※訂正
画像引用の一部が”7話”となっていますが、全て”8話”からの引用です。訂正させていただきます。
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
ニコルは断っていた見合いを、家の為と引き受け始める。
秘めた恋心と、揺れる想い。
物静かな青年はある日、聡明な少女に出逢い道を示される。
花を求めて迷う蝶の、行き着く先は何処なのか？
そんな感じの、ニコル＆生徒会一年’sのお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
大変良かった。
花と蝶をライトモチーフに、恋に未来に揺れる青春期の華やぎと不安定が、見事に演出されていた。
意図を込めたレイアウトがキャラクターの心境を上手く画面に焼き付け、画面を満たす花がゴージャスな空気を連れてくる。
貴族社会を舞台にした乙女ゲーの、リッチで美麗な空気を最大限活かしつつ、ちょっと世間離れしたニコルが自分を、家族を、世界を見つけていくナイーブな歩みが丁寧に切り取られ、青春物語としての切れ味も素晴らしかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
フレイと出逢ってから画面に満ちる花が、ニコルの未来、彼女の未来を輝かす。
二人は婚礼には至らないが、尊敬できる他者に出会い、彼女を鏡に自分の道を定めたニコルの未来は、華やかに美しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
『こうであろう』と思いこんでいた世界に穴が開いて、一番身近な父母のロマンスに、カタリナとの可能性を知りもする。
そんな一青年の決意と変化が、鮮烈美麗に刻まれたエピソードだ。
というわけで今回は、Aパートラストで迷い閉じていた（と確認される）蕾が、Bパートラストで見事に咲き誇るまでの物語である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
道ならぬ恋、貴族の責務。
ニコルの心は自分ならざるものに縛られ、開花を妨げられている
（乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X 第7話より引用） pic.twitter.com/AjhHxOrQVA
宰相の息子として、アスカルト家を婚礼経済によって維持していく責務を果たす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
そこに自分の心は必要ないし、ということは相手の思いも踏みにじるということ。
義務として見合い…その先に在る結婚と生殖を捕える、フレイと出会う前のニコルの世界は暗い。
フレイト出会い語らうことで、ニコルは自分が何を望むのか、世界はどんな形なのかを再確認して、責務から己を開放する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
開花した心にようやく蝶が止まり、命の蜜を吸い上げる。
それまでは、蝶は止まるべき…活きるべき花を見つけられない。その名の通り、蝶は命にして魂たるプシュケーの象徴である。
序盤の見合いが、魔性の美貌に圧倒されたり、高度に儀礼化された表面だけをなぞって、ニコルにも相手にも心に届かない、形だけのものになっているのは印象的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
表面だけをなぞるその儀礼は、ニコルの心を変えないし、相手にニコルの真実を見せもしない。
Aパートの段階出、画面真ん中を縦に割る境界線を越えて、ニコルに接近できるのは妹のソフィアだけである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
思い込み、興味の無さ、義務。
冷たいものが、心が近づくのを避けていく。
（乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X 第7話より引用） pic.twitter.com/et4qlIUzqF
本来目の前に在るものを遠ざけ、思い込みの檻に閉ざす構造はニコルだけに伸びるわけではなく、ジンジャーにも延長している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
ツンツン棘を出して自分を守る彼女が、実は優しくカタリナLOVEである事実を、カタリナ当人は（いつものように）率直に認識し、素直に語っている。
しかしデカい椅子の背もたれに自分を遠ざけて、ジンジャーはカタリナを…自分が彼女を好きな気持を遠くに置いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
そんな彼女のアダプターであり、親友の率直な物言いに自分を変えたフレイを通じて、彼女の壁も壊されていくことになる。
それは、ニコルとの見合いのあとになる。
顔やアスカルト家の地位、固定した身分制度だけを見る相手は、開放された庭園まで進めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
窓の外には、花瓶に閉じ込められた命ではなく、馥郁たる多様が咲き誇っているのに、女達はそこまで進めないし、ニコルも導かれ世界の豊かさを知ることは出来ない。
導かれなければどうなるかと言えば、自分を塞ぐ壁に視界を曇らし、良くない結末へ落ちていくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
奪って、捨てて、消えてしまおうか。
戯れに破滅を語る時、ニコルの瞳は窓枠で隠され、非人間的な印象、哀しい予感が画面を満たす。
それは、回避されなければいけないフラグである。
