Sonny Boyを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
頂を目指す旅の中で、長良と瑞穂はヤマビコの過去を訊く。
語られるのは、既に終わり果てた物語。
戦争が連れてきた病と、果たされなかった旅立ちの話。
いつでもそこにあって、でもけして見ることができなかった、帰ることのないこだまの思い出だ。
そんな感じの、斎藤圭一郎センス爆裂、ヤマビコ過去回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
寓話であり、心のあり方を巡る物語であり、人から犬へと変わり停止を続けた一人の少年の後悔の神話でもある、非常に不思議なエピソードだった。
様々な領域に響き渡り、その谺は馥郁と豊かである。
この作品自体が特異な環境を通じてシンプルな真理を掘り下げる構造を持っているが、今回は特に寓意性が高く、具象を追いつつもその奥にあるもの、別の表象と響き合うものを探る手付きが、強く問われるように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
なので、今回はあえて自分なりの読みを全面に出して、思い込みを吐き出していく。
それが製作上の事実であったり、作品の真実であるかどうかは、僕には判り得ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
ただ届けられた哀しくて美しい24分のお話を受け取って、何を感じ何を思ったかに関しては、己の責任で焼き付けることが出来る。
それをしたくて、やるべきだと感じて、僕は感想を書いている。ので、それをする。
物語は希を伴わない長良たちの旅路(現在)と、ヤマビコが既に終えてしまった一つの物語(過去)を交錯させながら進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
旅路は険しく、仲間たちはいい雰囲気で、自分の足で前に進んでいく。焚き火の炎が、闇の中に温かい。
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/PfAFMs6T8d
長良くんは相変わらずナイーブに言葉少なく、しかし旅の中で感じ取ったものをしっかりノートに取りながら、歩みを進めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
彼らは停止することなく、前に進んでいく。
前回旅立った仲間たちが、それぞれの空をそうしているように。遠く離れながら、旅路は呼応している。
輪郭線を大胆に飛ばした厚塗りの回想で、ヤマビコは安住を得ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
そこは希望がある場所、動かなくても良い最終地点…のはずだった。
あるいは長い放浪の果てにそう願って、立ち現れた心の残響(エコー)が、大きな木を中心とした穏やかで平和な世界を作り上げる。
ヤマビコ少年はそれを観測する。
ヤマビコとこだま。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
少年と少女が運命的に補い合う、よく似たペアなのはそのネーミングから推測可能だ。
英語で言えばecho。
元々はギリシャ神話のニムフであり、ナルキソスに焦がれて報われず、声だけが虚しく残響することになった悲恋の少女である。
あるいは狂神ファウヌスに恋慕され、それを拒絶した結果バラバラに引き裂かれ、大地に収納されて反響だけが残った歌姫か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
どちらにしても、こだまとヤマビコには虚しい反響のイメージが付きまとう。
それは理想像を相手に差し出し、承諾だけを繰り返す自己反射/自己増幅の関係性だ。
生命を自在に操るこだまに神を見たクラスメイトたちは、彼女の行いを批判することも正すことも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
外から流れ着いた異物であり、実は楽土の創造主でもあるヤマビコだけが彼女の異質な鏡となり、よりよい前進に寄り添うことが出来るのに、彼は名前の通り停止し続け、残響だけを返す。
そこにはエコーを消滅させたナルキソスの自己愛(narcissism)が、じっとりと反射している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
川面に反射した自分に見入って、餓死するほどの自己陶酔は、的確な自省にはなりえない。
自分がどのような存在であるか的確に把握し、永遠の反射から抜け出し前に進むためには、自分の死角を照らす他者がいる
こだまならぬヤマビコは、ヤマビコならぬこだまをその瞳に反射し、ありのままの姿を切り取ることが出来たはずだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
腫瘍に侵された君は醜い。
その先に続く『でも』も含め、ヤマビコは自分たちを傷つけ、真実を切開する言葉を返せたはずだ。
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/BDLekWW7bq
しかしそこで彼は目に映るものではなく、そこにあって欲しいモノ…確かにあったはずの美しい夢を捉えて、こだまに差し出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
忠実、愚直、率直。
犬の特質が人間の在り方を凌駕した時、その身体は犬そのものへと変身していく。
変貌。傷痕から腫瘍を吹き立たせ、人をモノに変えてしまう病。
エコーとナルキッソスの物語が、オウディティスの”変身物語”に記載されていることを思い出しながら、僕はヤマビコが犬になった瞬間を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
彼は対等に人に向き合う真実の鏡ではなく、求められ求めるものを返すヤマビコであることを選んだ。
それが真実、こだまの望むものではなくとも。
そうして四足に変身したことが何を奪ったかは、こだま臨終の瞬間に最も残酷に、鮮烈に描かれることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
真実を見据える眼。対等に進む足。言うべきことを伝える口。握手できる手。
長良くん達が幸運に、幸福に維持できたヒトの形を、ヤマビコは維持できなかった。
手遅れに己の物語を終えて、後悔まみれの賢者として同行するヤマビコは、しかし愛らしく賢い旅の友である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
険しい峰を共に越えて、労苦を焚き火に癒やす。津田健次郎の静謐な演技が、5000年前の哀しみすら遠く霞んで、しかしずっと痛むヤマビコの存在感を際立たす
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/i7HMq62Vtl
哀しく眉を下げた犬が炎の奥に見るのは、火傷めいて痛む思い出だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
パチパチと爆ぜる炎が、もう遠くなってしまった…しかし消えはしない記憶に、薪を付き足す。
他の漂流者と同じく、ヤマビコも望まず世界に投げ出され、放浪を続けていた。
共同体に馴染まず、死体を踏んで先に進む。
これが”戦争”の足跡であり、彼は結末よりも先に、彼がもたらすものを知っていたことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
だが適切な対処を取ることが出来ぬまま、彼が持ち込む病と死によって、安住の地を滅ぼされることになる。
自分の足で進むヒトならば、それを追い出せたのだろうか?
