小林さんちのメイドラゴンSを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
かつて神と呼ばれた竜、エルマ。
今はブラックな待遇を改善するために走り回り、キャンプの引率でウッカリをしでかす、スイーツ大好き小市民である。
損な彼女が異世界に置き去りにした、心残りがメラリと燃える。
ぶつかる拳に乗せるのは、一体どんな想いなのか?
そんな感じの、三十分エルマ一本勝負なメイドラS第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
”ある”と信じて4話を待ち、遂にやってきた巨大感情の大津波。
『”素直になれないまま抱え込んだ強すぎる思いの炸裂”は実在する!!!(ド ン!)』って感じだよ。尾田栄一郎作画だよ。https://t.co/mF8mQ1ZSFE
超絶バトル作画に乗っけて思いの嵐が吹き荒れる第3エピがとにかく印象的だが、会社員として悪戦苦闘するトホホな第1エピ、子供らを引率しつつも自分が一番天然な第2エピと、今のエルマが色んな顔を持ってて、どれも魅力的と解らせてくれる構成がとても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
第1エピでは第8話で書いた、翔太くんちの家庭環境がちょっと影を伸ばしたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
あるいは第5話で濃厚に描いたトールとエルマの過去が第3エピで炸裂したり。
主演を取り替えてオムニバスを編んできたここまでの物語から、一人の主役が色んな物語に挑むことで、話数を越えた連動も見えた。
緩く日常エピソードを束ねているように見えて、話数ごとに共通するテーマ性、作品全体を貫通する視点、変遷するキャラクターと相互の呼応をカッチリ仕上げて、お話に芯を入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
そういう生真面目さが、よく出た話数でもあった。
布石が活きて話に奥行きが出ると、1クールアニメを見てる実感が湧くね
というわけで第1エピソードは、竜人の労務環境闘争。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
コレ自体もワーワー走り回るエルマが可愛くて面白いが、人間に無理なく混じって過ごす日常を書くことで、第3エピでの”炸裂(エクスプロード)”がより効く寸法よ…。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第9話より引用) pic.twitter.com/9B3tevjEtM
専務の得体のしれない感じを、日よけ越しの異様なライティングで演出したり、トールとの仲良く喧嘩する間柄をさり気なく描写したり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
なにより、時折異能を悪用しつつ徹底的に優秀に、会社員をやってるエルマの勇姿が眩しい。
商店街を歩くトールと同じく、エルマも尖った自分を折り曲げて、人に交じる
その努力が、かつて怠惰で傲慢な神だった(からこそ、トールに愛想を尽かされた)エルマを変えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
そんな彼女だからこそ、トールもときに当てこすりつつ、仲良く過ごせているのだと思う。
不変に思えるファンタジー生物も、結構より善く変わっていけるものなのだ。
まーその行末が、ヨダレとナミダダダ漏れな限定スイーツ争奪戦ってのが、なかなかトホホであるけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
そこもひっくるめて、必死で可愛いやつである。
ここではギャグになってる生真面目が、第3エピで分厚い感情を叩きつける起爆剤になるのも、多様な見せ方で良い。
そして第2エピソードは、楽しいキャンプの引率。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
選りすぐりスイーツを前にニコニコまんじゅう顔を披露していただき、まんじゅう顔愛好家としては大変ありがたい限りだが、ここにも第3エピへの導火線が、ひっそり引いてある。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第9話より引用) pic.twitter.com/Lgtsp0OPUp
トールに信頼されていると知った時の、ギャグテイストを絞ったシリアスな瞳の描写。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
京アニ特有の、眼球の盛り上がりをしっかり作画する”眼”の強さに、エルマがトールに寄せる感情の分厚さ、脳に巣食ったコンプレックスが色濃く見える。
このアマ…性悪ドラゴンのことばっか考えてやがるッ!!
トール→エルマは結構ドライというか、自分なり決着を付けていい具合の関係に整えているのだが、エルマ→トールはこんがらがった思いが喧しい外見の奥で、複雑に渦を巻いて非対称だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
トールは今のエルマを見下してなどいないが、エルマ自身はトールが自分をバカにしてる幻影に囚われている。
いちいち意識してごにゃごにゃアタマを悩ませてるのに、アイツは外に出て人間と公平に暮らしなどしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
自分の脳を専有するほどのデカさで、トールは果たして私を思っているのか。
朗らかなキャンプコメディの合間に、情感の摩擦熱は静かに高まってくる。キテル…。
翔太くんがサラッと魔術師してる姿、それをアンノウンマンの才川が中二病だと勘違いする描写が、また良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
邪視避けに龍脈感知、睡眠呪文。
スゲー地味な魔法を丁寧に使う魔術師の書き方、ドラゴン超常バトルとはまた違った興奮がある。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第9話より引用) pic.twitter.com/osDwCuDGGo
テンパったエルマが正体を晒す大ピンチは、第6話とも連続性を感じて良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
メインキャラで唯一、魔法も竜も知らない存在として、才川はカンナちゃんと接していくんだなー、という感慨がある。
そして亜音速のお花プレゼントで、まーたズブズブ度が深まっていくぜ…。
エルマを主役に据える以上スイーツ好きは外せない要素だが、甘い花をキャンプの思い出に備えることで、カンナ達だけの”Sweet”な体験が上手くまとまるのも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
そこで花を”食べ”ちゃう、ドラゴン由来の異形感もグッと来るしね。
ここまでは食いしん坊でお調子者、ドタバタ楽しく可愛いエルマが描かれたわけだが、それだけが彼女の全てではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
彼女にとってどんだけ、甘味がデカい存在か見せた上で、ファフくんとの対話ではパフェが手つかずのまま溶ける。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第9話より引用) pic.twitter.com/nyDTLHln8U
