体操ザムライを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
”アスリートの娘”として、NHK杯に挑む城太郎を献身的に支える玲。
そんな彼女が抱え込む陰りに、レオは出会う。
幼い表情に忍耐を刻み、飛躍の足場を支える少女。
全く忍ばない青い目の御庭番は、日々の恩義を返せるのか!?
そんな感じの待っていたような、出会いたくなかったような…ともあれ玲ちゃん回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
家では明るく甲斐甲斐しく、アスリートの父を支える彼女。その”良い子”っぷりが何を犠牲に生み出されているのか、深く踏み込むエピソードとなった。
脆弱性を全力で殴られて、なかなかしんどかったなァ…。
玲ちゃんの過度に大人びたもの分かりの良さは、学校という社会で彼女を浮かび上がらせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
完璧だった母親の代理として、アスリートの娘として、現状に過適応した彼女は、父には見せない表情で想いを抱え込む。
日常の半分を送る場所で、別に笑顔じゃなくても良い。
子供が固めるには、あまりに寂しい決意だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
そこに父たる城太郎は(今回は)踏み込まない。NHK杯での復活に向けて、必死に鍛錬を積み上げる。
ヌボーっと色んな事に気づけない彼の特色は、簡単に”克服”されるものではないのだろう。
その代理として、走り回るのが空気読めないニンジャである。
血縁ではなく、過去も分からず。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
急に家に入り込んだ謎の異物は、だからこそ”家族”が踏み込めない領分に大胆に飛び込み、暴走気味にかき回す。
そのお節介が玲が抱え込んでいた思い、家庭でも学校でもさらけ出せなかった叫びを引っ張り出す。
固定化されかけていた役割が、ぶっ壊れて再構築される。
トリックスターの本分をレオがしっかり果たしたことと、それで玲ちゃんが少しでも楽になった様子が、僕は嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
重ねていうが、城太郎はこの状況に(まだ)関与していない。
競技をやりつつ、父親でもある。その難しさに彼が向き合うのは、まだまだ先のようだ。
しかしその前段階として、荒垣家のヘンテコな居候が小さな主を心から案じ、自分だけに出来るやり方で変化を連れてきたことには、大きな意味がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
”良い子””優しい子”の檻から玲ちゃんを出したことは、城太郎の体操人生にも大きな変化を呼び込むだろう。
それだけでなく…というか、それ以前に。
大人びてみえて、母の喪失に傷つき、父の奮起を愛する一少女が少しでも、抱えた重荷を下ろせたことが良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
レオが巻き起こした騒動、引っ張り出した叫びは、”学校”という社会との向き合い方、その中の彼女を変えていくだろう。
そこにいる彼女もまた、間違いなく本当の玲ちゃんだから。
”良く出来た、アスリートの娘”という、城太郎に都合の良すぎる役割だけを背負わせるのは、あまりに酷だから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
全然忍んでないニンジャが、耐え忍びすぎる少女とちょっとケンカして、凄く仲良くなったことが、僕は嬉しかったのだ。
玲ちゃんに感じてたヤダ味の対応に、一話しっかり使ってくれたのもね。
というわけで、物語は『いつもの荒垣家』から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
美味しい料理が出てきて、明るく笑顔で、後顧の憂いなく城太郎は体操に邁進できる。
出来た子、良い子、優しい子。
そうなろうと努め、そうなっている玲ちゃんの役割。
それがあって初めて、NHK杯にも挑める。
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本当に、そうなのか。自分の願いに娘を巻き込んで、父として果たすべき役割をないがしろにはしていないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
それを疑問に思ったからこそ、城太郎も流されつつ、自分の問題として一度は引退を考えた。
しかし胸に湧き上がった炎は、そういう疑念を覆い隠す。玲ちゃんも、父が娘に向き合うことを望まない
堅牢な絆、確かな想い、人格的な成熟。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
一般に”善”と分類されるものがあればこそ、玲ちゃんを閉じ込める檻は簡単には開かない。
良い子なんだから、それでいいじゃん。
そう押し流されかねない危うさは、既に荒垣家の状態になりかけている。なまじっか結果出して、夢見せてるからなぁ…。
そんな難しい状況に切り込めるのは、自分の起源と問題をひた隠しにする、謎のニンジャだけである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
体操ザムライに、何故憧れたのか。クリティカルな問いかけに目をそらし、彼は城太郎の復帰を全力で応援する。
夢を生み出せる人は、それ以外の全てを置き去りにしても良い
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今回のお話は、そういう通念の死角で踏みつけになってるものに、レオが踏み込んでいく話でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
家では見せない表情で、悪気のない揶揄を堪えながら進む少女を、御庭番は見過ごせない。
でもそれは余計なお世話で、”良く出来た娘”はお助けチョップに苛立つ。
それをされると、お父さんが困るから。
玲ちゃんの世界は、死んでしまった母の代理として父を支える事を、最優先で回っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
優秀だし、優しいし、良いことだ…で済ましては、まぁいけないだろう。
そこには揶揄に傷ついてる生身の玲ちゃんがいないし、その小さい肩に重いものを乗せすぎている。
奇跡の復活を果たし、夢を成し遂げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
そんなドラマとエモーションが孕んでいる危うさに、城太郎は気づかない。気づかせないために、玲ちゃんは”良い子”なのだ。
演じているわけではない。強制されているわけでもない。
でも、やっぱりそれは変わって欲しい。
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その突破口になるのが、一見軽そうな黒ギャルなのがこの話の面白いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
まさに赤壁…超ヤバい勝負どころに、荒垣家と玲ちゃんが立っていることを少女は指摘する。三国志好きなの? ガングロ軍師ポジションなの?
