ブルーピリオドを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
絵作り、構図、視線誘導、画材。
予備校での指導が、八虎に飛ぶための足場を作っていく。
表層をなぞって囚われる不格好から、巣立つための足掻きが誰かと擦れて、心に突き刺さる。
それでも精神の血を筆先に浸して、八虎は描く。
平伏させるために。己であるために。
そんな感じの美大受験地獄変、一進一退泥まみれの第4話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
大葉先生の導きと世田助との衝突、煮詰まっていく自意識とカチ割られる固定観念。
瞳を伏せては出会いに上げられ、見つかったものをキャンバスに焼き付けようとして、思い通りにならない筆先に悩む。
八虎の青春地獄旅はのたりのたり、ひどく苦しい吐息と切実な涙に彩られ、熱くて痛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
八虎が非常に聡明でロジカルであることが、彼の内面に潜んでいるもの、それを暴いてくれるものの輪郭をハッキリさせて…作品に漂う湿り気が、それを論理で殺しきらない。
明瞭な詩情、独自な青春に香気が立ち上る。
三歩進んで二歩下がる青春の行ったり来たりの中、八虎はどんな技法を、観点を、発見を、苛立ちと殺意を抱くか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
その一粒一粒が押し寄せてくるのが、心地いいアニメである。
まぁこれは、見てる僕の年齢、立場が物語をある程度俯瞰で見れる安全マージン故かな、と思ったりもするが。
上から観測して『それも必要なことだよ』なんて呟くのは、嵐の只中に苦しんでる当事者には寝言でしかなくて、八虎はただただ苦しいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
でも闇の中唐突に訪れるヘッドライトのように、輝くものもそこに、確かに同居していて。
その両方をアリモノに押し込めず、一個一個削り出す奮戦が、いいお話だ
キツさ極まる世田助くんの言葉を、大葉先生は豪快に笑い飛ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
表面だけをなぞってる所から、深く深く踏み込んで、他人に届くものを掴み戻ってくるための武器。
構図、視線誘導、画材、発想
芸術の技芸(Art of Art)は、何も知らなかった八虎の眼を開ける
(画像は"ブルーピリオド"第4話より引用) pic.twitter.com/5AnuXJTm0C
八虎は聡明でナイーブな人なので、自分ひとりで袋小路にツッコみ、他人に…他人が教えてくれる事に風穴を開けてもらえる意味を、強く自覚している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
なので伏せていた瞳を上げて、他人が差し出してくれた言葉や技術を受け取る瞬間が、良く切り取られる。
とにかく、目を見開くシーンが多い。
そして何かを見つけて視界が拓けたと思えば、すぐさま別の難問が塞いでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
後に大葉先生が力強く告げるように、トライ&エラーの繰り返しだけが八虎を、自由で力強い場所…あの青い渋谷、天使のウィンクが教えてくれた喜びへと開放してくれる。
それは、とても苦しい道だ。
血みどろの青春にアタマから飛び込むことを選んだ八虎が、大葉先生と出会えたのは僥倖だな、と見ながら思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
世田助がぶっ刺した言葉の刃を、笑い飛ばしてあげたほうがこの子は進める。
八虎の顔をちゃんと見て、そういう判断をしたからこその大笑いが、八虎の救いだ。
声もガタイもデカいが、そこから醸し出される豪快な印象はある意味”作り”であり、美大受験に苦しみながら、自分と世界、世界の中にある自分、自分を取り巻く世界を絵筆で発見し、伝達しようと藻掻く子供が、より善くいられるよう選んだ武器…なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
その演技が、俺にはとても尊く見える。優しい
八虎という白いキャンバスに、色んな技法がぶちまけられること…それを足場に、ちょっと高く飛べる様子が描かれることで、(ほぼ全ての)視聴者に馴染みのないアート・レトリックの意味が、確かな手触りを持って伝わってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
素直には受け入れられない当惑、出会いの衝撃、そこからの自由を描く。
新しいことを教えてもらって、八虎が何を感じたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
その出会いが、彼が藻掻き苦しんでいる壁をどう壊し…あるいはそんなもんじゃ、壁は動かないのか。
