憂国のモリアーティを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
犯罪卿の慧眼は、”切り裂きジャック”の裏に潜む謀略を嗅ぎ分けた。
猟奇事件で社会不安を高め、革命へと導く劇場犯罪。
ヤードと市民の衝突を避けるべく、演じられる命がけの一幕に、モリアーティ一味が走る。
そして探偵は、真実をどう暴くのか?
そんな感じの、犯罪卿の切り裂きジャック後編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
一味が一つの生命体となり、デカい山を越えていく。チームアクションの醍醐味がよく感じられ、手応えのあるエピソードとなった。
やっぱホームズ軸で長く回してた間、こういう描写少なかったからね。
とは言うものの、自分の眼目はアクションやチームワークの外側にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
切り裂きジャック事件へのウィリアムの向き合い方…というか、向き合わなさが凄く気にかかった。
今回成敗した悪漢は、社会の底辺から階級革命を起こすために、犯罪劇場を演じる共産主義者だ。
娼婦の命を薪に反乱の火を燃やす彼らは、周辺被害を顧みず、自分が食う側と思い上がっている悪党である。貴族ならずとも、殺される理由は十分だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
だがウィリアムが指弾していたその傲慢は、彼自身もまたその身に引き受けるべきものではないのか。
お前だって、使用人ボーボー燃やして家盗んだじゃん。
『まるで義賊だ』とホームズが嘯いたように、”モリアーティ”は殺さずを貫き、不和の芽を事前に摘む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
そのために超人的でスタイリッシュな活躍と、たくさんの汗がホワイトチャペルに流され、チームはかっこよく活躍する。
それは良い。とても優れた見せ場だ。
しかし自分はその興奮の足場が、凄く脆いものだと感じてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
”醜聞”を通じて己の志を顕にし、悪を以て善を為す目的を読者に開陳したウィリアムは、凶悪な復讐代行者、覚悟を決めた異常者から少しずつ、顔を変えつつある。
だから前回、無防備な寝顔も見せたのだろう。
それはつまり、蜘蛛の巣の真ん中に鎮座する犯罪機械ではなく、人命と尊厳を尊重し、だからこそ殺す”良い人”としての側面を見せる、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
今まで血みどろの悪徳を全面に出してきた”モリアーティの犯罪”は、今回その創作性を全面に出し、誰かを助けるための無血のお芝居として描かれていく。
しかしその描写が、彼らが悪徳に浸る時に見せる悦楽や、犠牲になってきたものを消し去るわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
少なくともその最初の犯罪において、『食い荒らしても良い弱者』の死体が踏みつけにされていることは明白だ。
今更善人ぶるなよ、人食いの三頭犬が。
そうも言いたくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
己が唾棄した悪漢と、その方法論において大差がなく、行いには既に傷がついている。
この矛盾(と、僕には見えるもの)をウィリアムがどう受け取り処理しているのかが、とても気になってしまった。
自分は特別に選ばれた、聖なる犯罪者だから、ブサイク顔の悪党とは違う。
そんな風に受け止められかねない…つうか僕は受け取った軋みが、今回の立ち回りには強く滲んでいたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
別にそれ自体は良い。
善を為すために悪を行う時点で矛盾だし、殺しを選んだ時点でそれは制御不能な特性を持つ。周辺被害は当たり前だ。
だがその”当たり前”に飲み込まれるしかない、神ならぬ己を犯罪機械がどう考え、矛盾を飲み込んでいるのかは気になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
都合よく最初の犯罪の被害者を忘却しているのか、はたまたあの大火災で”死ぬべき悪党”だけぶっ殺したのか、それともそれは『必要な犠牲』だったのか。
自分が屠殺するイギリスの腫瘍と、自分が根源的に同じでしかない(と、僕は判断してしまう)状況を、賢い犯罪卿はどう受け取っているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
ここら辺、突っ込んだ掘り下げが欲しくなる。
ピカレスクだから、イケメンだから、兄弟の尊い絆があるから…で流してほしくない。
アニメの範囲で何処まで描くのか分からないし、多分この矛盾が顕になるときは(肉体的にしろ、社会的にしろ、精神的にしろ)”モリアーティ”が死ぬときだと思うから、やるなら最後の事件だとは思うが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
あんま綺麗で悲壮に終わらせてほしくねーなー、と思う。そんな完璧な犯罪者ではなかろう。
ウィリアムは地上の穢れと無縁な、天使のモチーフを重ねて描かれてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
超越性は無謬であるからこそ成立する。矛盾や不徹底が暴かれれば、天使は羽根をもがれて泥に落ちるしかない。
そして憂国の完全犯罪という翼には、既にヒビが入っているように思う。
現場検証を通じて、ホームズは犯罪卿が込めた意図に気付いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
内乱の予感を事前にもみ消す、善行としての劇場犯罪。彼もまた、ウィリアムが”良い人”である事実に接近しつつある。
知るもの、暴くもの、正すものとしてのホームズは、今回都合のいい嘘を選び取った。犯罪卿の思惑を暴露はしなかった。
2つの劇場犯罪が衝突した結果、史実通り実態のない影となった”切り裂きジャック”を巡り、次回はヤードが揺れるようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
すでに存在がほのめかされている内通者を活かして、おそらく犯罪卿の長い手が警察組織にも伸びていくのだろう。
全ては英国のため。弱きものが犠牲になる世を正すため。
その題目が踏みつけにしているものは、彼が断罪する我欲傲慢の悪漢と、作中に描かれてるほど違わねぇな、と思う回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
こうなると、『どす汚れて正しくない世界がとにかく気持ち悪い。皆殺しにしてスッキリしたい』つう、アルバート兄さんのエゴのほうが自分的に収まりいいんだよな…。
何しろウィリアムは作中最強の超越者(でないと、ふんぞり返った悪の喉笛貫くお話が成立しない)なので、対等に矛盾を指摘し、暴いて正す立場のキャラがほぼいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
そこに並び立てれるのは、やっぱ仇敵たるシャーロック・ホームズしかいないのだろう。
しかしこのお話のホームズくん、超越的理性探偵ってわけではなく、等身大のままあがいてる当たり前の人間なんだよな、基本。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
ここら辺は、”モリアーティ”の書き方と重ならないよう、キャラを逆しまに合わせた結果だとは思う。
冷たいウィリアムと熱いホームズの取り合わせは、僕も好きだ。
その上で、僕が今回…つうかアニメ見始めたときから感じて突っついてもきた不徹底を、地べた這いずる立場から突きつけて欲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
悠然と揺るがない犯罪卿の傲慢を砕いて、”人間”でしかないウィリアムに接近する道が、今後ホームズに開かれるのか。
個人的に、今後はそこが見どころである。次回も楽しみ
追記 ”ロンドンの脅迫王”を、相当に捻ったホームズパスティーシュであるこの作品がどう料理するか。メタ視線でも楽しみだ。
モリアーティ追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
ミルヴァートンが今回顔見世したの、”モリアーティ”の真意が暴かれ、ホームズに対置される圧倒的悪漢としての仕事ができなくなった(”人間”になった)結果、同格の悪がカウンターウェイトとして必要になったから出てきた感じあるな。
(ある意味)ベビーターンした主役の、鏡になる悪
それがどういう駆動律で動くのか、今後が楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
モリアーティを”悪なる善”と書いた以上、かなり悪辣で救いようのない強敵として扱ってくる予感はするけど、どのくらい主役サイドの影を伸ばして、キャラを照らすシャドウとして演出してくるかに興味があるね。