Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
うるうが出会った少女は、乱れた性に交配した家に傷付き、涙を流していた。
扉の向こうに封じた、己の知らぬ母の顔。
共鳴したうるうは、焔の助けを借りてトラウマを超えて、正しい裁きを為した。
これで、全てが元に戻る。そのはずだった…。
そんな感じの愛欲絢爛残酷絵図、うるうくん担当回二周目である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
いやー…F蘭史上、最もしっくりこねぇ結末だったかもしれねぇ…。
善因善果に収まらない話ではあるが、それにしたって因果が絡みすぎて、なんとも言えねぇ哀しさがあった。
運命の子供同士、焔くんと繋がれたのは良かったんだが…。
元々匂わされていたが、うるうくんは性に強くトラウマを持った少年である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
母は一族の掟、家族の倫理に外れた相手に人生の充足を見出し、首を吊って果てた。
情熱の真っ最中といい、扉を開けると大惨事に出会う男、清怜うるうである。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第9話より引用) pic.twitter.com/xyQXsJf8xP
彼は美梨香の描く絵画を、『認識のフィルターを通した現実』と表する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
美しく気高い母の顔は、うるうが見た…見たかった彼女の姿であり、彼女そのものではない。
たとえ夭聖であっても、ヒトは他人の真実そのものにたどり着くことはないのだ。
それでも、自分を愛する母でいて欲しかった。
あるいは、母に愛される自分でいたかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
愛に満たされた家に自分がいると、信じていたかった。
家庭から外れた場所に答えを見つけ、愛に殉じた母の自死は、そんなうるうくんの願いを粉々に壊す。
うるうくんの存在は、愛を奪われた母が生きる理由には足らなかった。
子か、家か、真実の愛か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
けして両立できない厳しい選択を迫られた時に、母は壊れてしまった愛…そこに反射する自己像を選び、それを守るために死を選ぶ。
置き去りにされた子供たちは、愛する人が生きるに足りなかった自分を抱え、深い傷を負ったまま生き続ける。
何しろ超ダイレクトにセックスの話なのでそこが目立つが、今回の物語は自死とグリーフケア(その失敗)が、かなり大事なテーマなのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
うるうくんは扉の向こうに、自分を壊す炎を見てしまった。
それは認識の繁栄である絵画には、けして刻まれない理不尽な現実である。
これを否定するために火焔族を憎み、水潤族のスタンダードである規範主義に染まっては見たものの、その内心には母への愛と怒り、性と死への恐怖と魅惑が渦を巻いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
この矛盾した感情は、”正義”に反発しつつ惹かれていた焔くんと何処か似通っている。
第2話の焔くんのように、うるうくんは今回、何処か自分に似た部分を持つ少女に惹かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
第3話では冷淡に、雨に濡れるまま傘を差し出さなかったうるうくんだが、女の顔を顕にしたに置き去りにされ泣く美梨香には、強い共鳴を見せる
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第9話より引用) pic.twitter.com/NSUOXnDsuu
『お母さんが可哀想』と泣く美梨香の頑是ない思いと同じくらい、性への嫌悪が二人を繋いでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
不倫相手のべっとりとした性欲は、大人と子供の間にある美梨香の”性”を求める。
剥き出しに突きつけられた、得体のしれない炎に怯え、絵画のように綺麗なものに逃げ込む子供。
うるうくんと美梨香が、一瞬心を通わせる公園それ自体が、印象派の筆致で描かれているのは興味深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
彼らはあるがままの現実ではなく、こうあって欲しい美しい世界を心の外に伸延し、共鳴させている。
だがそこにも、否定しようのない現実の雨が降り注ぎ、子供たちを濡らす。
それは悲嘆の雨であり、拒絶するほどに強まる性への渇望でもある。どちらにしても、度を超えれば溺れて死ぬものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
変身したうるうくんが、BDSMの意匠を強く宿したエロティックな姿になるのが、僕はもう笑えない。
彼は性に接近し、愛に縛られることで、死んだ母と出会い直すのだ。
幼い自分が理解できなかった、性愛に溺れる母の姿。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
うるうくんの淫らな衣装は、それに接近するための喪服でもあるのだろう。
そういうねじれた形でしか、うるうくんはもう愛と向き合えない。
変身前の優等生ッ面に、押し込めた青いリビドー。
五人の中で一番強烈で、制御できないエロス。
それはエロスに乱れ、タナトスに縊した母の記憶…扉越しに目撃した、絵画ではない現実相手の、彼なりの生存戦略なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
こういう形で、少年のエロスを裏打ちしてくるのは興味深く、慈悲深く、また変態的だな、と思う。
己を強く縛り罰することでしか、母の抱擁を取り戻せない少年…。
彼は自分と似ている少女の望みを果たすために、ヘヴンズ空間に潜り悪を罰する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
