BEASTARS 第二期を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
別れを突きつけたはずの銃口は握り返され、ルイは奇妙に宙ぶらりんのまま裏町に帰る。
闇の中の儚い光が、俺の居場所。
そう思い込む男の背後で、狼は真剣な喜劇を演じる。
屍肉を埋葬し、口内を弄り、結婚を持ち出し、牙比べに負ける。
レゴシの青春も、山あり谷あり。
そんな感じの獣面青春群像劇、バラエティ豊かな第18話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
ルイの思いつめた表情と、レゴシのドタバタ賑やかな日々。色合いは違えど主役たちは大真面目で、ため息も笑顔も嘘はない。
決意、落胆、当惑、真摯。
様々な思いが入り混じりながら、点描される青春のタブロイド。
この話がたくさん持っている魅力の一つ、多彩なキャラクターが織りなす複雑な人生の味わいが、よく出るエピソードだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
正反対に見えて繋がってて、でもけして素直に直結はしない。そのズレ方がまたチャーミングで、なんとも言えない深みを楽しめる。
そういう強さが濃い回でした。
ルイが突き出した必死の強がりの意味を、オグマは指で探りながら受け入れ、繋がろうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
銃口にその腕を晒しながら、絶対に自分を撃てない優しい息子を信じ、また弄ぶ不思議な親子関係。
賢雄さんの声が、エッチすぎてドキドキだったよ…。
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ゴウヒンさんがレゴシを学校に戻したように、オグマも息子の”退”を”休”に書き直して、青春の檻に戻れるチャンスを残していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
銃と肉に彩られたヤバい休暇を、一時のモラトリアムとしてもっと強く、もっと優しくなれたなら。
『愛し方が判らない』と率直に告げるオグマは、つまりルイを愛しているのだ
『僕の舞台、見に来てくれなかったのに!』と、強がり演技を崩してこっちも素直に言っちゃうルイ先輩と、親子は似た者同士である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
そんな二人の繋がり方も、やっぱり普通ではないが率直で、少しエロティックでもある。
命を預けてもいいと思えるほどの、危うい信頼と玩弄。
枝角のように奇妙にねじれた関係を後景に置いて、ルイは裏町に戻ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
それはあくまで”保留”であり、コスモ姐さんは敏感にそういう匂いを感じ取る。
素裸で欲望と向き合う時の、尖った表情ではなく。
ひどくチャーミングな視線で、コスモはルイを見る
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哀れみとも優しさとも違う、一回こっきりの逢瀬。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
肌の代わりにグラスで触れ合う、肉食地獄に迷い込んだ餌食たちの休息。
そういうモノを込めたジュースが、親愛の口づけのように喉を滑り落ちて、ルイを癒やす。
世に満ちる嘘に傷つけられ、今まさに嘘を演じていても、それだけが全てではない。
そう実感できる時間を軽やかに演出する、コスモ姐さんの器量に惚れ惚れする。あと、ボスのそういうプライベートを外で待ってるイブキも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
しかしそれは、人生すべてを支えてくれるほど確かなものではなく、ルイは微かな灯火ではなく深い闇に身を預けていく
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闇の中にも灯火はある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
コスモのそれは、裸一貫で生き残るプライドであろうし、ルイのは奇妙ながら確かな父との繋がり、利害で結ばれながらシシ組と共有する温もりだろう。
微かながら、地獄でなおヒトでいられる縁。
それは確かにあって、しかしマトモではなくて。
何を手繰り寄せ何処に行けば良いのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
自分で内言するほど、ルイは確信を持っていない。
断ち切ろうとして断ち切れない絆に引っ張られ、あるいはそれを引っ張りながら、闇に身を置いた…置き直した時は過ぎていく。
そのフラつく多彩さが、僕はとてもいいな、と思う。苦しみと喜びに満ちて豊かだ。
ルイパートを閉じるラストカットは、完全な暗闇ではない。完全な光でもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
剥き出しの欲望が踊るようでいて、そこに草食も草食を受け入れる肉食もいる、不思議な裏市。
世の真実を裏側から照らすような場所で、”4号”はどんな自分を見つけるのか。物語は、まだ続く。
一方光の中で闇を探る狼は、ヤバい提案を堂々大食堂で切り出し、メスオオカミを発情させたりスカしたりしてた。罪な男め…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
二期入ってから、ジュノが可愛いポイント荒稼ぎしまくっており、大変ありがたい。
いや、変態に振り回されて不憫なんだけどさ…。
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レゴシはマジでジュノのこと眼中になくて、だからこそ周囲がドン引きするようなエゲツない行為にも踏み込める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
ジュノはそのエロティックな含意を一人理解しつつ、OKと打ち明けて口を開く。
しかし、レゴシはポッカリ開いた肉穴を診察するだけで、突っ込んでは来ない。
そらー怒りの野菜ジュース一気飲みもする。ルイ先輩のしみじみ飲み干しと、同じ話数に入ってるのが面白いね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
ここで不発だったレゴシの恋情が誰に向かうかは、Bパートで色濃く描かれる。
牙を探るのも、強くなるのも全て君のため。そんなたった一人のためなら、何でも出来る。
レゴシは肉特訓を乗り越え、食肉が背負うヒトとしての歴史を背負う事になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
草食相手に怒ったり、笑ったり、愛したり。
そんな感情を素直に発露するためには、強くならなければ資格がない。
優しくあらなければ意味がない。
随分チャンドラー的じゃないの
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オグマが銃口と休学届で息子に繋がるのに対し、ゴウヒンさんは肉を押し付け拳を止めさせることで、奇妙な弟子と縁を強くする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
とてもマトモとは言えないが、真剣に道に迷う子供たちを一人にしないよう、ヘンテコな繋がり方を探す大人は、彼らの側に確かにいる。
草食が塊肉に変わるということは、そういう繋がりを失い名前を奪われる、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
レゴシの埋葬は顔のない肉の塊から、人間としての過去を発掘し、名前をつける再生行為でもある。
それをしてしまえば、もう肉は食えない。
相手を非人間…非自己と切り離すから、暴力は行使可能なのだ。
…あるいは相手の肉を体内に落とし込む食肉行為は、猛烈なエゴを暴力的に押し付け、相手を自分色に塗り上げる行為なのかも知れないが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
どっちにしても、相手の名前を見ずに食う道とも、見ればこそ食う道とも、レゴシは距離を開ける。
…開ける決意を固める。
剥き出しの本能を超え、飾り立てた綺麗事も越えて、ありのままの自分として草食を守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
そんな道の入口に立ったレゴシに、ゴウヒン親父も期待のパンチである。カッコイー!