そういうエピソードとエモーションが、”学び”の中で脈動しているのは、説明が説明で終わらない、大事で優れた要素だ。
キャンバスを迷いなく切り裂く浪人生に、感じた当惑。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
『ぶっ飛んでる』の一言で片付けようとした八虎のアタマを、桑名さんの何気ない一言が揺らす。
何気ない一言で思い込みを揺らせる柔軟さ、聡明さがにある、ということでもある。
こういう地震を捕まえながら、八虎はド素人からの芸大合格へ進む
そこには答えがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
導きはあっても進むのは自分で、楽しいことが正解とは限らず、辛いなら間違いないかといえば、そんな事はない。
ノルマをこなすように、優等生も悪い友情も演じきって、誰かが求めるものを反射し続ける日々とは、大きく違う。
それでも、認められれば嬉しい。
敬愛する森先輩が”下から五番目”だったコンクールで、八虎は手応えを掴む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
しかしそれは、受験という価値観軸に適応した”表面”でしかないと、世田助は憤る。
答えだと感じた喜びをまた横合いから殴り付けられて、八虎の掌は遠い星を求め、空を切る。
(画像は"ブルーピリオド"第4話より引用) pic.twitter.com/eVv0AMZVBX
八虎はアートと縁のない時間が長かったので、美術界隈の常識に縁遠い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
知らなきゃ質問も出来ず、説明も受けられないわけで、『白紙の主役てのは、やっぱ優秀な類型だな…』などと思いつつ、美を受験する難しさが、世田助の存在感とぶつかって大きく波を立ててくる。
答えが無限にあるからこそ面白いものに、たった一つの評価を付ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
合格不合格を振り分け、教え導いて頂く傲慢。
美の道に進んでも”優等生”である八虎の、死角になってる場所を的確にえぐればこそ、彼は世田助の存在を無視できないのだろう。
八虎が歩んできた価値観の中で、答えがあるものを学び、それに的確に答えて評価されるのはごくごく普通だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
しかし世田助にとって、自分の中に確固としてある”巧さ”を他人にとやかく言われるのは、我慢ならない。
でも自分だけのダイヤモンドが、どんな輝きをしているか言葉で言い表す意欲と能力は低い
絵でしか思いを伝えられない、絵ですら思いが伝わらない苛立ちが、世田助の言動を荒れさせ、彼をさらに孤独にしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
その癖誰かに解って欲しいからこそ、不満をぶつけて意思を表する。
橋田が世田助に投げた半笑いでキツい評価は、そこら辺見透かしてのことだろうなぁ…。
かくしてデロンデロンの自縄自縛に陥った八虎は、まーた視線を伏せて強く苦しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
この青春発作が出たのが美術室だったのは幸運で、佐伯先生がさり気なく、逃げ道であり答えでもある場所への導きを差し出してくれる。
敵を知り己を知れば、百戦殆うからず。
若造現地行け、現地。
やっぱ八虎一人では、青春美術街道のそこかしこに開いてる落とし穴にバックリハマってしまうわけで、側にいる人が手を差し出し、さり気なく教えて危機を回避できるのは、幸運なことである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
そんな出会いが持っている意味を、蔑ろにしないのは八虎の、凄く良いところだ。
この公平な至誠が”こなす”能力ともなって、彼の生き苦しさの根っこにあったりもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
しかし周りに誰がいるか、怯えつつ睨みつけて無視する世田介の無骨な凶暴さと比べると、やはり巧妙で器用…なにより誠実である。
みんな隣に誰かがいて、自分ひとりでタッてるわけじゃない。
当たり前なのになかなか自覚できないものを、八虎は器用…てのを超えたセンスでしっかり認識し、時折ふらつきながらも誠実に、手を差し伸べてくれた人、与えられた知識や感情に感謝して進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
やっぱそれは、主役の得難い資質だと思う。
そう出来ない人も当然いると、世田介の存在が示すけど。
八虎はいわゆる”コミュ強”で、世田助はいわゆる”コミュ障”になる描き方だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
