takt op.Destinyを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
激闘を越えて辿りついたニューヨークは、摩天楼輝く夢の街。
戦いを忘れ、穏やかな秋の日に溶け込む未来が、微かに滲む。
そんな日常の奥に、胎動するノイズ。
動き出した音楽がもはや、歩みを止めてくれないのならば、観客席で微睡む道はもうない。
あるいは、その最初から…
そんな感じの、一瞬の愛おしき休符から鳴り響く最終楽章、タクト第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
旅は終わり安らかな街にたどり着いたものの、タクトと”運命”に平穏は訪れず、むしろ残酷な真実に突き進むしか無い道に、否応なく引き込まれていく。
ただただ平和に、音楽とお菓子に包まれ楽しく生きれたら…。
彼らがそう思わされる子供だと、平和なNY観光に滲ませてくる、おそらく最後の日常回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
旅路に付き合う中で、タクトがぶっきらぼうな態度の奥に隠した純情とか、”運命”が新しく見つけたものとか、すげー大事にして欲しいモンが沢山見えたわけだが、果たしてそれは守られるのか。
旅が終着点に落ち着いてしまったからこそ、全てを決着させる音楽が動き出す感じがあって、怖くて切なかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
俺はなぁ…あの子らが思う存分、自分の好きなこと出来る世界を取り戻して欲しいんだけども、それが叶うのはかなり難しそうだ。
アプリとの連動もあるしなー!(急なメタ読み)
というわけで、シントラーを檻にぶち込みつつ始まる新章。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
レニーさんのド暗い立ち姿が、ロクでもない未来を予言して既に辛い。
イヤぜってぇ、NYの明るい景色はフェイク…とまではいかずとも、”あがり”じゃねぇなと解らせてくる出だしである。
(画像は"takt op.Destiny"第9話より引用) pic.twitter.com/jVaKdlKEJZ
ここまでいかにも”アメリカ”な大都市の繁栄ではなく、土の匂いを残した前近代的風景を旅してきたので、ニューヨークの摩天楼は特別に見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
この感覚はタクト達が作中で感じるものと同じであろうし、こういうシンクロを作れているのは、旅を描いてきた醍醐味かな、と思う。
米国民が意地で守った、文明と平和の象徴。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
それが”アメリカ”の全てではなく、その礎に…あるいは垣根の外側に荒野が広がっていることは、既に描いてきた。
レニーさんはまさにその現場に足を置いて、覚悟を固め最後の決戦に挑もうとしている。
”巨人”の柔らかな態度が、少し哀しい。
この沈鬱な冒頭と真実に向き合う覚悟を描く結末でもって、平和な景色を挟み込む今回の構成。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
既に窓の外にタクトが見て取っているように、音楽が蘇っていない世界はあくまで止り木であり、戦いを終えて返ってくるべき、かけがえのない場所でもある。
車椅子の新お姉ちゃんに導かれる形で、タクトは人類最後の砦に迷い込み、己の現状を解析される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
見知ったニューヨークよりも更に未来的で、当たり前にムジカートが歩くシンフォニカの風景が、なかなか印象的だ。
それより刺さる、赤い聖痕。
(画像は"takt op.Destiny"第9話より引用) pic.twitter.com/UliPksLMlY
ここに来れば全てが元通りになると、希望を抱いて辿りついた場所で告げられたのは、全てが手遅れだという現実だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
条理を外れたイレギュラーな契約は、通常の調律を跳ね除け、命を喰らって力に変える在り方は変わりようがない。
未来的な”正義の見方”にも、出来ないことは沢山ある。
メガネを掛けて白衣を着て、”お姉ちゃん”から調律学者に変わったシャーロットが、努めて冷静であろうとする姿…それが無念に握りしめた拳に揺らぐ描写が、なかなか痛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
