鬼滅の刃 遊郭編を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
…と感想を書き出す前に、鬼滅アニメに関しては普段のスタイルというか、作品と向き合う角度を変えて感想を書こうと思っています。
間違いなく”現象”と言えるほどにコンテンツがデカくなり、大々的に神輿として担ぎ上げられ、多くの人に期待と称賛で出迎えられる作品。
そういう作品を押し上げる潮もひっくるめての”鬼滅の刃”だとは思うのですが、自分が初見で受け取った印象とそういう所…を引き受け、創り上げられ広報されていくアニメにズレが生じてて、そこら辺から目をそらしていると、何も言えなくなるな…と感じています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
僕は”鬼滅の刃”は、凄くグロテスクな話だと思っています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
それは血しぶき舞い散り首が飛ぶ闘争の凄惨さではなく、鬼を殺すものが鬼に墜ち得ず闘いうるときの、怪物的克己心、自己犠牲の苛烈さに足場を置いている。
弱く人間臭い鬼たちが墜ちてしまった場所に、彼らを殺す隊士は堕ちない。
無論その清廉は弱さを認める強さに裏打ちされ、常時恐怖に震えつつもそれを噛みしめる営みによって支えられていると、常に描かれているわけですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
それでも、泥に塗れた現世をこの超越的な英雄たちに越えていって欲しいという、祈りにも似た作家のエゴを。キャラと設定が背負っている匂いを感じる。
その臭み…そういうモノを己の筆に込めて描かざるを得ない業と決意が、僕がこのお話が好きなポイントでもあるのですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
あらゆる商品に刻まれし、あらゆる場所でコラボする”鬼滅”を見てると、そんな臭気を忘れてしまう感じがするのです。
それはまず何より、作品の核を忘れてる僕自身の問題で…
同時に”鬼滅”という作品/コンテンツ/プロダクトが今流通している在り方、売られ方によるものだとも思っています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
あんま綺麗な話じゃないところが、個人的には好きなんですよね。
業に耐えられねぇ弱いやつも、堪えて生きる弱くて強いやつも、同じ場所で生きて、血みどろに殺し合う。
鬼舞辻無惨っていう存在が徹底的に面白みのねぇ凡俗で、超越的なヴィジョンもなにもなく、ただ生き長らえたいがために強さを振るうこと…その”当たり前”の怪物的醜さに自覚的なのも、僕は良いところだと思っています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
あの人は目を背けたくなるほどに、当たり前の人間で。
託された理想のために己を顧みず、人間のまま鬼に打ち勝ち、世界を変えようとする主役たちを『異常者』というのは、”普通”の感性だと思うんです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
ただただ他者への共感能力が欠けきっていて、ただただ無意味に強い。
パワハラ社長の究極系っぷりは、今回の猗窩座への心臓潰しでもよく見えます。
そういう存在が物語の畢竟に位置する巨悪なのは、業の引力に惹かれ己の弱さに負けざるを得ない”当たり前”への、なにか怒りのようなものをときおり感じるのです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
その焔が、正しいことだけを貫ける主役を生み出し、作品に異様な熱を与えているのではないか、と。
その逸脱した熱量が、鬼滅が今売られる在り方…の一部からは漂白されてる感じがあって、正直違和感を覚えます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
綺麗な皮を一枚引っ剥がせば、燃えさかる異質性がどす黒く溢れ出す、その感覚。
それこそが、少年たちが宿命の戦いに身を投げる切っ先たり得ている。
何かが過剰で、何かが欠落していて、バランスよく”当たり前”なんかじゃないからこそ、常人が諦めてしまう人間の自然当然に、血反吐を吐きながら到達してしまえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
そんな存在への、下から睨めつけるような視線が、この作品にはある気がする。
弱者からの、少数者からの、”当たり前”に憎悪する者の……
そのアングルを作品を見る足場と選んでいるのは、僕自身が同じ目線を持っていて、勝手に作品に援用しているだけかもしれません。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
しかし僕の狭い了見は、そういう燃え盛る濁り、そこからだけ咲く烈花を、お話に見ている。
これはアニメを入り口に”鬼滅”が好きになり、原作を読んだ頃からずっとそうです
鬼は間違え取り返せず、人は弱くて立ち直る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
あんだけ醜悪に酒毒に汚された魂を見せた煉獄槇寿郎も、炭治郎の頭突きでもって魂を揺るがされ、息子の遺言を受け取ることで、己を鑑み涙することが出来る。
荒れていた日々を悔やみ、家族に誇れる自分を取り戻せる。
あるいは炭治郎が煉獄家を訪れることで、千寿郎は己の非才を真っ向から受け止め、新しい道に進み出すことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
人間はやり直せるし、死を超えて継がれるものはある。
そんな綺麗事を信じきれなかったものが、鬼に堕していく。
可哀想な連中だが、もう言葉は通じない、変わらない。斬るしかない。
