スーパーカブを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
北杜は冬至を過ぎ、小熊も冬休み。
寒さもユキも乗りこなすスーパーマシンに乗って、真っ白な雪原に礼子と二人、自由奔放に轍を残していた。
何処へでも行ける、何でも出来る。
魔法の箒に憧れ、青いモールトンを駆る少女が夜に落ちる。
『助けて』の声を、小熊は確かに聞いた。
そんな感じの自由人雪を駆ける! 雪景色のスーパーカブ第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
寒さを跳ね除けチェーンで武装し、カブに乗って初めての冬に大勝利したパンクス軍団であるが、一年を締めくくる前に大事件発生、椎の運命や如何にッ!! という展開。
椎…イカロスの如く、憧れに焼かれて堕ちたか。
椎が小熊の背中を追いかけ、それに小熊が向き合いきれてない描写はしっかり積み上げられてきたので、ラスト衝撃の展開はある種の必然とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
ないない少女はカブが連れてきた縁に乗っかって、遂に誰かに追われる側になっていたわけだが、そういう経験が少なすぎるので巧く乗りこなせない。
礼子と肩を並べて、同じカブで心地よく走ることはできても、後ろを追いかけてくる少女との車間距離を調整できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
結果起きた事故に小熊がどう向き合い、対処するか。
そこが気になるヒキであった。
椎のハプニングへの対応は、(これまでの全てと同じく)小熊自身の変化との対峙でもある…かな?
流れ行く北杜の四季を三話単位で、丁寧に追い続けたこの物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
冬の出だしはやはり、美しい景色から始まっていく。やっぱ美術最高に良いな…。流れる水の冷たさが作画されてるの、クオリティとパワーを感じる。
(画像は"スーパーカブ"第10話より引用) pic.twitter.com/zUv3EUxcaY
押し付けられたモールトンを自分の足として、椎はやりたいことに向かって元気に進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
カブが侵入できない猫道を行く椎と、小熊は一瞬すれ違い、微笑み、バックミラーで見守る。
そこには、他者に対して硬質な反応をする彼女なりに、敬愛というものが確かにある。
あまり明瞭な形にならないそれを確かに感じているから、椎もモールトンで小熊の後を、自分の夢を追っているわけだが、しかし二人の道は重ならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
そこに入っていくには、やはりカブというありふれて特別な乗機が必要になる物語である。何しろ”スーパーカブ”だからね。
雪の照り返しが眩しく光る世界で、小熊は”わたしのカブ”を見つめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
様々な武装が追加され、それを扱う知識や技量や経験が蓄積されても、そこには初めて車庫を見つめた時のときめきがずっと残っている。
わたしを自由にしてくれる、わたしの足。
それが、雪で動けない苛立ち。
前回取っ組み合った冬の寒さにウインドシールドで勝利した小熊は、悪友の誘いに心を沸騰させ、雪道に怯えつつも急ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
メスティンから溢れる熱は逸る気持ちの象徴であるが、冷えたタッパー飯を独りで食っていた時代からの変化を告げてもいる。
(画像は"スーパーカブ"第10話より引用) pic.twitter.com/85Tdf8vBii
それは暖かく、隣り合う人と分け合いながら食べるものへと変化した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
携帯電話に着信する名前、一緒に走れる仲間。
礼子がいることで、雪にも風にも凍えない熱量を分かち合い、食事という行為がただの栄養補給ではなく、セルフケアとコミュニケーションの手段/目的へと変わっていった。
タッパーは火にかけられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
寂しい財布から決意を込めて、”わたしのメスティン”を買ったからこそ、小熊は礼子と温もりの残る弁当を共有することも出来る。
やっぱ食事シーンの魅せ方、使い方がいいアニメで、そういう演出大好き人間としては嬉しい限りだ。人は飯を食う動物!(小熊嵐)
今までそうであったように、小熊はカブに自力でオプションを取り付け、その可能性を引き出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
富士山にも、遠い海辺にも、雪の中にすら駆け出していける未来を具象化出来る道具を、どう扱うのか。
カブを学ぶことで、カブで進むことで、小熊は己を知る
(画像は"スーパーカブ"第10話より引用) pic.twitter.com/pLU8VzYSMT
おっかなびっくりで進んでいた道のりと違い、チェーンで武装し変化したカブは雪を踏みしめ、しっかりと走っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
そういう実感、世界や運命に負けないパワーの自覚が、小熊の眠っていたパンクス気質を目覚めさせた。
マージで、好きな人と好きなことしか基本しねぇ。
つうか、好きなことを見つけた結果、好きじゃないことにも適度にアプローチできるようになった、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
