かげきしょうじょ!! を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
夏休み、さらさは愛を伴って浅草へと帰郷していた。
懐かしい場所で、蘇る思い出。
痛みを抱えながら、進む一本道が通じる場所。
暁也もまた、思い出していく。
無邪気だった時代が終わり、それでも進むと決めた、あの時を。
そんな感じの、かげきしょうじょの夏休み、である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
彼氏…というには複雑な因縁と感情が絡む暁也くんを語り部に、今まで伏せ札だったさらさの過去が顕になり、重たいが湿り気のない青春が、わだかまりをさらさらと解いていくような味付けとなった。
スターを頂点に、トップダウンで芝居を、一座を組み上げていく紅華と、伝統というあまりに分厚い土台に、当代を活きる役者を乗せて、高みに押し上げる歌舞伎。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
それぞれ男子禁制、女人禁足の厳しい縛り以外にも、共通点と差異を持つ舞台。
でもその行く先は、一つの道で交わっている。
そう信じなければ、自分が壊してしまった幸せに報いれないと思いつめつつ、芸の道を進む暁也くんの一本気が、夏空に爽やかなエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
安道教諭の指摘でどん底に落ちたさらさの今より、その彼氏との過去に力点を置く運びは、独特で面白い。
というわけで、今回も渡辺べったりな愛ちゃんを語り部に、物語は進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
いつも陽気なハイテンション、空気読めない規格外。
そんな今までの”渡辺さらさ”が、実はかなり頑張って作り上げた鎧でもあったと判る凹み加減。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第7話より引用) pic.twitter.com/W1jOgS5yhQ
愛ちゃんはじーっとそれを見つめ、帰省にも寄り添って近くに居続ける。まぁ、あの家には帰りたくないよね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
異様な集中力でスターの演技を見つめ、自分に焼き付ける。
六歳のさらさが身に着けた、歌舞伎の判断軸はしかし、紅華とはマッチしない。誰のコピーかまで、安道は完全に見抜く。
墓前でつぶやくように『なれない』はさらさにとって特大の呪いであり、それを振り千切るために紅華に来た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
”男ではない”という、自分にはどうにもならないもので拒まれた場所から、”女である”ということがパスポートになる場所へ。
それが祝福ばかりでないのは、彩子みても分かる通りだけどね…。
愛ちゃんが男からのシェルターとして紅華を求めた動きと、それは重なりつつズレている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
花道の記憶はさらさに強く宿り、もう芝居から逃れることは出来ない。
彼女の星が、血が、晴れ舞台に続く一本道に進むことを要求し続ける。紅華は、歌舞伎の代用品ではない。
それでも立つ場所によって求められるものは異なり、”このままでは”さらさは紅華として咲けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
タップを華麗に踊りきれない、腹で歩く身体操法。
徹底的な写しを前提とする、伝統芸能の価値観。
それは花道から追い出された後も、さらさに強く染み込んでいる。
歌舞伎を愛し、歌舞伎に愛されず、それでも歌舞伎が染み付いている自分をどうしたものか、さらさはティボルトを演じて思い知らされた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
その重い陰りから、愛ちゃんの一言でふと光に帰ってくる描写が、二人の間柄を照らしていて面白い。
友情こそが、長いトンネルから抜け出すヒントだ。
安道教諭もまた、栄光を掴んで奈落に落ち、それでも芝居にしがみついて進んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
朗らかに日々を過ごしているように見えて、凄絶な過去が今でもうずく。
ここら辺、ファントムとさらさ…つうかこの話に出てくる人間はみな似てるなぁ、と思う。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第7話より引用) pic.twitter.com/yeVehZCXkc
錯綜する過去と現在。積み重なる悩み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
SNSで、あるいは回想の中で共有される重荷を、さらさは愛ちゃんに預けはしない。
なんでも明け透けに、明るくぶっ飛ばしてくれる天使に思えた子の、親友にも見せられない深奥が疼く。
まー、当然さらさも”人間”って話よね…。
男しか立てない花道、そこに至るまでの稽古を暗喩するように、暁也と煌三郎だけが助六を見てる…ように見える、さらさを消した構図が印象的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
それが歌舞伎の、あるべき形。
禿として歩いた一瞬の夢は、あくまで夢でしか無い。一瞬の客人は、ずっと花道に居続けることは出来ない。
そんな厳しさを知らないまま、さらさは無邪気に助六を見て、その形を学ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
守破離の入り口、ただただ真似て、芸を血に染み込ませる段階。