柱が軒並み印象最悪な所から開始して、背中を預けて闘う内、殻の奥に秘めたものが見えてくる構造、僕は結構好きなのですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
遊郭編第二の主役たる宇髄天元にしたって、小娘さらいの暴走野郎、話の通じぬ手前勝手として、作品に登場する。
しかし接し方や言葉の現れが下手くそなだけで、内には揺るがぬ信念、他者を敬する心意気があることが、まぁ今後解ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
それは”変わる”わけではなくて、元々あったものを見せてもいいと思えるくらい、激戦の圧力が隊士同士を近づけるからでしょう。
刃を振るって鬼を殺すのは、これ以上の悪行に牙なき弱者が巻き込まれるのを防ぐためであり、己では止まらぬ宿命を止めてやる最後の慈悲であり、嘘のない人間の輝きを燃やす鍛錬場でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
そんな感じに、事件を捉えてるお話な気はします。
ここら辺の陰影を捉えるには、やっぱアニメの描き方は強張りすぎ、長すぎる感じは、この新章でも受ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
というか、更に強くなってる感じがする。
全領域でリッチに尺をとって、凄くいい動きと強い音響で画面を満たして、”強い”と”もっと強い”がデフォルトのスイッチになってる。
個人的にはもう超ボリュームを抑えた、圧力の小さい場面を合間合間に挟んだり、静止した間でテンポを作ってくれると、より受け入れやすく感じます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
まーこの全領域緩みのない仕上がりが、圧倒的な作品に飲み込まれる快楽を生んでるのも間違いなくて、評価は難しいところだけども。
特に笑いの場面でこの力んだ強張りは、笑えない頑なさの原因になっちゃってるかなー、という感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
蝶屋敷の三人娘とのやり取りとか、もうちょい肩の力を抜いたコミカルさで食べたい気持ち、正直結構あります。
なんつーか…常時”ON”なんだよな。オフビートにして欲しいところも。
まぁそれはufoの作風であり強みでもあり、今更文句つけるところでもないとは思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
実際最後に開陳された遊郭の風景、天元の気風を反映した派手な画作りは、素晴らしい画作りでとてもワクワクした。
早くべんがらに蝋燭の明かりの、妖しい気配をハイクオリティに吸い込みたい…。
さてお話は、無限列車の激闘を終えた炭治郎達がどう暮らし、新たな物語に漕ぎ出していくかを描いた、ある意味繋ぎのエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
煉獄家に立ち入って波紋を残し、己を鍛えながら鬼を斬り、ド派手な男が乱入して新たな事件の予感…と。
やっぱ蝶屋敷の子らと生活してる描写、好きだなぁ…。
カナヲが天元乱入にフリーズしつつ、ここまで彼女を運んできた銅貨の偶然ではなくて、炭治郎の言葉に背中を押され願いに踏み込むのは、とても良い場面でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
こんな感じで、他人にとてもポジティブなものを残せる所が、炭治郎の強みだと思う。
カナヲは決断を放棄することで責任も放棄し、あまりにも辛いこの世界で人間として生きる重荷から自分を守ってきたんだと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
炭治郎の『自分の思うままに、人として生きろ』というアドバイスは、彼女の背中に石を積む行為だと思う。
ただ、それを一人で背負わせる気はない。
巨大で真っ直ぐな正しさの、ギラついた凶暴さを滲ませつつも、その刃が何を突き刺し、切開するのか、自分に引き受けて見ようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
そんな炭治郎の言葉だからこそ、『命令に背き、組織に背き、柱に背く』という決断に、カナヲが踏み出す決定打になったんじゃないかな。
大事な友だちを理不尽に奪われず、手元において守りたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
それはずっとカナヲがしたくて、弱い人間には、鬼殺隊の厳しい闘いの中では出来なかった事。
たっぷり傷ついて心を閉ざした彼女だからこそ、己を人形に変えて逃げてきたものこそが、一番大事なものだった。
そんな風に己を偽らず、真の望みに向き合うよう変わっていける可塑性が、鬼と人を分ける大事な足場な気がします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
そしてそんな願いが形にならないときは、竈門炭治郎が駆けつける、と。
やっぱこの、総身を尽くしてまだ正しさに届かない所を、一手手助けしてくれるヒロイズム好きだな…。
炭治郎(を主役とするこのお話)は、生きてるだけで頑張ってる人間の在り方を肯定しつつ、それを食いつぶそうとする世界の”当たり前”にどう刃を突き立てるか、追ってる感じがあります。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
理不尽の具現に見えた天元もまた、鬼の住処でそういう真心を晒してくる。
そんな風に魂の地金が見せる瞬間を、どう描いてくるかには、期待を抱いております。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月7日
TV放送から二年と少し、作品との向き合い方もかなり捻れてしまいましたが、やっぱ好きなアニメで、新しく紡がれた物語にワクワクしております。
次回も楽しみですね。