月とライカと吸血姫を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
打ち上げまで二週間、イリナの訓練はさらに過酷さを増していた。
第一書記の腹心が視察に訪れる中、国家の威信を賭けた打ち上げ計画の実態は、未だ不安定。
後腐れのない実験動物たるイリナの、脳裏を焼く炎の記憶。
果してその命と尊厳は、焼け焦げた犬と同じか?
そんな感じの迫る本番地獄の泥縄、共産宇宙開発残酷絵巻の第5話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
王国が選びし七人”ヘルメスセブン”(モロに史実の”マーキュリー・セブン”で、思わず笑ってしまった)に対抗し、『じゃあウチは六人だよッ!』と、ノリと負けん気だけで生存確率がゴリゴリ削れる夢の現状。
家族は火炎放射器で燃やされ、憧れの月を目指して志願した先では実験動物扱い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
イリナの過去と未来は真っ暗闇だが、そこにレフくんの小さな手は希望を灯せるのか。
何しろ一介の宇宙飛行士候補生、腐りきった巨大な政治装置を動かす力は無いように思えるが…さてどうなるか。
作品を通じて一番ロマンチックなのは、政治の塵を離れた先にある美しい宇宙でも、人間を超越した純粋な美しさの吸血姫でもなく、個人の尊厳と思いが巨大な何かを動かしうるという、モダンな人権意識…それに裏打ちされたロマンスになるかもなー、という展開である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
というか、なって貰わんと困る。
とにかくロケットが爆散して犬が焼け死ぬ話で、それが華やかなりしソ連宇宙開発の、現実でもあったわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
人の命も人外の命も対して大事にされない世界で、炎の記憶がイリナの過去を呼び覚まし、実験体はどんどん追い込まれていく。
このままだと使い潰されて終わりだが、逆転の一打はあるのか?
本番が迫り、そこら辺のハラハラ感が高まるエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
過酷な感覚閉鎖訓練、爆散するロケットが、イリナの心のなかにある暗黒を掘り下げ、強きと裏腹なトラウマを抉り出していく構図は、なかなかエグいなー、と思った。
レフくんがそこに触れないと、彼女はもう飛べない。
記憶と人格の根っこに触れる行為はイリナをレフくんに依存させ、関係をより深くさせるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
しかしイリナは”人間”ではないわけで、魂が強く触れ合うロマンスを、虚栄と腐敗に塗れた国家組織は顧みない。
このまま進めば、世界全てが敵…あるいは、愛する人を、輝く夢を諦めることになる。
なかなかに過酷なジレンマである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
それを突破しうるロマンティックな可能性を、一瞬だけ無重力状態になるペア降下訓練が宿しているのは良かった。
この特別で不思議で、美しい瞬間があるのならば、世知辛い現実も焼け焦げた過去も超えて、輝く未来を掴めるかも知れない。
重力に翻弄され、あるいはそれを乗り越えて見える特別な景色…それを二人が共有し、絆を深めている描写はそんな、かすかな希望をちゃんと可視化していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
劣悪な人権意識、穴だらけの飛行計画をシビアに描けばこそ、ああいうスペシャルなシーンが一筋の光明として、見てる側に刺さる作りやね。
現場の飛行士と技術者は粛々と訓練に明け暮れ、必死こいて”その日”に備えているわけだが、国威発揚(とおそらく核防衛)のために計画を取り回す政治家達は、その労苦を理解しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
このズレた状況に、なんらか橋がかかるのか。
今回リュドミラが視察に来たのが、今後コネが繋がる伏線…かな?
ともあれ今は、ガン凹みしたイリナのケアが急務である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
この作品、精神世界の描き方が結構独特で、イリナちゃんがトラウマに追い込まれるといい絵が見れるのが、ちょっと嬉しい(外道マン)
なんか静謐なサイケが、心を描く時に心地よく薫るんだよね…画作りが良い、つうか。
これはレフくんとイリナちゃんのロマンスシーンも同じで、後に世界を動かすテコになるだろう絆を育む時、凄く大仰で壮大な画が暴れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
前回のスケートとか、今回のペア降下訓練とかね。
しみったれた政治と差別渦巻く、地上の現実がろくでもないからこそ、その特別な透明感は際立つ。
そんな風に、美しい夜に二人だけで描いた時間が果して、作中一番ろくでもない二つの炎…イリナの過去を焼いた火炎放射器と、未来の似姿である焼け焦げた犬の記憶を、乗り越える鍵となるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
次回はレフくん主人公として、頑張りどころである。
デカい権力装置と、小さく切実な二人の絆。
現状このサイズ差で話が回ってんだけど、ここを逆転してハッピーエンドを連れてくる足場をどこに置くか、まだ見えきらない部分もある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
ここら辺、史実のソ連を掘るほどに噴出するろくでもなさに、しっかり取材してるからこそでもあるが。
マジで全領域、想像を絶するレベルでスゲーからな…。
人命と尊厳をすり潰す全体主義国家に、ロマンとロマンスを抱えてちっぽけな人間がどう挑み、世界を変えていくかの”IF”として、このお話見てる部分もある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月1日
かそけき絆は蟷螂の斧か、はたまた運命を切り開くのか。
小さな愛は、炎の記憶を癒やすのか。
次回も楽しみです。