白い砂のアクアトープを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
新造される水族館からの研修生・知夢を前に、頑なな態度を崩さないくくる。
不穏な空気が漂う中、”伝説の飼育員”おじいはペースを崩さぬまま、泰然と状況を見守る。
間を取り次ごうとする風花にも、捨てたはずの過去から便りが届き…。
そんな感じの、がまがま少々荒れ模様、外部からの視線が色んなものを浮き彫りにするアクアトープ第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
くくるの幼い頑なさ、地縁血縁を大事にするがまがまの強味と弱味、ビジネスとしての水族館…。
外様である知夢を触媒に、今まで描けなかった部分にグイと踏み込むエピソードになった。
なにしろ風花は折れ曲がった人生をくくるとがまがまに救われ、抱きしめられた身内の立場。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
彼女の目を通すと、寝泊まりもメシも海咲野家に厄介になって、そこで展開される価値観を肯定し、自分に引き受けるスタンスがどうしても表に立つ。
しかし、それだけが全てでは当然ない。
がまがまのノンキな地域密着身内主義に染まらない知夢はイヤーな女に見える(し、そうなるように描いてる)けども、あくまで”仕事”として研修を受け、実は激戦区である水族館職員の職責を果たそうとする彼女には、がまがまにいてはなかなか見えない”理”がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
それは都会の道理、経済の道理であり、世の中を動かすメインストリームともいえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
これとうまく泳げなかった結果、古臭い水族館は瀬戸際に追い込まれているわけだが、別に時流が悪いわけではない。
おじいはあくまで地に根付き、海への興味を広げる門として、自分の水族館を運営してきた。
綺羅びやかにショーアップされ、高度に効率化された商売ではなく、命を学び地域に根づくコミュニティとしての在り方は、ある種の必然として滅びつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
自身の老い、娘夫婦を奪い去った運命と同じように、そんな苦味を飲み干せる…少なくとも泰然を装える深い懐が、老人にはある。
しかし今まさにがまがまに抱かれ、思いの外脆く幼い自我を抱え込んでるくくるは、滅びを必然とは飲み込めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
時流を背負ってやってくる都会モンはみんな敵と、腕組み角出しのキツい態度で応対する。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第9話より引用) pic.twitter.com/ZfTQXnB7T9
今回のくくるは腕組みする場面が、非常に多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
それは他人との間に境界線を引き、自分の内側に入れない態度をメッセージとして出す…と同時に、心臓の前で組んだ腕を防壁にして、自分を守るスタンスだ。
本来の自分よりも、見た目を大きくしたい虚栄の姿勢でもある。
くくるは年上で都会モンで他人の知夢に、最初っから警戒姿勢で挑む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
相手を試し、上を取り、敵対姿勢を隠さない。
それは自分の大事な場所を殺す時流と、彼女個人を重ねて見ているからだ。
くくるの眼には、知夢個人ではなく都会の光が、それが奪っていくかけがえないものが見えている。
それが果たして幻像なのか、実態なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
おばあの指摘する通り、なんも知らないのに思い込みでイメージを作り上げ、他人も自分も支配されてしまっているくくるの現状が、今回解かれない腕組みとともに描かれていく。
それは家族的な温もりの裏側、暖かな洞窟の闇だ。
自分たちと同じ価値観を共有する身内には甘く、異質な他者はアタマから排除する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
家、地域…オールドスクールな共同体の醸し出すヤダ味は、例えば第1話、風花が想像し逃げ出した故郷の風景にも通じている。
もし故郷に戻っていたら、実際気の進まない酒宴に駆り出され、傷をほじくり返されていたのか
なんも理解ってくれないと、勝手なイメージを押し付けられていた絵里さんは、実際海咲野家の敷居をまたいでみれば、娘の顔をよく見、他者を尊重できる立派な人だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
もし故郷がベトついた地縁を押し付けてきても、それが嫌だと伝えれば、ちゃんと守ってくれる母だったろう。
風花を沖縄に押し流した思い込み、そこに宿る土着的・家族敵なものへの偏見は、海咲野家とがまがま水族館で過ごす日々の中で、ゆっくりと解けつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
だから携帯に届いた過去も、戸惑いつつ受け止め、家の外で向き合うことになる。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第9話より引用) pic.twitter.com/vfhwww0lEz
これはくくると手を繋いで乗り越えていくものではなく、縁に支えられつつも風花が一人で向き合うべき問題のようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
答えられないメールを受けて影に沈む時も、それを開けて向き合う時も、風花はあくまで一人である。
