ゾンビランドサガ リベンジを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
かつて、敗残があった。
慢心に流されるまま過大な決戦に挑み、夢破れて屍を晒す。
一年越しの駅スタリベンジを目指す巽に、大古場記者が詰め寄る。
これ以上、死者の尊厳を汚すなと。
外法承知で挑んだ夢が、風に吹かれて虚しく揺れる。
さぁ、明日はどっちだ！
そんな感じのクライマックス直前、過去の始末と明日の準備なゾンサガR第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
二期を貫通する大事件なのに、大胆に省略されていた駅スタライブの詳細が、ここで描かれる形となった。
やっぱすごく特異で大胆な、しかし的確な構成してんなー、と思う。
例えば今回Aパートが二期第1話にあったとしたら、ゾンサガ復活に喜んでた心はいきなり冷水ぶっかけられていたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
時系列を歪めてでも、敗北からの復活で第一話を飾る。
自分たちの意思で社会に位置を占め、地域に認められて働くフランシュシュからまず始める。
リベンジは『ファンが見たいゾンビランドサガ』をしっかり見据えた上で『作者がまだ描いていないフランシュシュ』をやっている印象なのだが、このタイミングでのフォローバックからはそんなレトリック…であり配慮であるものを、強く感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
めちゃくちゃトリッキーなんよ、ストレスのかけ方としては
しかし”リベンジ”の色を濃く宿す二度目の駅スタライブを、物語のラストに据えるのであれば、それはストレスを排除した省略形で語り続けるわけにもいかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
なので今回、その当然の失敗と再起を描く形となる。
既に借金返したし、負けの後の勝ちも書いたし、そこまで重くもならないタイミング。
狙いすましてしっかり描写に背骨を入れるのは、巧妙なところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
『あったあった、そういう事もあった』で流すことも出来たんだろうけど、やっぱしっかり記述しておいたほうが、そっからのリベンジにも硬さが生まれるだろうしね。
あと、どう負けたのかは見たかった。ひでー負け方だった。
巽におんぶ抱っこで地獄絵図、見ている側が気の毒になるライブを終えたフランシュシュは、たえちゃんの自由さから突破口を掴む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
他のゾンビが縛られる鎖から、たえちゃんだけはいつでも解放されている。お化粧可愛いねぇ…。
（画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第10話より引用） pic.twitter.com/AxDvuJ4p8z
僕はゾンビたちの化粧を、顔貌が損傷した死者に尊厳を取り戻すエンバーミングとして見続けているのだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
この瞬間まで、それはネクロマンサーでありプロデューサーでありエンバーマーである巽…生者の特権だった。
しかしゾンビたちは窮地に追い込まれて、自分で自分の顔を作るタフさを手に入れる。
行動自体はたえちゃんがフリーダムに口火を切るが、そこにどんな意味があるかを見つけるかはいつもどおりさくらで、彼女を経先にしてフランシュシュは社会へと出ていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
第1話冒頭で見られるように、化粧は完璧ではないが佐賀の人々は優しく、働く少女たちを受け入れてくれた。
物語を牽引してきた巽が、焦燥と慢心で駅スタに”死ぬ”ことで、ゾンビたちはネクロマンサーの軛を外れた独立存在として、また一歩強い歩みを踏み出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
凝り固まった”フランシュシュらしさ”を壊し、新しい強さを手に入れようとする動きは、例えば第3話＆第4話とも共通している。
むしろこの時、ソロとしての自発性を掴んだことが一年間のリベンジを支え、成功の礎になった感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
ソロ活動で愛ちゃんが動揺せず、信念を持って動けてる感じだったのは、ここで過去の敗北、死の呪いを振り切っていたから、という後出しの納得もあって、面白い描写だった。
あ、俺は頑是ないたえちゃんがそれでも自分らしく、自分だけの世界を自力で進んでいく描写に死ぬほど弱いので、誰にも言われないまま巽の貯金箱から金ギッて、スルメ買ってたの見てまた泣きました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
フランシュシュのマネジメントという使命を放り投げた、巽の墓暴きだよなーアレ…。