それは結末から折返しで始端を見る、さかしまの目線である。一種のインチキだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
全ては終わってしまっていて、取り返しはつかない。
現在進行系で道を探り、進む長良くん達の物語とは違う場所に立つからこそ、ヤマビコは教室で泣く少年に『まだ間に合う』と語りかけたのだろう。
自分の物語はあまりに愚かしく、哀しく終わってしまったから、数多の神話が積み重なるこの永遠の牢獄、最新の物語は良い結末にたどり着いて欲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
優しい犬は、そんな事を考えている…のだろう。
彼の希は、虚しいこだま。
手を取り一緒に先に進めたはずなのに、立ち止まってしまったもう一つの物語
それが水の中からの救命、闇からの覚醒、光との出会い…儀式化された羊水からの再出産として始まるのは、非常に示唆的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
どこにも居場所がないと自分を追い詰め、”戦争”の生み出す死を巡りながら彷徨っていたヤマビコは、ようやく光を見出した。
その安住は旅路の果てにたどり着く外部のように見えて、彼自身が観測≒創造した内面世界だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
自分の内側にこそ救いはあって、そこで出会えたものと一緒に心の外に出ることこそ、死と病を越えて救われていく唯一の道だったのに、ヤマビコは終わるまでそれに気づかない。
その終わり果てた愚かさはしかし、悪しざまを演じる少年が、どれだけ孤独な放浪に疲れ果てていたかを思わせ、とても悲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
観ることは創ること、答えはいつでも心の中に。
長良くんが主人公として背負う異能=テーマが、ヤマビコと重なっている事が、寂寥をより強くする。
他でもないヤマビコを供に連れて、彼のこだまを連れて物語の結末へ走っていく主人公と同じものを持ちながら、ヤマビコの物語は既に終わってしまっているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
だからこそ、少年を導き、自分と同じ過ちを侵させない”大人”の立ち位置を、賢く優しい犬は果たすことが出来る。
それは物語構造的にも、少年たちの運命としても必要なことで、しかしそれでも”もし”を考えざるを得ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
それはヤマビコがたどり着いた世界、そこにいる少女がとても、安らいで魅力的に描けているからd牢。
望むなら、これが永遠であって欲しかった。
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/DevUZILMB3
数多の可能性を観測し、世界を自在に操る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
死を生に、昼を夜に転換しうる特別な存在。
こだまはその能力からして、長良くんのエコーとしても描かれている。
長良くんがやりたいと心の底で願いつつ果たせない、傷ついた鳥の救済も初手で成し遂げている。
こだまは鳥となり、また水から/自ら淵から這い上がる魚となって、ヤマビコを翻弄する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
胡散臭いと遠ざけていた異能と救済に惹かれ、両膝を追ってその恵みを受取る少年はしかし、鳥でも魚でもない。
未来そうなるように、犬である。
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/1XexDFoLPY
しかし塩っぱすぎるスープに、目の前に差し出された救済を延々反射したくなるような安らぎがあることを、湖に垂れる一滴が凄まじい説得力で教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
孤独と苦しみに拗ねていたヤマビコは、ずっと泣きたかった。誰かの手から、糧を得たかったのだ。
こだまは、その全てを与える。
”また、彼らが食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福して後、これを裂き、弟子たちに与えて言われた。「取って食べなさい。これはわたしのからだです” マタイ26:26
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
こだまを描く時に、幾重にも重ねられる救世主のイメージ。パンを差し出し、傷を癒やすもの。
しかし彼女は閉ざされた世界から出、真実を告げてくれるパートナーを選らないまま、戦争と死と疫病に支配され、死んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
そのことで、彼女は偽救世主になってしまう。
”戦争”がもたらす物語の結末は、非常に黙示録的であると言える。
ならばその前景が、使徒行伝の様相を呈するのは必然だろう。
犬のような盲信は、救済者を救い得ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
世界の中心に立ち、全てを自在に操るものこそ最も人間的で、苦悩し救いを求めている。
終わった地点から見返せば、そんな含意も見て取れるが、物語の只中、強い幸福に膝を折るモノに、それは見えない。あるいは、見ようとはしない。
今目の前に広がる終端があくまで、自分の心の延長線に過ぎず、こだまを全肯定する盲信はその実、自分を守り愛するナルシシズムに過ぎないと、気付けなかった弱さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
