スーパーカブを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
ないない少女に、出来た友達。
礼子は荷物を入れる箱をくれ、お礼にお菓子を手渡す事を教えてくれる。
アクセルを踏み込むと、風が少し目に痛いけど、コメリで買ったゴーグルがあれば大丈夫。
小熊の夢は、小さな二輪車と一緒に何処までも、何処までも伸びていく。
そんな感じの、多分第一巻ここで完ッ! ショパン”愛の夢”が鳴り響く美しい世界に小熊がINNッ! な、大感動の第3話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
魔王も倒さねー、ロボにも乗らねー。
しかし確かに小さく喜ばしく変化した、小熊の世界が行き着く先をにへら笑いと一緒に見せて、ジジイの涙腺は崩壊であった。
台詞も世界を切り取るサイズ感も極限まで刈り込んで、だからこそ生まれる生活の手触り、小さな一歩がとんでもなく大きいと理解らせる筆先が、やはり元気である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
この質感はやっぱ、全世界の足として生活に密着した”スーパーカブ”という物神のもつ体温故かなぁ、と思う。
モノが持っている物質以上のイマージュや神話を、程よく説明しつつもあくまで絵の説得力、それが息づく世界の輝きで魅せていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
ボーッとしてるようで存外図太い小熊の人格と同じくらい、物言わぬカブがしっかり主張し、乗るものと乗られるものが呼応しながら、作品世界が広がっていく面白さ。
タイトルにもなっている”スーパーカブ”をどう描くか、よく考えているアニメだと再確認する話数であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
籠が増え、スピードを上げ、どんどん”強く”なっていくカブの頼もしさ、主役級メカだからな…ある意味ロボアニメ。
物言わぬ相棒感がずっしりあるの、大変いいと思います。
というわけで、カブのある日常を回遊する小熊の仕草から物語は開始である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
初めて触れたときのおぼつかない手付きをしっかり描いた結果、静かな日常のスケッチでも変化と適応がよく解り、成長に胸がホッコリする。
ここら辺はどっしりカメラを据えて、生活の一コマ一コマをクローズアップした強みだ。
燃料の入れ方、キックの仕方、ウィンカーの出し方。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
カブのことをよく知り、それが普段の仕草に定着するほどに、小熊は自分のことも解っていく。
タッパー飯に冷たいレトルトでギリギリ”養っている”自分が、何に喜び何を求めるか、カブが扉を開けていく。
”スーパーカブ”という商品名を冠したマテリアルは、小熊の自尊、世界の見え方という、非常に精神的な領域に強く結びついていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
ただのモノだが、ただのモノでは終わらない。
そういう存在として”スーパーカブ”を描くことで、作品が選んだテーマが分厚く補強もされていく。
あとまースゲーシンプルに、小熊の灰色青春が変人カブ女にグイグイ引っ張られて、ガンガン色づいていくのが面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
それは一方通行の押し付けではなく、対等で相補的な歩み寄りだ。
確かに、礼子は事情も説明せず、小熊の手を引っ張る。
(画像は"スーパーカブ"第3話より引用) pic.twitter.com/SMft78iz3a
しかし小熊もただ引っ張られ巻き込まれるだけでなく、斜に向き合っていた姿勢を真っ直ぐに正し、礼子に自分の目線を合わせていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
欲しい物を告げ、共にスーパーに行ってお菓子を買い、バッグを並べて箱を貰う。
経済力も性格も、カブの経験値も違う。しかし、二人はしっかり肩を並べている。
この凸凹の噛み合い方が、見ていて爽やかで楽しいところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
”陽”の礼子からの一方通行に思えて、存外”陰”の小熊の反発が強い。
ただ流されるだけではない、ちょっとエグい人格が随所に透ける。
主張が弱いだけで、やりたいことは沢山あるし、新しい出会いを楽しく思う心も豊か。
箱の取り付けという新しい体験に心躍りつつ、小熊は礼子の肘打ちで”お礼”を差し出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
親もいない、誰とも触れ合わないないない少女は、ヘンテコカブ女に先導され社交性を獲得していく。
『なんでそんなオッサン臭い菓子を…?』というネタフリ含め、最高に良い
(画像は"スーパーカブ"第3話より引用) pic.twitter.com/I9GPlvq3mb
静かな語り口の中に『あ、この子はこういう子なんだ』という発見が豊かにあるのは、このアニメのいいところだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