でも八虎には器用であるがゆえの苦しさ、起用だからといって突破できないものが確かにあって、世間一般から白眼視される世田助が張り出す棘を、ただ痛いものとして認識もしてない。
それだけが、人の価値ではない。
小器用なイマドキ男子を主役にしたことで、己の内面に潜っていく難しさと面白さ、他人からだけ受け取れるものへの誠実、それと向き合う資質に光が当たるのは、面白い構図だなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
”合わせる”コミュニケーションは円滑だが、それで取りこぼされるノイズは、いつか魂を引き裂く…かも知れない。
少なくとも充実しているフリをしてた二年生の八虎にはぽっかり穴が空いていて、美術がそれを埋めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
そうして貯まりだしたものが毒となって、八虎を苦しめる。
欠落も過剰も、どっちに転がっても苦しい。
青春とはそういうもので、人間とはそういうもので、”それ”を書いてるからこの話、好きなんだ。
かくしてダチと連れ立って、やってきました芸大学園祭。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
コーヒーで酔っぱらえる、楽しく明るい時間。
…に浸りたかったのに、演じた陽気で悪酔い嘔吐しちゃうの、ホント真面目よね八虎…LOVEよ。
そして運命は、ここでも二人を引き合わせる。
(画像は"ブルーピリオド"第4話より引用) pic.twitter.com/jENMc7hEMd
物語の一人称を担保する八虎が、どんだけ重苦しい檻に閉じ込められているかは、モノローグとクローズアップで幾度も捕らえられてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
そんな彼にぶつかり噛みつき、オラオラ殴りかかってくる世田介も、実は苦しい。
それを示すように、作品が二人を取り囲んでいる”狭さ”がカットアップされる。
何考えてるのか分かんないまま、無茶苦茶な暴論投げてくる世田介を、主役にイヤなことする”敵”って見ちゃいがちだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
ひどく不器用で、不格好にチェックを着込んだ彼が、家族とか自意識とか世界とか、色んなものにコスれて傷んで、それでも自分を分かって貰いたくて藻掻いてる様子は、描かれている
世田介がひどく残酷に突きつける、リア充は美術に来んな宣言。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
リア充(に見えるが、その実ひどくナイーブで情熱的な内面をそういう日々では埋められない)だからこそ美術に来た八虎が、反発するのも当然だ。
()の内側なんて、他人には見えない。見せないように振る舞ってりゃなおさらだ。
ヤンキー生活で培った鋭い視線に、それでも臆することなく瞳を返す世田介が隠してる()が、どんなもんか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
それも、八虎には判らない。
でも知りたいと、幾度もぶん殴られて苛立ってなお思うわされてしまう存在だからこそ、二人は出逢ってしまったのだ。引力つえーな…。
判りたいけど、判り合えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
衝突と焦燥が摩擦して、激情は涙になってこぼれていく。
俺がヘタクソだから、ああいうこと言われるんだ。
その悔しさが、胸の中の溶鉱炉を赤く燃やす。
アタマにぎっしり詰まった優等生のロジックが、激情に溶けて絵になる。
(画像は"ブルーピリオド"第4話より引用) pic.twitter.com/OCZqItfY6S
顔を伏せたり上げたり、大変忙しい主役であるけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
人当たりの良い八虎が、マジの感情を込めた暴力的な視線を投げるのが、世田介だけなのがまー、つくづく縁である。
教えてもらうありがたさ、助けてもらう心地よさだけでは、生まれ得ない鋼のような絵。
それを練り上げたのは、ムカつく天才なのだ
何かが解って気持ちいいことだけが、人を前に進めるわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
苦くて辛いものを突き刺されて、風穴が開くことだってある。
そんな世界の不可思議を、八虎に教えて動かす存在感を世田介は持っている。
そしてそれは、世田介にとっても同じなのだろう。
()の中が解らねぇ、気持ちの悪い他人が自分を突き動かしてくれる怖さ、不快感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
そこにまず目が行って、ありがたさに繋がらない未熟が世田介に苛立つ原因であり、可愛げの厳選でもある。
みんな八虎みてーに、超絶上手く人間を渡っていけないって! 渡れても地獄ではあるがなッ!!
