Sonny Boyを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
二年間の漂流を終えて、流れ着いた世界はあまりに現実的だ。
氷雨降りしきる色のない世界は、冒険を忘れて何も変わらない。
それを覚悟して戻ってきても、押し寄せる灰色が、積み重なる現実が、思い出を奪っていく。
それでも、あの旅を忘れていないのなら。
それでも、まだ輝くなら
そんな感じの旅路の終わり、Sonny Boy最終回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
しみじみと、いいアニメであった。
哲学的傑作とか、雰囲気系の極北とか、人によって色んな受け止め方や賛辞があるのだろうけども、僕は何よりも、いいアニメだと思って見終えた。
傷ついた鳥に優しく出来なかった少年が、一歩を踏み出す。
奇想天外疾風怒濤の大冒険を経て、手に入れたのはそれだけである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
思索空間は永遠に静止を続け、コピーからオリジナルになる奇跡を果たした少年はしかし、自分以外の何も変えられない。
自分自身ですら摩擦係数に擦り切れて、決意も夢も色を失って現実に飲み込まれていく。
いわば最強最後の”この世界”として、時が流れ割れたガラスが戻りはしない、当たり前の場所に戻ってきた/進んだ長良くんと瑞穂は、しかし観測し決断した数多の世界、数多の冒険を時折思い出しながら、少しだけ長い明日に迷いながら前を向いて、進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
あんだけハチャメチャで訳のわからない冒険を経て、ひどく閉塞した…とも取れる結末に辿り着いたのは、世の少年少女全てと、かつて少年少女だった全ての存在が普遍的に体験する青春の蹉跌を、このお話が取り扱っていた証拠だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
ごくごく当たり前で、だから何度でも語るべき物語。
ひどく真っ当なジュブナイルを、自分だけの映像言語で、命を宿し作品世界を自分の足で駆け抜けるキャラクターたちで、しっかり語ること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
作品を見始めた時願っていたことが、最後までしっかりとかなってくれて、僕はとても嬉しかった。
夢の中での冒険は、自分以外の何をも変え得ない。
それでもコンパスは永遠に回り続けて、長良くんはほんの少しだけ変わった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
家を出て、バイト先で罵倒されながら、退屈で在り来たりで巨大な波に流されながら、前に進んでいく。
世界で唯一、長良青年の人生の物語を観測し、選択し、決断できる存在として。
このアニメは、行きてる実感のない青年が、自身を主人公として確立するまでの物語とも言えるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
謎は多く、冒険の舞台は遠くに霞み、触れ合った人たちはみな離れていった結末だが、そのシンプルで確かな実感は、”少年少女”のアカペラが鳴り響くスタッフロールに強く強く、宿っている。
それが良い
というわけで、最終話の感想を書いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
元々、何ともなりうるフィクションを『こうである』と確定していく作業が苦手かつ嫌いで、”考察”やら”読解”やらを、あまりしないタチではあるのだが。
この作品をわかり易い形に切り分けず、感じたものをその場その場で刻みつける読み方が出来たのは良かった
前回最高のED入りで、世界脱出の高揚を宇宙空間に拡げた物語は、徹底して現実的な風景を叩きつけてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
あの訳が解らなくて、圧倒的で、広大で、想像力の奔流に満ち溢れた世界とは違った、固くつまらない質感が眼球を、強く叩く。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/Deb3w2pVvE
そこにある色彩は携帯電話の中にある南の島、あるいは瑞穂が持つライムグリーンの傘だけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
色のあせた場所に帰還した長良くんの隣を、悲惨な伝説に死したはずの少女が、犬にならない青年とじゃれ合いながら通り過ぎていく。
それは幸福で、今までの冒険とは無関係な断片だ。
長良くんが”この世界”で感じた生の実感、記憶、決意は、覚悟していたとおり彼の内側にしか無い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
それは何もかもがそこから始まり、思念を実行に移さなければ何も代わり得ない場所…灰白質の想像力の中にしか宿っていない。
想いはひどく孤独で、無力で、強いはずなのに勝手に発火はしない。
後に明らかにされるように、長良くんが瑞穂の傘に託した色彩は嘘ではなく、彼女もまた何もかもが時に押し流されて死にゆく場所で、確かにあった記憶と決意を抱え込みながら生きていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
