ファラも美術品もシンシアも同じゴールにたどり着いて、話は終わる。
主役サイドはクソ詐欺師なので、正しさとか人情とかにケツを落ち着けてもいられないんだろうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月13日
作品が答えとしているものは怜悧な知恵よりも、無私の清らかさにある感じが、コレクションの行方からは透ける。
その視線は主役たちの仕事、作品のテーマと相反するのか、融和するのか。終章の見どころ