裏世界ピクニックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
自分ではない女を求め裏世界に挑む鳥子の引力に、空魚は巻き込まれていく。
二人を支援する奇妙な賢者、愛と狂気に飲み込まれた男。
境界の向う側にある世界は、呆気なく人命を喰らう。
危険な旅の先に待つのは、一体何か。
そんな感じのVS八尺様、チュートリアルおじさんが裏世界のヤバさを身を以て教えてくれる、裏世界ピクニック第二話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
元が一人称の小説だからか、空魚から見た鳥子の底知れ無さ、だからこそ惹かれる感覚が裏世界と上手く重なって、なかなかロマンティックだった。
鳥子は空魚ではない女を求めて、裏世界を旅している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
孤独に慣れているはずの空魚は、鳥子と裏世界に出会ってしまったことで心乱され、もう今まで通りの自分ではいられない。
境界を超えて変質し、致命的な越境の際で踊る。
その代償は肋戸が示すとおり狂気であり、死だ。
肋戸は愛する人を裏世界に奪われ、その後を追うように一人消えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
空魚は鳥子の手を掴むことで、八尺様を認識し撃破した。
惹かれた相手の実在だけが生の岸に女を繋ぐが、しかし鳥子は空魚を見ていない。
見ていないと、空魚は考えてしまっている。
他人の心は裏世界よりも、よく判らない謎だ。
今後様々な怪異に挑む中で、鳥子に魅入られてしまった空魚の思いはどう転がっていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
不在なるエウリュディケを追い求める鳥子の歩みは、地上から見上げる空魚の視線とどう絡むのか。
すれ違いつつも奇妙に重なり、死すらも乗り越えていく二人のピクニック。
それが危ういと同時に楽しいものであることを、よく見せるエピソードだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
チュートリアルおじさんがドロップしたAK101といい、ミッション報酬をくれるちびっこ賢者といい、いい意味でのゲーム感覚が表に出てきて、活劇としての味も整ってきた感じ。境界の表現も、相変わらず元気だ。
開幕壁ドンと顎クイで画面端に追い込まれてる弱い生き物だが、”くねくね”を認識したことで妖精眼を手に入れてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
空魚が視て、鳥子が触る。
行動と認識、二人で一人の裏世界探索者に訪れた、具体的な変化。境目を越えると、色々なものが変質していく。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/bkqM95VUZF
これがオカルト方面だけでなく、名状しがたい心の内側にも及んでいる所が、怪異ロマンスとして面白いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
裏世界と仁科鳥子、面白すぎて確実に人生がぶっ壊れるモノ二つと出逢ってしまった空魚は、もうその影響を逃れられない。
青い瞳は異界を認識するメディアであり、その犠牲たる証明だ。
ブツブツ文句をいいつつも、超アクティブな金色担当にグイグイ引っ張り込まれて、空魚は現実の中にある異界に潜っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
小桜の研究所は市中山居の真ん中にあり、その主は幼形の賢者である。普通でないネタには、普通でない連中が群がるのだ。
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小桜と鳥子を裏世界にいざなった、今は此処に居ない女。不在故に巨大な空白となって、一方通行の感情をなだれ込ませるモノに惹かれて、鳥子は裏世界に踏み込み、小桜は現世に根城を築く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
”手”を異界に持っていかれた鳥子は、やはり行動する存在である。小桜は待つ。空魚は視る。
いくら見ても判らないのが過去と思いであって、空魚は鳥子が窮地に挑む根源を共有できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
自分が巻き込まれている超ヤバピクニックは、自分がその顔すら知らない女を助けるために、行動者たる鳥子と待機者たる小桜の共犯で駆動している。
モノを持って帰り、あからさまにヤバい金の遣り取りをする。
その生臭さの裏では、裏世界に食われて消えた”冴月”なる女への純情が、二人の女を焼いて、一人の女を置き去りにしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
水に住む魚が鳥を見上げるように、鳥はけして届くことのない月を追い求めている。桜は根を下ろして、彼らが月を取り戻すよう、知恵を貸す。
こう並べると、名前に詩情があるね
作品の主体である空魚の内面はモノローグによってがっちり伝わってくるが、小桜と鳥子もまた、”冴月”を間において繋がり、また離れてんのかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
裏世界に踏み込む相棒として選ばれなかった(拒絶した)小桜は、不在なる女をどう思い、選ばれた女を助けているのか。
ここは空魚から見た鳥子よりも、さらに遠い景色として存在している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
自分を惹き付ける女のことも、それを求める自分のことも解んないのに、その女に繋がる他人のことなんて尚更わからない。
解らなくても、縁で繋がってしまう。危うくフラフラと、その中に迷い込む。
怪異渦巻く裏世界と並列する形で、空魚は他者性という異界に惑わされ、見つめ、その影響を否応なく受けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
一歩間違えば死ぬ大冒険と同じ構造と魅惑を、先の見えない人付き合いは持っている。
この並走加減が、僕にはなかなか面白い。奇怪でロマンティック。ちょっと鏡花っぽい。
『共犯者は、世界で一番ロマンティックな関係』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
そう空魚の心を縛った女は、報酬を山分けすることで無自覚に、縁を強く結んでいく。
天と地を繋ぐ坂道の境界で果たされる、共犯の儀式。
でもそれって、別の女を助けるためでしょ?