モヤモヤ燃え盛っていたものが一つの形になって、八虎はようやく大葉先生に”受験絵画”を問う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
突きつけられたのは、明瞭な解答。
小手先追いかける時代は終わってて、受験の”正解”としても、自分の絵を描くしか無い。
そのために、トライ&エラー。
(画像は"ブルーピリオド"第4話より引用) pic.twitter.com/ZTh85syBg0
幸運にして助け舟を上手く掴めた八虎は、再び目を開いて新しい地平へ、この予備校を足場にして進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
でもそんな歩み寄りが、世田介には届かなかったりもする。
別れの瞬間まで、生徒の興味と意欲に近いものを差し出そうと、八虎の話をする大葉先生が好き。
ぶっちゃけ世田介は扱いの難しい生徒であり、爆弾のような子供だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
至る所、あらゆる相手に炸裂してきただろう彼の自意識を、間近に浴びてなお諦めなかった…だからこそ『助けになれなかったね』と後悔する大葉先生は、やっぱり立派な人だと思うで、僕は。
八虎の”いい”リアクション貰ったほうが、教える側としては教え甲斐あって、肩入れしたくなるもんだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
無愛想に『お世話になりました』だけ言って去ってく世田介にだって、()に抱え込んだ重荷あればこそ、離れていくわけでね。
その両方に、ちゃんと目を向けれる人でいたいのよ、僕は。
星はどんな回り道を経て、どこに至るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
不敵に微笑みながら、大葉先生は生徒たちの未来を思う。
教師として母親として、若人を愛し見守り導く存在の頼もしさは、明暗が瞬く道に己を置く者たちに、間違いなく心強い。
(画像は"ブルーピリオド"第4話より引用) pic.twitter.com/o6UxFtDcpB
去る者、残る者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
二人の道は一度別れ、再びぶつかる。
見えたと思えば塞がり、どん詰まりで思いがけず拓けていく長い道のりに、しかし確かに区切りはある。
入試まで、あと120日。
三ヶ月の天国と地獄は、少年たちをどのように錬鉄していくか。
物語は、眩しく瞬きながら続く。
そんな感じの、第4話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
いやー…みんな可愛いねッ!
ネトネト苦しみつつ、色んな人に助けられつつ、譲れない自分を衝突させ、激しい火花を散らして新しい場所へと進む。
その一歩一歩が、やっぱり僕には眩しく、愛しく見える。
当人は、苦しくてしゃーないだろうけどさ…。
自分の内側に在るもの、外側から投げかけられるもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
解ってもらおうと差し出す巧拙、訴えかける強さ。
色んなものが真逆で、だからこそ深く噛み合ってしまう八虎と世田介の因縁が、バチバチ火花散らすエピソードでもありました。
ほんっっとよたは八虎、ダイスキでダイキライだなぁ…可愛い。
疑念を胸の内側でモヤモヤ抱え込んで、腐敗した毒気に中毒しそうになって、迷ってぶつかってようやく窓を開けて、問いを投げかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
その回りくどい歩みをちゃんと追いかけることで、人が絵筆に乗っけるものが思いの外、人類共通の課題なのだと見えてくる。
特殊性と普遍性の、地獄めいた共存。
そのバランス感覚が、やっぱこのお話のコアにあるなー、と思うエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月24日
長い長い受験街道は、山あり谷あり情あり。
八虎と戦友達がどんな風に、そこを歩いていくかを精妙に微視しながら、お話はまだまだ続きます。
次回も楽しみですね。