裏世界ピクニックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
孤独だった空魚の世界に乱入してきた、二つの異物。
怪異と鳥子に振り回されながら、死と隣り合わせの日常は続く。
おっかなびっくり隙間から、定かならぬものを見定めて指を伸ばす。
時に大胆に踏み込み、大事なものを手に入れる。
恋と冒険は、何処か似ている。
そんな感じの、巨頭村探検スケッチ、裏世界アニメ第三話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
第1話と第2話でチュートリアルを終えて、捻じれてしまった空魚の新しい日常を一話使って眺めるような、落ち着いた話であった。
裏世界のハラハラ冒険と、近づけば離れる鳥子への想いが同時並走するのが、独特の歯ごたえで面白い。
鳥子が冴月を語るたびに、不在なる思い出に視線を向けるたびに、空魚は屈折した感情を虚空に吐き出し、思いを迷わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
青い瞳と青い手、二人で一つの裏世界攻略ユニット。
そう言えば聞こえは良いが、つまり相手の触るものは掴めず、自分の見るものは視てくれない関係、ということだ。
実利をマトモに考えば、とっとと止めたほうが良い裏世界ピクニック。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
それでも一緒に進んでしまう理由を、空魚は(まだ)名言出来ないし、鳥子がそれに気づいているかも判らない。
曖昧な霧に包まれればこそ、触らなば逃げる蜃気楼だからこそ、共に進むしかない厄介事。
空魚にとって、鳥子も怪異も同じ属性を持っていることがよく判るエピソードだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
それが生み出すものは、恋(に繋がった生)と死で真逆ではあるのだが。
あるいは死が隣り合えばこそ、恋は強く脈動するのか。いないものを追うからこそ、その手を繋ぎたくなるのか。
謎は尽きない。
というわけで、『死因:惚れた女の顔が良すぎた』からスタート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
作品と世界を説明するフェイズが終わって、空魚が何を視ているかをどっしり追う今回。
とにかく彼女の視線は鳥子に囚われ続け、それが死を身近にしていく。弱い生き物め…。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/aJD6UPDpiU
身をかがめ、狭間から怪異を覗き込んでやり過ごす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
そういう賢いスタイルは、二人には許されていない。
二人でいれば自動的に発生してしまう火花が災難を引き寄せて、自動的に空魚と鳥子は怪異の当事者になってしまう。
窃視と安全は、彼女らには似合わない。
触れ合って、ぶつかって、なお遠く危うい
そういう間合いは、何も裏世界に飛び込まなくても元気である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
ファッション雑誌が代表する、マトモで空疎な大学生活に元々馴染めず、怪異と行き合ってしまったことで尚更遠ざかった空魚の人生は、鳥子に引っ張られてさらにねじ曲がる。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/7FoYQZmkcj
無茶苦茶な速度で自分の手を引き、勝手に突っ走ってかき乱す。遠い存在と無視するのは、あまりに光が強すぎる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
そんな鳥子の虜になって、空魚は新しい日常という異界を彷徨うことになる。
あの女は、一体何を考えているのか。
それはずっと見通せない、巨大な謎だ。
鳥子の行動原理は、裏世界の法則と同じく全く謎で、ヤバい橋を気楽に渡り、それに空魚を巻き込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
文句を言いつつ惚れた弱み、一人でも冴月を追って死地に進んでしまうだろう、危うい友達にため息一つ、空魚は今日も裏世界ピクニックに挑む。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/8DuhQFMwj7
今回の物語は中心たる巨頭村に行き着くまでの、二人の歩みをスケッチしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
やや引いたポジションから、対比物をカメラに写り込ませながら、グリッチを避け汗水垂らして進む少女たちを切り取る。
この定点観測的な視線が、落ち着いていてよかった。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/4dqqoecEE1
それはいつの間にかある程度落ち着いて、形の定まってしまった歩み。危険に満ちつつも、乗りこなせてもしまえる迷宮行。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
ひどく歪で、しかしなんだか当たり前に転がっていく関係性は揺るがないまま、空魚はよく解んない女を、よくわからないまま追う。
このどっしりした安定性、異質な生活臭が巨頭村にたどり着いて霧に隠れ、一気に視界が悪くなる落差を際立たせる意味合いも含めて、空魚が手に入れた奇妙な日常のスケッチは、なかなかに面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
そこに生活音はない。裏世界には、鳥も風もない。
二人きり誰もいない孤独に、寄り添うわけでもない。
ひどく曖昧で不思議な間合いで、二人は歩いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
鳥子の喉が、今はいない冴月を歌うたびに空魚の顔は曇り、鳥子はそれを認識しない。
比較される惨めさ、自分を見ていない寂しさを声なき魚は叫ぶことも出来ないまま、グリッチを視る有用性を不器用に差し出す。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/jA1V04QZ6g
あの女には、こういう事はできなかったでしょ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