今回はあゆちゃんの株、むっちゃアガる回だったな。
体操一直線のアスリートとコーチが、赤い聖域でジムナスティックに三昧する中で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
ニンジャは壁を超え、家では見せない玲の表情を見る。
心と体を育成し、色んな事を学び、日々を楽しく生きれるはずの場所で、彼女はひどく冷たい顔をしていた。
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『好きだから意地悪しちゃう』じゃすまねぇ、他人の一番ナイーブな所を乱雑に踏みつけてくる男子も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
味方ズラしておいて、同じく乱雑に勝手なことをほざいてくる女子も。
”アスリートの娘”として、過剰に成熟した玲ちゃんとは噛み合わない。無邪気な無神経に同調できるほど、ガキじゃない。
それでも、閉ざされた世界を変えれるほど大人でもない玲ちゃんは、冷たい仮面で自分を守って、風が行き過ぎるのを待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
その防衛策は、やっぱり寂しい。とても賢い、ベターなやり方からこそ、ひどく寂しいのだ。
レオはそこに漂う空気を、敏感に感じ取る。
母の墓前に手を合わせる玲ちゃんは、レオの尾行にも気づいている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
大女優で、完璧な”アスリートの妻”でもあった母の代わりをするべく、少女が背負った重荷。
それが伸ばす影を、父は見ない。走り去っていく背中を、父は見ない。
だが、ニンジャは見た。
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見せないために、母の墓前だけでそういう表情をしているわけだが。それを自分に許すのは、『荒垣城太郎を支える女』としての同族意識からか。ハードボイルド小学生すぎるだろ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
”良い子”として父を助けることは、母がやるべきだったことを果たして、死人を取り戻す行為でもあるんだろうな…。
ニンジャは”家族”が気づかない、色んなものを見る。ゴミ袋に投げ捨てた、授業参観のプリントもそうだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
父としての責務を要求することが、アスリートの邪魔になる。破天荒な祖母も、群衆に埋没するような生き方はできない。
だから、私は良いよ。
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『良いわけねぇだろうがッ…!』と、リアル視聴時にモニタ前で唸っちゃったけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
お互い思い合う家族だからこそ、崩せない檻。家庭を、競技を支えるために必要な”役割”を大事にすればこそ、置き去りにされる寂しい笑顔。
そういうモノを突き動かすのは、”家”の外にいるトリックスターだけだ。
ここでもガングロ軍師が”冴え”を発揮して、家族の核心をレオが聞けるよう戦場を整えてくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
城太郎がなかなか『バランスのいい大人』として完成することを許されない状況で、トンチキながら優しく賢い他人が色々助けてくれるのは、非常にありがたい。
”縁”の話なんだろうなぁ…亡くなった奥さん含め
サムライが出来ぬのなら、ニンジャがやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
レオナルド、スーツで武装し暁の出撃である。体操以外てんでダメなスウェット姿、それを支えるべく”良い子”であり続けてる玲ちゃんを切り取るカットが、忍びの大勝負に良く刺さる。
そらー、お前が崩さんとといかんところだ。
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空気を読まないレオの感性は、子供たちと波長を合わせ、教室を支配する。まぁ目立つからなあの子…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
悪気なく”悪い子”になった彼が、玲ちゃんの”良い子”という役割を壊す波を作り上げるのは、なかなか面白い構図だ。
過剰な成熟に囚われた子供と、まるで子供みたいに後先考えない大人。
幼さ、純朴さ、周辺視野の弱さ、他人を惹きつける魅力は、城太郎の特徴でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
そういう意味でも、父の代理としてレオが来たのは必然なんだと思う。
体操という天命、積み上げた功績に邪魔されないフリーな立場な分、玲ちゃんとしっかり向き合えてる感じもあるしな。
体操だけに三昧すること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
オールドスクールなスポ根なら全肯定されそうなネタを、今回のエピソードは全力で殴りつけている。夢の金メダルが気づかず犠牲にするものに、ニンジャの自由な視界で切り込んでいる。
ただ、結果が出れば良いのか。
そこら辺の内省っぷりが、陽気に弾む展開の底を支えている
レオの幼さも、別に無敵ってわけじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
自分を傷つけるバカ男子を、玲ちゃんがどう思ってるのか。どれだけ傷つけられてきたのか。
そういうところには目が行かず、ノリノリで”友達”になってしまう。