それを責める気には、全くならない。
当のヤマビコ自身が、残響し続ける後悔に打たれ続けていると、よく判るからだ。つれー…。
動き出せないほどに、己のこだまと過ごす楽土の晩秋は美しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
しかしその永遠は、蔓延する疫病によって破綻していく。
君は醜い。
ヤマビコが返せなかった真実を告げる、”戦争”が世界樹のウロから立ち上がってくる。
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/CNghBGnBnF
後に示される世界の構造からして、世界樹は燃え落ちたもう一つの世界に繋がりうる門であり、それ故に禁忌でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
数多広がるたくさんの世界を、越えて旅し、殺してバッジを貰う殺戮の旅人。
彼はヤマビコと同じく、この世界の異物である。
しかしその権能は正反対で、ヤマビコが肯定を返すところで否定を反射し、世界と一体化し立ち止まるところで破滅へ突き進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
しかしそれは、本来ヤマビコが果たしうる(果たすべきだったか否かの判断は、とても難しい)機能の反射でもあろう。
腫瘍に侵されない彼が、しっかり告げるべきだったもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
この世界(だけ)の中心に立ち、自在に操れるこだまの真なる鏡となって、あるがままの真実から旅立つ機転。
終わりを告げ、新たに共に始める可能性。
これらを、第6話で長良くんとクラスメートは既に果たしている。
残酷な真実に行きあい、学校を”卒業”して巣立つ正解を、エコーならざる彼らは既に掴んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
それを描いた後だからこそ、間違い果てて終わりきってるヤマビコの物語は、長良くん達のあり得た未来として、センチメントな気配をまとってスックと立つ。
永遠に残響するヤマビコの後悔を背負うことで、長良くんがここまで歩み、ここから進んでいく
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
物語は、数多の”主人公になり得なかった者たち”の無念と祈りを、内包していくことになる。
今まさに、青春の只中をかけていく存在…Sonny Boyの物語は、おそらく輝かしく終わるだろう。
でも世界にはそうなれなかった大人たち…かつて少年であり、Sonny Boyになり得たかもしれない存在がたくさんいて、皆似通った旅路を進んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
行き先は違い、というか片方の旅は終わっている。
しかし終わっていればこそ、祈りを託して同行し、先行して導くことも出来よう。
そしてそんな風に、ヤマビコが自分の足で旅が出来るのも、本来旅立つだった場所に立ち竦み、とても大事なものを虚しく見送るしかなかった経験が、痛みと刻まれていればこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
『まだ間に合う』と少年に告げれるのは、間に合わなかったらどうなるか知っているからだ。つれーぜマジ…。
救い主の権能は、疫病と死によって奪い去られ、全てを救い受け入れるはずのこだまは戦争を拒絶する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
命はモノに変わり、手に載せられた死の証をこだまは拒絶する。
”戦争”は静謐な永遠に終わりを齎す。それが、彼の在り方だ。
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/LcwPFMfBk3
”戦争”は望んで死を世界にばらまいているのか、それともそういう風に生きるしかない存在なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
良かれと思って差し出した自分の存在証明が、他人にとっては悍ましい死のトロフィーにしかなりえない。
そんなズレが、エコーが帰ってこない他者との対話には必ず存在しうる。
それを是正しうる可能性がこだまに…その隣りにいて、世界の主でもあるヤマビコにもあったはずなのだが、犬は飼い主の主があるまで、動きはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
世界の住人が救世主を拒む時も、”戦争”をこだまが拒む時も、ヤマビコはただ座して状況を見続ける。それが、犬になったものの定めだ。
病によって世界が滅び、自分のエコーと安住していたこだまが死ぬことで、ヤマビコは自分の飼い主がほかならぬ己でしかないことを、思い知らされていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
リードを引いてくれる存在が自分以外にいないなら、世界に漕ぎ出す一歩目は自分で踏み出すしかない。
でもその手綱を、彼はこだまに預けた。
ヤマビコの手綱はこだまをこの世界に…万有の救世主、動けない主人公として縛り付ける鎖でもあり、それを解す権利もまた、ヤマビコにしかなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
しかしそれは、安らかな永遠に覆い隠されて見えない。
そこに微睡んだことが彼(ら)の罪だとは、どうしても僕には、思えないのだ。
遊佐浩二の声も印象的な”戦争”は、世界に迷う者たちを数多殺す”悪”として、今後も登場すると思う。使い捨てにしちゃ、キャラが良すぎる…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
彼自身、こだまに想いを寄せ、救いを求めていたのだろうか?