確かにあった、二年間の漂流。
イマジネーションの渦を泳いで、帰還したロビンソンとフライディ。
長良くんはなぜ、瑞穂に声をかけて、ためらい諦めてしまったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
相変わらずナイーブで寡黙な彼は己を語らないけど、自分を知らない風の拒絶が決定的に真実だと確かめてしまえば、本当に孤独なのだと追い込まれてしまうのを、怖がったのかもしれない。
確かに、それはとても怖いだろう。
頑張って。勇気を出して。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
一歩を踏み出せば、そこから全てが変わっていくよ。
題目ではなんとでも言えるが、卑小な生身はそれが事実と分かっていても、かつてそれをロケットに積んで世界の果てを超えたとしても、躊躇いに震える。
それが、人間の当たり前なのだろう。
物語は長良くんを取り巻く灰色と、その真ん中で佇む少年を切り取り続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
糧を得るための労働に潤いはなく、運命を切り替えて救ったはずの少女は別人に思えて、ひな鳥の悲鳴を遠く聞きながら、どうするべきか判らない。
打ち捨てられた、ロビンソン・クルーソー
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/eYADdHb6aw
”この世界”では希を失った朝風が、ラブラブ青春日記してるのを喜べば良いのか、嘲れば良いのか、見守れば良いのか、大変複雑な感覚である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
この甘い泥のような食感は、希と視線をあわせつつも逸してしまった長良くんのそれと、複雑な共鳴をしていると思う。
何しろ12話、極めて奇妙な冒険と実直な成長…その果てにある離別に付き合ってきた身としては、目の前の”現実”にはどうも、馴染めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
希はやっぱりあの崖で死んで、目の前で生きて微笑む少女は、その喪失と遺物の写像のように感じられる。
コピーとオリジナル、想像と現実の反転現象。
しかし唯一絶対の現実として残酷に時間が流れ、選び取られた真実が関係を断ち切る灰色の世界は、そんなメランコリーを弾き飛ばしながら、当たり前に進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
そこに実感を持てない、長良くんの視線。
最終回はじっくりと、それを刻みつけていく。
傷ついた鳥を目の前にして、一体何をするのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
これは物語の最初からずっと、中心的な問いかけとして投げかけられていた。
それを何らかの象徴として読み下すスタンスを、僕はこのお話には取っていない。
非常に素直に愚直に、描かれたまま食うし、食えた。
長良くんは傷ついた鳥を大事にしたい人で、しかし出来ないからこそ、為すべきためらわず為せる希に惹かれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
”この世界”での冒険は、瑞穂の大事な猫を、傷を抱えた弱くて優しい長良くん自身を、シャツの奥に守って生きれる可能性を、彼に開いてくれた。
でも思弁、可能性、あるいは想像力の中の決断は、間断なく時が過ぎていく現実のソリッドな質感に削り取られ、威力を失っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
夢の中では完璧に、『よしやるぞ!』と心を決められたものが、いざとなると怯えて竦むのは悲しいかな、当たり前によくある話。
それは怯懦ではないと思う。そういうものだ
希と話すこと。鳥を助けること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
オリジナルとして学校を一人卒業し、孤独に踵を返したときには出来なかった決断を、微睡みから醒めた長良くんは果たして、選びうるのか。
その答えは、話の最後まで保留される。
それまでは視聴者と一緒に、ここまでの物語が本当だったか、狭間で悩むことになる。
現実的に考えれば、起こるはずもない奇妙奇天烈摩訶不思議な冒険。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
その証は未だ、くるくると行方を定めず回り続けている。
灰色の世界にたどり着いてなお、思い出される原色のイマジネーション。
宇宙にも、世界の果てにもたどり着けた旅路。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/2oRsM9hmaR
希の能力遺物を、安定を確保するジャイロとしても活用しながら、長良くんは手際よく、己と瑞穂を結ぶ。離れぬよう、信頼を預けて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