シャーロットは、彼女を”運命”とも”コゼット”とも呼ばない。
長い旅路を経て、ようやくアンナが越えた場所に、未だ留まる。
タクトと”運命”が相補的/相互侵食的なイレギュラーで、本来ムジカートだけが持つ闘う資格を、人間たるコンダクターも有する…その対価を紅く払う関係は、僕はやっぱり好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
女の子を安全圏から指揮して、自分だけ生き残るヤダ味を削るべく、こういう設定にもなってるんだろうなぁ…。
旅は終わり、運命は変わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
足を止めて平和な日常に包まれ、世界を変える可能性を誰かに託して終わるか。
血みどろに地獄を駆け抜けて、欲しかった世界を取り戻し守るか。
退くか進むか、タクトは選ばなければいけない。
その状況を、より鮮明にするためのNY散歩とも言える。
やっぱ少女たちはタクトを部屋の外側に連れ出す存在で、文句たらたら垂れ流しつつも、美しいものが沢山ある街へと進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
やっぱな~…このホームコメディの軽妙な味付けが、このアニメの好きなところ(の一つ)だなぁ。滋味がある。
(画像は"takt op.Destiny"第9話より引用) pic.twitter.com/SjQcrCp1Pj
タクト達がニューヨークで見つけるものは、今まで”アメリカ”を旅して食べ、着込み、楽しんだものと変わりがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
アーバンな空気にも緑は多く、色んなお菓子と素敵な衣装…衣食住に宿る人間の営みが、豊かに街を彩っている。
そこにこそ、闘って守る意味が宿る。
心身を噛み砕く過酷な運命と、世界の命運を背負った宿命のバトル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
そういうデカいモンを主役に背負わせつつ、とにかく生きてる手触りを大事に、良い美術で積み上げ続ける表現が、僕は好きである。
ここでタクトが食べ、味わい、微笑む手触りがあるから、彼は安全な観客席から出る。
お姉ちゃんSのお節介に送り出されて、タクトと”運命”は二人で、街の深い場所へと歩みを進めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
音を剥奪されても未だ残る、音楽への祈り。
それを間近に感じて、二人は真紅の薔薇を墓標に捧げる。
タクトがずっと、”運命”の顔を見ているのが良い。
(画像は"takt op.Destiny"第9話より引用) pic.twitter.com/PPeqCe3mx2
あるいは”運命”もずっと、タクトの顔をよく見ている。拡大する侵食に気づくのは、アンナより速いのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
音楽にしか興味がないと、自分を閉じ込めていた少年。
戦うことにしか意義を見いだせない、異形の獣。
二人はお互いの顔を、それを通じて周りに広がる大きな世界を、よく見るようになった。
多分それが長い旅路の実りであり、より過酷な未来へと、二人を送り出す原動力なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
この世界には、音楽がない。
その充足を待ち望む祈りをよく聞けばこそ、タクトは死ぬと解っている闘いに、背中を向けれない。
そこには顔のない沢山の人の祈りだけでなく、己自身の夢がある。
…夢というにはもっと血みどろで、父も初恋の人も皆、食いつぶされてなお捨てれないモノなんだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
惨状と音楽を隣接させることで、ともすればふわっと浮いてしまいそうなテーマに血潮が宿っているのは、良い話運びだと思う。
タクトくん、ホント人生ズタズタにされとるからな…。
それでも少年は薔薇を捧げ、未来を夢見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
音楽が何の力も持ち得ず、だからこそ全てを動かしうる世界を取り戻したいと。
この願いって、闘うための音楽が具現した”運命”を隣に置くから、面白く際立つ構図でもあるな…。
果たして戦闘音楽は。無力な詩に戻ることを許されるのか?
