MARS REDを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
崩壊した月島牢獄に現れた、黒き復讐鬼。
前田の狂気は葵を貫き、流れる命が水を染める。
呼ぶ声に導かれて、秀太郎が空を往く。
太陽に灼かれ、地上に縛られる吸血鬼の宿命を、夢の翼で乗り越えていく。
黒翼の流れ星が、廃墟の上を一筋、流れていった。
そんな感じの、フルアーマー集太郎出陣ッ! なマズレ第11話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
科学の翼で武装した吸血飛翔体は、”ドラキュラ戦記”のリヒトホーフェンを思い出してちょっとハァハァするわね…。
陽に耐えかね、長命に心を病む弱き生き物、吸血鬼。
戸籍と都市化を特徴とする近代に追い立てられる彼らが、近代の象徴たる科学によって業を乗り越え、より強くなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
すごく素朴な科学信奉SFを、中世と近代がぶつかり合う潮目に挿入してくるのがかなり面白かった。しかもその翼は、竹で出来たレトロな人力ジャポニズムというね。
古式と新鋭、慣れ親しみ滅ぶものと真新しく塗り替えるものが、複雑な折り目を為す大正帝都。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
その取り合わせをいろんな形で描いているこの物語が、また一つ良い象徴を出してきたなと感じるエピソードでした。
やっぱ時代の衝突の話として、僕はこの亜に目捉えてる感じあるな…。
デフロットが象徴する中世主義は、歴史の重みに耐えかねて腐敗し、自壊していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
そこに新しい息吹を与え、『まだ生きてもいいかな』というワクワクを与えたのは葵であり、変人達が生み出した科学の翼でもある。
近代がヴァンパイアを殺し、また活かしもする。
このちょい長いスパンの”中世 VS 近代”の構図の上に、デモクラティックでモダンな大正と、それが崩壊する大震災のカオス(が、金剛鉄兵に象徴される軍国・全体主義傾向に調律されていく未来)という、短期的な変化がまた覆い焼きにされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
まだ少し、生きてみてもいいかな。
スワさんが生きる縁にしている『新しくておもしれぇモノ』は大恐慌と大戦に覆われ、全世界的に摂取が難しくなっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
それを魂の潤いにしているのは、劇的なる擬死を摂取して精神崩壊を防いでいたデフロットも、帝国ホテルで芝居をやろうとした葵ちゃんも同じだ。
あるいは益体もないトンデモ兵装を開発し、無聊の慰みにしていたタケウチも同じかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
娯楽、発見、変化。
新たなる”何か”を喜べるうちは、人は鬼にならなくていい。だが、それが欠ければ直様外道。
それは吸血鬼だけが、囚われたルールではないのだろう。
ここにアスクラの瞬間的な快楽が対置されているのも、また面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
吸血鬼専用麻薬といえるアスクラは、人格崩壊を早め、組織化された邪悪によって供給される。
そこには利だけを求め他人を踏みにじる、どす黒い思いがある。
ただ、楽しいことがしたい。役に立つかは判らない。
そんな気持ちで竹とんぼを作り、黒翼の蝙蝠を生み出した連中の無邪気とは、違う所で駆動している情なき快楽。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
それがとても強く危ういものであると、このお話は書き続けている。
結構ピュアな理想を吸血鬼たちに仮託した、娯楽産業批評でもあるなー、と思ったりする。
さておき、血の抱擁を受け止めきれず正気を失った前田さんが、デフロットに立ちふさがるところから物語はスタートである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
前田さんを死の運命から救い、岬を弄んだ物語に復帰させるべく分け与えた血が、巡り巡って自分の首を狙う。
ホント、因業な生き方ばっかしてるねデフロットくん。
目にも留まらぬ超高速戦闘に、常人たる葵ちゃんはただ翻弄されるが、その魂はその場にいる誰よりも強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
停止した時の中で、自分は誰よりも老成しているとうそぶくデフロットを抱きしめ、守るべき子供として扱う。
身を挺して前田の凶刃を止め、子供を傷つけない”優しいお巡りさん”に戻そうとする。
前田さんがこのまま、意思なき復讐鬼として暴れ倒すのあんまり哀しいので、葵ちゃんの血潮で正気取り戻して欲しいもんだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