小熊は好意を受けたら”お礼”をするものだ、という人間の常道に思いが及ばない。それを教えてくれる存在は、身近にいない。
しかし、礼子はそれを知っている。
礼を伝えるのに必要なモノ(と、それを包む紙袋)を自分の金で買わせて、小熊に手渡させる礼子のスジの立て方、通し方が凄く洗練されてて、ただのぶっ飛びカブ娘ではないことを教えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
この社会的成熟に隣り合って、ないない少女は人間に大事なものを掴んでいくだろう。
そうしたくなるくらい、礼子にとって小熊は大きな存在なんだな、一緒にいて楽しいんだなと、伝わるのも良かった。”カブでマブ”なんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
どんどんにへらにへらしてくダチの笑顔を、間近で見守り隣を歩く。求めて手を伸ばせば、前籠だって手に入ると教える。
おそらく求めないことで、人生の乾燥から自分を守っていた小熊のあり方が、カブと出会い、礼子と出会うことで変わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
世の中結構色づいてて、手を伸ばすと結構広い。何かが掴めて、引き寄せられる。
そういう体験を礼子は手渡し、小熊に染み込んでいく。良い…凄く良い…。
第1話のバイク屋のオジジとかもそうだけど、世界は小熊が思っているほどには小熊に冷淡ではなくて、求めれば何かを返してくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
でも返らない望みを投げる徒労は、とても疲れる。高校二年生の小熊は、それを既に学んでいた。
でも、欲しい物…欲しい気持ちが消えたわけじゃない。
だから別の道を通ってカブと出会い、変な女とも友だちになった。縁を伝って何でも入る籠を貰い、お礼に紙袋に入れたお菓子を手渡すことを覚えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
カブはそんな、小さくて当たり前でとても大事な人生の旅を、小熊の前に拓いてくれる。世界を色づかせる、神の乗機である。
そんな喜びをエンジンに投げ入れ、少し加速してみると風が痛い。カブの給油法を教えてくれたマニュアルには、今回は保存の注意しか書いてない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
友達のフルフェイスを借りてみても、なんかしっくりこない。これは、”私の”メットではない。
(画像は"スーパーカブ"第3話より引用) pic.twitter.com/CPbJR7xOsw
モノを所有し、”私の”と所有のタグを貼り付けることで、所有できる自分を認識する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
世界に一人立つのに必要なプライドを、モノと所有から確認する。
小熊の風除け探しは、そんな人間心理を上手く反映していて面白い。
モノを買うこと、持つこと、使うことには、ただの物質を超えた充足がある。
ここら辺”ゆるキャン△”が凄く上手く描いてたポイントだと思うが、何処か似通った領域をカブで過ぎていくこのアニメも、貪欲から少し離れた所有の喜びを切り取っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
私の延長線上にある、私だけのモノ。
それを際立たせる意味でも、小熊は貧乏なのかな、と思ったりする。
清貧礼賛一本槍にならないよう、バリバリ金かけてカスタムしまくる礼子を隣において、小熊とは別の角度から所有の喜びをスケッチしているのも、バランスの良いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
まーダチほっぽりだして、物欲全開でメット探すからな…こういう我欲も好きよ、礼子Chang…。
小熊が自分だけの解決法を見つける時、図書室が”改装”されているのが良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
ゴーグルを付けてても不自然じゃない状況配置と同時に、小熊の世界が”塗り替えられる”ドラマとシチュエーションが、力強く噛み合っている。
(画像は"スーパーカブ"第3話より引用) pic.twitter.com/pVa7AmltBN
小熊は第1話に比べ、誰かに話しかけて何かを聴くこと、そうしたくなる自分にハードルが下がっている感じがする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
よりアクティブに、自分らしく世界を変えていくこと。生活感抜群のコメリでゴーグル台を節約し、チェーンロックも買っちゃうこと。
そういう事に、貪欲になってきている。
というか元々貪欲だったところにないないの蓋が覆いかぶさってて、それがカブと礼子で弾けた…ってことだと思うが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
やっぱ俺はねー、抑圧されていた”らしさ”が息を吹き返し、力強く躍動していく物語が好き。ほんっっっっと好き。
今後もガツガツと、冬眠から目覚めた熊のように貪りなッ!!