現状それは不可能であると、シャーロットの拳は無念に握り込まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
アンナが車椅子を積極的に押して、姉との縁を深く彫り込んでいくことで、彼女のニンが一話で見えてくるのはありがたい。
誰もが、幸福な明日を祈る。
だが宿命は、それを許さない。
(画像は"takt op.Destiny"第9話より引用) pic.twitter.com/9We4fCjqRp
この平穏な風景に、かつてあった輝きと響き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
オーケストラが再び鳴り響く未来は、傍観していては掴めない。
武器を手放し、音楽がただ音楽でいられる幸福を取り戻すには、命を削って闘うしか無い。
そういう残酷さを、タクトと”運命”はもう見据えているのだろう。
だからこそ約束は夕映えに映えて、痛ましくも美しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
ぜってぇぇぇ、ここでオーケストラを二人で聞くのは無理だろ、この流れはッ!
すっかり人形めいた硬さが抜けて、しかしコゼットのコピーでもなく、”運命”として可憐なそのかんばせ。
(画像は"takt op.Destiny"第9話より引用) pic.twitter.com/JLhfGVY190
タクトもNYの風を受け取って、親父が死んだりクソ人類皆殺し生命が襲ってこなけりゃしてただろう、朗らかな表情を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
こういう、凄く当たり前で平和な…ずっと続いて欲しいと思える顔の描き方が上手いの、ズルいなぁと思う。
だって絶対長続きしないし、守れないもん、この話だと。
それが束の間で儚いものだったとしても、『ここで”運命”を聴く』という誓いはとても尊く、眩しいものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
そういう柔らかなものを諦められないから、人は再生を祈り、復興に喜ぶ。
そんな小さな輝きを守りうる特権を、自分達だけが持っているのならば。
タクトが四人で、あるいは二人で進んだこの平穏に背を向けて、観客席から出ていく決断を果たすのは、ここに漂う幸福の意味を…自分自身がそれを望む一人なのだと、つくづく思い知ったからなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
幸福こそが、少年を地獄へと突き動かしていくのだ。ヒロイックで運命的で、まーヒドい話である。
我が家に帰り着て、運命のベルが鳴る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
地下から響く破滅の足音、電話越しの今生の別れ。
どれにも耳をふさいで、幸福を長引かせる道もあった。
あの美しい景色を幾度も繰り返して、誰かが世界を救ってくれるのを待つ。
(画像は"takt op.Destiny"第9話より引用) pic.twitter.com/ffMpqLj8LI
それは自分の道ではないと、タクトは選び取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
第4話別れた時は、拗ねた子供の色が濃かったタクトが、レニーさんが背負ってる重荷に真っすぐ目を向け、自分も当事者だと手を伸ばす存在になったのは、なかなか感慨深い。
何も告げない優しさを突き破られ、真実に触れられたレニーさんも、同じ気持ちか
今回のお話は、タクトが選ばなかったものを描くエピソードだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
特別に守られた摩天楼、託された祈り、美味しいお菓子と楽しいデート。
叶わない約束と、あり得たかも知れない平穏。
その意味を間近に知って、だからこそタクトは闘争と真実を求めた。
それが、自分の音楽なのだと。
そうなるしか無い歩みと傷は、ここまでの9話しっかり積み上げてきたし、今回のサブタイトルはベートヴェンの三番からの引用である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
それは暴君へと墜ちたとある英雄の思い出を、書き綴った交響詩。
レニーさんがずっと追っていたもの、信じたかったシンフォニカの闇を、暴くに相応しいサブタイだろう
タクトがセントラルパークで聞こうと約束したのが、三番じゃなくて五番なのがまた…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
褒め称えられる英雄になることよりも、運命の行き着く所に”運命”と手を携えて進みたいから、五番なんだろう。
徹底して個人主義者だよね。
そこから共同体への意思、他者との接続を、自分らしく育んでる主役。
かくして、少年は真実を選んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月30日
観客席に身を置くのではなく、運命と残酷が渦を巻く戦場に身を投げた。
その選択がこのアニメ最後の楽章を貫く、一つの主題になるのだろう。
さよなら、幸せだった日々。
さよなら、幼き微睡み。
タクトが大人になっちまって、嬉しいやら寂しいやら。次回も楽しみ。