takt op.Destinyを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
D2襲来によって父と音楽を失った世界で、タクトは一人ピアノを引き続ける。
薄暗い地下室に押し入り、命の息吹を吹き込むコゼット。
ピアノのある情景に、積み重なる青き日々。
世界が音楽を取り戻した時、全てが終わり、始まる。
かくして、運命はこのように扉を叩く。
というわけで、第1話で示された現在に繋がる過去を描写する、運命と音楽の物語第2話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
匂わせていた部分をキッチリ拾う過去編であり、タクト少年が音楽と家族に抱く想い、少女コゼットの健気と悲愴が、甘く切なく胸を刺すエピソードとなった。
重たいもん背負ってんなぁ、隻腕のマエストロ…。
コゼットの溌剌とした健気が際立つ構成であったが、そうであるほど”運命”となってしまった現在の悲愴が思い起こされ、一体何であんな事になってしまったのか、先が知りたくもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
いつか来るだろう破滅に怯えつつも、確定している未来からは逃れられない。
しかし”運命”との旅がなかなか楽しく、哀しみを抱えつつ笑顔もある営みだということを、僕らは既に知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
悲哀と歓喜はお互いを追い越し、混ざり合いながらフーガとなって、過去から未来へと続いていく。
この起点からNYまで、続く長い旅路。
そこに心地よく広がる、始まりの物語でした。
というわけで時が巻き戻って、父を失った少年は暗い場所でピアノを引き続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
ピアノのある情景を固定観察しながら、タクトくんの変化、それを生み出す大事な存在を描いていく演出は、凄く良かった。
彼は常に、音とともにある主役だ。
(画像は"takt op.Destiny"第2話より引用) pic.twitter.com/6HcRsoTAZy
父が生きていた幼年期には開け放たれていた屋根は、鬱屈した青年期には閉ざされ、ゴミにまみれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
音楽だけが亡父との絆となり、夢の中だけでは共演できる残酷な世界。
音楽は世界を汚す毒として禁じられ、狭い地下室でしか弾くことを許されない世界。
そこに、タクトはいる。
放置すれば思い出と憂鬱に沈んでいってしまいそうな彼を、ちょっと強引に引っ張り上げるべく健気に頑張るのが、後に”運命”となる少女…コゼットである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
同じ外装であっても、第1話で見て腹ペコ人間兵器とは全く違う、眩い人間性に満ち溢れた少女。
ただただ音楽を引き続け、それで良いと自分を納得させている…ようで、それが誰かに響くものかを常に思い悩んでる、複雑な少年。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
彼が人間として活きる足場を整え、共に糧を頂く隣人は、大変健気で可愛らしい。
ブッチギリのヒロイン力で、あっという間に存在感を主張してくる。
黒シャツの裾がピロピロ出ちゃってるピアノバカが、ギリギリ生きていられる縁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
それはお節介な姉妹が美味しい食事を用意し、共に食べ…彼に通じる唯一の言語たる音楽を弾ける事にある。
D2によって破壊されたタクトの心は、音でしか開かない
(画像は"takt op.Destiny"第2話より引用) pic.twitter.com/8Vpzer4OBw
食事シーンでは心を開ききらない(が、一緒に食卓には座り同じ飯は食う。既に受け入れているし、甘えているし、頼ってもいる)タクトが、真実コゼットを視界に入れるのは彼女が”悲愴”を弾いてからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
しかしその音楽は、タクトとのコミュニケーションのためだけに存在はしていない。
コゼットもまた亡母の思い出を指先に乗せながら、”悲愴”を奏でる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
音楽は、主人公だけの特権ではないのだ。
絶望の現在と、かすかな希望の未来を繋ぐ、薔薇色の愛。
『オメータクト、気づけって…ゼロ距離で高まる体温にッ!!』って感じで、オッサンイライラしちゃったけども。
日常の裏に満ちていた、自分以外の音楽、自分以外の存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
コゼットとアンナの献身的な働きかけは、傷ついたピアニストをいつの間にか修復し、ようやくタクトはコゼットがピアノを弾いていることに気づく。
呆れつつ、アンナは聴衆なき音楽の脆さを問いかけ、常に隣りにいた少女の価値を尋ねる。
クライマックスで示されるように、世界は未だ残酷な悲愴に満ち、タクトが信じたかった真実の音楽は未だ、回復を許されていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
それでも音を聞き、響かせる中で繋がるもの…そうでなくとも生まれ育まれるものは、確かにここで息をしている。
楽器のある情景の中、積み重なっていくのはそういう営みだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
タクトは演奏家として、技術を超えて人を動かす資質が己の音に…己自身にあるのかを悩んでいる。
たった一人の聴衆として、彼を愛するものとして、コゼットはそれを保証し、信じる。
この地下室を出ても、タクトの音は響く。
そう信じればこそ、コゼットはグランドピアノを祝祭に持ち出し、より広い場所へとタクトを引っ張り出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
ゴミまみれの腐敗と停滞に引きずられる方向から、共に隣り合って光に進んでいく道行きへ。
どれだけ拒絶されても諦めず、健気に寄り添うアプローチに、タクトも踏み出していく。