吸血鬼は血に狂うものなのに、葵ちゃんが流したそれは前田さんを後退させ、人らしさを回復させる。
ここは葵ちゃんの…岬含めたこの作品での”女”の特殊性が見える所かなー。
世界で唯一、餓死した吸血鬼。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
デフロットの語る”母親”もまた、美しい女(ひと)だったのだろう。
前田さんといいデフロットくんといい、皆最初に出逢った運命の女とは死別していく。山上さんもそうか。
積み重なる、悲恋の連鎖。それを、葵ちゃんを運命とする秀太郎は超えら得れるのか。
蝙蝠人間白昼の出撃には、そんな意味合いが強く香っている気がした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
いや実際この話さぁ、悲しい恋が多すぎるので…葵ちゃんと秀太郎には、宿命を超え約束を果たす未来を、もぎ取って欲しいのよね。
茜と青の入り交じる空の色が、大変綺麗で良い。
(画像は"MARS RED"第11話より引用) pic.twitter.com/6yiDFRz4Q4
実現するはずのない夢は、S級ヴァンパイアの圧倒的力で空を飛んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
山上夫妻の一夜の舞台もそうだけど、秀太郎は自分の能力を血みどろの戦闘…多分ヴァンパイアが本来、その本領を発揮するべき場所ではなく、誰かの瞳を奪う舞台装置として、誰も傷つかず使う描写が多い。
その腹の座らなさは情け容赦なく悲劇を生むが、同時に人が鬼に堕ちない…誰かを鬼に貶さないための大事な楔でもあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
デフロットを覆っていた憂鬱の檻は、科学が生んだ蝙蝠人間が窓をぶち破り、ガラスを砕いた時にぶっ壊された。
世の中に、面白いものはまだある。そういう場所に、少年は戻る。
秀太郎に自覚はないのだろうけど、大事な人を守るために太陽に背き、重力を振りちぎって奇跡を生む在り方が、誰かの魂を確かに救ってもいるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
そういう人生芝居を、色んなキャラと物語で切り取る視線は、この話で結構大事なのだと思う。
人と鬼を隔ててきた灼ける陽光も、重たい宿命も、空を舞う軽やかさが置き去りにしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
果たしてその飛翔が、二人の命を救うのか。イカロスの如く落ちるのか。
つーかデフロットくん、”ロミオとジュリエット”は死にオチなんだから、未来ある二人にかけるには良くない引用でしょッ!
スワさんがちびっ子ヴァンパイアを優しく見守り、秀太郎一世一代の大舞台を見送ってる様子とか凄く良いんだが、不穏な気配もあってなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
大人と子供の中間地点に、永遠にピン留めされてしまったやるせなさが、せめて取り返しの付く形で間違えて欲しいんだが…さてどうなるか。
幼年期に呪われてるのは天満屋さんも同じで、あのヴァンパイアあんまりにも『未来ある少年の心に、目の前で燃えて永遠に消えない印を刻み隊』すぎねー!? って思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
彼の過去を通じて、人と鬼の関わりにまた一つ新しい画角が加わって、作品世界の吸血鬼描写に立体感が出るのは大変良い。
天満屋さんは世界の形をまだまだ変えうる可塑性が心にあるけど、ルーファスはダメだな!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
つうか中島の処理の仕方が超音速過ぎてビビったよ! ”零”まったく関わってない所でボッシュートじゃんッ!!
こういうスクリューを躊躇わないところは、この作品の良いところだと思ってます。
ルーファスも人間時代の歪みを、虐げられた長き生で増幅し、ブレずに簒奪の道化をやり続けているのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
中島が曲りなりとも国情を鑑みて狂ったのに対し、ルーファスは完全に自分のエゴで殺し、裏切り、王冠を被る。
復讐だけが残った前田さんといい、吸血鬼はそういう存在…なのか?
因業を超えて愛を歌いうる存在として、夜と昼の狭間を駆けるダークヒーローとして、吸血鬼は存在しうるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
秀太郎が葵ちゃんを守りきれるかで、ここ結構変わってくると思います。
繰り返す悲劇を超えて、鬼と人は新たな希望を掴みうるのか。次回も楽しみ。
科学で武装したフルアーマー秀太郎が、伝統的な吸血鬼のシルエットをしっかり踏襲しつつ、古くて新しい科学幻想で身を固めたヒーロにちゃんと見えるのは、デザインが仕事しててとてもいいですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月16日
古典再話ってのはこの作品、相当に意識してる足場だと思うんだけども、それを”絵”で証明した感じ。