それは多分玲ちゃんには、裏切りに感じられたのだろう。
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だから怒る。学校で貼り付けていた冷たい無表情でも、過程で維持してきた明るい笑顔でもなく、胸の奥に溜まっていたマグマを全部吐き出して、荒垣玲らしくない荒垣玲になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
それは急に生み出された表情ではなく、ずっと隠し、秘めて、耐えてきた真実の顔なのだ。
ニンジャとしても大人としても間違いまくってるレオの振る舞いは、そういう風に真実を引っ張り出した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
それは彼が、誰かが覆い隠しているものに敏感で、大好きな誰かを大事にしたいといつも思っていて、そのために頭を下げることを厭わない…”良い子”だからだ。
ブレーキのぶっ壊れたトンチキ忍者は、世間一般の視線からすれば当然”良い子”じゃない。その呼び名は、家での玲ちゃんみたいな人に使うのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
でも”良い子”に玲ちゃんを閉じ込めてしまうものが犠牲にする思い、抑え込んでいた激情は、こんなに強い。
こんなに本当で、封をされて良いもんじゃない。
そういう人間の真実を引っ張り出せる人をこそ、”良い人”と呼ぶべきなのだろうと、僕は思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
だから、レオは”良い子”だ。怒りに震えながら、体操に邁進する父への敬意と愛情を強く吠える玲ちゃんも、もちろん”良い子”だ。
そういう人たちが、肩寄せあって一歩ずつ、栄光に向かって進んでいく話なのだ。
堪えてきた想いを吐き出し、逃げ出すように駆ける玲ちゃんに、レオは追いつく。玲ちゃんも踵を返して、裏切り者の忍者に向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
坂道が二人の身長差を埋めて、対等な視線が通い合う。
言いたくないと堪えていたものを、引っ張り出されて全部滅茶苦茶。
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でも、なんだかスッキリしたから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
玲ちゃんはレオの暴挙を許し、二人は肩を並べて進んでいく。
お父さんには言えない秘密を、共有してくれる人が一人増えた。答えの帰らない墓前以外にも、家とは別の顔を見せれる相手ができた。
玲ちゃん、良かったね。レオ、良かったね。
ニンジャの巻き起こした大嵐の後にも、日常は続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
無邪気な残酷さが踏みつけにしていたものに気づいた子供たちに、向けられる笑顔。”学校”では浮かべてこなかった、玲ちゃんの柔らかな可能性。
それが仲立ちになって、彼女の日々は変わっていくだろう。
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人間には色んな顔がある。対峙する社会に応じて、その表情は変わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
そのどれもが、無視できるほど無意味ではないと思うから、この終わり方はとても良かった。
玲ちゃんは今後、学校でも笑えるようになるだろう。耐えるだけではなく、想いを表に出せるようになるだろう。
それは無茶苦茶だけど、だからこそ気持ちに素直なレオが壁を超えて、生み出した変化だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
”良い子”であり続けるために犠牲にしてきたものを、玲ちゃんは取り戻していく。
”家”から離れた場所の変化は、”家”で彼女が背負う役割、それにつながった家族も変えていくだろう。
そしてこの変化は、まだ城太郎に届かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
アスリートは競技に邁進し、それ以外を顧みない。
そんな古い”檻”から、彼もまた抜け出せないでいる。
いつか、今回レオが代理で果たした大事な仕事を城太郎が背負えるようになった時こそ。
彼も、彼を主役とするこの作品も真実、高く飛翔するのだろう。
今回のお話は、そんなウルトラCの前駆でもあったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
玲ちゃんが二重の檻から出れたこと、レオがそこから出したことが、父として…そして体操選手として城太郎が飛躍する日が、きっと来る。
そう信じられるエピソードであった。つーか、そこに辿り着かないと作品全部が嘘になるからな…マジ要よ。
”良い子”が抱えた、重すぎる荷物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
それが消えてなくなることはない。それを背負うことは、玲ちゃんにとっても誇りの源泉で、大好きな人のために出来る”何か”だから。
でもそれを、一緒に持つことは出来る。”良い子”じゃなくても、出来ることはある。
そういう事を焼き付ける、良いエピソードでした。
この物語的飛翔を、次なる妙技にどう繋げるか。体操と同じく、アニメも”連動”というのが大事でして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月1日
玲ちゃんに感じてた危うさを見事に回収したこのお話が、変える風景、生み出す変化。非常に楽しみです。
舞台裏を深く描きながら、”NHK杯”っていう競技的見どころも印象づけてるの、上手い運びよな…