方位磁針、あるいは無重力で動くマグネットと、遺品の可能性がむしろ希が去った後に開花しているのは、その喪失が無に落ちていない証明に思えて、泣けてしょうがない。
ロープワークはサバイバルの真骨頂であり、紐を扱う手付きの確かさに、ここまで12話の歩みが無ではなかったフィジカルな感触を、確かに覚えたりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
たとえ、あるいは確実に、全てが目覚めの朝露と消えていくとしても、そしてだからこそ。
確かに子供たちは、一歩を己の意志で踏み出す。
希の彼氏に絶対になれない、全てを失った朝風は最後の最後、二人に追いつく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
良かったな、と思った。
あの悲しい手紙で別れていくのではなく、奇妙に捻れた世界を走って走って、走り抜けていく友達の背中に、最後の風を送れる位置に、彼は自分を押し出せたのだ。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/lpDPWsWoCt
あき先生もいなくなったと聞いて『あのアマッ!』という気持ちと、『やっぱりな…』という気持ちが同時に湧き上がって、大変困ったものだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
”骨折”が受け取った希最後の真実と、朝風が握っていた未練をそれぞれ贈り合って、長良くん達は最後の冒険を進んでいく。
ボイスの囁きも(明星がそれを振り払ったように)少年たちを止め得ず、彼らは学校から出ていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
『出れないとは、言わないんですね』
長良くんはその限界を、正しく見切っている。
出てはいけない。
観測者が夢から醒めれば、夢でしかない世界はすべて消え去っていくのだろうか?
しかし、確かに”それ”はあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
偉大なるモンキーベースボールも、コピーでしか無い真実を知った子供たちの卒業の決意も、数多の世界の放浪と悲劇も、優しい動物と森になった賢者も、友情も涙も死も、あったのだ。
無いものを、想像することしか出来ないものを、手触りを込めて届ける奇跡。
物語が持つ可能性も、この極めて難解で不定形に見えて、その芯に豊かな想像力と確かな…古臭いとすら言える物語性を宿したアニメーションは、己自身で語っていると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
色んなものを見れた。
絵画の中を走り抜けていく面白さ。
広大な自然、常理がひっくり返る爽快。
シュールで痛快な、映像の体験。
アニメーションだからこそ、夏目真悟という才覚が本気で挑んだからこそ見れた景色を、贅沢に呼吸し、体験し、そのただ中にいる仮想のキャラクターと心音を重ね得た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
そういう、とにかく絵がスゲェ物語としても、いいアニメだったなぁ、などと思い返す。
長良くんと瑞穂は共に手を繋ぎ、コンパスに導かれながら走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
それが夢の終わりを意味すると知りながら、知ればこそ鳥に背中を押されて走る。
白い鳥は、飛べなかった希の魂を宿しているのか。
夢に残り、永遠を探す友達も、そこにいるのか。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/dBSOI9K3Jx
かくして、長良くんは世界の果てを超えて帰還した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
夢の記憶は消えることなく、しかし確かな力となって何かを変えることもなく、誰かに共有されることもなく。
瞳を開けた世界は灰色に、色を失って重たく硬い。
それを待ち望んでいたはずなのに、知っていたはずなのに、とても辛い。
しかし第1話で顔を伏せるばかりだった少年が、旅路の終わりにあの表情が出来たということを、ずっと彼の顔色を気にしていた僕は寿ぎたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
ここに来て、(希がそうしていたように)真っ直ぐ現実と未来と自分を見据えるために、二年間の漂流はあったのだ。
長良くんも、そんな事はわかっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
あのお葬式をしてなお、ロビンソン計画を実行に移し、ラジダニの隣で泣いたのは彼自身なのだ。
それでも、空想は何も動かさない。
奇跡は訪れない。
『本当に?』と問い直す。
灰色の世界で、希は生きている。
長良くんが転写されたオリジナル世界では死んでいた少女は、コピーでしかない自負と体験を保って世界の壁を超えた少年の決断によって、生の可能性を掴み直せた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
それは誇るべき変化、驚くべき奇跡なのではないか。
でもそんなことはないと、当人から告げられたら?