未だ来ないタクトを引っ張り出そうとするアンナと、信じて待つコゼット。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
場繋ぎの”悲愴”が暗譜範囲を超えるより早く、少年は地下室から出て少女に寄り添う。
コゼットの演奏では前のめりになっていなかった聴衆が、タクトが弾いた途端熱を帯びる。
(画像は"takt op.Destiny"第2話より引用) pic.twitter.com/PA1etTkp6C
祭りにはふさわしくない”悲愴”を上書きするように、弾むスタンダードナンバーがピアノから奏でられ、人々を喜ばせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
”贅沢な毒”と世界から排除されたものに、一体何が出来るのか。
自分たちの指先が、混ざり合う音が、何を生み出すのか。
タクトはコゼットと連弾しながら、自分の可能性に触れていく
ここで聴衆が喜ぶ演目(コゼットと共に弾ける演目でもある)を選び取り、陽気なムードを舞台から広げられるタクトには、ただ技工を追い求め亡父の思い出を追う以上の、独立した演奏家としての力がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
その演奏は特別な感情を、聞くものにしっかり呼び覚ますのだ。
演奏を終え、目の前を埋め尽くす喝采と歓喜。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
それはタクトの指先が生み出したものだし、隣り合うコゼットが用意してくれたものでもある。
音楽というものが繋ぎ、重ね、豊かに響かせるものである。
死を超えて生に向かう意志を、絶望を希望に繋ぐ愛を、豊かに歌い上げられる、人類最古のメディア。
それは変わらず毒で、D2を引き寄せタクトの腕を引きちぎり、コゼットを殺す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
蹂躙は未だ終わらず、音は未だ戻らず、残酷は世界に満ち続けている。
『そらそーだわな…』という納得もありつつ、なかなか辛い展開であった。
(画像は"takt op.Destiny"第2話より引用) pic.twitter.com/mUK3SHcxmf
後に腹ペコ存在となる”運命”が覚醒の時、タクトの腕を噛みちぎっているのが、なんとも因果な描写であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
コゼットの死体に憑依し、再生(Reincarnation)させた超常存在は、現世に宿るにあたって依代と犠牲を求める。
何かに欠けて、何かに飢えて、けして満たされない不完全な存在。
そういうモノとして、かつてコゼットであったものは再誕する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
同時にそれは演奏家として必要な腕を、タクトに貸与する契約でもある。
愛する人の命を食らった残酷に、立ち向かう力。
音楽を奪われた世界に、それでも音を響かせる力。
それはコゼットの死体から、茨の棘とともに立ち上がる。
奪われて初めて、その意味を知る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
少女との柔らかな初恋も、人類の宝たるべき音楽も、D2は爆炎とともに壊していく。
コゼットの顔で兵器のように、敵の殲滅を求める”運命”と、同じ色に染まった憎悪の瞳。
かくして、闘争が始まる。
(画像は"takt op.Destiny"第2話より引用) pic.twitter.com/4Gz9Dn3EkU
そんな感じのヒーロー誕生秘話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
いやー…こんだけの愛と哀しみを過去に埋葬しつつ、”運命”を”運命”として共に戦ってるタクトくん、健気で偉いな…って思ったね。
お節介少女と連弾しながらトラウマ抜け出して、生きる喜びを爪弾く音楽の本来を取り戻して、人生こっからだ!
そう思った瞬間に、全部ぶっ壊されんだもんなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
軽妙な冗談を飛ばし、弾ける喜びに体を震わせ、復讐鬼にもならずに旅を続けれてるの、『タクトくん人格あるなぁ…』って感じよ、ホント。
運命ちゃんが可愛い腹ペコでいられるのも、残影を振り払い彼女自身を見てるマエストロのおかげだろうなぁ…。
そうなると頑なに”運命”と呼ばない姉が”ヤバ”なんじゃねーの、という気持ちも強くはなるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
幼年期コゼットちゃん、姉と同じく栗色の髪なんよね。
でも時が過ぎて金髪に染めてる。姉と同じ存在ではなくなるレールを、既に選び取っている。
(画像は"takt op.Destiny"第2話より引用) pic.twitter.com/1oLbO13yvh
こっからさらに、”運命”へと転生してピンクブロンドになるわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
生死すら超越する流転を、アンナは認めきれてない部分があるんだろうな。
それはタクトも同じで、だから前回”悲愴”を引いている時夢枕に、コゼットを思い出していたんだろうけど…切ねーなマジ!
タクトの片腕、コゼットの命。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
”喰う”存在として運命が描かれたことで、腹ペコ描写がただ可愛いだけじゃなくなったところとか、意地が悪くて大変いいです。
こうして逆行して物語を編むことで、今まで見たものの意味が変わってくるのは、好みの語り口だなー。良い二話だった。
あと常時音楽が鳴り続けていて、演奏家としてのタクトとコゼットの顔が良く見える話だったのも、残酷で良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
もう運命は、ピアノを弾かない。
そんな世界に放り出されてしまった少年が、どんな旅に挑むのか。次回も楽しみです。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月12日
母の遺品である石が、”運命”降臨の鍵になってるところを見ると、コゼットがムジカートになったのも悲惨な偶然というよりは、約束された宿命っぽい感じするなぁ…。
ここら辺の札開けていくのは、まだまだこれからって感じかな。先を見るのが楽しみだ。