最果てのパラディンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
奇縁を引き連れ森を抜け、辿り着いた白帆の都は盛況であった。
心地よい湯の肌触り、空腹を満たす皿の味。
文明がそこにあることの意味を肌で感じたウィルの前に、空より襲いくる魔獣。
ワイバーンとの激戦と、そこに続く怪奇なる政治を前に、英雄の子は決断を試される。
そんな感じの英雄神話第二章、邪竜殺し必殺の絞め技炸裂な、パラディン第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
前半パートどっしりと、ホワイトセールの街がどんだけ良いところか見せたことで、それを苛むワイバーンの脅威、打ち倒すウィルの英傑が際立つ回であった。
そして戦闘より厄介な、人間相手だからこその立ち回り…と
ファンタジックな闘争成り上がり物語も、人間が織りなす以上、生活があり文化があり政治がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
相棒としてのメネルがどんだけ頼もしいかをちゃんと描き、ウィル規格外の力を見せ付ける戦闘描写”以外”が、しっかり活きたエピソードとなった。
やっぱこういう部分が、このお話の良さと感じるね。
ホワイトセール探訪記は、魔法が文明を下支えするマジカルパンクな世界観もよく見え、大変良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
中世レベルに落ち着きそうな所を、熱の言葉、清めの言葉でグッと押し上げて、お風呂に食事にきれいな町並みと、転生者も感動の文明が築かれている。
ウィルの喜びは、物語の運びとともに一緒にここに来た僕らとも、強くシンクロするものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
廃墟都市に植民市、森に囲まれ野に交じる厳しい生活が描かれていたからこそ…そしてそこに住まう人を守らんとここにやってきたからこそ、文明の息吹はウィル(と僕ら)の心を打つ。
同時にそれは、アンデットに堕ちても邪神封じの偉業を成し遂げた親たちが守った場所であり、英雄の秘された過去こそが、白帆の都を守る最大のモチベーションである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
長い修行時代を単なる力の源泉ではなく、行動理念の根っこに据える書き方はベーシックでクラシックで、大変良い。
フロとメシ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
人間が素直に心地よいと思えるものの有り難さを描いたあとで、神殿に赴き仁義を切りに行くウィル。
明らか俗物坊主の外装に、真の信仰者の魂を宿したバグリー神殿長との交流も、”パラディン”らしくてよかった。
信仰とは着飾り褒めそやすものではなく、己の心に宿すもの。
破戒坊主の評判に、芯の太い信仰、確かな観察眼を宿した神殿長の立ち姿には、ちと一休禅師の香りもあって好みである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
世間が蔑するその真意を、英明なるウィルだけは肌で感じて解っているという描写があるのも、上品に主役をアゲてていい感じだ。
祝祷術が実際に奇跡を起こすとなると、それはある意味信仰の証明として、これみよがしにパフォーマンスするものになってしまうのかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
ウィルは冒険者として、生存に不可欠な道具として信仰の恩恵を被っているわけだが、街においては必ずしも、そういう強みだけあるわけではない。
バグリー神殿長の指導は、人里離れた伝説から生み出されたばかりの神官戦士に、人間の中で暮らす心構えを教えてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
自由意志を持った人間が一定数集まれば、必ず生まれる複雑なうねり。
それが神殿を例外にはしてない描写でもあり、とても面白かった。
それはそれとして、クソつよモンスターが街をぶっ壊すので、たった二人で立ち向かうよッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
好きになった街がぶっ壊され、敬する父母が守りたかったものが踏みにじられる。
ついつい頭に血が上ったウィルを、修羅場慣れしているメネルがしっかり抑え、精霊術で支援するのが大変良い。”相棒”って感じ。
高地優位を随時取り続ける、厄介な飛行ユニット相手にどう立ち回るか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
奇襲の利を活かし、ヘイトをコントロールし、束縛系の術式で自由を奪って、街に被害少なく仕留めていく立ち回りは、頭を使っていて大変グッドだ。
術式を組み合わせることで、新技・ライトニングネットパなす流れは興奮したね。
やっぱ旧いTRPGの民なので、雷撃と束縛が同時発生すると『ライトニングバインドだーッ!』って興奮しちゃうんだよね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
そういう搦手で地面に叩き落とした後は、メネアのヘラクレスもかくやという剛力でもって首を絞め上げ、頚椎をへし折って大勝利。
最後がゴリラパワーなのが、英雄してて大変良い。