”この”希が共に旅をし、おそらく恋をしていた少女と連続性を保たないのなら、奇跡に価値はないのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
『無い』と冷酷に告げる自分を追い出せないから、長良くんは一人灰色の世界に留まり、自分を前に押し出せないままとどまり続ける。
それなら、二年間の漂流は無意味だったのだろうか?
その答え合わせが、もう一人の漂流者視線で始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
瑞穂の世界も時が流れ、お婆ちゃんもとらも死んでいく。無傷の停滞は”現実”には許されていない。
それを覚悟で、ロケットの向こうに猫たちを置き去りにし、涙したはずなのに。
時の刻みは、ジクジクと痛い。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/mJlldqgjOt
瑞穂は去った時間と過ぎゆく現実のギャップを埋めるように、学校に滑り込み鍵を盗み、真夜中の冒険に挑む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
しかしすぐさま警察が駆けつけて、落としたガラスは元には戻らない。
あの二年間、想像力の只中では因果も生死も巻き戻った特別さは、もう瑞穂にはないのだ。
瑞穂を取り巻く夜の暗さ、不可逆な現実味に満ちた未解決の冒険は、彼女もまた燻る思いを二年間の漂流に宿していることを教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
あの時使えた魔法を、世界の全てに意味と決断があった充実を、取り戻したいと思うから鍵を盗み、扉を開けて秘密を知ろうとする。
でもそれは、ありふれた現実の1ページ。
当たり前に警邏が駆けつけて、当たり前に中断されて、当たり前に時間なんて巻き戻らない場所にいることを、思い知らされるだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
それは寂しいと同時に、妙に前向きな失敗で、ちょっと微笑んでしまった。
多分、瑞穂は思い知りたかったのだ。
夢から醒めて今、冷たい夜にいることを。
それでも、縁は繋がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
瑞穂が覚えてくれていることを知って、長良くんが震え背を向けた場所に踏み込んでくれて、僕も笑った。とても嬉しかった。
二年間の漂流は、そこに宿った物語は、確かにあったのだ。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/GefBIr04n5
灰色の長雨は未だ降り続くが、墓地でもある公園には緑の命が、”この世界”がそうであったように確かに美しく宿る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
瑞穂が語りかけてきてくれて、自分は孤独ではないと長良くんが顔を上げたことで、夢と現実の連続性を再獲得できた証明としての緑色。
そんな感じがする。
まだ憶えているのなら、大丈夫。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
そう言ってくれる人と出会えて、長良くんの世界は色を取り戻していく。
その中心にいるのは希だ。
苺の赤、街の灯り、友との笑い声。
希…としか思うことが出来ない存在は、確かに生きている。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/vzPwx2lI6P
コピーかオリジナルか、嘘か本当か確かめるよりも先に、その実感が色彩とともに押し寄せてきて、胸が暖かくなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
血の赤、火の赤、危うさの赤。
希は世界に、そういう色を取り戻していく。
静止していない”ここ”でも、共に旅をした”あそこ”でも、ずっとそうだった。
なら、彼女が希なのだろう。
画面が切り取るものは長良くんが作中認識するものでもあって、瑞穂の言葉を輸血されることで、灰色だった顔色に血色が戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
確かに、それはあった。
それを僕が、手放さない限り。
そう思えたから、彼は椅子を持ってツバメの巣に向き合う。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/yW02U4D5cE
かつて”現実”の中でオリジナルが果たせなかった行為が、希と長良くんをもう一度出会わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