しかし、隣り合ったおばあの『取らないの?』抜きで、過去に向き合えたのか。
おばあは穏やかな態度を崩さないが、実態を見ないまま虚像に怯え、だからこそ過剰に攻撃的になる若人のこわばりを、静かに切り崩していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
怯え逃げ出す…あるいは不当に殴りつける陰の奥に何があるのか知れば、もっと楽しい景色が広がっている事を、人生経験豊富な先輩はもう知っている。
しかし踏み出した先にある景色はあくまで個人のものであり、闇に飛び込む勇気と尊厳もまた、たった一人の宝物だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
おばあが導くのは、あくまで決断の入り口までである。
優しさと尊厳の境界線を、老人はとても穏やかに、しっかりと見据えて動いている。賢者の振る舞いである。
そんな経験値のないくくるは、自己(の延長である家としての水族館)を護るべく、研修生に良くない態度を取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
つーか最悪である…『なんだこのガキ!』ってなるだろ、そりゃ。
おじいも孫の人生学習のために、他人様ダシにしちゃアカンわな。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第9話より引用) pic.twitter.com/SVvF2QC5P9
赤文字の”笑顔”が虚しいギスギス空気は、お魚大好きな率直さをブリッジに、一瞬緩みかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
しかしくくるは共通の話題、楽しさを自分の内側に蹴っ飛ばして、攻撃的な態度を継続して壁を作る。
アイツは都会の象徴、私の大事なものを殺す存在。
そうとしか見ないように、自分を誘導していく。
ケープペンギンはみんな素直に誘導に従い仲良しのに、それを保護する人間たちはギスギスと毒ガスを撒き散らす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
風花、お前の姿勢おもしれぇなぁ…。
あ、チョコちゃんの足が治って楽しそうにお散歩していたのは最高でした。命にはとにかく、健やかであって欲しい。
ペンギンさんカワイイねぇ…。
同じ屋根の下、膝を突き合わせて向き合う家族の食卓で、くくるはその幼さ、頑なさを優しく諭される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
敵も味方もねぇアクアリウム楽土論は圧倒的に正しいが、それを飲めるほどくくるは人間修行してねぇんだよなぁ…。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第9話より引用) pic.twitter.com/sEHwjR2MdP
というか、自分を守る存在と脅かす存在をくっきりさせないと、生きていけない崖っぷちにずっと立っていた、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
風花に”姉”を求めてる心情を預ける縁側は一見いいシーンだが、”家族”というラベルを貼らないと他者を許容できないくくるの危うさが、闇に透けてた感じもある。
土地に根付き、血に安らぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
古き共同体概念に守られて、父母不在の嵐を生き延びてきたくくるにとって、自分を守り安らがせてくれる存在は自分と親しい匂いがして欲しいし、しなければならない。
ビジネスの匂い、近代の香りを背負う知夢は、それだけで信用できない”身内以外”だ。
”私達”と”奴ら”に世界を二分しかねない危うさが、闇の中繋がれた手には確かに宿ってる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
ただ綺麗な星ではなく、そういうエゴと我執、頑なにすがらなければ壊れてしまう脆さが女と女の寝床に香っているのは、大変僕好みである。
やっぱクラいよなー海咲野くくる。そこがマジ好き。
あ、でもくくるがプライベートな事情と感情を風花に預けて、脆さを支えてもらえる距離感に踏み込んだのは、彼女の未来にとって良いことだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
こういう柔らかなものを預けれる特別さが、”身内”には確かにある。
その善さは壁を作って、頑なに”他人”を遠ざける姿勢と背中合わせなんよな…難しい
相手を敵と決めつける態度は、訂正のチャンスを与えられないまま知夢を遠ざけていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
伝説の飼育員の仕事ぶりを盗もうと、鵜の目鷹の目で追いかけても見えるのは、緩くて古いコミュニティ。
都会人でありビジネスパーソンでもある知夢は、そこから遠い
(画像は"白い砂のアクアトープ"第9話より引用) pic.twitter.com/2i9FUt99x7
うどんちゃんの届けた弁当を食べないこと、文明の利器に囲まれたホテルで寝泊まりすること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
知夢を取り巻く衣食住は、彼女が海咲野家(その延長線上にあるがまがま、地域社会)に馴染まない異物であることを、しっかりと語る。
それは馴染むまいとする頑なさ、学ぶものなしと決めつける傲慢の反射…
であると同時に、実際今まで描かれた風景が確かに持っている歪さを、外部から来た他者であるがゆえに確認できる”理”であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
狭い家庭や地域を離れてうねる、ビジネスの潮流。
あくまで”仕事”として水族館を動かす立場。
そこにも動物への熱意があり、果たしたい夢がある。