たった二人で巨獣を落した功しを、ここぞとばかりに勇名に繋げる行商人の弁舌、吟遊詩人の音曲も、地道な描写ながらグッド。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
四人のPT枠二つを社会性特化に割り振ってるの、作品が見据えるものが感じられて、とってもいい感じ。
ただ超絶パワーで無双してたら、周りが持ち上げてくれる世界ではないのだ
というかむしろ、人間サイズの超絶兵器だからこそ為政者としては警戒する…というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
王弟エセルバルドが早速に、街を救った英雄の素顔を掘り下げんと”政治”に動くの、油断のない立ち回りで大変良かった。
四人PTで役割分担して対応したと思ってたら、剛力無双のチート野郎がほぼ一人で制圧たぁ…。
王弟殿下は為政者としての筋を通し、礼節を尽(すことで、ウィルの氏素性、人間としての地金を油断なく探りながら)して、角が立たぬようにイレギュラーに対応してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
街を収め、国を司る立場として覚悟していた犠牲が、たった二人の活躍で未然に防がれたのはありがたく、感謝もする。
しかしそんな偉業を成し遂げる怪物が身近にいることは、ただでさえ不穏な情勢にどんな波紋を投げかけるか、解ったものではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
ワイバーンの襲撃よりも一大事と感じ、大急ぎで見定めようとするのは、眼識鋭く心魂の座った対応と言える。
そしてウィルも、そんな刃をしっかり見据える。
”混ざりもの”である英雄が、自分と同じく王弟と対等に向き合えない無念が、一瞬滲む演出も良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
ワイバーン殺しの功しを問われ…あるいは実力を査定される時に、精霊使いの助け合ってこそ撃破できたと、後ろに控えるメネルを立てる言い回しになってるのが、非常にウィルっぽい。
王弟も常識はずれの力を持ったウィルを、野心に利用せんと探りを入れている感じではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
そうであれば、国を揺るがす武装集団を作りかねないと理解しつつ、私兵を集める許可を求めたウィルに『あなたを殺さなければならない』と、ダイレクトに告げはしないだろう。
もっと耳障りの良い言葉で持ち上げ、殺意を隠して良いように扱おうとするはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
何しろ救国の英雄、嘘をつかずに天まで吹き上げる材料はいくらでも転がってるわけで、そういう虚言で場を収めても良かった。
しかし王弟もウィルも、この会見をそういう形で収めようとはしていない。
魔獣が跋扈し、国が揺れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
保護すべき臣民に庇護の手が届ききらないこの状況で、ウィルは信仰と信念の一個人として、王弟は国家を背負う為政者として、それぞれ譲れぬものを抱えて向き合っている。
これを良い形にまとめ上げるには、油断なく周囲を探る目と、誠を伝える言葉、嘘なき行いが必要になる
それがあって初めて、伝説の英雄に育成されたチート主人公は、自分が成し遂げたいことを人の世の中で、果たすことが出来るのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
そしてそのために必要な資質はウィルの中にも、彼が対峙する苛烈な為政者にも、しっかり備わっている。
それがよく判る会談でした。良いなぁ、こういう描写。
戦いにおいても政治においても、ウィルは父母の教えをよく思い出し、また活かす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
『いざとなったらSTR判定で殺せッ!』という、ファイター真実だけでなく。
神殿でも会談でも、礼を尽くした態度で相手の矛先を和らげ、実りある関係のきざはしとなる弁舌も、マリーが鍛えた大事な武器である。
王弟殿下が国家の現状、眼の前の人物、為すべき行いをしっかり見定め、行動もできる傑物だということは、よく解った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
僕は善き人の善き思いと行いが、結び合ってなんかデケェ事を成し遂げていく話が好きなんで、ウィルの前にこういう人が出てきたの、凄くワクワクすんのよね。
主役が高く見えるために、ありえないほどの愚鈍さで周囲を掘り下げてくれる当て馬出てくるより、見てて気持ちのいい人が、賢く強いからこそ簡単には譲れないものをぶつけ合って、より良い結末を探していく話のほうが、やっぱ肌に合うんだよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
メネルとの物語も、そういう風通しだったし。
王弟殿下が時に人が死ぬ政治のリアリアズムと、現実を動かす血潮を信じるロマンティシズムの同居する、面白い人間だったら良いなぁ、などと期待しつつ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月11日
怪物退治が生み出す政治的波紋を、我らが聖騎士がどう乗りこなしていくのか。
次回も大変楽しみです。