かつて真っ直ぐな瞳で見つめながら、『君は出来るよ』と告げてくれた、誰かを助ける強さに手を伸ばす。
壁はまだ、超えられない。
希と長良くんの間には、幾重にも障壁が連なって、彼女の隣には朝風がいる。
でも見守るだけでは見届けられない笑みを、長良くんは掴めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
ツバメのヒナは引き受けられないし、『友達になろうよ』の言葉も、怖くて言葉には出来ない。
まだ、何も始まりはしない。
それでも思い出したのなら、必ず想いは現実を動かして、世界を変えていくだろう。
それを少年は、もう知ってる。
だから笑って入場口を抜けて、少しだけ長い人生へと踏み出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
それは桜の中で、踵を返して背中を向けたわけじゃない。
色んな輝きが確かに宿る、もう灰色ではない世界に新たに進むための一歩で、多分もう一度長良くんは戻ってくる。
(画像は"Sonny Boy"第12話より引用) pic.twitter.com/QCiWBhAamV
その時世界は灰色ではなくて、思い出は孤独ではなくて、現実の前に無力ではなくて、言い出せなかった言葉も、魔法のように喉から滑り出るだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
もう少しだけ長いと、希望を込めて微笑める時の流れの中で、長良くんは明日の自分に微笑む。
これが、この物語の結末である。
凄く、良い終わりだ。
色んな奇想、色んな色彩、色んなルールが支配する、奇想天外な多元世界漂流。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
能力の根源や、漂流の理由や、世界の成り立ちや行く末を置き去りに、一少年少女が面白くもねぇ当たり前の場所に戻ってきて、この話は終わる。
それは、描いてきたものが無意味であったことを意味しないと、僕は思う。
この結末を見届けた後に、想像するのは”あの世界”だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
誇り高きコピー達は長良くんの観測を離れた後も、旅路を超えて未来に進んでいるのだろうか。
心のあり方を反射する寓意的な現実の中で、陥穽に落ちたり、自分なりの答えを得たりしながら、それぞれの物語を紡いでいるのだろうか。
そう思いたくなる豊かさが、作品世界とキャラクターに確かにあって、非常に現実離れして奇妙な設定の中、凄く当たり前の苦しみと誇りを呼吸している連中のことを、思い返したくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
長良くんと瑞穂と希の旅に付き合いながら、確かに行きあって、その言葉を聞き、物語を見た人たち。
たとえ虚構であってもコピーであっても、確かにその幸福を隣人として祈りたくなる手触りが、作品全体を包んでいたから、今僕はそういう気持ちになっているのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
そうさせてくれるアニメは、とても良いアニメだろう。ありがたいことだなぁ、と思う。
これはロジカルな言葉でほとんど説明をしない作品なので、作中の描写から視聴者が独自に何かを受け取り、価値と定める工程がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
不親切であるし、視聴者の読解力、想像力、共感能力を信じた作りだとも言える。
このお話を掘り返して何を手に入れるかは、本当に十人十色、様々だと思う。
長良たちが想像力の世界に住むコピーであることが、あくまでフィクションの絵空事でしか無い作品のネガとして機能し、しかしその事実が彼らに…彼らの物語に寄せる共感、そこから受け取る感慨になんら、影を落とさない(この作品を見終わった僕の中での)事実。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
それを胸の内で転がすと、創作に出来ること、空疎な空想だけが成し遂げうるものの輪郭を、その広大さに気圧されながらスケッチできる気がして、なんだかありがたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
この大ぼら話を見て、それでもわたし達の物語だと思えるのなら、僕の中にあるなにか大事なものはまだ死んでいない、ということだ。
見終わってそう思えるのは、やはり広大に過ぎる奇想を一切手加減なし、本気の本気でぶん回しまくった気合の産物だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
