Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
輝くステージと幸せな家庭を夢見る、ポールダンサーのティナ。
クズに金をせびられながらも健気に生きる彼女に、寶は優しく心を寄せていく。
人として、欲に塗れながら生き抜いてきた日々の果てに、求める光。
それは愛ではなく…。
そんな感じの個別回のターン終わり! クライマックスに向けて第4コーナーを回った、F蘭第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
世知に長け愛欲に汚れながらも、若人たちを見守る父親役でもあった寶がどんな人生を送り、何を求めてきたかを描くエピソードとなった。
前回のうるうくんもそうだが、心が整っていない少年期に剥き出しのセックスに出会うと、この作品では深い傷を追う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
夭聖界を見捨てて地上に落ちた悪徳弁護士に導かれ、体を売って生きる糧を掴んできた寶の過去。
愛を売る以外に術を知らない彼は、大人になっても道を外れられない。
十訓は絶対の条理ではなく、女王が定めた恣意的なルールに過ぎない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
密命を帯びた”大人”の寶には適応されず、酒もタバコも色も大目に見られる。
しかし脂ぎった悪徳は、彼を満足させないし酔わせもしない。悪いことをしても、彼はけして満たされない。
第5話で示されたように、彼は金鋼族のプリンスであり、汚れることのない高貴な生き方が本道である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
彼を愛し、身を捧げた母もそう望んでいたが、現実は彼を汚した。
矛盾の中に身を置いても汚れきれない高貴は、彼自身の魂の色でもあるし、母の残した呪いでもある。
人間生活にどっぷり浸かった悪徳弁護士のように、汚れきってしまえばどれだけ楽だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
あるいは子供たちのように、穢れなき純粋さのままに生きられたら。
しかしそのどちらも、寶には出来ない。慣れ親しんだ色欲に身を浸しつつ、何処か優しさと正しさを捨てきれないハンパさを、ずっと彼は抱えている
性的誘惑に接近しつつも、あくまで舞踏の技芸を見せるポールダンス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
今回のクライアントであるティナも、汚れた…と世間には判断される場所(だからこそ、妻原も売春を持ちかける)に身を置きつつ、子への愛情、家族への憧れ、夢と希望を捨てられない女である。
ティナと寶の心が近づくたびに、彼女はコートを脱ぎ、化粧を落としていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
自分の外側にある鎧を外し、彼女を蔑み、また欲望する視線から距離を取っていく。
荒んだように見える外装から、家と愛と夢を求める柔らかな内側へ。
二人は触れ合いながら傷付き、お互いの真実を共有していく。
家を持つという夢、母になるという夢、光の当たる場所に立つという夢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
ティナが求めた黄金は、獣の本性を剥き出しにした妻原によって偽りだと告げられてしまう。
ゴミ溜めに投げ捨てられ、また自分から身を置いたティナに寶は寄り添う
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第10話より引用) pic.twitter.com/zNQ5nFQx4E
純情少年たちが、時にクライアントとの恋に近づいていくのに対し、偽りの愛と醒めた荒淫に身を置いている寶は、クライアントに対し非常にピュアである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
ともすれば手を触れもせず、セックスが持つ暴力性(彼の商売道具でもある)と慎重に距離を取りながら、女たちが求める優しさを真摯に差し出す。
そこには、自分自身を商品とするしかなかった過去が、強く滲む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
家族を作る優しい行為のはずのセックスが、愛なく”金”で売り買いされる虚しさと怖さを、自分の身で思い知っているからこそ、自分は奪う側に回りたくはない。
男女の交わりが生み出す輝きを、嘘にはしたくない。
そんな思いが、ゴミ溜めにそれでも輝くネオンと、それに照らされるシルエットからは滲む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
第5話の恵夢が”妻”としての顔を背負っていたのに対し、子持ちのティナは”母”としての顔が強い気がする。
愛する人と結ばれ、子を為し、誇り高く共に生きるパートナー。
酸いも甘いも強制的に噛み分けされた寶にとって、女は顔と愛のないサイフであると同時に、果たせぬ夢を成し遂げうる半身でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
この複雑な陰影は、少年である他の四人には無いものであり、寶の個別回は女が背負う様々な顔が、よく現れる感じがする。
ヘヴン領域において、寶は酒毒に耐え毒煙を飲み込む。体と心を蝕む毒を乗りこなし、糧とするタフさは身につけているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
しかし赤い幻の中、現れた赤い母には抵抗できない。