鏡に照らされた、ゴーグルを付けた私。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
”この、私の”ゴーグルを選び、所有する私。
荒々しく眼を突き刺していた風は、最高の防具に跳ね除けられてもう痛くない。
もっと早く、もっと強く、もっと遠くまで進める私に、私は変わっていく。
そんな実感が、小熊を微笑ませる。
この笑みが可憐ではなく、年相応に悪く力強いのが本当に良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
小熊は少女のイマージュに閉じ込められることなく、ボーッとした表情の奥に活力を秘めた高校二年生として、笑い走り進んでいくのだ。
その独自性こそが小熊らしさ、この作品らしさとして、アニメを内側から強く照らしていく。
小熊は夢を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
無限に続く菜の花の向こうへ、最高の相棒と、”私の”カブと一緒に進んでいく夢。
それはずっと見ていて、でも浮かび上がらなかった夢なのだろう。
カブのキックスターターを蹴り込んで、春の景色が小熊に目覚めた。
(画像は"スーパーカブ"第3話より引用) pic.twitter.com/v6fjyjFhw1
それが何処からやってきたのか、小熊はよく知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
光の中、自分を見守ってくれる私のメット、私のゴーグル。
斜向いの距離感から、グイと身を乗り出して目の前に座ってくれる友達。
軍手に摘まれて、優しく強く差し出された繋がり。
私のスーパーカブ。
そういうモノが、小熊を夢へと押し出していく。支えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
それを掴み取ったのは、何でもない小さな決断。
いつもと違う道を歩くのが、どうしても嫌だったから進んだ先にあった変化が、小熊の世界を色づけていく。
ないない少女の世界に、色を取り戻していく。
そこに宿る再生の息吹が、とてもいいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
小熊の歩む道が輝いて見えるのは、彼女が押し込められていた在り来たりの絶望、『こんなもんだな…』という諦観が、凄く上手く描かれえればこそだ。
それは多分、僕らみんなにある灰色だ。共通のキャンバスだ。
そこに色を付けていくのは、在り来たりで特別な出会い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
小熊はどれだけ大事なものを、携帯のアドレスが描かれたモノ越しに受け取ったのかを解っている。
レシートと一緒に捨ててしまっても、消えないものを礼子が手渡してくれたことの意味。
(画像は"スーパーカブ"第3話より引用) pic.twitter.com/uFKpUEFQkj
カブと出会い、自分の中に蘇ってきたモノの意味。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
”私のカブ”を大事に扱うことで、小熊はないないの”私”もまた、ケアすることを覚えていく。
カブが広げてくれる世界で、他人に求め、与えられ、適切に与え返す道を学んでいく。
それをしっかり噛み締めながら、彼女はアクセルを踏み込む。
目の前には、青く広い空。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
スーパーカブは空すら飛んで、何処へでも小熊を連れて行ってくれるだろう。
そのガソリンは友情で、オイルは自尊だ。
魔王もロボットもいない当たり前の北杜で描かれる、決断と変化の物語は一万円のカブと出会って始まり、これからも続く。
小熊はカブといる世界を、カブといる私を、少し愛せるようになったのだと思う。だからこのシーンには”愛の夢”が流れるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
そういう話であった。一話からの三部作のフィナーレとして、大変素晴らしかったです。
ストイックな筆致と豊かな表現力が、題材、舞台、キャラと噛み合い豊かに踊る。
[https://twitter.com/lastbreath0902/status/1384987659362209794:embed#その真ん中に、凄く在り来たりの諦観と、それが色づいていく喜びが確かにあって、凄く的確なテンポで物語が転がっていく。その美しさと充足感、大変幸福でした。これで三話。まだまだ物語が続くありがたさに、思わず頭が垂れるね…つえーアニメだぜ、スーパーカブ。次回も楽しみ
ッ!!!]
追記 やっぱ、アニメの中の食事描写、食事がアニメで活きる書き方に強い興味があるのだな僕は。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月21日
こんだけタッパー飯の荒廃を印象づけているので、小熊がレンジ使えるようになった描写だけで俺は多分泣くし、手をかけ火を入れた食事を礼子と共にした日にゃ号泣だと思う。
地味に夕食がチャーハンになって、少し殺伐レベルが下がってるあたり、メシを巡る描写も鋭いアニメ、スーパーカブ。