それが歌舞伎の全てだと、思い込んだのがさらさの不幸であり、枷でもある。
今回はその檻を壊して、時を動かし直す回でもある。
その起因となるのが、さらさのいない一本道をそれでも進み続けた、若き役者・白川暁也である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
近隣みなに愛され、暖かで朗らかな”家”に馴染めない愛ちゃんが、迷い猫のように出逢った”彼氏”は、弄んでいたチケットを背中に隠す。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第7話より引用) pic.twitter.com/2RxDzsidp9
自分と”彼女”が共有する過去の傷を、『そこから先は言えない』と、曝け出すのをやめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
人付き合いの下手さを自覚して、それを全部初対面の暁也に顕にする愛ちゃんとは、ちょっと違った屈折加減。
6歳の時に、無邪気ではいられない人生の複雑さを、わっと浴びせられた子供の成れ果てである。
暁也がさらさに”歌舞伎”を…彼女を置き去りに10年邁進した自分をどう届けたものか、シャイに悩む様子をカメラは切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
墓前にあくまで明るく、それでも重たく伸びる過去の影。止まって、でも確かに進んでいる時間。
それを、どう扱えば良いのか。
暁也と不器用に正面衝突し、距離を測り直す愛ちゃんの振る舞いと同じく、暁也も自分を取り巻くものに、内側に溜め込んだものに向き合う姿勢を、慎重に探っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
とても対応の難しい所だと思うが、このお話の子供たちは勇気を持って、自分を…自分に関わる愛おしい人たちを、前に進めていく。
でもそれは、必ず迷いと足踏みの先にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
人間は間違えるし、人生は辛い。
ままならないものが沢山あって、その上で何かを選び、立ち上がって進むしかない。
立ち止まらないこと、諦めないことを選んだ者たちの道は、舞台へと繋がっている。
歌舞伎の花道、あるいは紅華の銀橋へ。
さらさは視野が広く賢い子であるが、安道教諭の『このままじゃ』を聞き落としてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
それだけ『なれない』が大きすぎる呪いだということだが、この夏旅でもって少し、涙の上書きをする。
その主因が愛ちゃんではなく、暁也なのが、横幅広く風通しよくていいな、と僕は思う。
無邪気な色合いだった暁也の回想は、次第に芸の厳しさを帯びてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
ピタリと身体を止める強い体幹…を武器に、衆目を集めてしまう天性の”華”。
怯える自分を置き去りに、なにかに憑依されたかのように揺るがず客席を見つめる、緑の瞳。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第7話より引用) pic.twitter.com/BAW30Gr1IT
間近にいればこそ、見えてくる光と影。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
自分の中から湧き上がってくる黒い感情を、どう扱えば良いかもわからない幼い魂。
多分暁也は”いい子”で、だからこそ凶器の扱い方を上手く、教えられなかったんだろうなとも思う。
なら、全てをぶち壊す実地訓練に投げ込まれるしかない。
そこから先の運命はとても痛くて、関わった人皆が哀しくて、でも人が人である以上逃れられない業が、強く絡んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
無邪気などではないと、自覚しながら言葉を吐き出した。
それがドミノのように、全てを押し流していく。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第7話より引用) pic.twitter.com/2xUOjftpRx
幸恵が自分の口から知らず飛び出した呪いに、自身傷つけられてへたり込むのが、やはり悲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
さらさにとっては自分を壊す怪物に見えていたものが、暁也にとっては優しい女将さん、あるいは共犯者として、しっかりその顔を、弱々しい涙を見据えて描かれ直す。
鬼の住処は、あくまで人の居場所だ。
襖越し、土下座したまま顔を上げない煌三郎を見た時、暁也の子供時代は終わったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
それを自分が壊してしまったのだと、幼い頭で必死に因果を繋ぎ合わせて、自分を苛んでいく暁也の純朴と、手を差し伸べる老人達の掌。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第7話より引用) pic.twitter.com/5RuFR0h7EA
孫娘の心を壊され、怒りを込めて歌舞伎との縁を切った健爺さんが、傷ついた暁也を前に笑顔を作って、個人としての縁を繋ぎ直す手付きは、とても優しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
さらさがしんどい状況でも、誰かのために顔を作れる所は、祖父譲りなんだなぁと思ったりもする。