さて時は流れ、巽は一年越しのリベンジを宣言する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
まず謝罪から入り、おふざけ一切なしの超マジメスタイルは彼がこの勝負に掛ける意気込み、一年間の逆襲から得たものをよく教えてくれる。
その瞳に何よりも映るのは、やはり源さくらである。
（画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第10話より引用） pic.twitter.com/75HEMrEUap
『お前達』って呼びかけてるのに、グラサンに反射しているのはさくら一人なあたり、マージで乾くんの狂った純情が見えて最高なんだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
波にさらわれ鳥に襲われ、電気は止まり嵐が来る。
フランシュシュのリベンジは、いつものごとく呪われている。
徐福がガチ徐福（この写真は金立山の徐福像だろう）であり、オカルティックな背景でもって死者蘇生がなったことが解った今、呪法には当然逆凪があるのは納得だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
アルピノライブを襲った豪雪も、世界からの修正力って感じなのね。
（画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第10話より引用） pic.twitter.com/AdclS9badA
激しく押し寄せる困難が、アイドルを試しドラマを引き立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
そういう文脈を宿しつつ、ゾンビ視点では理不尽な試練が今回も立ちはだかり、さて勝つか負けるか。
とりあえず、我らのホームはぶっ潰れた。前哨戦なのに被害でけーな！？
加えて記者さんが、今までジワジワ巻いてた描写を回収し、巽に詰め寄る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
『お前は、死者の平穏を冒涜している』
これは巽の行い、フランシュシュの根本に関わる大事な問いかけで、だからずっと温めてこのタイミングで炸裂させたのだろう。
確かに、巽の計画は狂気以外の何物でもない。
うっかり蘇っちゃったゾンビたちが、過去に後ろ髪を引かれつつも今、ここで生きる存在として夢を掴み、絆を深めたとしても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
止まった心臓がそれでも動いている熱量が、事情を知らない人々を引き寄せ、かすかな希望を燃やしたとしても。
記者さんが気にかける死者の尊厳は、確かに大事だ。
これは一期から気になっていたポイントで、触ってくれると嬉しかったけどそれやってる尺がなかったものであり、こういう要素を徹底的に拾い上げ、しっかり磨き上げることでリベンジは成立してたように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
巽依存の体制、ソロとしての弱さ、たえちゃん個別エピ。
サキちゃんの恋に、一回だけの八号に、まさかの佐賀事件。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
見たくて、でも描けなかった部分をちゃんと彫り込んでいくことで、おんなじ話を繰り返してる停滞感も、成長が逆流するガッカリ感もなく、一期をリセットすることなくリベンジして、ここまで来た。
『ゾンビで芸事佐賀復活って、倫理的にヤバくね？』と、記者さんが堂々立ちふさがってくれること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
その強く真摯な問いかけに、フランシュシュの今が、それを後押しする巽の想いが答えを出すことで、このお話は最後のピースを手に入れていくのだろう。
ファン目線に甘えるでなく、偏見で歪むでなく、メディアに必要な正しさを持ってる記者さんが、フランシュシュと巽のステージを過去への冒瀆ではなく、今を生きるアイドルの輝きと認めてくれることで、作品最後のリベンジは果たされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
そういう構図だと思う。
同時にこの問いかけは、死に引き裂かれてなお愛する人を諦めきれなかった乾くんの想いを、巽の過去を暴く鍵にもなるわけで、ここも巧いなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
巽がどんな少年だったかとか、何を思ってさくらをゾンビにしたかとか、一期で輪郭触りつつ中身描けなかった部分だからね。
ここも、適切なリベンジ。
そんな感じで、書かれなかった過去を取り戻し、未来に向けて高い壁を建てるクライマックス第一章でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月13日
見事な交通整理であり、しっかり情念も宿っていて、大変良かったです。毎回毎回、皆熱くて可愛いのはゾンサガの強みだ。
吹き付ける強い逆凪を、輝く祈りに変える闘い。
次回も楽しみです。