魔法省は、高位貴族が入らないことが通例になっている。平民の聖域が存在を許される、ある程度貴族制度の屋台骨が揺らいでいる世界に、この物語は展開している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
血縁と婚礼でギチギチに縛って、身分を固定する時代は揺らぎつつ在るのだ。
しかしニコルは、そんな趨勢を素直には見ていない。
賢くぼんやりとした彼は世界の現状、自分の思いに何処か遠く、フィルターをかけてしまう性質が在る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
ありのまま妹を愛する自分を、カタリナに見つけてもらえたから恋をしたのに、賢いからこそ社会通念の外郭だけを見て、なんとなくそれに応じて流される自分は、消えずに顔を出し続ける。
貴族とは、早く婚礼して、愛もなく家を繋ぎ続けるもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
無形の囁きを自分に引き寄せてしまうほど、ニコルは敏い。
愛らしい妹、優しい両親。彼らに秘められた奔放にこそ答えがあったのに、間近なものほど見えない。
そんな壁が窓枠となって、彼の人生を惑わす。
こんな現状…蕾でしかなく、自由な魂が宿らない花がニコルの私室に咲いていることを確認するのがAパートであり、フレイとの出会い、語らい、歩みによって開かせ命の息吹（プシュケ）を宿らせるのが、Bパートとなる
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
（乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X 第8話より引用） pic.twitter.com/4HDnS7eM5q
最初はこれまで通り、花を間に距離を隔てて密室で始まる見合いだが、その成就を求めぬと率直に切り出すフレイの聡明さにより、壁は壊れて外へと広がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
庭園は広く、華やぎに満ちて美しい。
過剰なまでの花、花、花。まさに圧巻の美術である。素晴らしい…。
花に埋もれて青春の主役がかすれるかと言えば、けしてそんな事は無く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
生徒会という縁を通じて、ニコルを取り巻く人間関係、閉ざしたはずの思いをフレイはよく理解し、言葉にして差し出していく。
その時、二人の間に壁はない。ニコルも目の前の少女がどんな顔をしているか、よく解っている。
それはつまり、自分が何を求めているか、どう生きたいのかをフレイに引き出し、反射してもらっている状態だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
花は壁から鏡となり、幾重にも青年たちを照らす。
貴族社会の規範に飲み込まれず、自由に望むまま生きたい。花婿ではなく、友を隣に社会に進んでいく未来をこそ、己に引き寄せたい。
そう語るフレイの勇姿は、かつてカタリナがそうしてくれたように、ニコルの扉を開けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
カタリナに出逢っていなければ、この見合いを切っ掛けに夫婦になっていたかなとも思うが、カタリナだけを運命と思いつめなければ、ニコルの扉は開いておらず、二人が花の中語らうこともなかったんだよなぁ…
とまれ、恋以外にも男女の…人間の間に幸福はあるし、なりたい自分を教えてくれる敬愛の対象と出会えることは、幸せで生き生きしたことである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
語らいが進むほどに、世界は水に満ち、蝶が迷う。命の瑞々しさが、画面を華やかに照らしていく。
印象派調の生の讃歌が、力強くアニメートされていて良い。
ニコルは本来他人をしっかり見据え、周囲に流されず愛せる人だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
怪物と罵る無形の声に流されず、妹を愛し、同じく愛し守ってくれる父母を敬する自分。
それを見つけてくれたからこそ、運命の恋に落ちた。
それは必ず諦めなければいけないものでも、捨てなければいけないものでもない。
凄まじい聡明さで、カタリナ・サークルの外側から複雑な恋愛事情を推察しきったフレイのアドバイスを受けて、ニコルは原点に戻る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
恋を秘めて、不自由に揺らめきつつも、自分を活かす輝きに素直に進む。
（乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X 第8話より引用） pic.twitter.com/Y1gZ3PRSLK
さんざん華やかに、貴族の庭園を飾るに相応しい園芸品種の繚乱を逍遥した末に、蝶が止まるのは飾らぬ野の花である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
蒲公英が土まみれ、ありのままの自分で居続ける…その善良が数多の蝶の心を養っている、カタリナの象徴であることは言うまでもない。
そこにこそニコルの蜜はあって、答えは既に出ていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
しかし賢いからこそ迷うニコルには、運命を定められない浮遊こそが…それを導いてくれる、賢いフレイとの出会いこそが必要であった。
帰る場所は同じであるが、しかし見つけたものを抱え、帰ってきた自分は別人へと成長している。
『行きて帰りし物語』という、最もベーシックで強い物語類型をしっかり踏みしめつつ、賢く迷う蝶の旅路は終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
