輪るピングドラムを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
22年に再編集新作映画が作成されるのを受けて、Youtubeで毎週TV版を放送していく企画をやっている。
これを受けて、僕も毎週視聴し感想を書こうと思う。
懐かしくもあり、半ば忘れているものもあり、しかし消えずに輝くもあり。面白い視聴となった。
既に完結し、複雑怪奇でありながらシンプルでもある物語についても数多の言説が為されている作品でもあるから、自分が今何を語るべきかは、不鮮明なままである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
いつもどおり、思ったことを素直に言っていくのが良いかな、と感じてはいる。
既に彼らの結末を見届けてしまった、10年後の僕として。
同時に、10年前初めてこの作品と出逢った僕を思い出しながら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
そんな風に、改札口をくぐって過去と未来を行き来する行為も、なんとなくピングドラムっぽいとは思う。
これは許されざる過去と、かけがえのない思い出と、未来へ突き進む運命と、譲り得ない愛の物語である。
当時大変心地よくぶん殴られ、わけの分からねぇまま惹きつけられた(イクニはいつもそうだ)記憶があるが、その衝撃はプリクリ様降臨シーンだけに限定されるわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
物語の最初と最後、目覚めと眠りを円環に閉じていく、高倉家の美術が凄く良い。
年月に薄汚れながらも、鮮烈な原色を夢のように残して、随所に赤ん坊をあやすような柔らかで甘ったれた意匠を宿している、奇妙で美しいブリコラージュ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
あそこはゆりかごでありシェルターであり、監獄であり卵の殻でもあるのだろうと、10年前の僕は直感したように思う。
子供時代に囚われること。過去に縛られること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
運命という言葉への嫌悪(と裏腹の憧憬)から始まり、それで終わるこの第1話は後に、差く品を貫通する大きなフレームを既に見せている。
大人になれないまま死んでいくしか無い、陽毬のあまりにも哀れな宿命。
それを逆転させる、無茶苦茶なペンギン。
カンちゃんが既に死んでいるものに囚われ、それに引きずられ暴走していく未来を知っている身としては、陽毬を襲う死…時を全て過去に閉じ込めてしまう殻が、彼らの家でもある描写は良く刺さる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
子供だからこそ、親が成し遂げられなかったものを背負う。
子供ではないからこそ、ただ純粋素朴なままではいられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
鮮烈に第一話の末尾を飾る冠葉のキスは、近親相姦の禁忌と同時に、死者蘇生の禁忌にも唇を這わせている。
どれだけタブーを犯そうとも、諦めることが出来ない危険な願い。欲望、あるいは神への挑戦。
そういうものにためらわず突き進んでいく存在として、第1話から冠葉は描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
妹に近づく時も、その死を受け入れる(ふりをする)のも、晶馬より冠葉の方が早い。
彼の恋情は血縁を越えたモノであり、家族だからこそ繋がれたものを壊す炎であり…しかし、その殻は偽りでしか無い。
真実を何も知らぬまま、或いは知らぬふりをしたまま動き出す、物語という名前の列車。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
ジャンクションは様々にあり、フラフラと彷徨っているように見えて、レールは真っ直ぐに引かれ、結末へと進む。
軌条を構成するのは輝き、死、後悔、祈り、愛…賢治について熱く語る子供たちが、既に喋ったものだ。
全てはこの第1話で既に用意されているし、それを並べたところで、けして物語の全容は判らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
物語を浴び、溺れ、キャラクターの愚かさと切実さに否応なく共鳴してしまう体験を経て始めて、自分の中だけに結実する一つの果実。
『これが私の”ピングドラム”だ』という実感。
僕はそれを既に掴んでいる…と思いこんでいるが、それはうっすらとボケてホコリを被ってもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
この再視聴が、赤く焼け付くサソリの心臓にもう一度火を入れるのか、亡霊めいた灰色の再確認を繰り返すだけなのか。
物語に重ねた言い回しを選ぶと、それを確かめたい気持ちもある。
一つ鮮烈に思い出した/感じたのは、陽毬がとびきり可愛い、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
高倉兄弟のお姫様扱いも納得の、凄まじくフワフワで可愛らしい、守ってあげたくなる女の子。
そこにせめて最後の思い出を楽しく輝かせたい願いと、終わる幼年期への哀切が滲んでいるのも良い。
知らぬは陽毬ばかりなり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
彼女はあくまでイノセンスに、自分が頂上の存在になったことも、死の運命にとらわれていることも、冠葉の口づけも知らない。