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雨上がり晴れ渡る鳥子の笑顔を前に、空魚は惨めで椅子にも座れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
自分が行き遭ってしまったものに惹かれ、世界を見る目、自分を見る眼が変質してしまっている事実を、まだ飲み込めない。
あの強く輝く女の、たった一人になりたい。
代用品ではいたくない。
そんな思いは、喉の奥で苦く潰れる。
鳥子が真っ直ぐに裏世界に突き進む、原動となる冴月への思い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
その眩しい光を前に、空魚が生来持つ”陰”が強く濁るのが大変良い。
正反対だからこそ人生がひん曲がるほどに惹かれ、だからこそ惨めな自分をまっすぐは伝えられない。
ちっぽけなプライドと、肥大した自意識。それを焼く恋情。
やっぱアニメが鳥子を魔的な美人としてしっかり描き、陰の女の人生がグニャグニャにひん曲がる説得力があるのは、とても良いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
否応なく視界に入ってきて、勝手に心を占拠して、あまりに正しく、複雑怪奇な思いを糾弾してくる輝き。
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空魚が何を考えているのか、鳥子には判らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
勝手に推察して、勝手にすねて、勝手に自分に値札を付けて、その安値に苛立って怒られている。
カメラを少し客観に離せば、鳥子のいうとおり空魚が勝手に拗らせている。
しかしわざわざハヤカワレーベル読むような連中は、空魚の面倒くささに思わず寄る
鳥子だって他人が完全に見えているわけではなく、見えないままグイグイと進める(巻き込む)気質があるだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
見えないほうが、前に進むには良いのかもしれない。後に八尺様の罠に食われかけたように、見えてしまうこと、考えすぎることは色々な厄介も呼び込む。
衝突してでも思いを聞き出し、共有する。空魚が絶対にできない正しい解決を、鳥子は叩きつけようとして…百合の間にAKが挟まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
コンクリートが分厚く拒絶する、裏世界での奇妙な邂逅。
その緊張は見えざる罠を回避して緩み、境界は突破されていく。
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出逢った時は肋戸と二人を隔てていたものは、危機を回避するうち後景に引いて、話をするときは背中を支える防壁に変わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
境界を超えること、離れていたものが触れ合うことで、人と人との距離、その周囲にあるものは意味を変えていく。
それは、良いことばかりではない。
越境の図象学が上手くアニメになってる、肋戸との邂逅シーン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
彼は愛と狂気をにじませながら、なぜ裏世界に堕ちたのかを語っていく。
失われたものを求め、危機に怯えず進む強さ。
鳥子と肋戸が手を繋ぐ感覚が、空魚には遠い。
遠いと、空魚は思っている。
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鳥子は自分が視ているものを疑えないまま、周囲の音に耳をふさいで、危険の中に飛び込んでいってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
愛の為に突き進む人たちに、置いていかれない。
代用品でしかない自分に、甘んじない。
そのため視るだけでは満足せず、行動してしまう。
此処に於いて、鳥子的なものと空魚的なものは交雑しだす
それが愛する人の足跡などではない事実を知りつつも、一旦後ろに引いて、持ち前の知性と孤独に立ち返ろうとしても、空魚の歩みは鳥子を求めて進んでしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
その歩みは霧の先頭を行く肋戸に、創造の中の幻でしかない鳥子より実は近い。
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それは多分、この段階ではまだ名前を得ていない(故に呪としてコントロールできない)想いが、狂気のオルペウスたる肋戸と近いからだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
そしてそれは、届かぬ月を勝手に追い求め、空魚を共犯者に引き込んだ鳥子の思いとも、実は重なっている。
八尺様が操る幻影は空魚のコンプレックスを的確に刺激し、手袋なしの掌を振りほどいて、鳥子は危険な歩みを進めてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
それを追い抜いて肋戸は、一人で怪異に向き合い、愛(あるいは狂気)に食われる。非常に呆気なく消える。