”シザーハンズ”のエドワードのように、死の腕は触れるものを傷つけ、殺すことしか出来ないのか?
ヤマビコとこだまの物語を終わらせた”戦争”の物語が、どう終わるのか…そもそもどういうモノなのかも、とても気になる所である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
そしてそれが見えてくるのは、既に終わってしまったヤマビコの回想の中では当然ない。
現在進行系で道を探す、長良くんの物語においてであろう。
思いの証と差し出したものが、どうにも周囲とズレて誤解され、あるいは拒絶される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
”戦争”の在り方もまたどこか長良くんの生き方と重なってて、彼とこだまの接触と拒絶も、あり得たかもしれない未来なのだろうなぁ、と思ってしまう。
出てくる奴ら、みんな哀しいよ今回…終わった話だからな。
全てが終わり果てた聖堂の中で、聖堂は世界と心の真実を告げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
美しい永遠の足下には、燃え落ちた破滅が逆さまに存在していて、いつでもそこに旅立てた。
異物である彼はそこから入り、世界に滅びをもたらしたが…
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/KhlxgWSY2j
たどり着いた客人に見えて世界の主でもあったヤマビコは、こだまを隣に連れて(こだまが望むままに)そこから旅立つことも出来た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
しかしそうしなかった結果、死と疫病と戦争の黙示が吹き荒れて、何もかもを救いうるはずのこだまの力は、可能性を閉じ込め殺すものになってしまった。
こだまもまたエコーとして、誰かの欲望を反射する存在だ。(欲と谺、同じたにへんなのは皮肉な合致である)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
ヤマビコが静止した永遠を、己の心を突破しない未来を望んだからこそ、それを反射し続けた。
望まれた救世主を演じ、それは墓だらけの結末に終わる
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/dTG9uuE8Od
救済を与え、命を吹き込んだからこそ、腫瘍に侵され墓に沈んでいく鳥。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
それがこの世界にたどり着いてしまったヤマビコの似姿であり、彼の残響に囚われたこだまの鏡であることは、間違いない。
結局、彼らは飛べなかった。救われればこそ、縛られ終わったのだ。つれー…。
愛が死にゆく瞬間にすら、犬(であることを選んでしまったヒト)は人に並び立てない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
伏せて、愛する人の遺骸が世界樹へと…長良くんと出会う燃え盛る森へと繋がる門に変わるのを、見つめ続けるしかない。
立ち止まること、残響し続けることを選んだヤマビコの終着点は、この墓場なのだ。
終わって、取り残されて、なお続く物語の中で、ヤマビコは新たな朝焼けを観る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
美しい伽藍で子供たちとともに眠り、今まさに道の只中にいる主人公に、強く優しく…無限の哀しみを響かせながら隣り合う。
その在り方が、寂しく綺麗だ。
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/bImBncqWBu
犬に成り果ててしまったその手は、もうこだまと指切りできない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
死を超えてたどり着く”いつか”への希望…哀しみを癒やすまやかしすら、ヤマビコはその手に掴めないのだ。
とても寂しい成れ果てである。
誰かのエコーでないこと、道を探すたった一人でなかった報いとして、正しくも苛烈だ。
”戦争”の連れてきた死の果てで、ようやくこだまはヤマビコの願いを反射するのではなく、外へ共に出ていきたいという己の願いを言葉にできたのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
何もかも手遅れで、”いつか”を夢見ることすら許されない終わり。
もう、谺は帰らない。果てのない虚空を、ヤマビコは行くしかないのだ。
自分には何も差し出せないと、自虐することで安定しようとしたヤマビコに、こだまは旅路の物語を望んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
それが荒廃と死に満ちて、孤独で寂しい物語であったとしても、ヤマビコが実際にそこを歩き、彼がそこにいたと言うだけで、語るに足りる意味はあったのだろう。
そんな”外”の物語を道糸に、お互いの望みを反射するのではなく、別の言葉で対話して進む道が、報われ正しい結末だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