それはニコルに自分を教えるだけでなく、諭していたフレイにもまた、率直でありたい自分、そうしたいと思える特別を反射していく。
二人の見合いがニコルにだけ道を教えるのではなく、フレイにとっても実りのあるものだったと描く意味でも、ジンジャーの描写は大事であったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
暗い影、思い込みの闇から連れ出してくれる、かけがえのない友。
（乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X 第8話より引用） pic.twitter.com/gpMfpyz3gs
おそらくフレイもまた、ジンジャーの飾らぬ率直によって勇気づけられ、今の自分になったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
それが今度は当人に反射して、自分の気持ちに素直になれない、ありのままのカタリナを見れない陰りから、ジンジャーを開放していく。
手を引くのは、お互い様だ。
未来に迷う二人の蝶もまた、自分が宿るべき花を見つけて旅立っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
それは蒲公英ではなく、しかし同じく野の花。
深い闇、黄金の日差しを抜けて、薄紫の美しい夕焼けに友情を輝かせる二人の少女は、とても美しい。
ジンジャーとフレイの答えは、カタリナではない。
彼女たちは一期には登場せず、ゲーム内部に規定されていたプロトコルを、規格外の転生者にぶち壊され、狂わされる立場にはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
あくまで生徒会という窓を通じて、外部からサークルを観察し、勝手に遠ざけたり、聡明に真実を見抜いたりする立場だ。
しかしそこで生まれたものが豊かに溢れ出して、窓越しのエールとして、あるいは見合いに垣間見たニコルの思いとして、自分たちだけの答えにたどり着く少女たちの背中を押す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
そういう形で、主役の凄みを描けるのは、なかなか豊かな物語だと思う。
かくして道を見つけたニコルは、ロマンス小説大好きな妹の領域であり、智慧の象徴でもある図書館で答えを確認する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
道ならぬ略奪によって生まれた、愛の精髄としての自分。
（乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X 第8話より引用） pic.twitter.com/r7MzpyymuD
自分の可能性は愛する家族の中にこそあったのに、それに気付けなかった。賢さを適切に使えなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
自分の強みを活かせなかった形だが、フレイと出会い世界を満たす花と命を知った後は、より賢く、より広く見据えることが出来るだろう。
そしてその中心には、いつでも一人の少女がある。
遠景を大胆に生かした構図が印象的な今回だが、要所要所で挟み込まれるクローズアップも大変優れていて、キャラクターの心を見事に伝えてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
自分が何を求め、未来に何が待つか。
迷えばこそ原点に戻れたニコルの表情が、一話の旅路が青年に何を与えたか、よく語っている。
アウトラインだけをなぞれば、”カタリナぞっこんLOVE”っつー作品の既定路線に戻ってきただけなんだが、そこに至るまでの繊細な迷い、導きを得た後の世界の美しさが、ただの徒労ではないことを豊かに語っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
見えなくなった原点から、はみ出し落ちていく可能性。破滅のフラグ。
それをほのかに匂わせつつ、カタリナではない誰かの手を取って、カタリナの元へ戻っていくニコルの瞳は、迷う前よりも遥かに深く、頼もしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
人格が育まれる時必要な旅路を、花と蝶と水に満たして、大変豊かに咲き誇らせたエピソードでした。凄く良かった。
貴族社会の華やぎを最大限活かしつつ、そのゴージャスさをニコル主演のジュブナイルにしっかりハメ込み、彼に関わるフレイやジンジャーの未来を豊かに描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
カタリナを青春の引力源として遠ざけつつ、その影響を鮮烈に見せて、主役の揺るがない存在感もしっかり届く。
張り巡らされた演出意図、豊かな画材に流されることなく、何を描くかをしっかり見据えた、見事な短編でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
良い話数貰ったなぁニコル…ラブコメ一直線ではなく、一人間として迷って見つけて、色んな人と出逢える豊かさが元気なのが、大変に良い。
やっぱ根っこはジュブナイルっしょ、このアニメ！
ぶっちゃけ生徒会後輩組はぽっと出もぽっと出なんだが、この話数の仕上がりが良すぎて一気に、存在感を確立したまである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月20日
これを足がかりに、今後顔を出した時もただのモブではなく、自分の人生を背負う人間として見れるのは、大変ありがたい。
そういう意味でも、良いエピソードだった。次回も楽しみ
