トロピカル〜ジュ! プリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
人魚の物語を愛しつつ、自作を否定された痛みを抱え、影に己を守る一ノ瀬みのり。
ふとしたことから縁を繋いだまなつとさんごは、彼女に力強く歩み寄る。
放たれる輝き、差し出される手。
それを掴んだ時、新たなプリキュアが生まれる!
そんな感じの、”陰”の女達が太陽にズブズブ南国日記、トロプリ第4話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
前回のサトジュンに続き、スタプリの宮本SDもコンテを担当。
くっきりと別れた明暗、クローズアップにされる足元。叙情性の強い演出によって、キャラクターの性質が良く見える回となった。
詩情バッキバキで、大変良い。
お話としてはみのりんパイセンがまなつの”陽”に力を引き出され、陰から日向へと一歩進むエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
さんごちゃんもそうであったが、”陰”の女達の中に秘められた輝きをしっかり見て、手を差し伸べ足りないものを与える主人公気質が、真っ直ぐに咲き誇っている。
まなつは元気だけが取り柄の暴走娘…と思いきや、活字の本も読むし、みのり先輩がどういう場所に立っていて何に震えているか、しっかり見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
陽気で元気な自分の領域を確かに保ちつつ、それとは違う他人の領分をちゃんと尊重できる少女である。
その証拠として、みのり先輩とファーストコンタクトした時はちゃんと整った敬語を使い、運命の同志・プリキュアになった後言葉を崩している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
これは(意識してか天然かは横に置いて)相手が見えていないと出来ない立ち回りで、このブレーキ性能が押しの強さを、しっかり制御している。
マージでまなつが凄まじい速度でグイグイ来て、一生陰の中で視線を落としているパイセンに近づいてくるわけだが、それは暴力的ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
パイセンの筆を折った(鉛筆のフェティシズムが素晴らしい切れ味)過去に踏み込んだと、拒絶されればしっかり謝り、線を引き直す。
傷に触れられた痛みに思わず跳ね除けつつも、みのり先輩もそんなまなつの”敬”をしっかり見て、腕組みして守っていた自分の心をゆっくり開いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
しかし一度膿んだ心はなかなか光に踏み込めず、助けたいのに助けられない状況で、プリキュアになる未来に少女は震える。
まなつのようには成れない…だからこそまなつに救われていく少女たちの群像が、ある種の相転移を果たす時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
リップは青春の戦化粧として、特別な魔法をかけてくれる。この人格ギブスとしてのメイクの書き方は、前回のさんごちゃんと共通か。
良いモチーフの扱い方だと思う。
今週さんごちゃんはあんま目立たんけども、先週ぶっとく繋いでしまった絆で結ばれて、ずーーっとまなつの隣で穏やかに微笑んでいるのが最高だった。”親友(マブ)”の間合いじゃん…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
動のまなつと静のさんご、陰陽の対比が非常に良いコンビで、同級生肩を並べて、ずっと穏やかに仲良くしていて欲しい
今回のお話はフィクションとリアルを巡る物語で、みのり先輩は自分自身が作り、一度否定された果実のファンタジーを再獲得する形で”キュアパパイア”になっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
それは自分を傷つける過去、傷つき未来に進めない自分をフィクションの領域に切り離し、活きたリアルに踏み込む物語といえる。
綺麗で哀しい人魚姫の、遠いフィクションの手触りで自分を慰めていたみのり先輩は、不格好に大股開いてでも暴力をせき止め、ハッピーエンドを力づくでもぎ取る物語…”プリキュア”の当事者になることを己で選ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
その質感はローラという結実した幻想を連れてきて、少女は濡れた尻尾に触れる。
その感想は”すっごくリアル!”であり、文豪が書き終えた悲劇の完成度、そこに慰みを見出していた自分は闘うこと、踏み出すことで過去に…笑い飛ばせはしないが、ある程度距離を置けるフィクションになっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
みのり先輩のこれからは、人魚が隣にいるリアル・ファンタジーとして展開する。
自分自身が闘うプリンセスとして、己の物語の主役になっていく契機を、まなつだけでなくローラも強く押し込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
人間が勝手に押し付ける人魚のフィクションを、図太くリアルを生きる当事者としてローラは拒絶し、『綺麗な悲劇、勝手な幻想まっぴら御免!』とはねのける。