それは聖母の影、子を生み縛り犯し殺す地母神である。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第10話より引用) pic.twitter.com/NorJsgx6Q8
焔くんが自分自身の影と、うるうくんが母の幻影と向き合ったように、寶もまた自身の影に向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
己にのしかかる母は、彼自身を傷つけ支配するセックスと結びついた愛憎のシャドウであり、犯したいから犯され、殺したいから殺されていく。
どす黒い欲望は、非常に清廉な場所と常に繋がるのだ。
第5話で示された寶の母は、餓死してでも息子に糧を与え、同時に己の夢で子を縛ってもいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
寶が己のセックスを売り物にし、深く汚れ傷ついてもなお夢を捨てきれないのは、気高かった母を裏切れない思いが、強くあるからだろう。
理想の壁が彼が現実に落ちきるのを阻み、楽になるのを遮っている。
金に溺れ、愛に沈んで楽になりたい気持ちは寶にずっとあって、彼の心から這い出してきた黒き母(カーリー・マー)はそれを実体化させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
絶頂と死は同じ場所にあり、息が止まってしまえばもう悩むこともない。
母性なるものの最も凶悪な側面を、幻影は寶に差し出し…彼はそれに反逆する。
偽りの月を砕き、その奥にいるギャンブル狂いを清める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
ずっと探していた家族の温もりに助けられながら、”金”を属性とする彼は金に溺れた邪魂に勝利していく。
これまでの闘いがそうであったように、それは他人事であると同時に、夭聖自身の魂を強く反射している。
前回うるうくんの闘いが、非常に皮肉で悲しい結末に終わったのに対し、今回の寶の闘いはなんかいい感じに着地していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
賭けに狂っていた妻原は、破滅することもなく大金を手にし、それ故狙われた命のシェルターとして、家族を求める
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第10話より引用) pic.twitter.com/98v048a0YK
そこに正しい裁きはなく、賽の目次第で浮きも沈みもする賭け事の不思議があるが、ティナが望んでいた光に、望んでいた形で進んでいく結果は変わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
寶は自分の元を巣立っていく奇妙な聖家族を、微笑みながら見守る。自分がそこにいることが、彼の望みではないからだ。
そろそろクライマックスも見えてきて、急に家族感出してきた感じも正直受けるが、五人の夭聖が軒並み機能不全家庭に育った傷追い人だという描写は、ずっと存在していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
彼らがファミリーになっていくのは、傷つけられたもの、奪われたものを取り返す人間的必然なのだろう。
だから心の戦場にも踏み込んで助けるし、お互いを求め認め合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
前回果たされた炎と水の抱擁が、上手く五人が家族になる道筋を作った感じもある。
あと樹果くんが、ヒーラーという自分の適性を積極的に認めて、寶を助けていたのも良かった。
急だけど、ちゃんと集大成感はあったね。
ティナと妻原がたどり着いた”家族”は、嘘と欲にまみれて正しくは進まなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
しかし結果として、ティナは(寶がそうあれかしと望んだように)心安らぐ場所を手に入れる。
男五人、トンチキセクシーぶんまわしのおもしろ集団も、全く正しくはないけども同じく”家族”である。
この『世間が何抜かそうが、偶然祈りが叶おうが、人間のやらかい部分を守る殻として機能するなら、それが”正しい家族”なんじゃい!!』という剥き出し感は、人間のどす汚れた部分、ままならない定めを描いてきたこのお話らしい主張で、大変いいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
ゴミ溜めにだって、光る宝はある。
それを二周十話、それぞれの物語の中で確かめてたどり着いたクライマックスで、何が起こるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
スキャンダラスな冬の大三角が暴かれ、シリウスと女王と蘭丸の過去にぐいっと迫りそうな所で、お話は次回に続く。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第10話より引用) pic.twitter.com/w3X4jgbLTU
『なるほど”Winter Triangle”…』と思わされる、業と愛憎がネトネト滲んでくる絵面であるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
最後にお救いするクライアントは女王様なんかなー、と思いつつ、豊穣さんも巨大感情持っていそうで、F蘭終盤戦、どう描いてくるか楽しみです。
実は裏設定多い話なので、そこの開示も楽しみだなー。
しかし性を切り売りしその後輩に傷つけられてきた寶が、その実性愛の最も善き発露としての”家”を求め、より善い性をどっかで求めてるの、シャクティズムの気配がして面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
聖母と地母神、両方の顔を持つ女を后とするシヴァの気風を、どっかに持ってるよねあのマッチョ。