takt op.Destinyを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
辿り着いたジャズの聖地は、年老いた街だった。
少女たちは連れ立って、そこに生きる人達の営みに触れる。
少年は地下に降りて、思い出と音楽に出会う。
日常の残骸に埋もれながら、狂気に微睡みながら、それでも人は日々を生きる。
爪弾く音楽は、希望の鶏鳴たりうるか。
そんな感じの1クールの旅路の折り返しは、D2出てこない、武器を抜かないエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
大変良かった。
お話を咀嚼する時、どの味わいを気に入るかは人によると思うのだが、僕はやっぱりこのお話に宿るアメリカの多彩な景色、生活に滲む土の味が好きだ。
D2襲来によって変貌した大きな世界と、個人の命運。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
腕はぶっ千切られ幼馴染は殺され、自身音楽を武器に異形と戦う羽目になった青年は、彼が行き過ぎる町の人達と同じく、何かを失っている。
自由に音楽が出来て、大事な人が隣りにいた時間は壊れ、終わってしまった。
しかし老人だらけの街でも時計は動いていて、思い出だけが鳴り響くわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
かつて確かにあった美しい音、甘美なる味わいは未だに息をしていて、人々の営みにしっかり宿っている。
音を奏でるもの、それを聴くもの。
武器を手に取るもの、それを見守るもの。
老人と若人、それぞれに出来る事は異なっていて、住む場所も襲い来る運命も違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
しかしそれは一つの大きな箱の中で隣り合い、響き合いながら前に進んでいく。
タクトの父の演奏を、興奮しながら語る言葉のように、音楽は何もかもを一つにし、その只中に己がいることを教えてくれる。
広いアメリカを移動しながら進むこの旅は、多彩な光景が”アメリカ”という一つの箱にそれでも収まっている希望を、生の息吹を捉えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
”汝が魔力は再び結び合わせる
時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となる”
ベートーベン、交響曲九番第四楽章、第一主題。
老いさらばえ、狂い、壊れたように見えるものは確かに息をしていて、タクトと仲間たちは優しくそれを蘇らせて、新たな運命に進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
そこにはただ孤立した音楽だけが、あるいはそれが闘争の道具になってしまう世界だけがあるわけではなく、街に残り生きていく人、過ぎ去ったものとの繋がりがある
彼らを主役とするこの物語が、そういうモノを切り取るのだと、静かに語る折返し点でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
ポンコツ兵器と音楽馬鹿が、故郷を離れ運命に押し流されて今、どこに辿り着いているか。
その景色が優しくて強いと判る、良いエピソードでした。
俺、やっぱこのアニメ好きだな…。
ニューオーリンズへ向かう車の中で、”運命”は生意気やら冗談やら、随分人間らしいことを言う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
マエストロは『自分の人生に。音楽以外必要ない』とドアを閉ざして世俗を避ける。
タクトが進み出なかった場所で、人々は食事をし、家を治して生きている。
(画像は"takt op.Destiny"第6話より引用) pic.twitter.com/yTZ90f7td1
如何にもアメリカ的な消費文化のアイコンを、センスよく画面に盛り込むことで生まれる”この作品で空気”が、僕はとても好きなのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
戦場を遠ざけて、食べること、暮らすことを追いかける今回、その心地よい生活臭はより濃い。
すっかり寂れ、老人ばかりの街。
輝く黄金期が、既に終わってしまった街
一瞬立ち寄っただけの”運命”とアンナは、巻き取られるように街の人々の生活に関わり、食材を運び床板を直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
D2を討ち滅ぼすための怪力も、笑える冗談の一コマになるような、ひどく穏やかな時間。
そこに”運命”が踏み出し、アンナが寄り添っているのが眩しい。
傷んだ床板を踏み抜きかけた時、アンナを”運命”が守るのは印象的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