…て、キマりきらないからレゴシなんだけどさ。
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強くなる理由、闘う理由そのものに向き合った途端、しどろもどろのカッコ悪さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
巨大な図書館の棚が”遠さ”を強調するレイアウトが、バリバリ決まる痴話喧嘩は、お互いの想いがすれ違いつつ火花を散らす、青春のデッドヒートである。
まぁ、そらハルちゃんも怒るよな…罪な男め。
レゴシフィルターを外して虚心に聞くと、ハルちゃんは結構素直に寂しさと愛おしさを強く告げて、レゴシに対して門を開けているように感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
弱者だからこそのプライドで背中を支えて、ツンツン生きてきた少女にとって、この受け答えはかなりの譲歩だと思う。
ん、だが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
ジュノとの一方通行肉欲口内検査でも判るように、とにかくレゴシは女心が…つうか人間の気持ちがよく判らない。
どういう届け方をすれば、思いを受けてくれるか。
そういう小細工一切なし。秒で『結婚しよう』である。怖ッ!(率直な感想)
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バササーっと、背景で崩れ落ちる一般通過獣人がいい味出しておるけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
なんかモゴモゴ言ってたと思ったら、あらゆる過程をすっ飛ばしファイナルアンサーを突きつけてくる激重狼に、ハルちゃんも呆れ顔、書棚の遠さは心の遠ささ!
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…と思ってたら、まぁ満更でもなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
”性”を自発的に差し出すことで、良いように扱われる犠牲者からコントロール権限を持つ一人格へと自分を押し上げる選択は、コスモ姐さんとどこか似ている。
しかし姐さんが身を置く(誇り高き)どん詰まりとは、ハルちゃんの足は違う場所にもう向いている。
そうさせたのはデリカシーも付き合いの機微もさっぱり分からない、ヘンテコ過ぎる狼の純情の成果であり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
今回様々な場所、相手、繋がり方で描かれる。すれ違っているようでしっかり噛み合ってる関係は、兎と狼の奇妙な恋愛も同じである。
まぁ、難儀な二人だよ…お幸せに。
奇妙な接続は演劇部でも続き、ビル・ザ・タイガー発案の顎比べで、肉食男子たちはプライドを競うことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
ここでビルの天性の”陽”に、反発しつつ認める態度を見せているのも、レゴシの変化だなー、と思う。
合わないやつにも、何かを感じ入る柔軟さ。
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しかし捜査の突破口になればと、眉間にシワ寄せて挑んだ顎比べは、あっけない敗北に終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
屍肉によだれを垂らす本能を乗り越え、タフな強さを身に着けたはずなのに、たった一人守りたい人との関係は拗れ、密かに自慢だった顎も力を失う。
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顎力測定の時に、誇るわけじゃないけど自分の力に自惚れてる感じが、年相応で可愛いけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
ビルがエンタメ化した暴力測定は、レゴシが強さを剥奪されたと告げてくる。
林檎も噛み砕けない弱い顎で、果たして誰かを守れるのか。ハルちゃんとKEKKON出来るのか。
青年の悩みは尽きない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
口と口を紐で噛み合わせるような、ヘンテコな繋がりに満ちた世界を泳ぎながら、レゴシの青春は続く。
待て、次回! …というエピソードでした。
スタンダードではないけども、確かに真心のあるヘンテコな繋がりが、いっぱい描かれた話だったと思います。
オグマと銃口、裏市の優しいジュース、拳の激励、唐突なプロポーズ、楽しい顎比べ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月11日
それが何処にたどり着いて何を生み出すかは、まだわからない。
でも何処かに繋がって一人でないことは、多分力になる。それが、何かを噛み砕く力でなくとも。
物語は、まだまだ道半ば。次回も楽しみですね。