しかし知夢もくくるも、お互いの共通点ではなく差異ばかりをまず見て、相手を対話不可能な”敵”と捉えてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
そして最初に壁を突き立てたのは、間違いなくくくるである。
これが自分(の大事なもの)を守る防壁でもあるのが、また厄介なのだが…。
おじいは魚は見ていないかも知れないが、人はよく見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
常連の事情に踏み込み、人生の一部として自分の水族館が機能するよう、よく語りかけている。
それはビジネスとしては手間がかかりすぎ、土の匂いがしすぎる振る舞いなのだろう。
だから、知夢のセンサーには何も見ていないように写る。
老人や子供が安住できる居場所。交流のハブステーション。あるいは生命倫理を学ぶ入り口。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
水槽の中のスペクタクルを見せる以外の、水族館が果たすべきミッションをおじいは重視している。
たとえそれが滅ぶ道だとしても、資本主義経済を泳ぐ新たな水族館は、完全に無視しても良いのか。
くくるの自己防衛的対応が責められるのであれば、知夢の怜悧に過ぎる視線もまた、何かを取りこぼしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
それが混じり合わないまま別れていくのか、お互いの実像を率直に見れるように為るのか。
壁を外し、新たなものを内側に取り入れていく強さを、少女たちは手に入れられるのか。
そこら辺が今後の課題…の前に、まーハードコアにぶつかり合うわけよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
水族館飼育員というビジネスがどれだけシビアか、語る知夢の言葉は重い。
視聴者としても、壁の高さ、門の狭さは知れてよかった。がまがまのナァナァ主義だけだと、見えない部分ね
(画像は"白い砂のアクアトープ"第9話より引用) pic.twitter.com/2ew3eprkIw
ここで知夢はくくるがどんだけ彼女なり、水族館存続のための銭稼ぎに奮戦しているかを見落としている…というか、見ようとしていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
お互い何を抱え込んでいるか、斟酌しない心の狭さ。
風花はそこからちょっとはみ出して、なんだかんだ魚を見てる顧客の表情を、しっかり焼き付ける。
そしてくくるは知夢の”理”に、な~んも言えなかった苛立ちを櫂くんにぶつけるのであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
ずーっとくくるの危うさ、幼さを見守って、情動の爆発を体を張って受け止めてやる。
上から目線の正しさは一切持ち出さず、ただただ幼馴染の幸福に寄り添って、自分を差し出す純粋さ。
『やっぱ俺、この少年好きだな!』となる櫂くんであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
このワガママで無茶苦茶な自分は、風花相手には出せないんだよなくくる。おじい相手にすら、多分出せない。
唯一櫂くんだけに、いい子でも大人でもない自分を預けれる意味と価値を、この小娘理解っておるのか。ジジイは心配です…。
知夢が日差しの中見下ろすがまがまが妙に小さく、くくるが眩い反映の闇に見上げる水族館は大きい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
それがそれぞれ風景に馴染まない異物だからこその景色なのか、真実の一部を切り取っているのか。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第9話より引用) pic.twitter.com/0lITwbG1Pd
みすぼらしく滅びゆく、時代遅れのコミュニティ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
貪欲に全てを飲み込み、大事なものを踏みにじる闇の怪物。
二人が見つめる風景には、時流の変化と経済の拡大という、個人の視線を越えたものが確かに反射している。
夜闇に美しい夜景を成り立たせるモノが、今がまがまを殺そうとしている…のか?
それを確かめるためにも、くくるは風花から離れてたった一人、異郷に対峙することを選んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
自分を守り敵を遠ざける壁から出る選択肢は、くくる(を通して僕ら)に新しいものを見せるだろう。
そこに確かにあるはずの”理”と情熱を、くくるは虚心に受け止めれるか。何を学び、何を変えるか。
同じ風景を共有しながら、知夢は『客は魚を見てない』と感じ、風花は『やっぱり見てる』と受け止めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
見るものの立場、瞳の開け方によって景色から受け取るもの、そこから生まれるものは変わってくる。
あっかんべーで尻を向けた、古臭い地域コミュニティから知夢もまた、何かを貰って欲しい。
そう思う回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
頑ななのはお互い様なんだが、最低限の礼儀の外形だけは整えれる知夢と、最初っから敵愾心剥き出しで腕組みしてるくくるで、成熟度の差があったと思う。
年齢に伴う経験値と世界認識のグラデーションは、このアニメ相当大事に描いてるよなー…。
田舎の良さも、都会の洒脱も両方知ってる風花が、昔の便りを受けてどう立ち回るか…がまがまで育んだものを活かすかも、大変気になるところです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月2日
三者三様青春模様、さてはてどう転がるか。次回も楽しみです。