しかしだからこそ特権的に、汚れることなく、踏みにじられることなく生きて欲しいと、思わず願ってしまう。
開始15分でヒロインが生きて死んで、奇妙なペンギン女になってぶっ飛ぶ忙しない話なのだが、印象として陽毬が可愛いこと、兄弟が必死で無力なことはよく伝わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
言語で筋立てて説明出来る感触は置き去りにされるが、しかし物語のコアは体温を宿し、確かに手渡される。
そういう特徴的な仕草も合わせて、作品の全てが詰まった第一話と言えるだろう。やっぱ面白いな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
幾原邦彦という作家の語り口と視線に、かなり相性がいい観客(だからこそ、いつまで経ってもイクニチルドレンなのだが)だから、チューニングがあっている、というのはある。
しかし、ただフィーリングをぶん回すだけで終わらず、凄く精妙な映像操作、印象構築を駆使して、伝えるべきを伝えている作品でもあることを、思い出す視聴ともなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
やっぱこの段階で、晶馬から見た陽毬と、冠葉からみた陽毬がズレてて、しかし重なってる状況は描かれてんだよね。
兄妹としての愛、男女としての愛。そこに軽重はないが差異はあって、それが生き方を変え、また繋いでも行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
禁忌と罪と秘密を共有し、しかし何事もない楽園を守りたいと皆が思いながら、廻っていく物語。
プリクリ様が一歩進むごとに、暴かれていく美しき裸身。
見てはいけないのだが、だからこそ視線を奪われる特質において、エロティシズムと死は密接に繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
死んだはずの少女が動き、妹とは別の名前で誘惑すればこそ、冠葉は近親相姦タブーを越え、燃え盛る命の炎を共有する。
肉のふれあいよりも危険で、純粋な交雑が為される。
作中の現実として描かれているもの全てが抽象で、見た通りのものでは無い不親切と面白さが、何もかも率直に語っているストレートと同居している所が、やハリこのさく品の面白いところである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
全ては、既に語られているのだ。しかしそれが判るのは、運命を傍観しきった10年後の僕だから…
という、わけでもないのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
プリクリ様がこのファーストタッチで、晶馬を奈落=現世に繋がる穴に落とし、冠葉の胸に触れたことの意味を、初見でもけして言葉には出来ないまま、僕は受け取っていたような感じを思い出す。
それはけして、明瞭な言語にはならない予兆であり、深層心理への刻み込みだ
それが話数を越えて『あ、そういうことか…』と繋がるのは、別に明瞭な種明かしが作中にあるからではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
ずっととても分かりにくく、しかし一つのことしか言っていない言葉を聞き取る器官が、視聴体験の蓄積を経て、脳の何処かに結実する気持ちよさが、巧妙に仕組まれているからだと、今は思う。
メッセージは常に鮮明なのだが、それは常時詩で描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
Logicを用いて、整然と理路を整え一つの結論だけを狙い撃つ散文の言語は、あまり提供されない。
詩を散文で解体すれば、必ず死んでしまう。生きているように見えて、それは既に形と生存領域を変えている。(陽毬とプリクリ様のように?)
しかし幸福にも、その二領域が重なる瞬間というのはあって、この作品は狙ってそこへと接近していく物語でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
意思でもって奇跡を引き寄せ、苦労と代償を要求しつつも、なにか圧倒的なものが目の前に現れてくる喜びを掴み、掴ませんともがく。
その決意が、強く滲んだ第一話とも言える。
10年前に掴んだ輝きを、ただ蘇らせようとするのならそれは、死に囚われ輝きを見失った、この作品における沢山の大人と同じだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
人生の特急列車に運命的に乗り込み、それでも置き去りにされるものに強く手を伸ばした少年たちが、伝説めいて成し遂げたように。
もう一度、その輝きを生み直す。
10年分置いてしまった僕にそれが出来るのか、さっぱり自信はないのだけども、しかしそんな過剰な力みを一旦脇において、これは言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
やっぱ面白いわ、このアニメ。
現実と夢の間で、グロテスクですらある高倉家の美術とか、思い出補正ぶっ飛ばす切れ味だわ。
あんだけ鮮烈に二度、運命への嫌悪を描いたあとで、次回予告で苹果ちゃんが『運命って言葉が好き!』って引き受けて繋げる流れとか、ホント良いよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月11日
なんだかんだ、楽しい再視聴になりそうでワクワクとします。半年、お付き合いいただければ幸い。次回も楽しみ。