そこには誰かにとって価値ある虚像よりも、今を唯生きる自分の実像を何より大事にするタフさ、大事にできる決意がみなぎっており、その自立した感覚は見ていて心地よい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
『人魚の国では~』をよく口にするローラは、違うリアリティを生きる異国人として、少女たちのリアルを撹拌してくる。
図太く、逞しく、簡単には仲良くしないけども、悪辣の奥に燃える魂を秘めた女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
ローラは人間を信じない。諦め、立ち止まり、逃げる存在として軽んじている。
しかしまなつの事は信じていて、認めても良い…認めざるを得ないその人格を通じ、他の人間を信じ繋がるようになってきている。
みのり先輩にパクトを託す時、ローラは『まなつはアンタを信じている!』という。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
そんなまなつを信じているからこそ、フィクションに逃げ込む弱い人間であるみのりが、自分だけのリアルを(自分と同じように)掴める強い存在だと、信じて鍵を託すのだ。
根性ドブ色のローラはそういう形でしか”信”と”敬”を形に出来ないし、多分大概の人間がそうなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
あまりにも特別な存在だと、その身を持って証明した誰かを”繋ぎ”にすることで、別の誰かを信じ、敬い、縁を結ぶ。
そんな人格の数珠つなぎくらいしか、僕らには許されていない。
まなつの卓越した人格、留まることを知らないエネルギーは、まなつから直接発散されるだけでなく、それに当てられた人たちに活力を与え、『誰かを信じてもいいかな』と思える温もりを届ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
そういう特別さが主人公にあるのは、大変いいことだと思う。太陽モチーフの、料理の仕方が良い。
ここで生まれる”信”は、ローラがみのりを信じたような自分ではない誰かだけでなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
傷つき震えたまま、それでもリアルを書き換えるようなファンタジーを何処かで待ち望み続けた、自分自身への信頼でもあろう。
変われると、戦えると。
誰かが信じてくれるなら、確かに変われる。戦える。
そういうものが、燦然と輝く心の炎から湧き上がるものもいるし、切っ掛けをもらわなければ燃え盛らないものもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
しかしそんな陰陽は確かに影響しあい、一歩ずつでも変わっていく。あるいは自分らしさを残し、変わらないまま未来へ進んでいく。
そのどれも、意味も価値もある。
新キュア誕生物語を描くことで、色んな個性、色んな弱さを抱えた人間集団の面白さも照らされる回となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
資質やスクールカーストを超えて、異質な少女たちが一つにまとまっていく、プリキュア序盤の醍醐味がよく活きたエピソードだったと思う。
アンデルセンに中指を突きつけ、『私は私だッ!』というオーラを常時発散しているローラの、ツッパったカッコよさも良く出た回だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
今後彼女が主役となり、何かが変わる回も多数あろうが、この強い自尊、揺るがぬプライドは大事にして欲しい。”いい子”にしないで欲しい。
そこら辺は先の話として、みのりんパイセンはOPで想定していたよりも表情豊かな少女で、たいへん可愛らしかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
ハジケると相当ヘンテコなことをすると、キュアパパイアとしての闘いがよく教えてくれて、楽しくもあり頼もしくもあり、大変良かった。
今後も変な女でいてくれ。
みのりとさんご、”陰”に留まってしまう気質の二人を連続で描いたことで、自発的に光を発する…それが過剰な熱となって誰かを焼かないまなつの”陽”も良く見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
そんな彼女も人である以上、当然陰りがあるはずで、プリキュア候補の”陰中の陽”を引き出したように、まなつの”陽中の陰”がいつか見える
そんな陰影の照り返しが、複雑で奥行ある物語を編むときが、楽しみになるエピソードでもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
もし太陽が陰に沈むのなら、その光に導かれた仲間たちが、手を引き己の光を思い出させてやって欲しい。太陰たる月だけが、太陽の光を反射しうるのだ。
そうなるだけの太い絆は、今回しっかり描けた。
そして次回、四人目に躍り出る滝沢あすかはイメージーカラーは真紅。陽陰陰陽で、バランスの良い四人だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月21日
Flamingoの語源はflamma…”炎”である。
火キュアの伝統をどう料理しトロピカってくるか、ここまでの手並みから生まれる期待に胸膨らませつつ、次回を待つ。とても楽しみだ。