今貴方を死から守っているのは、私であってあの女じゃないでしょ。
そういう唯一性を差し出して、自分が視ている青い世界を共有してもらう図太さは、空魚にはない。
生来の”陰”だなマジで…水気だからしゃーないか。
そんなもやもやとした気持ちが外に出て、世界は霧と無明に包まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
アングルは傾ぎ、一歩先も見通せないあやふやさが裏世界を包む。
不気味で奇妙なものの中で二人はヒントらしきものを見つけ、お互いを見失う。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/3pMrHN2CSy
空魚の主観の中では『鳥子がいなくなった』のだが、鳥子から見れば『空魚が勝手に消えた』となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
相互の認知は食い違い、ズレたままでは認識と行動は一致できない。
視ることと動くことが噛み合わないままだと裏世界で何が起こるかは、肋戸(あるいは冴月?)の不在が証明している。
だから空魚は恋した相手を見つけなければいけないのだが、その特権は鳥子に(まだ?)ある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
霧の中に消えた不可思議な存在として、鳥子は空魚の視界から逃げ、自分を勝手に捕まえる。
その力強さはあくまで、金色に輝く女が持っている。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/2GmBwl1Qws
狭間から息を潜め、境界を超えて覗き込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
そういうものわかりの良さは怪異(あるいは鳥子)と接触することで破綻し、ハラハラ探検は銃弾ぶっ放しのハードアクションへと推移してしまう。
そしてそういう場所でこそ、”視るもの”としての資質は開花する。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/Q24D6PBJad
巨頭が迫ることで、空魚はただブツブツ言ってるだけのフラストレーションから、行動的認識へと自分を押し出すことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
鳥子の手を取り、状況のイニシアティブを取って、冴月に囚われた死の空間から、自分がともにある裏路地へと、生活臭に満ちたノイズのある世界へと抱き合って帰還できる。
裏世界にピクニックしなければ、空魚は鳥子と出会うこともなく、なんかモヤモヤした感情も引き寄せられる引力も死の危険とも遭遇しなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
空魚の物語は静止した孤独の中で、始まらないまま終わっていたのだろう。
しかし、彼女は主役として、モノローグする一人称として恋と怪異に出逢ってしまった
ならば不確かで危ないものに目を向け、誰かの手を掴んでその実感を確かめることでしか、物語は進んでいかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
それは不在の冴月を再獲得する、鳥子が背負った物語ではけしてない。
彼女は形のない存在だからこそ、二人を裏世界にいざなう空白として機能している。マクガフィンな女だな…。
しかし鳥子の視線はその空白にこそ引き寄せられ、命ある実態、恋する主体としての空魚を端っこに寄せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
そんな構図に勢いよく抗議を申し立て、共に裏世界を生き延びる共犯者としての存在感と機能を、どう突き刺していくか。
それが、空魚の物語なのだろう。
恋と冒険、英雄譚の基本だな!
まぁ求める女はよく判んねぇド天然だし、振るう剣は非合法のマカロフであるが、空魚は鳥子のことも裏世界のことも霧の向こう、よく分からないままその実感を掴み、雑音の渦巻く世界へと帰還する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
その雑多な色合いは、あの世界にはない豊かさだ。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/u8nUu5RV0O
彼岸の住人になりきることも、マトモな普通に染まることも出来ない半端者たちは、眼と手をお互いに補いながら、だんだん相手を見ていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
自分を見ていない視線をぐいと引き寄せ、頬のもちもち感触を指で確かめながら、そこにある光を掴み取っていく。
それが導きとなるか、新たな混迷の足場になるかはさっぱり分からないままだが、とにかく出会って歪み動き出してしまった物語は、止まることはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
空魚はもう鳥子に出会う前の、孤独で静止した自分に戻ることは出来ないのだ。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/Fc2SpqfvCc
そんな運命を知ってか知らずか、一瞬の静止を空魚が夢見たところで、今回の物語は幕。まー首までズブズブだからね…絶対戻れないよアンタ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
それは異界もおんなじで、行ったり来たりを繰り返しながら、いつか戻れないところまで踏み込む…のか、そこからも宝を持ち帰って帰還するのか。
補給基地も見つけられない、冴月の残滓も掴めない今回の冒険が、一体二人に何をもたらしたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
そんなところに想像を巡らせるのも、また楽しいエピソードでした。
今後冒険が深まるにつれて、二人の距離感も変わってくるのか。
何を視て何を掴み、何を視てもらって何を掴ませるのか。
そこら辺が気になっても来る、二人の現状スケッチでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月18日
ホンマ魚蹴先生は、追っては逃げる永遠の蜃気楼をそれでも追わざるを得ない心のもどかしさと、そこにある確かな喜びが好きなんだなーと、勝手に納得する回だった。
俺も好き。次回も楽しみ。