そこにこそ、このポンコツで生意気で優しいムジカートの根っこがある。
タクトの命を勝手に啜り、D2殺しにしか興味がなかった彼女は、タルトタタンを食べ、農場の暮らしを見て、ゆっくり変化している。
それが死して素体となったコゼットの残響なのか、”運命”自体が学び取り、タクトとアンナと出会った人たちが与えたものなのかは、判別が難しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
しかし死地から立ち上がった”運命”が、NYへ向かう旅の中自分だけの価値を、世界と己に見出しているのだと、僕は信じたい。
これはアンナの抱える危うさと隣接するもので、未だ”運命を”妹の名で呼ぶ彼女は、果して死から立ち上がり自分の足で進む独自の存在として、彼女を見れているのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
受け入れるには、あまりにも辛すぎる喪失。防衛反応としての狂気
後に”出会う狂母の姿は、アンナ自身の鏡でもあろう。
でも”運命”が人間らしく、ムジカートでしかない彼女らしく色んなものを大事に出来ているのは、アンナが根気強く、愛情深く”妹”に向き合った結果だとも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
失われたもの、その虚無に捻れ歪むもの。
それは否定し得ない現実で、しかし全ての終わりではない。
そこから、確かに始まる音楽もある。
タクトは全ての終わりを思い出しつつ、夢から醒める。現在と同じ姿でD2を滅ぼす、天国と地獄…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
世俗と自分を切り離す扉を開けて…というより、それは最初から半分開かれていて、誘われるように音楽のある場所へと進んでいく。
(画像は"takt op.Destiny"第6話より引用) pic.twitter.com/AuiOq1mVbI
そこは終わったはずのものが集う、地の底の冥府である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
老人たちがまだ若者で、音楽がその本来の姿を保てた時代。
思い出の中にしか無い、輝ける黄金の時代。
興奮したバーテンダーの長広舌は、地上と思い出の国の境目を越えたタクトを、亡霊のように捉える。
過去を振り返ることは悲しいことばかりではなく、タクトは世に疎んじられる父がどれだけ偉大で、人々に愛されていたかをここで思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
生き生きと、情熱的に奏でられた音楽がどんなものだったか。
父の生きた証が、今もなお残響してどれだけ人々を支えているか。
死んでなお、生きているか。
タクトは自分にも刻まれた朝比奈の名前が、けして呪いではないことを、車の外に出ることで確認していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
音楽とは、演奏とイコールではない。
タクトが一人磨きあげ一人作り上げる(と思っているもの)は、必ず誰かに繋がり、何かを蘇らせる。
(画像は"takt op.Destiny"第6話より引用) pic.twitter.com/0sjBVfMyhy
バーテンダーの暑苦しい思い出話は、そこに存在しないマエストロの名演奏を、人々に見せた輝きを、タクトの前に連れてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
第2話でコゼットとともに奏じた連弾が、どれだけ聴衆に届いていたかを、タクトは輝きの中で思い出していたかも知れない。
この作品の中で音楽は、人と人、過去と現在を繋げる中間媒介/表現手段(Medium)として描かれ続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
タクトは閉鎖した場所で演奏技術だけを追いかけているようで、周囲にいる人は彼の音楽を放っておかないし、そうして混ざりあった結果生まれるものに、タクト自身も耳を塞がない。
音を聞く誰かの存在に、感動し感謝できること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
猥雑な人付き合いが苦手な孤独主義者に見えて、タクトは演奏が音楽になる上で重要な事を、けして忘れない。
そういう子が、父もコゼットもD2に奪われているってのは…まぁ酷い話だよ。
前向きに頑張ってるよなー、この音楽バカ。
人間嫌いの変人が、実は扉を開けて人と音に交わっていることを知らず、姉妹は思い出に絡め取られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
古ぼけた写真の中にしか無い、美しい世界。
自分がこの世に生を受けた意味を、取り戻せるような時間。
それは過ぎ去り、終わってしまって…
(画像は"takt op.Destiny"第6話より引用) pic.twitter.com/Os9nNzkHnB