だがエコーでありナルキッソスでもあった彼らの終わりは、あくまで虚しき残響にしかない。
それは終わった物語。もう、間に合わない物語なのだ。
その先にあるものへ、自分の心を飛び出した先へ、5000年の年月、けして戻らない愛の終わりを背負って、ヤマビコは出た。焼け果てた絶望の中で、新たに出逢ったのだ。己の残響以外に
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
叶わぬ未来への指切りではなく、旅の友への信頼を込めて、肩を並べて手を取り合う
(画像は"Sonny Boy"第8話より引用) pic.twitter.com/rri31pEmxr
それは、終わり果てた後になお続く物語だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
長良くんはけして、ヤマビコの代理にも、こだまの代わりにもならないだろう。
静止した残響と、”卒業”から始まる旅は個別の物語だ。
でも、確かに響き合っている。繋がっている。
だから、この旅が主人公たる長良くんだけでなく…
その同行たる優しく寂しいヤマビコにとっても、救いであって欲しいなと願う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
旅を終えて、一行は希と再開する。
(ここが、ヤマビコがあの終着点に流れ着いたのと同じ水辺であることには注目したい。
旅の終わりと旅の始まりは、繋がりつつ別の場所なのだ)
(ついでに言っておくと、ナルキッソスが自分を反射し、一歩も動けないまま餓死したのも水辺である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
そこは物語が始まり命が生まれる場所であり、生死を分かつ境界線であり、死を超えて物語がまた始まる場所でもあるのだ。
そういう意味では、ヤマビコはケルベロスでもあるのかな)
二週間もズレていた二人の主観は、ヤマビコの過去を共有する長い旅路を経て、しっかりと調整される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
それがズレていることを認めた上で、旅に出なかったものを同じ地平へと引っ張り上げる行いは、もはや残響ではない。
相手との違い、希の在り方をちゃんと見据えて、自分の世界を告げる勇気。
それが、今の長良くんにはあるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
彼らに道を指し示す”コンパス”は、もう見えない。
それでも、時に旅路を違えながら、もう一度出会い直して先に進んでいく。
闇の中に輝く焚き火の側で、ヤマビコから受け取った物語を共有し、一緒にマショマロを食べれる。
”戦争”の目指す神殺しを、長良くんは疑う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
それでなにかが変わるのか、と。
その問いかけに、希は視線を向けている。
長良くんがおぼろげに掴みかけているものは、自死の真実を突きつけられて揺らいだ少女の新たな”コンパス”として、確かに輝いている。
それは、残響でも反射でもない。
そういう事を新たに確認する、とても綺麗で哀しい物語でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
いやね…ヤマビコの犬仕草、ニャマゾン三匹の猫仕草が大変いいとか、そういう話もしたいよそりゃ…焚き火の側で、ヤマビコを撫でる瑞希は2億兆点で”萌え”だよそりゃ。
相変わらずあざてーなーあの女…ホント大好き。
しかしなぁ…かつて主人公として己の心に分け入り、そこに見つけた救済に安住せず、こだまを個別の希を持った他者として共に進めたはずのヤマビコが、そう出来ぬまま終わり果てていく過去の物語が、あまりに強く長良くん達の”本筋”を反射して、切なく瞳を焼いたわけよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
このように鮮烈に、『あり得たかもしれない一つの結末』を描かれると、そこに行き着かぬであろう長良くん達の運命力、そうならぬよう祈りながら同行するヤマビコの切なさも、また特別な切れ味で浮かび上がってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
長良くん達の物語は、とても特別で特異な、彼らだけの青春だ。
同時にそうなり得なかった数多の主人公たちの、終わってなお残響する祈りを引き受けて、挑む復讐戦でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
そういう奥行きがあって初めて生まれる、とても豊かなエコーに満ちたお話でした。
こだまの清廉な存在感、そこから溢れる人の息吹が、エピソードをしっかり支えていました。良いヒロインだ…
今回ヤマビコの物語を、旅を共にしながら受け取ったこと…沢山の後悔に引きずられながらも未来を目指す歩みに手を添えてもらったことで、長良くんの物語はより強く、前に進めると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月3日
そうしてくれる優しい犬のありがたさを噛み締めつつ、次回を待つ。間違いなく、傑作でした。