モネめいた色彩で描かれる睡蓮の池に、踊るトラウマ。母は己を縛り、否定し、獣のような男に抱かれる。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第9話より引用) pic.twitter.com/hZkS2eqdLI
そこは余人が立ち入れない心の泉であり、うるうくんは心に深く突き刺さったセックス・トラウマ相手に勝てない勝負を挑んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
焔くんの回想では、頼れる父、立派な正義の味方だった男がここでは、母を玩弄する性獣と化す。
僕にはよく分からない、凄く強いルールでかあさまを奪っていく敵。
母もまた正しさを求め闘う自分に立ちふさがり、灼熱のリビドーを流し込む敵になってしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
正しさに溺れ、それで蓋をした不定形の欲望に流され、うるうくんは向き合うべき相手が見えなくなる。
ここら辺は、第2話で焔くんが対峙したのが”自分”だったのと、面白い対比。
真相は知らぬ流れも、焔くんもうるうくんと同じ事件で父を奪われ、人生がネジ曲がった当事者だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
命を救われた借りを返す。
真っ直ぐなヒロイズムを伝えつつ、彼は燃やすはずの炎で過剰な水を吹き飛ばし、真実の在り処を友に…あるいは兄弟に教えていく。
焔くんもまた、父が正しく生きるに足りる理由には足らなかった。彼は自分が見つけた真実の愛、もう一つの正義に殉じて死んでいった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
父母の愛を求め、正義を求める孤独な子供たちは、ここでようやく反発を止め、強く繋がっていくことが出来る。
椎菜ちゃんとの純情LOVEで、正しい怒りの使い方を先行して学んだ焔くんが、うるうくんの迷いと苦しみを弾き飛ばすのは、魂の交流を感じさせて善い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
焼き尽くす暴力ではなく、虚偽を打ち払う浄化の炎、癒やしの温もりを使いこなす方法を、焔くんはもう知っているのだ。
それは彼のピンチに迷わず飛び込み、看病(あと首絞め)に勤しんだうるうくんの属性でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
”族”としてその力と在り方を固く定められても、そこからはみ出すものは必ずある。
麗しい水の母は、心の奥に炎を秘めていた。それが彼女自身と、愛されたかった我が子を焼いた。
うるうくんが美梨香に手を差し出したのは、そんな炎を否定したかったからだとも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
性と愛に傷ついたいつかの自分を、目の前で泣く女に重ね、救うことで救われる。
そんな綺麗な絵は、冷たい遺影として引き裂かれていく。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第9話より引用) pic.twitter.com/jbexgvZne9
悪が挫かれ、善が救われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
夭聖の裁きはそういう、理の代行としてあるはずだったのに、うるうの行いは再び”母”を殺す。
可愛そうなお母さんを助けて、かつての幸福を取り戻したかった美梨香が、何もかも忘れているのがなんとも哀しい。
死人は戻らず、外道は笑う。
それでも、母の末期は美しかった。幸せそうに、笑っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
うるうくんはそれを思い出して、ようやく泣く。エロスとタナトスでズタズタにされていたキャンバスに、苦しい心の旅路を経て追加された、幸福のモチーフ。
それもまた、彼が見たかった幻なのだろうか?
うるうくんの断罪が”糸吊り”なのが、母の死が描かれた後だとなんとも苦しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
あれだけ傷を受けてなお、彼は”正しい”行いを果たす時に、母を奪った凶器を、自分と愛を繋ぐ糸を用いるのだ。
それが、彼に残った最後の臍の緒なのだろう。ズタズタやなホンマ…。
溢れる涙を見つめた焔くんは、いがみ合いを超えてその肩を抱く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
泣きたい時は、思いっきり泣けばいい。
かつて椎菜の涙と怒りを抱いた時のように、思い出に裏切られた友を引き寄せ、思いを受け止めるヒロイズムが熱い。
ようやく二人は、ここまで来た。
その関係進展は好ましいとしても、”母”を巡るうるうくんの闘いの決着はあまりに哀しく、厳しいものだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
この皮肉で理不尽…に思える世界に絶望して、シリウスは闇に落ちたのだろうか。
彼もまた、綺麗な絵画を世界に求めている。希望のフィルターを通し、だからこそ絶望に染まる。
愛欲と憎悪が渦を巻く浮世は、人を深く傷つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
ひび割れた仮面の奥から流れる涙を、抱いてくれる友がいることを喜ぶべきか。
望んで果たせぬ無常の定めを、恨み戦えば良いのか。
答えのないまま、物語は続く。
いかな絵が見れるか、次回も楽しみですね。
F蘭追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
悪が栄えて善が泣く。
理不尽にも思える今回の決着だが、夭聖たちの任務が正義の執行ではなく、愛著回収であることは既に示されている。
善悪とはまた別の軸で、彼らの行いは図られている。それが利害かどうかは、女王様サイドの伏せ札が多くてまだ不鮮明だが。
それでもうるうくんは、愛する人も愛される自分も哀しく終わってしまった過去を、今度こそ正しく終わらせたくて戦いに挑んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月4日
結果再び間違えて、堪えきれずようやく涙を流す。
潤む瞳を表に晒すためには、これほど苦しい道が必要、ということかもしれない。まさに、三界火宅なりし。