しかし忘れられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
廃墟となった現在を酒で、あるいは狂気で誤魔化しながら、それでも今を生きている人たちに隣り合いながら、アンナはぎこちなく家族を演じ、タクトはピアノを調律する。
治るもの、治らないもの。
響くもの、届かないもの。
同時進行する二つの物語は、多角的に人生を切り取る。
アンナと運命は写真に閉じ込めた思い出を現実で壊さず、狂える母は狂ったままだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
タクトは放っておかれたピアノを治し、父とは違うスタイルで”ラプソディ・イン・ブルー”を引く。
憂鬱な毎日を切り裂くような、鮮烈なる狂詩曲。
ジャズとクラシックの間を繋ぐ、ガーシュインの傑作。
死んだり、壊されたり、狂ったり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
陰惨な重力に惹かれて、どうしようもなく沈んでいく運命に巻き込まれながら、それでも人は生きようとする。
自分が世界の異物ではなく、その一部として確かに生きている一体感を確かめながら、満ち足りた物語を追い求めていく。
終わってしまったように思える街にも、音の灯火、愛の記憶は確かに残っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
タクトとアンナと運命は、街の暮らしに巻き込まれる中でその手触りに触れ、それぞれのスタイルで向き合う。
地下のバーの物語、とある母の物語。
それぞれ交わらず独立していて、しかし確かに繋がっている。
”運命”がレモンケーキをたらふく食べながら、それぞれに異なっていること、だからこそ成し遂げ守られるものについて、彼女らしい拙さで必死に語っているのが、僕にはとても嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
彼女が赤い獣でも、戦いの兵器でもなく…
(画像は"takt op.Destiny"第6話より引用) pic.twitter.com/kuvOjZk8oo
独自の感性と感謝を持って、世界に触れ、それを通じて自分の輪郭を今、学び取っている幼子なのだと、彼女自身の言葉で語ってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
機械のように、あるいは赤子のように純朴な語り口で、自分が出来ること、アンナがしてくれること、タクトが成し遂げうることの意味を言葉にし、思いを寄せる。
それは”運命”がムジカートであり、人間であるからこそ紡がれる、とても大事な音楽だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
あまりに可憐で人間的だったコゼットが死に、その遺骸を食って立ち上がった”運命”であるけども、その前に広がる可能性には、当然彼女独自の尊厳がある。
自身喪失の痛みを抱えながら、タクトとアンナが”それ”を大切に一緒に進んできたからこそ、今この物語の折返しで、”運命”はムジカートである自分、マエストロであり演奏家であるタクト、それと隣り合う、戦いも演奏もできないアンナを、それぞれに尊重できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
それは、とてもいいことだ。
ここまで”運命”が腹に収めてきたタルトタタンやらポップコーンやらが、彼女の新しい魂を養ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
死せるコゼットの姿形と、死んでも消えない思い出を引き継いだ戦闘機械が、狂ったまま差し出される愛娘の思い出をモグモグと食べて、舌鼓を打つ。
それは狂っていて、正しくない音かもしれない。
しかし確かに、それはそこにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
妻の狂気に付き合ってくれたアンナに、夫が感謝を述べるシーンが、”運命”の人格的成長と切り離されつつ、確かに隣り合っているのが良い。
それはタクトが再生させたもの、まだ終わってはいないと高らかに告げたものとも、個別でありながら繋がっている。
それぞれのスタイルで、己と世界を奏でる時、全ての音は意味がある音楽だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
優しい狂気をそのままに、娘を失った哀しさから自分を守る母に、正しさを突きつけないことも。
冥府から父の思い出を引っ張り上げ、それを乗り越えていくように新たな”ラプソディ・イン・ブルー”を奏でることも。
あるいはこの煤けた街に流れていく生き様に隣り合い、糧を与えられながら、自分だけに出来る闘いを真っ直ぐ走ることも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
