バクテン!! を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
エース・美里の覚醒を受けて、アオ校は最高の地区大会前夜を迎えていた。
最高の演技のために、ゆっくり体を休める。
それでも疼く心を抑えて、辞書読みに掃除、一瞬一瞬気持ちを鎮めていく。
全ては、もっと高く、もっと遠く皆で翔ぶために。
その夢が、悪夢に変わるとしても。
そんな感じのまったり休憩回! 大波乱もあるよッ!! な、バクテン第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
可愛いコメディに少しの不穏さを混ぜ、ジリジリと進めていって最後に炸裂する、翔太郎の故障。
今までひたすら真っすぐ進んできた主人公に、初めて訪れた不調。
何もかも順風満帆に、進む物語などない。
志田監督や女川先輩、美里くんに主役を写して描いてきた人生の陰りが、翔太郎にも襲いかかる形だが、それが作品全体のバランスを取り、陽性のキャラクターに立体感を出すのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
ただただ素直でいられた少年は、あらゆる人を襲う理不尽や恐怖にどう向き合い、どう立ち上がるか。
濃い影を描きつつ、そこに囚われることなく飛び立つ強さをしっかり添えてきたこの物語は、大会直前の大事件を力に変え、より強い飛翔を見せるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
ここまでの話数で、重く暗い要素をこの作品がどう扱うか、実証できているのは強い。
”バクテン!!”は、ただ暗いだけの話はやらねぇ。
傷付き、砕かれ迷ってなお…だからこそより高く飛べる人間の可能性を、ずっと描いてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
翔太郎もまたそういう視線に導かれて、ただ素直なだけではいられない世界のなかで、それでも真っ直ぐでいる意味と強さを手に入れ、仲間に分け与えながら、もう一度飛べるだろう。
そこに至るまでは、情け容赦なくガッコンガッコン揺らす話でもあるんだがなッ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
下げる前フリ的意味合いもあって、物語前半は比較的ライトに進む。
冒頭、自分の檻を壊した美里くんが自分から、自然に仲間に語りかけている姿が頼もしく、とても嬉しい。ボーイ、甘えられるようになったのね…。
この作品に出てくる連中が軒並み、新体操のことしか考えてねぇ体操バカなのが僕は大好きなのだが、休憩だって言ってんのにみんな…言った監督も含めてウズウズしてる描写も大変良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
みんな脳みその一番奥まで、すっかり青く染まっちまってる。そんぐらい、メインテーマに前のめりなのだ。
なかなか心が休まらず、”大渡海”めくっても体操言葉ばっかり引いちゃう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
『見てますかマジメさん…アンタの辞書、読まれてますよ…!』って感じであるが、このファンサービスをノイタミナという放送枠、ZEXCSという制作会社、黒柳トシマサという監督の何処に注目して捉えるか、人によって違って面白い
これは作品の連続性と関連性を何処で捕まえるか、って違いでもあり、僕は少ハリ以来黒柳監督個人の作家性に注目してるから、ここで”舟を編む”との繋がりを引っ掛ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
ノイタミナのフレームで捉える人、ZEXCS繋がりで見る人。それぞれ意識するもので、文脈は意味を変えるんだなー、と思った。
それはさておき、ソワソワした気持ちは掃除に勤しむことで落ち着きを手に入れ、同時に不穏な震えが世界を満たす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
窓ガラスを拭く亘理の手は、その先にある青空をまるごと掴むかのように描かれている。
彼らの不安と焦燥は、この作務で終わるのだ。
(画像は"バクテン!!"第10話より引用) pic.twitter.com/tJE0fwakqJ
そんな小さな不安の突破を描きつつ、翔太郎の手首はひどく生々しい音で鳴る。ここの音響は、何気ない日常コメディの奥で何が起きたか凄く上手く知らせていて、大変良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
電灯は怪しく明滅し、危機の在り処を確かに教える。しかし、状況はあくまで朗らかに、表面上何事もない日常が続く。
翔太郎自身が故障に気づいていないことが、悪夢をより強くする構成なので、その報せはあくまで静かでなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
しかし同時に、後々思い返せば『確かにあそこで…』と判る鮮明さも必要だ。
ここら辺の調整は、このアニメ大変に巧い。元々静物の演出、死ぬほど強いからな…。
ドサドサと落ちてきたダンボールは翔太郎の手首を挫き、しかし表向きは懐かしき思い出を外側に出して、未来の夢へと繋いでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