これに対し歌鷗は、自分が引き金となった(と暁也は思い込み、またそれは事実でもある)悲劇に泣きじゃくる子供を抱きとめつつも、楽にはさせない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
後悔を、痛みを言葉にするより抱え込んで、芸を磨く砥石にしろ。
師として、役者として、弟子に向き合う対応をする。
健爺さんは生身の暁也を、歌鷗は化粧をした暁也を、それぞれ見据えて手を伸ばした、と言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
人として当たり前の優しさよりも、掴み育まなければいけないもの。
芸の真髄に近づくためには、人でなしになるのが資格か。
そこで優しさを振り千切ることこそが、人の営みなのか。
相当に複雑な人生体験を経て、挑む助六。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
そこにはただ爽快なヒロイズムだけではなく、否応なく混じり合う愛憎、分厚い業を越えようとする営みが宿ると、十七歳になった暁也は告げる。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第7話より引用) pic.twitter.com/a6Et0xiVMY
六歳で止まっていたさらさの手習いを、十年足を止めず学び続けた…学び続けられた先達として、先に勧めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
模倣を越えた先にあるもの。形を守ればこそたどり着けるもの。
その背中が見える程度には、おどおどした少年は大きくなった。
それを告げられることで、さらさは前に進んでいく。
過去の因縁も共有してないし、複雑な関係の奥は見えないし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
結構蚊帳の外な愛ちゃんが、それでも”今”渡辺さらさの隣りにいるものとして、身を乗り出し顔色を見て、親友の力になろうと色々話しかけてくるのが、大変可愛い。
そして幼気なだけでなく、頼もしく助かる。
歌舞伎と紅華、花道と銀橋。東京と神戸、男と女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
道は繋がっていても離れていて、日々新に移り変わるさらさの”今”に桜の下出会い、人生を助けられ、間近に進んでいるのはやはり、奈良田愛なのだ。
そんな彼女にしか出来ないことを、愛ちゃんは知らぬまま成し遂げていく。
『私を歌舞伎につれてって』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
そんなロマンティックな言葉が、さらさがかつて見た夢に、そこに自分がいない事実に向き合う勇気を与える。
『なれると良いね』
おばあちゃんの優しさは、呪いと伝統を壊す魔法には、なってくれなかったとしても。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第7話より引用) pic.twitter.com/cgi7EHlNkt
ずっと笑顔だった、それに救われてきた親友が静かに流す涙に、何がこもるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
愛ちゃんには判らない。それでも未来を祈り、共に進んでいく。
そういう運命的ポジションなのに、二人のへんてこな旅立ちを奇妙に見守る立場でもあって、面白い子だよ、本当に。
愛ちゃんと一緒に助六を見たことで、さらさはずっとわだかまっていた花道への未練に、ようやく止血が出来たのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
役者としてあの時の後悔を糧に、前に進み続けていた自分の立ち姿が、人生の薬になってくれると己を信じたから、暁也もチケットを手渡したのだろう。
そんな風につながる二人は、彼氏彼女というにはあまりに業が強く、また爽やかでもあって、彼女たちだけの空気をしっかりまとっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
恋ともいい切れず、痛みを共有する共犯者であり、離れて同じ道を進む同志でもある。
やっぱ、この二人の関係性は良いな…コクがある。
そういう入り込めない領域があることを間近に感じつつ、憧れ続けてきた”オトモダチ”の形だけではない、自分達だけの友情を手探りしてる愛ちゃんも、大変可愛かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
どっか型通り収まらず、不格好で必死なところが、愛ちゃん友情修行の可愛いところだ。
『オトモダチってこういうもの! 人付き合いってこんな感じ!』と力んで形をなぞり、時折失敗しては率直に居住まいを正し、自分なりの言葉と手付きでより善い振る舞いを探り当てていく歩みは、何処か守破離の香りもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
みんな形から入って、それぞれの個性に削り、付け足していくのだ。
この夏の帰郷が、幼年期のトラウマ克服だけでも、甘酸っぱい男女の距離測定だけでも終わらず、役者としてさらさがぶち当たった壁を、同じく役者である暁也の導きで壊していく”芸”の話なのが、僕はとても好きです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
それは厳しく、あまりにも眩しい場所。切り裂かれながら、同じく目指す舞台。
そして愛ちゃんも、さらさという星の背中を追いながら、舞台に立つ自分を探していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月16日
沢山の輝きが触れ合いながら転がっていく、人生の不思議な面白さ。
傷を越えて立ち上がる、人の強さ。
それが色濃く出た、良い夏景色でした。次回も楽しみ!