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この美しくも危険な領域では、誰かを想う気持ちは勝手に動き出し、死地へといざなってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
肋戸はそれに食われ消えた。
空魚もまた、己の中の恋情と惨めさのアマルガムを幻影に、惹かれてを取って繋ぎ止めようとする。
しかしそれは、実体のないエコーでしかない。
視て、掴んだものが実は怪物の手でしか無いことを、青い目を持たない(あるいはもともと持っている)鳥子が教えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
肋戸にはなかった共犯者の存在が、危ういところで空魚を死から…”視る”役割の暴走から救っていく。
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手を繋ぐ。掴んでいるものが真実だと認識する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
その確かさが、時に破滅に結びつくのが裏世界(であり、そこから敷衍し変質した現実)なのだろう。
認識することと行動することには、思われているほど確かな壁があるわけではない。
鳥子は空魚の後ろから、真実を”視る”ことで彼女を救った。
考えること、行動せずに視ることは本来妖精眼を持つ空魚の役割であるはずで、しかしこの二回目のピクニック、彼女はそれに失敗する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
本質を見落とし、自分の中のイリュージョンと手を繋ぐ。
これを止めないと、肋戸のように怪異に食われて死ぬ。
それを止めうる命綱もまた、隣りにいる誰かの存在であり、死地に導く甘い誘惑もまた、同じところから出ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
誰の手を繋ぎ、手を繋ぐにしてもどう握るのか。
異界に繋がる手ではなく、その根元を押さえて、八尺様の本質を掴み取る。”行動的知覚”とも言うべき空魚の攻撃
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それは一人では為し得ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
知行が一致し、貴方と私が適切に触れ合ったときだけ、幻影は消えて死は遠ざかり、境界の向こうから宝物を回収することが出来る。
とりあえず、AKゲット。ガス圧縮駆動の実感は、多分嘘じゃない。肋戸さん、ありがとう…。
鳥子が空魚を誰かの代用品として、冴月を取り戻すための贄として視ているか否かは、空魚には判らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
異界と通じて手に入れた青い瞳は、必ず真実を教えてくれるわけではない。
乱れる己の心。解らない他者。
それでも焦がれ、狂うほどの想い。
色んなモノが入り混じり、あっけなく死を呼ぶ。
それでもなお生き延びて戻るためには、ちょっとずつでも他人を正しく視て、そこに反射する自分の輪郭を掴まなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
奇妙な境界線を越えて踏み込み、また正しく戻ってこなければいけない。
そのために、空魚は視る。自分が否応なく惹かれる、身勝手な女の顔を。
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10時間の秩父行脚、二人は八尺様の帽子というプライズを抱え、何を話したのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
そうして共有したものが、遥か彼方に飛ぶ思いを少しでも近づけ、混ぜ合わせえてくれるのだろうか?
答えは不可思議で、危険極まる霧の中。
一歩踏み外せば奈落へ真っ逆さまだと、肋戸の不在が教える。
それでも、空魚は往く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
鳥子に手を惹かれてではなく、先を行く女をただ追いかけてでもなく、自分の胸に突き刺さった想いの正体を知るべく、裏世界を進んでいく。
それは危険で、生臭くて、ロマンティックな冒険だ。
死にかけて戻ってようやく、裏世界ピクニックは”空魚の話”になった…か?
それもまた、次の冒険を視なければわからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
空魚の拗らせた精神性は相当に面倒くささそうだし、空を行く(からこそ、追い求めたくなる)鳥子のミステリーも、かなり奥が深そうだ。
一方通行に見えて、その実手を伸ばして掴み取ってくれる、美しい女。もう情緒メタメタになるしか無いじゃん空魚…。
近づいたと思えば離れ、分かったと思えば間違える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月13日
危険に満ちた裏世界ピクニックは、だからこそ二人の距離を縮めてくれる。
それがただの遊びで終わらないことは、恋に惑い狂気に死んだ肋戸が、よく教えてくれる。
形見のAKは、如何に吠えるか。
空魚の拗らせ地獄道、その行方は。
来週も楽しみです