”この世界”は極めて破天荒で、魅力的で、謎めいて、残酷で、美しかった。
長良くん達と一緒に、漂流し走り抜けたいと思える場所だった。
SF的…というよりももっとプリミティブな、原物語的想像力の奔流。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
キャラクターを動かすだけでなく、世界全てをうねらせ変容できるアニメーションの表現力を巨大なブースターに、様々な色彩で踊り狂った広範なイマジネーション。
具現化した夢、着想に溺れる快楽。
キャラクターが直面し当惑し、やがて向き合う奇妙さとのシンクロ率を上げつつ、ただ奇想に酔うだけではない、もう一つの足場を示すコンパス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
ひどく複雑で繊細な心を抱えた、どこにでもいる少年が様々、人に触れ合って一つの決断と、その先にあるさらなる迷いに微笑みながら、踏み込むまでの物語。
長良くんを主役にしたジュブナイルとしての鋭さが、やはりこの作品を手近に引き寄せる大きな助けであり、強く握りしめて自分の武器とするグリップであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
迷い、諦め、励まされ、選び取る。
希から託されたものを、真実を知って傷つく彼女に手渡し返す。
その一歩一歩がいじましくて、身につまされて、ずっと見守っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
青い鯨幕も鮮烈に、自分たちだけのやり方で感謝と悲しみを海に流した手作りのお葬式に、込められた”死”との対峙。
涙に暮れず進み出し、それでも蓋をした心から溢れ出すものを共に受け取ってもらって、飛び出した結末。
夢の国での冒険は何も変え得ず、しかし確かに世界は変わって、色のある場所へと微笑んで進み出せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
良かったな、長良くん。
そう思える最終回になったのは、ウジウジ悩み延々足踏みを続ける彼の弱さと、その奥にある輝きをひたすら信じてくれた友の強い眼差しが、ちゃんと描かれていたからだ。
もし未見の方がこの物語を見るのであれば、想像力の圧倒的な奔流、不親切なほど自由に投げかけられる無数の問いに押し流される前に、子供たちの顔をしっかり見てあげて欲しいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
そこに宿る悩みも、身勝手も、決意も、輝きも、灰色の時に押し流されている僕らに、何処か似ているから。
『人間が書けている』なんていう、実質何も言ってないジャーゴンを垂れ流すつもりはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
このアニメは滅茶苦茶ヘンテコで面白い場所を、スゲー体温のある子供たちが必死に駆け抜けた冒険譚で、凄く面白い。
訳の解らなさ、自分の読みが正しいか判らない不安感に翻弄されつつ、確かに見続けて良かった
そう思える…思わされる作品だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
人によって手に入れるものは違う。何かを読む行為は全てそうだけども、特にその傾向が強いだろう。
怪作、傑作、クソアニメ。
色んな評価が張り付いて然るべき、やりたい放題の物語である。その豊かさも、また良いなと思う。
僕の評価は…ここまで読んでいれば判るだろうけど、大傑作です。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
とても面白かったし、納得がいく運び方、終わり方だった。
第1話から長良くん個人にフォーカスし、彼がどうなっていくかを見ようと思った三ヶ月前の自分を、『偉いぞ』と褒めたい気持ちだ。
謎は残る。全ては説明されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
それは投げっぱなしというよりも、長良くん一人がどう人生に迷い苦しみ、何も出来ない何も変えられない自分にそれでも微笑む結末に向けて、広大極まる世界を異様な想像力で、それを具現する技芸の極みで描いた結果なのだと思う。
そうして拡げた物語の枠は、作品が描こうとしたものをどデカいキャンバスにしっかり塗り込んで、立派にやりきった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月6日
僕はそう思ったのだ。
そう思えるアニメを作り切るのはとても大変なことだし、偉大なことだとも思う。
良いアニメでした、ありがとう、お疲れ様。
間違いなく、ずっと好きです。