今までがあって、これからがあって、まだまだ終わらずに続いていく日々。
アオ校新体操部はソワソワを新たな決意に変えて、真っ直ぐに飛んでいく。
その歩みの奥で、翔太郎の不調は小さなノイズとして、画面を埋める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
落とした醤油、広がる波紋。ジワジワと、後のカタルシスに繋がるように小さく小さく、不穏さな予兆を描き続ける演出が大変良い。
お風呂場、サービスシーンのはずなんだがなぁ…。
(画像は"バクテン!!"第10話より引用) pic.twitter.com/ocztYFr8pu
前回自分を閉じ込める檻を壊し(壊され)、持ち前の優しさを素直に発揮できる足場を作った美里くんは、今までずっと仲間を”視て”きた主役の不調を、ずっと見つめ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
豊かな感受性でヒントを受け取り、誠実なケアをする役目が入れ替わった、ともいえる。
この気配りが、翔太郎に帰ってきた時何が生まれるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
そこが気にかかりつつも、今は悪夢が炸裂する。
眠る前、確かに気にしていた手首のノイズは炸裂し、重い軛となって翔太郎を地面につなぎとめる。
皆が自分を置いて、演技は続く。
(画像は"バクテン!!"第10話より引用) pic.twitter.com/QzxHQJqdr2
演技が失敗するのではなく、縛り付けられて混ざれない、追いつけないという悪夢なところに、ここまでとにかく明るかった翔太郎の隠したストレスが、見えた気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
初心者である自分が、足を引っ張らないか。
IHへの夢を邪魔し、あるいは透明な存在に戻って一緒に翔べないのではないか。
彼もまた、人間当然の陰りに思い悩み、しかしそれを振りちぎって明るく素直に進んできたことを、気合の入った悪夢シーンはよく教えてくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
暗く沈み、強く歪んだ世界は激痛の反射。
悶える翔太郎に、美里くんが駆け寄る。
しかし、世界は暗黒に染まりきってはいない。
美里くんの背中に確かにある強い光が、この作品が苦難というものをどう捉えるか、描いているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
大会直前の故障、全てがぶち壊しになるかも知れない大ピンチの中ですら、確かに光はある。
それは誰かの背中に背負われ、苦しむ誰かを”視る/看る”ことで輝く。
そういう輝きは翔太郎がずっと、主人公として背負ってきた光だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
彼がひたすら素直に、エネルギッシュに進んでくれたおかげでこの作品は、明るく爽やかな風に後押しされて、強く強く進んでこれた。
しかしそれだけでは翔太郎は作品の奴隷だし、お話にも立体感が欠ける。
作品がまず捉える希望の光を前半で描き、主役を取り替えてその奥にある陰りを、それでも照らす輝きを描き直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
お互い様の迷路を、支え合って抜けた大会前日、翔太郎の歩み寄りで翔べた美里くんを支えに、挫折の影を主役に伸ばす。
潰れてしまいそうな痛み、重すぎる理不尽。
濁りなき光の化身に思えた翔太郎も、そういうものに襲われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
その公平さに、僕はむしろ安心した。作品を先導するだけの人形として、彼を終わらせる気がないのだなと判った。
動揺はするだろう。負けてしまうかも知れない。
でも、全てがぶち壊しにはならない。
そういう気持ちで次回を待てるのは、このお話に出てくるキャラが影から飛び出す強さを、自分をそこから引き出してくれた恩を忘れない優しさを、しっかり持っていると知っているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
翔太郎は必ず、彼がこれまで見守ってきた人たちに支えられて、もう一度翔ぶ。素直な強さを取り戻す。
喪失が生み出す闇も、人生に付き物の過ちや迷いも、必ず超えていけるのだと、第7話以降特に色濃く描いてきたこのアニメが、主役を襲った大ピンチをどう描くか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
それは翔太郎に支えられてきた仲間が、どう生きるかも顕にするでしょう。
危機にこそ、人間の光は強く照らされる。
それは多分10年前も、今も、生き死にの現場も青春の戦場も変わりはないのでしょう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月11日
手首の傷は、そんな強いメッセージから、主役を置き去りにしないための聖痕…っていうと、超苦しそうな翔太郎に悪いよな。心配だよホント…。
しかし、アオ校は絶対勝つッ!
そう信じて次回を待ちます。楽しみです。