好きじゃない人付き合いも、カブというフィルター/メディアを通すと印象が変わるし、それが苦ではない自分とも出会う。
カスタマイズされ、状況に応じた性能を引き出せるのはカブだけではない
それにしたって汚れなき新雪があまりにも雄大かつ美しく、幾度目かのため息をついてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
灰色のないない世界でも、この雪景色は小熊を取り巻いていて、しかしそこに目を向ける余裕も、実際に足を運ぶ手段もなかった。
しかし今、小熊はこの風景の只中にいる。
自由に足跡を付け、転んで笑い走って笑う存在として存在している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
カブ・パンクス二人が一生キラキラキャッキャし続ける雪景色は、もしかしたら小熊がないないだからこそ手に入れた自由なのかも知れない。
真っ白なキャンバスには、何でも描ける。
(画像は"スーパーカブ"第10話より引用) pic.twitter.com/OX7E8rCUgi
一点の曇りも濁りもない青と、全ての歩みが確かに刻み込まれていく白。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
防寒具も、ヘルメットすら投げ捨てて満喫する自由の匂いは、誰にも邪魔されない二人だけの聖域だ。
そこに、椎はいない。
その事実を見るものに…居るものにも感じさせないほどに、雪遊びは楽しい。
『湧き上がる感情こそが全てだッ! Fuck the Law!』と言わんばかりにノーヘル爆走キメたパンクスに、軽く引いたりもしたが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
静謐で清潔な画風で誤解もするが、根本的にアウトローの話ではあるよな、この作品。
カブは生粋のパンクスが、社会とギリギリ接合するアダプターでもある
湘南二人乗り爆走もそうだが、見えない壁をぶち破らんと、鬱屈を溜め込み解放を願う二人の少女が肩を並べると、マグマのような力が湧き上がってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
その熱を自覚してしまえば、鎧も兜も付けてはいられない。礼子との強い共鳴を演出するなら、メット付けてたほうが嘘っぽくはなる。
しかしその野放図な自由は、二人だけしかいない青と白の世界だけのものだと、小熊達は自覚もしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
再びメットを付けてジャケットを着込み、帰っていく日常。新しく見つけた友達と家。
水色少女の小さなイタリアは、三人の特等席だ。
(画像は"スーパーカブ"第10話より引用) pic.twitter.com/MPb3k1wkF6
その上で、同じ雪を見上げながら小熊はオープンエアの囲いがない場所に身を置き、椎はガラスに閉じ込められ/守られている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
冗談を言い合い、憧れと愛しさで繋がってる三人は、どうしても二人と一人になってしまう。
それを生み出すのはカブの不在か、親の庇護か、小熊の不器用か。
壁だけが小熊と椎の間にあるとは描かれず、小熊が椎をずっと見守り尊敬していること、椎がその背中を見続ける熱量はしっかり切り取られている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
その上で、繋がりきらない。
真っ白な雪の中をすべて脱ぎ捨てて、なんの壁もなく自由に突っ走る距離感を(まだ)共有できていない。
そのことが、一つの結末へと至る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
猫道へ進む椎を見ていたから、小熊は遅い帰りを心配も出来る。
一緒に猫道に進まなかったから、事故の現場に直接居合わせることは出来ない。
文化祭に出会い、繋がる手段を交換していたから、窮地に助けを呼ぶことも出来る。
(画像は"スーパーカブ"第10話より引用) pic.twitter.com/LgyArMfQcb
父母よりも小熊にSOSが出る所に、椎がどんだけカブ・パンクスに体重預けているかよく判るが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
”前かごにすら入る”と冗談で言っていた、小さな空色少女からの『助けて』を、小熊はどう受け止めて走るのか。
二人の間に確かにあるものと、上手く繋がらないものをどう受け止めるのか。
そこが問われる、冬の大事件となりそうである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
やりたいことを成し遂げるために、何をするべきか。何をして良いのか。
椎はカブで自由に走る少女に憧れ、モールトンを繰って落ちた。
それを『勝手にやっただけ』と言えるほど、今の小熊はないないでは無い。
おそらく人命救助の宝具ともなるだろうカブが、小熊に何を与えてきたのか。春から小熊は、どう変わったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
そういうものが見えてきそうなエピソードになりそうで、次回も大変楽しみです。
非常に個人的で物神的なヒロイズムの物語でもあるので、救命は大事だよなーやっぱ。
あと礼子と圧倒的な”近さ”を雪遊びで描いた後、今までひっそり確かにスケッチしてきた椎との”遠さ”(反転した”近さ”)を炸裂させてサスペンス起こすの、人間同士の距離感、その個別性と繋がりを切り取る筆強ぎてビビる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月10日
人と人とが織りなす綾が、どんな色彩と手触りか無言で見せるの、マジ巧すぎ。