会社員として待遇改善に走り回る姿も、スイーツに頬を落とす表情も、キャンプでの気さくな顔も、エルマの”今”だ。かけがえのないものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
でもそれと同じくらい大きく、異形の龍であること、トールと異世界を駆け回った過去も、彼女を構築している。
だだっ広い戦場で、エフェクトバリバリ緩急自在、ブレス攻撃から至近距離の組手まで作画が暴れ倒すバトルも、エルマを作る”今”なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
それをぶつけなければ、解けない結び目が心の中にある。
楽しい日々を、もっと楽しく過ごすためにも、それを解かないといけない。
結果作画オタク垂涎のハイスピードバトルが、バキバキ作画で展開することになる。ありがたい…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
高速展開するバトルの中で、時折トールが人形解除して”竜”として攻撃してんの、エルマが油断ならない強敵だと伝えてきて良い演出だな、と思う。
人を装ってても、異形は異形。そこが前提なのだ。
グイグイと迫りくる本気に、”小林さんちのメイドラゴン”はブリムを外し、髪を解く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
かつて共に旅をしていた時代に、ちょっとずつ近づいていく。
攻撃とともに叩きつけらえる本音には、ファフくん好みの呪詛よりも、もう少し熱いものが宿っている
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第9話より引用) pic.twitter.com/e9A7i7YIXc
人間の目のあるところで、人間を装って仲良く喧嘩している時は、けして表面に出せない力と本性…そして本音。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
自分を置き去りに人に馴染み、変わっていくトールの姿に蘇る、唐突な別れの記憶。
あの時蔑され別れたまま、私達は何も変わっていないのではないか。
それとも確かに、お前も私も変わったのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
力を真正面からぶつけ合い、人の皮をギリギリまで削ぎ落とす(そして、小林さんが見守る中で残す)中で、見えてくる願い。
襟首をつかみ合う至近距離で、強く炸裂する思い。トルエルは…”ある”!
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第9話より引用) pic.twitter.com/cIvZesicLv
混沌と秩序に陣営分けされ、生き方を固定されていた時代には別れることしか出来なかった二人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
あの頃は龍の体を晒して殺し合っていたわけだが、今回その片鱗は見せつつも、あくまで二人はヒトの形を保ち続ける。
立場を越え、埋め込まれた生き様を越えて、お互い大事だと思えるモノを共有する。
エルマが同僚として、ヒトの良さを教えてくれた特別な存在として、トールの運命である小林さんを好いているのが、またこの二人の複雑なところであるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
小林さんを『トールを変えたやつ』と妬めるなら、もうちょい素直な形に収まってた感じもあるが、まぁ人徳がデカすぎたね…。
第5話の回想ではけして伝えられなかった思いが、世界と時間を越えてここで、ヒトの形を取ったがゆえに伝わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
一度別れた道は既に繋がっていて、でもすべてを伝え切れはしなくて、殴り合うからこそ言えることも、超常の暴竜達にはある。
それも全部吐き出して、受け止めて、新しく進む。
その歩みをヒトは見守り、寄り添う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
武器であり神の象徴でもあった三叉槍の一辺が折れ、夕焼けの大地に突き刺さっているのは印象的である。
エルマはトールをここに連れてくる事で、ようやく座ってるだけの神様を止めれたのだ。
(画像は"小林さんちのメイドラゴンS"第9話より引用) pic.twitter.com/2ENc9x5dNb
人の営みに混じらず、その上澄みだけを甘く掬う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
超越者の力が何を生み出し、何を奪うか考えもせず、神としてふんぞり返る。
そしていざとなれば、地形を変える暴威を振り回して物事を解決する。
かつてトールが背中を向けたもの、人の世界にあってなおエルマの胸に巣食っていたもの。
それは殴り合いと話し合いが入り交じる普通の空間で、自分たちを変えてくれた特別な人間に見守られつつも、介入を受けることなく無事に収まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
あるいは小林さんがここにいる事実が、それだけで彼女たちをヒトの形に収めて、新たな一歩を進ませるのかもしれない。
かくしてみんなで笑い合って、勝負は引き分け。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
ヒトの形をしたドラゴン達の日々は、今日も続いていく。
決着をエルマから言い出し、自発的に全部吐き出せる状況を整えてトールに挑んだ自発性が、とても良かったと思う。
彼女は過去に、自分に、流されるのではなく意識して決着を付けたかったのだ。
それはスイーツ食べてチョロゴンしてるだけではけして消えない、シリアスなわだかまりだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
自分だけが気にしていて、でもしっかり言葉になって伝えあってはいない、不均衡な思い。
それを拳とブレスで均して、もう一度始めるために必要だったもの。
トールがそれを、対等に差し出したのも良かった。
そう思える素地が育ったのは、第1第2エピソードに描かれた”人間”として過ごす日々あってこそ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
色んなエルマが一つの存在として、複雑にそしてシンプルにまとまっている現状が、しっかりと語られるエピソードでした。
彼女を鏡に、トールの複雑な顔を確認できたのも良かった。
今までキャラを入れ替えて横幅を見せてきた三連作の形式が、エルマ主役を貫くことで縦の複雑さ…それをまとめる一貫性を生み出してて、今までと少し違う味で面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
メイドラSが選んだ”かたち”は、こういう事もできるんだなー、と教えてもらった…というか。
この流れを引き継いで、次回はカンナちゃんの夏休み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
僕は彼女がとても好きなので、主役として太い話が来るのは嬉しいです。まーた良い作画と演出で、溢れんばかりの児童力が踊るのだろう…楽しみだ。
舞台が海外ってことで、それを生かした絵作りにも期待。次回も楽しみですね!