”運命”が言う通り、全てに意味があり、価値がある。
兵器の形に捻じ曲げられた少女音楽は、それをちゃんと解っているのだ。
旅の中で、それを解ったのだ。
1クールの物語がちょうど折り返すこの話数で、滅んだ世界に未だ流れる音楽と、壊れてなお生きようとする人々と、その只中を旅する歩みがどんなものだったのか、ちゃんと確認する事ができた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
それはとても意味のあることで、大事なことだと感じました。凄く良かった。
バリバリバトル展開だと忘れられがちな、アンナにしか出来ない闘いの意味を、一番間近に受け取ってる”運命”がちゃんと理解してて、お姉ちゃんを愛していると明言してくれたことが、俺は本当に嬉しくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
歪にフラつきながら、それでも前に進もうとした決意は、全く無意味ではなかったわけです。
”運命”が旅立ちに際し、日常に残る人から糧を受け取るのはいつものことながら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
閉ざされた扉を開けて、演奏が音楽になる場所に進みだしたタクトが、白紙の五線譜を報酬として貰った終わり方が、僕は凄く好きだ。
(画像は"takt op.Destiny"第6話より引用) pic.twitter.com/hgjY1g9Yxm
そこには彼だけのスタイルで、どんな音楽だって描ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
かつて確かにそこにあったものが、けして消え去っていないことをその演奏で思い出させたタクトが、熱い握手とともに手渡されたもの。
それは黄金の時代が既に終わった場所だけにでなく、生きて進みゆく場所にもあるのだと、思い出させた報酬だ。
過酷な運命はここから先の旅路、厳しく子供たちを試すだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
それでも、わたし達が生まれついてバラバラで、だからこそ一つに繋がりうる希望は、消えずに響いていく。
それは特別に選ばれた主役だけの音楽ではなく、当たり前の景色を生きる人達、それぞれが奏でる音色だ。
タクトはかつてコゼットに手を引かれて出ていった場所へ、今回自ずから進み出た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
”運命”もアンナも隣り合わない場所で、愛する父が何を成し遂げたか知り、自分なりのスタイルで再び奏でた。
街に広がる憂鬱なブルーを、自分の五線譜に引受たのだ。
その孤独な歩みには、力強い尊厳がある。
そして確かに、音色が重なった喜びが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
まんざらでもなさそうに、窓の外に広がる青い空を見上げ、彼の指は知らず音楽を奏でる。
たとえ諦めろと、誰に押さえつけられたとしても、人間は音を求める。
それが重なり合って、一体となる瞬間を求めてしまうのだ。
そんな普遍を作品が追い、あるいはキャラクターが自分の糧として腹に、指に収めていく様子が、よく描かれたエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
何度も言うけど、凄く良かった。
戦わないことで、戦うことの意味を浮き彫りにし、後の展開につなげていく構成も好きだ。
息抜きというには、ちと馥郁に過ぎる回であったね
俺は生き直しの話が好きなので、旅人も街に住まう人も、時の流れと理不尽な災厄に擦り切れつつ、それぞれの物語を蘇らせ、前に進めていると判る今回の話、よく染みました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
モニタの向こうにあるコンテンポラリーな景色と、絵空事を繋げる野心を確信する回でもあったかな。現実的な話よね、コレ。
かくして何かを受け取って旅人が進む先では、英雄と”天国”が窓の外、大きなものを見据えていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
ニューヨークシンフォニカのグランドマエストロは、一体どんな理想を睨んでいるのか。
その真っ直ぐな瞳の中に、今回触れ合った営みは入っているのか。
(画像は"takt op.Destiny"第6話より引用) pic.twitter.com/Y31e3pSfNl
後半戦、大変楽しみです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月10日
タクト達が旅で受け取ったものが鮮明だからこそ、そこに対置されそうなザーガンとシントラー、天国と地獄が何を体現するかは気になんだよなー…。
そういえば、彼らが”演奏”してるのを聞いてないな、などと思いつつ。
次回も大変楽しみです。